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第八十話 偶然の再会

お昼過ぎは”ひるもび”を観て楽しんだ。

最新の情報は得られたし、お天気コーナーも観れた。

明日は季節外れの温かな一日になるそうだ。


「さてと、買い出しに出かけるかな」


薬を飲んで安静にしていたのでだいぶ症状が和らいだ。

まだ、頭痛はするが頭が割れるほどの痛みはない。

俺はや財布を持ってジャンパーを着て家を出る。

さすがにスーパーまではいけないので近くのコンビニにしておいた。


「昼過ぎだから弁当は少ないだろうな」


とりあえず今夜の夕飯と明日の朝食を手に入れられればいい。

料理を作る気にもなれないからできあいですませるのだ。


予想通りコンビニへ入ると弁当コーナーはスカスカだった。

人気のあるガッツリ系の弁当はひとつも残っていない。

残っていたのはグラタンとおにぎりが数個だけだった。


「これじゃあ腹は膨れないな」


けして嫌いなわけじゃないがグラタンを食べても物足りない。

お値段の割にはお腹が膨れないからおにぎりがないとダメだ。

ただ、今はグラタンって気分でないから手に取らなかった。


「仕方ない、カップ麺にしておこうか」


俺はカップ麺のコーナーへ移動してカップ麺を選ぶ。


カップ麵も普通のサイズだと物足りない。

麺の量が少ないからお腹いっぱいにはならないのだ。

メインディッシュにするには普通サイズでは物足りない。

なので一回り大きいビッグサイズにしておいた。


「とりえず味噌とシーフードとしょう油を押さえておくか」


俺は買い物かごに3種類のビックサイズのカップ麺を入れる。

そしてお菓子コーナーを通り抜けてレジへ向かった。


レジ前で精算を待っている間、レジ横の惣菜に目を向ける。


「肉まんか……季節ものだな」


肌寒くなってくると自然と肉まんがお目見えする。

コンビニのレジ横商品は稼げるからこぞってレジ横商品を並べている。

肉まん、おでん、揚げ物はコンビニのレジ横商品の定番なのだ。


俺は肉まんをじっと見つめながらどうしようか考える。


すぐに食べるなら肉まんを買ってもいいが買うのは夕飯だ。

冷たくなってもレンジで温めればいいけれど美味しさが減る。

やっぱり肉まんは熱々のうちに食べた方が美味しいのだ。


「肉まんはやめて揚げ物にしておくか」


俺は並んでいるから揚げとフランクフルトをにしておいた。

これならば冷たくなってもレンジで温めればいいから問題ない。

肉まんのように冷めても美味しさが減ることはないから安心だ。


「いらっしゃいませ」

「これでお願いします。それとから揚げとフランクフルトを2つお願いします」

「かしこまりました」


精算を待っている間、残っていたおにぎりに目を向ける。

そして無造作におにぎりを掻き集めるとレジカウンターに置いた。


「これもお願いします」

「温めますか?」

「いいです」

「レジ袋はどうしますか?」

「お願いします」


スキャンを終えて店員がレジ袋に商品を入れる。

俺はレジのボタンを操作して精算をすませた。


「ありがとう」

「ありがとうございました」


俺はレジ袋を持ってコンビニを後にする。

