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仲良く食事?!

「吉野さん。千波君。ご一緒してよろしいですか?」


 背後から声に僕が振り向くと陸香は営業スマイルを見せる。スケベ社長だったら一瞬で判子を押してしまいそうな飛び切りの笑顔だ。ホント驚き。徹はどんな魔法を使ったのだろうか? 陸香は僕たちと一緒に食事をすることにしたようだ。今起こっていることに納得できないが事実を受け入れなければならない。


「一緒にデザート食べませんか?」


 詩乃が少しばかり震えた声で尋ねると陸香は何も言わずに頷いた。陸香は僕の隣の席の椅子を借りて座る。理由は分からないが気まずかった。他の生徒の視線を感じる。それでなくても、男子生徒と食事をして浮いているかもしれないのに、さらに微妙な立場に追い込まれたのではと詩乃が心配になる。


 自分で連れてきたくせに黙っている徹。何か喋ってくれ。机の下で足を突っつくとあからさまに眉をしかめさせる。どうやら、自分の仕事は終了と思っているかのようだ。緊張した表情の詩乃にも期待できそうに無い。ならば、僕が話題を作るしかない。


「徹って、目つきが悪くて薄情そうな顔していながら動物を飼いたいんだって」


 僕の言葉に誰も反応せず。そのまま四人は沈黙する。うわー、何か外したことを言ってしまったのだろうか?

 どきどきしながら、助け舟を求めて詩乃を見ると、バナナを食べるときに使っていた爪楊枝を口に入れたまま固まっている。それでも僕の表情に気づいたのか、ゆっくりと爪楊枝を置いて口を開く。


「今の私に言ったの?」


 えっ? 勿論、陸香に向かってだが。って、しまった。クラスの誰もが敬語を使っているのに、僕が陸香に対してため口ってのはありえなかった。しかし、でてしまった言葉は飲み込めないから誤魔化すしか無い。


「当然だろ。そう言えば、詩乃ん家で動物は飼えそう?」

「うちは飲食店だから動物を持ち込まない。というのがお父さんの方針なの。だから動物を飼うなんて論外、絶対に無理」

「犬なら外にいますから、問題ないと思いますが」


 陸香が突如、話題に入る。なんとなく刺々しい口調。詩乃の言葉が動物を飼うことの否定に聞こえたのかもしれない。


「そう言ったこともありますが、うちはうち、よそはよそって言われちゃいまして。論理じゃないんでしょう。単なる頑固なんですよ。うちのお父さんは。それにどっかのお嬢様と違って広い庭があるわけじゃありませんしね」

「わかります。頑固者を相手にするのって大変でしょうね」


 おいおい。どうしていきなり雰囲気悪くなっている?

 しかも、詩乃が微笑んでいるだけになお怖い。きっと陸香も同じような表情をしているのだろう。

 女同士の喧嘩はしゃれにならんぞ。クラス全員で無視したり何かにつけて嫌な仕事を押し付けたり変な噂を流してみたり。

 僕が頭を抱えたくなっていたとき、目の前の男は涼しげな顔で最後のバナナを食べる。


「後鷹司は動物好きなの?」


 凄いぞ、徹。ため口な上に呼び捨て。ちっとも空気読めていない。きっと耳をそばだてているクラスの女子どもはビビッているに違いない。


「好きですよ。誰かさんと違いますから」

「いやー、僕も結構、動物好きだよ」


 詩乃への言葉を奪い取る。よしこのまま話題を逸してしまおう。と思うと調子が良いように見えるが、殺意ある視線があらゆる方向から飛んでくる。プレッシャーに潰されそうになるが気にするな。そうだ鈍感力だ。鈍感であることは人間にとって大事なことだ。と、有名な政治家が言っていたような気がする。ここ数日、オシゲの様々な攻撃を耐えてこられたのは鈍感力が僕にあるからに違いない。きっとそうだ。このまま鈍い振りをして上手く雰囲気を変えよう。まあ無理だったら本気で逃げ出せばいいし。


「トシって犬が嫌いだったんじゃなかった?」


 予想外のことに陸香が僕に対して返答をした。はい? しかも何その口調。学校では知らない人の振りをしようって言っていなかったか? 教室内に飛び交う殺意のような視線を感じて僕は胸が苦しくなっていた。

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