第七十九話 二日酔い
夢の中でAV作品に出演していた。
AV作品の主人公になってエッチをしまくる内容だ。
ただ、俺がセクシー女優を犯すのではなくセクシー女優の粛清を受けている。
縄で縛られて自由の利かなくなった体をセクシー女優が弄ぶのだ。
”うぉ、止めてくれ。俺は責められるのは苦手なんだ”
セクシー女優は熱々のろうそくを俺の体に垂らして遊んでいる。
俺が体を捩って苦しむとセクシー女優は興奮して同じ行為を繰り返す。
”やろう、やめろって言っているだろう”
俺が喚いていてもセクシー女優は笑ったままだ。
そしてあろうことか俺のマツタケに熱々の蝋を垂らした。
”ぐおぉぉぉぉぉ”
俺のマツタケが熱さに耐えきれずに悶え苦しむ。
これはもうエッチではない。
ただの拷問だ。
さんざんAVを観て楽しんで来たから罰があたったんだ。
”AVを観ていただけなのに、こんな目にあうなんて。もうAVなんて観るもんか”
そう弱音を吐くとセクシー女優はニンマリと笑みを浮かべる。
仮面をつけているから誰なのかわからないけど強かな女だ。
俺がおかわりを欲しがっていると解釈して再び同じことをする。
”ぐわぁぁぁぁぁぁ”
俺の悲痛な叫び声が地下室の中に響きわたった。
”ちくしょう。やめてくれ。俺が悪かった”
もう、これ以上、熱々の蝋を食らったら俺のマツタケが使い物にならなくなる。
すでにマツタケは赤く腫れていて薄皮が剥がれ落ちていた。
”頼む。やめてくれ。ぐわぁぁぁぁぁ”
それでもセクシー女優は拷問をやめようとはしない。
とことんまで俺をいじめ尽くすまで諦めないようだ。
すると、今度は極太のろうそくを持って来て火をつける。
そして蝋が溶けて来ると俺のマツタケに向かって熱々の蝋を垂らした。
”ぐわぁぁぁぁぁぁぁ”
たっぷりの熱々の蝋が俺のマツタケを包み込んで激しい痛みを食らわせる。
俺が体を捩って悶えるとセクシー女優は強かに笑いながら俺を下目に見た。
”何が目的なんだよ。俺が何をしたって言うんだ”
すると、セクシー女優の口が動き出すが俺の耳にその声は届かない。
何かを言っているようなのだがだんだんと意識が薄れて行く。
それは深い海の底へ沈んで行くような感覚で部屋の灯かりも失った。
ガバッ。
「はあはあはあ」
俺はベッドから勢いよく飛び起きる。
そしてぱんつの中のマツタケを見てほっと安心をした。
「マツタケは大丈夫なようだ。それにしてもなんて言う夢を見たんだ」
クリスマスの当日に見る夢じゃない。
きっと昨日の夜、AVを観まくっていたから悪夢を見たのだろう。
「どうせならエッチをしまくって気持ちよくなる夢を見たかった」
そうしたら最高のクリスマスの夢になる。
日常は潤せないからせめて夢の中では幸せになりたい。
ただ、そう思っている時に限って悪夢を見るのだ。
「珈琲を飲んでさっぱりするか……ぐぅ」
急に立ち上がろうとすると頭がトンカチで叩かれたような痛みが走った。
「ぐぅ、頭が割れる」
俺はこめかみを抑えつけながらその場に崩れ落ちる。
頭を動かすたびに痛みが走って俺を苦しめる。
「ちくしょう。二日酔いになったのかよ」
昨夜、浴びるほど酒を飲んだからその代償だ。
酒は弱い方ではないが昨夜のチャンポンがよくなかったのだろう。
あまりに虚しかったから酒を浴びるように飲んだのだ。
「最悪の朝だ」
悪夢は見るし、二日酔いになるし。
俺が何か悪いことでもしたと言うのか。
神様は俺に罰を与えて喜んでいるのかもしれない。
俺は体を転がして床に落ちるとほふく前進をしながらキッチンへ向かった。
「水だ。水がほしい」
アルコールを分解するには大量の水が必要だ。
だから、体が水を欲している。
俺はシンクに捕まって体を起こすと水道のノブをひねる。
そして水きりに置いてあったグラスを取ると水道の水を注いだ。
ゴクゴクゴク。
「ぷはーっ」
水がこんなにうまいと感じたのははじめてだ。
体が乾いていたから余計に美味しく感じるのだろう。
眠っているだけで水分は失われるからすっかり体が乾いてしまっていた。
ズキン。
「くぅ、頭が……」
二日酔いの痛みが再び襲って来る。
頭がズキズキして立ってもいられない。
俺は膝から崩れ落ちて床で丸くなった。
「薬だ、薬」
俺は再び床を這ってリビングへ移動する。
そしてテレビの下の引き出しから薬箱を出す。
「たしか、ここに二日酔いの薬があったよな」
薬箱を引っ掻き回してやっと二日酔いの薬を見つけた。
「あった。”キャベズン”。これ、利くんだよな」
俺は”キャベズン”を口に加えてキッチンへ戻って行く。
立ち上がれないのでシンクに捕まりながら体を起こすとグラスに水を注いだ。
