第八話 黒という感じではないかな
「して主よ、これから何処へ我を従え、その覇道を歩つもりなのか」
「先ずは、身の安全を確保する為に、魔族領に入るつもりだ」
「世界へ己の存在を示すため、王の座を狙うとは……それもまた良きかな!」
「その話し方、面倒じゃない?」
「え?」
「中二的な言動とは、常にというよりは、ここぞという感じで口にする方が、俺的には好みだな。何より、喋りにくいし、どうせお前もそっちの方が楽とか思ってるんじゃないの?」
無理やり俺に装備された呪いの日本刀に対し、会話をしているだけでも、黒歴史を現在進行形で作っているというのに、更にはその会話が中二的なもので行われたら、即死級のダメージが常時入るという状態に陥るだろう。
そしてほんの少しだけの会話だが、俺とコイツは同類だと、俺も感じている。ということは……
「ぐぬぬ……まぁ、そうだね。ボクとしても、気分がノッって来た時だけ派だから、それでいっか」
「まさかのボクっ子だと……刀に性別があるなんて設定したことないから、と言うよりは、そこまでの業の深淵は覗かなかったからな……なのに何故に、このような事態に?」
さぁ、ここでいきなり大きな問題がぶち上がったわけです。声の感じが、美少女キャラを担当している声優さんに激似なので、ボクっ娘であることは確定なのだけれど。この世界は、元々は俺の書いた小説だと言うことは、これもまた作者である俺の設定ということを認めざるおえないだろう。
「俺の闇は、思った以上に深いのか……」
「たとえその闇が、救いのない黒だとしても、我は主に付いてくだろう」
「ふふふ……」
「くっくっく……」
「「ふははははは!」」
閑話休題。
「お互い新たな傷を負ったところで、自己紹介といかないか?」
「そうしたいところでけれど、ボクは無銘の呪われた刀なんだから、名乗りはしたくても出来ないよ……」
「お、おう、なんかごめんな……だけどさ、今更気がついたんだけど、俺も名無し雑魚だったわ……」
なんというクロスカウンター、という感じの自爆ダメージだろうか。ここに来て初めて、自分に名前がないことに気が付かされるとは。
「いやいやいやぁ、流石にそれはないでしょ。ボクみたいのは、むしろ名がある方が珍しいんだから、そんな変な気を使ってもらわなくてのいいよ!」
「……」
「通り名がないとか分かるよ? でも、流石に名前をつけられていない魔族がいる訳ないでしょ? いるわけ……いるの?」
「あぁ、ココにいるぞ? それが何か問題でも? 設定盛りもりな容姿をしていたとしても、モブはモブなんだよぉおおおおお!!!」
「おふ……」
閑話休題。
流石に取り乱し過ぎなので、ここは一度落ち着いて、おざなりになっていた自分の名について考えてみる。
この呪いの刀に言われるまでもなく、自身の名前が無いことに違和感を感じていた。モブにはモブの人生があった筈なのだから、俺が怖いお姉さんに自作の小説のような世界に転生だか憑依させられたとしても、俺が取り憑いたこの青年がこれまで歩んできた人生がある筈だ。
そのように当初は考えた訳で、名前がわからないからと言って、勝手に好きなように名乗るのは違うだろうと、考えていた時期もありました。
よくよく考えると、作者としてのこの世界の知識は知っているものの、この俺についての事は、全く分からない。この魔族の青年のこれまでの人生について、思い出すということが起きないのだ。
「主殿? おーい」
大体、こういう転生ものていうのは、前世の記憶が蘇るのがほとんどな訳である。その為、それまで生きてきた人生もあるわけで、その世界の情報、価値観などはすでに取得しているものではなかろうか。
それが無いというということは、このキャラを俺は採用していなかったのだろう。
「え……ボクの声が聞こえていない? うそ? まさか、ボクがただの武器に戻ったってこと……!? いやぁぁああああ!? なまくら過ぎて使われなくて物置に置かれて百年、それでも運良く知性が宿ったのに……」
なんか一人語り始めたな。
「会話ができる喜びを知った矢先に、それを取り上げるのですか、神よ。それはあんまりじゃ無いですか……」
まぁ、俺を自分が小説読みたいという理由で、勝手に小説の世界を創造して俺を飛ばした挙句に、俺の心の声を小説にしてネットに晒そうとする神だからな。
まじで碌でもないな、こう冷静に評価してみると。
「ひぐ……ふぐ……」
あ、まさか。
「びやぁああぁああああ!」
「あ、ごめん。考え事していたから、無視してた。だからちゃんと声は聞こえていたから、心配するな」
「……無視……それもうイジメじゃぁあああん! びやぁああぁああああ!!」
「武器に人権があると思うなよ」
「このクソモブ野郎ぉおおおがぁあああ!」
悲しみが、怒りに反転したな。
「これで、良しだな」
「何がだよ!?」
そしてこの後、切れ味悪いキレた刀の怒りが収まるまで待ち、おれは無銘のコイツの名付けをおこなった。
「神滅鬼成覇王刀で」
「絶対に名乗りたくないんだけど!? 香ばしいというより、単にダサいよ!?」
ということで、俺はこの世界において新しく相棒を得たのだった。