ガッツリ買ったのでレジ袋は膨れていた。


「これで夕飯は確保できたな」


家の近くにコンビニがあるとすごく便利だ。

ちょい買いしたい時にすぐに行けるから楽ができる。

とかく独り身だと料理をしないからコンビニは欠かせない。

わざわざ手間をかけて料理をするよりもコンビニ弁当の方が手軽なのだ。


「さてと、帰ったら何をするかな」


テレビだと情報番組の”ミヤゲヤ”もやっているし、午後のサスペンスドラマもやっている。

まったりするなら午後のサスペンスドラマだけど再放送だからつまらない。


「やっぱ”ミヤゲヤ”かな」


そんな予定を考えながらマンションのエントランスへ入って行く。

すると、不意に人影が目に入ったと思ったら衝撃が体を走った。


「イタッ」


誰かとぶつかってしまったのだ。


「おい、どこを見て歩いてるんだ」

「そっちこそ」


そしてぶつかった相手を見て驚きの声をあげる。


「まとい!」

「お兄ちゃん!」


その相手はなんとまといだったのだ。


「なんでまといがこんなところにいるんだよ」

「お兄ちゃんの方こそ」


お互いに予期していなかった再会に理解できないでいる。

俺達はお互いを見つめたまま再会の理由を考えていた。



(まといのやつ、また居場所がなくなったから俺の家に転がり込むつもりなのか)


でなければまといが俺の自宅のあるマンションにいることはない。

わざわざ俺のマンションの場所を調べあげるなんて本気なのだろう。


(確かにまといと一緒に暮らすのは楽しいけれど、アンチに見つかってしまえば住む家をなくしてしまう)


あんな惨めな生活に戻ることだけは避けたいのが本音だ。



(お兄ちゃん、私の自宅の場所を特定して逃げ場をなくすつもりなの)


私とエッチしたいからわざわざ私の自宅の場所を探したのかもしれない。

スケベな和斗だから十分に考えられる。


(私を脅して強引にエッチするかもしれない)


和斗のことは嫌いではないがエッチしたい相手でもない。

だから、今まで和斗が迫っても体を許さなかったのだ。



((このままだとマズい。なんとか理由をつけて誤魔化さないと))



「俺は大学時代の友人に会っていたんだ」

「奇遇ね。私も歌のレッスンの先生に会っていたの」


お互いに適当な理由を述べて誤魔化した。



(まといの歌のレッスンの先生が同じマンションだったんんて初耳だ。これは運命ってやつかもしれない)


俺とまといが偶然出会ったのも神様のいたずらなのかもしれない。

離ればなれになっていた兄妹が運命の再会を果たしたのだから。

俺とまといは切っても切れない関係なのだ。


(まといの歌のレッスンの先生とお近づきになっていた方がいいかもしれない)


そうすればまといと心の距離がぐっと近くなる。

それにまといの関係者の信頼を得られれば遠慮することもないのだ。



(お兄ちゃんの大学時代の親友が同じマンションだったなんて最悪。これじゃあ自宅がバレちゃうじゃん)


大学時代の友人のようだから頻繁に会っているのかもしれない。

想い出話に花を咲かせて自慢ばかりしているのだろう。

とかく男子は自分を大きく見せたいから自慢ばかりするのだ。


(また、マネージャーの家に戻った方がいいかもしれない。軟禁生活になるのはイヤだけど)