サラサラサラ。
ゴクゴクゴク。
「ぷはーっ。これで大丈夫だ」
時間が経てば二日酔いの痛みも和らぐだろう。
それまでは横になって大人しくしていた方がいい。
再びはいつくばってリビングに移動するとソファーの上に横になった。
「ふぅー、疲れた」
不意に壁の時計に視線を送ると時計の針は10時を指していた。
「やばっ、完全に寝過ごした」
今年のクリスマスは平日なので会社は休みじゃない。
いつもなら会社でミーティングをしている時間だ。
「無断欠勤してしまったぜ。まずいな」
無断欠勤は世の中では一番評価が下がる行いだ。
何も連絡がないから会社の方も心配をする。
まさか出勤の途中で事故にでもあったのかと思うからだ。
新入社員程しやすい行為なのだがベテランの俺がする行為でもない。
「スマホは」
俺はテーブルに無造作に置いてあったスマホを手に取る。
そしてスマホを操作して会社に電話を入れた。
3回電話の音が聞えると会社の社員が電話に出た。
「お待たせしました。セントラルネクスト株式会社の宇田です」
「営業課の杉沢です」
「おはようございます」
「連絡が遅くなってしまったのですが今日は病欠します」
「風邪ですか?」
「そんなところ」
「はぁ」
「これからかかりつけ医に行くので営業課の上村課長に連絡をお願いします」
「かしこまりました。お大事にしてください」
「ありがとう。失礼します」
プチッ。
「とりあえずこれでよしだな」
俺の苦しそうな声を聴いたから風邪だと思うだろう。
連絡は遅れてしまったけれどこれで無断欠勤にはならない。
今日は家でのんびりして静養するのだ。
「それにしても何もしないで横になっているのって退屈だな」
頭がズキズキするので動くことはできない。
なので、スマホを操作してインスタを開いた。
「エッチな動画や画像にいいねをしているからエッチな動画やが画像が表示されるな」
これはこれで便利なのだけど他の情報を知りたい時は邪魔だ。
今はエッチな動画や画像を見てウハウハしたい気分じゃない。
俺はインスタを流し読みしながら新しい情報がないか探した。
「おっ、”ちぃかま”の3分アニメが検索されたぞ」
テレビで放送した分をインスタにアップしてクロスメディア戦略をとっている。
そうすることで別の層にもアピールできるようになるのだ。
「まといが観たら喜びそうだな」
俺は興味がないから”ちぃかま”のアニメはスル―する。
すると、今度は”ちぃかま”のコラボグッズが検索された。
「すごい人気だな。いいねがたくさんついている」
今は”ちぃかま”は日本を代表するキャラクターになっている。
海外での人気も高くて海外ユーザーが”ちぃかま”グッズをインスタにアップしている。
とかく”ちぃかま”はコラボ商品に熱をいれているからいろんなコラボ商品があるのだ。
「何がいいのかね。俺にはさっぱりだ」
俺は俄然エロ一色だ。
エロがないと生きて行かれない。
これは男の本能だから欠くことができないのだ。
「おっ、”voice”のクリスマスライブ動画がアップされている」
恐らくライブに行ったファンがスマホで撮影したのだろう。
ただ、動画のサイズが小さいので人が豆粒のように映っていた。
「盛り上がったみたいだな」
動画からは楽曲とファンの歓声が聴こえる。
その様子を見ていてもすごく盛り上がったことは伝わって来た。
「一度見て見たいものだな。まといの晴れ姿」
今度、機会があったら変装して観に行くつもりだ。
表だって行くとアンチに見つかるかもしれない。
すでに俺の素顔がさらされているから注意する必要があるのだ。
「まといか……今、何をしているんだろう」
昨夜、送ったメッセージは今だに既読がつかない。
恐らくスマホをチェックしていないのだろう。
そう考えると今頃は学校で授業を受けていることになる。
「まあな、今日は平日だから学校もやっているしな」
休んでいるのは俺ぐらいだろう。
俺はあまりに暇なのでゲームをすることにした。
「何をやろうかな」
”スポロボY”は一度クリアして周回プレイをしている最中だ。
改造資金やポイントを引き継げるので周回プレイは無双できる。
だけど俺は全キャラ使いをしているから完全な無双状態じゃない。
弱いキャラは弱いままなのだ。
「アクションものでもやるかな」
アクションRPG作品でやっているのは”ステラブライド”だ。
こっちは操作力が求められる作品だから難しい。
一番簡単な設定にしてもボス戦は苦労するのだ。
「”イブ”ちゃんみたいなカワイイ子がいてくれたらいいのにな」
そうしたら毎日が楽しいだろう。
彼女がいなくても満足できる。
”イブ”ちゃんと毎日やりまくってウハウハするのだ。
「けど、今は激しいものはやめておこう」
まだ薬が効いて来ないので頭がズキズキしている。
そんな状態でめまぐるしいアクションRPG作品をプレイするのはきついだろう。
「やっぱ”EEリバース”にしておこう」
この作品もアクションRPG作品だが”ステラブライド”よりも操作性は求められない。
簡単なボタン操作でプレイできるから初心者向けの作品でもある。
「それに”ティファ”ちゃんがいいんだよな」
カワイイし、胸はデカいし、男子が理想とする女子そのものだ。
それでいて強いと来たからには文句のつけどころがない。
「あ~ぁ、”ティファ”ちゃんが彼女だったらな~」
そうしたら毎日ウハウハできる。
あのたわわなおっぱいを俺のものにできるのだ。
おっぱいは赤ちゃんのためにあるものじゃない。
男子が楽しむためにあるものなのだ。
「と言うことで”EEリバース”をプレイしよ~っと」
それから俺は2時間ほどゲームに明け暮れた。
「ふぁ~、楽しかった」
2時間も経ったので薬が効いて来てだいぶ痛みが和らいだ。
起ち上れるぐらいには体力が回復している。
さすがは”ギャベズン”と言ったところだ。
「腹も減って来たし、昼食でも作るか」
俺はキッチンに立って冷蔵庫の中身を確認する。
「アサリがあるな。アサリの味噌汁でも作るか」
アサリは鉄分が多いので二日酔いのときに大活躍する。
それでいてアサリの出汁がでて美味しいから二重にお得だ。
「ご飯はどうしようかな」
お腹の状態もよくないからお腹に優しいものがいいだろう。
となると考えられるのはおじやだ。
ちょうどタマゴがあるからタマゴおじやに決まりだ。
俺は鍋を2つコンロに乗せるとコンロの火をつけた。
「お湯が沸騰するまで準備をすませておくか」
アサリはすでに砂ぬきがしてあるのでそのまま使える。
みそはいつもつかっている合わせみそでいい。
ご飯は昨日の残りのごはんで間に合う。
タマゴは予め溶いておいてすぐに使えるようにしておいた。
それぞれの食材を用意している間にお湯が沸騰して来た。
「まずはアサリを入れてみそを溶いて。こっちはごんを入れてタマゴを溶いて」
男の料理だから豪快でいい。
と言うか手の込んだ料理はしたことがないのだ。
手間がかかるし、ずくもないし、スーパーのできあいですませている。
最近のお惣菜は美味しいからスーパーで十分なのだ。
そしてときたまコンビニのお弁当を挟むルーティーンがちょうどいい。
「ひとり者だからな。贅沢はしなくていいんだ」
そんなことを考えている間にアサリの味噌汁もタマゴおじやもできあがっていた。
「なかなかいい出来栄えだな」
アサリの味噌汁はお椀に入れて、タマゴおじやはお茶碗に入れた。
それをお盆に乗せてリビングのテーブルまで運んだ。
「さてと。熱々のうちにいただくか。いただきます」
まずはアサリの味噌汁の味見からする。
「うぉ~、濃い~」
アサリの出汁が体に沁み込んで二日酔いの痛みを和らげる。
不足していた鉄分が補われて体に活力が戻って来た。
「やっぱ、貝のみそ汁はアサリだよな」
アサリ派かシジミ派かとで別れるが俺は俄然アサリ派だ。
シジミは小さいから食べごたえがないけれどアサリは食べごたえがある。
おまけに美味しい出汁がでているから2重に楽しめるのだ。
「タマゴおじやの方はどうだ」
熱々なのでフーフーして冷ましながら口の中に放り込む。
すると、やさしいタマゴの味とお米の味が口の中に広がる。
予め塩をかけておいたのでほんのり塩味があってとても美味しかった。
「うへぇ~、うめーっ」
おじやを美味しく感じるのは二日酔いのときと風邪をひいたときだけだ。
普段は食べようとは思わないけれど二日酔いのときと風邪のときはほしくなる。
それは弱り切った体が自然と優しいものを求めているからだ。
俺はものの5分もしないうちにアサリの味噌汁とタマゴおじやを平らげた。
「ぷはーっ、もう、お腹いっぱい」
二日酔いなのでがっつり食べなくてもいい。
腹八分目で抑えておけば満足なのだ。
「さてと、お昼は”ひるもび”だな」
俺はテレビのリモコンで6チャンネルを選ぶ。
お昼の番組は”ヒルアンデス”か”ひるもび”か”ぼかぼか”に分かれる。
”いいどこ”がやっていた時は”いいどこ”一択だったが今は3択だ。
俺はニュースも観たいから”ひるもび”が合っている。
おまけにお天気コーナーも楽しみのひとつなのだ。
「これで14時まで時間はつぶせるな」
俺はソファーにもたれながら14時まで”ひるもび”を楽しんだ。