和斗に自宅の場所を知られるよりマシだ。

私がタワーマンションの最上階に住んでいることがバレたらお金持ちだと知られてしまう。

そうなったら和斗のプライドを折って関係が悪くなってしまうはずだ。



「帰るならそこまでいっしょに行こう」

「そうね」


俺とまといはエントランスを通ってマンションから出た。


「じゃあ、俺こっちだから」

「私はこっち」

「またな」

「またね」


俺はマンションを出て右に曲がり、まといは左に曲がって別れた。

そして十字路までやって来ると右に曲がって姿を隠した。


「ふぅー、何とか誤魔化せたようだ」


買い物袋を下げているのに友人の家から出て来たなんてだいぶ矛盾がある。

ただ、まといはそのことをツッコまなかったのでバレてはいないのだろう。


俺は曲がり角から顔を覗かせてまといがいないか確認する。


「いないな」


とりあえずやり過ごすことはできたようだ。


「じゃあ、戻るか……いや待て。もう少し経ってからの方がいいかもしれない」


俺はすぐに自宅には戻らずにその場で時間をつぶすことにした。

何となくだがすぐに戻るとまといに見つかるような気がしたからだ。

ただ、買い物袋をさげて何もしないで立っていると通行人の視線をまともに受ける。

不審者に間違われて冷ややかな目で見られていた。


それから5分ほど時間をつぶしてから再びマンション前を確める。


「まといは帰ったようだな」


そこにまといの姿はなくガラ~ンとしていた。


「こんなところでまといと出会うなんて肝が冷えたぞ」


けっしてまといと再会したのが嫌だと言うことじゃない。

ただ、アンチの存在が気になるから肝を冷やしたのだ。

前のときのようにアンチに居場所がバレたら晒されてしまう。

そうなったら俺はこのマンションから出て行かなくてはならない。

せっかくリフォームまでして手に入れたマンションだから失いたくはないのだ。


「俺のアジトは守らないとな」


俺はマンションのエントランスを通り抜けてエレベーターの前まで来る。

そしてエレベーターのボタンを押すとチーンと音がして扉が開いた。


「ゲッ、まとい!」

「お兄ちゃん!」


そこにいたのは不運にもまといだった。


「何だよ、帰ったんじゃないのか」

「お兄ちゃんの方こそ」

「俺は忘れ物を取りに来たんだ」

「私も」


何と言う偶然なのか。

せっかく別れたと安心していたら再会だ。

わざわざ嘘をついて誤魔化したのに無駄になってしまう。


俺は引き返すこともできないのでエレベーターに乗った。


「俺は12階だ」

「私は15階」


それぞれの階数のボタンを押してから閉まるボタンを押した。

エレベターの扉がゆっくり閉まるとエレベーターが動き出した。


なんとも言えない空気がエレベーターの中に漂いはじめる。

まといに話しかけてればいいのだが会話をする気にはなれなかった。


お互いに沈黙したまま自分の階に着くのを待っていた。



(これでまといの歌のレッスンの先生が15階に住んでいることがわかったな。俺は18階だからけっこう近い)


同じマンションの住人がてら挨拶をしておいた方がいいかもしれない。

そうしないといつまで経っても歌のレッスンの先生とはお近づきになれない。

都会だと隣に住む人は誰ぞの世界だから近所づきあいがほとんどないからだ。


(まあ、でも、まといの義理の兄だとは言えないけどな)


そんなことをすれば逆に警戒されてしまう。

スキャンダルのことも知っているだろうから。



(お兄ちゃんの大学の友人が12階でよかったわ。上の方に住んでいたら自宅がバレちゃうもの)


マンションの住人が自宅のある階数より上に上がって来ることはない。

用もないし、屋上に出られることもないからだ。

なので同じマンションだとしても安心していられる。


(まあ、偶然エレベーターでいっしょになっても顔バレしなければ大丈夫だ)


いくら大学の友人だからといって私達の関係は話していないだろう。

スキャンダルのことは知っていても私だとは思わないはずだ。

話題の女子高生声優アイドルが和斗と付き合っているなんて考えられないのだから。



そんなことを考えている間にエレベーターは12階へ着いた。


「じゃあ、俺ここだから」

「またね」

「あとで連絡を入れる」

「わかった」


エレベータの前でまといを見送ってから俺は自宅に向けて歩き出す。

もう、エレベターは使えないから階段で自宅まで行くしかない。

12階から18階まで階段を駆け上がるのはけっこう骨が折れた。


「ふぅー、何とか自宅まで戻れたぜ」


俺は玄関のカギをかけてから安堵感に包まれた。


「まさかまといと鉢合わせるなんて思ってもみなかったからな」


俺達の間には偶然が存在するけれどこんな偶然はやめてほしい。

あくまで偶然が起こってほしいのは身の安全が確保されている時だけだ。


俺は買い物袋をテーブルに置いてソファーに腰を下ろした。


「まあ、まといの関係者が同じマンションだとわかったことは収穫だな」


お近づきになれたらまといに関する情報を入手できる。

まといとは”NINE”で繋がっているけどプライベートなことは教えてくれない。

それは情報が漏れるのを心配しているのだろうけど俺達の間柄には不要だ。

なんて言ったって俺達は偽りの義理の兄妹なのだから。


「まといの自宅がわかればいつでも会いに行けるもんな。そしたらあんなことやこんなこともできる。グフフフ」


すっかり俺の頭の中はエッチなことでいっぱいになる。

昨夜は寂しいクリぼっちを体験したから余計にエッチを欲しているのだ。


「とりあえず、まといに”NINE”を入れておくか」


今、電車に乗って自宅へ向かっていることにしておいた方がいい。

そうすればまといも疑いを持つことはないだろう。


俺は”NINE”にまとい宛てのメッセージを書き込んだ。


”お疲れ”

”忘れ物は見つかったか”

”俺は今、電車に揺られている”

”偶然てあるもんなんだな”

”驚いたよ”


すると、すぐに既読がついてまといがメッセージを返して来た。


”お疲れ”

”私も今、電車で揺られているところ”

”忘れ物はあったよ”

”そうだね”

”私達、偶然ばっかりだよね”


俺はまといのメッセージを読んで安心する。


「まといは無事に電車に乗ったようだな」


とりあえず、ひとまずは安心だ。

俺の嘘もバレていないようだから疑われることもないだろう。


続けざまにメッセージを送ろうかと思ったがやめておいた。

さっきの今だからボロがでてしまうかもしれないからだ。

お互いの状況報告ができたのだからそれだけで十分だ。



私は15階で降りずに最上階まで上がった。

そして廊下に誰もいないことを確認してから自宅に入る。


「ふぅー、やっと家に戻れた」


昨夜、シオンに実家の方へ送ってもらったからだ。

マネージャーの家だと語弊があるからやめておいたのだ。

だから、シオンには自宅の場所を知られている。

だけど、シオンは信用できる男性だから問題はない。


「にしても、何でお兄ちゃんと出会うのよ。偶然にも程があるわ」


とりあえず歌のレッスンの先生の自宅がこのマンションにあると誤魔化せた。

だけど、和斗の大学時代の友人がこのマンションの住人でもあることもわかった。


「これからはもっと慎重に行動した方がよさそうだわ」


もし、自宅の場所が和斗にバレてしまったら押しかけて来るかもしれない。

和斗がひとたびエッチに駆られてしまえば止められなくなるからだ。

とかく和斗は私とエッチできなかったことを後悔している。

だから、いつでも目を光らせて私を狙っているのだ。


「お兄ちゃんもシオンぐらい紳士的だったらよかったのに」


ここでシオンを引き合いに出すのは心苦しいが月とスッポンほどの違いがある。

シオンはイケメンで強くて紳士的な男性なのに和斗はスケベでエッチなことしか考えていない変態な男性だ。

同じ男性なのにここまで違うと逆に悲しくなってくる。


「まあお兄ちゃんからエロを取ったら何も残らないのだけどね」


そんな愚痴をこぼしながら私はペットボトルの紅茶を飲んだ。


ブルルル、ブルルル。


「言っているそばからお兄ちゃんの”NINE”が届いたわ」


ここでスル―する選択肢もあったがやめておいた。

変に既読をつけないと疑われてしまうからだ。


「適当にオウム返ししておけばいいわよね」


私は和斗のメッセージを繰り返すような言葉を並べた。

あまりベラベラと喋ってボロが出ても困るからだ。


「私達、これからどうなるんだろう」


ふとそんな言葉が口から零れた。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

これで『優秀なサラリーマンは声優アイドルに恋しない』は終了です。

ここで終わり?と思う方もいるかと思いますが第二部の構想を考えてないので終わりです。

当初はラブコメを書く予定でしたがまったくラブコメになっていませんでした。

どのジャンルでも同じですが小説を書くのは難しいですね。


さて、次作は「おばか、おふざけ、スケベ」一切なしのまじめなシリアス作品をお届けする予定です。

かねてより温め続けてきた作品で現在プロットを作成しています。

『ちょめぱん』が終了してからの投稿になるので秋頃を予定しています。


どんな世界なのか少し話すと”魔法が衰退した後の時代”を描いた作品です。

活動報告に情報を小出しにしていく予定なので楽しみにしていてください。

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