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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

PSYCHO PALACE 天国への螺旋階段

作者: 切亡

青甘なBLです

メインキャストのモデル

カイリはメリーのガラちゃん

ミヤビは元蜉蝣の大佑くんです

描いてて何度も泣きそうになりました


第一話  ミヤビの心臓


ボクが居なくなっても知らないから…

いつも気まぐれで我儘なキミは

ふふっと可愛らしく そして少し意地悪く笑いながら

ボクに こんな事を言った

キミは生まれつき不思議ちゃんだから

そんな台詞を吐かれても全然違和感なんかなかった

ただ めちっちゃドキドキしたし

寂しい気持ちにはなったけどね


ボク達は いつも一緒だよね!?

カイリ 離れないで…


ミヤビはボクの氷のように冷たい手を

ぎゅっと握って 暖かい… そう言って笑った


ボクは涙が溢れ出し恥ずかしくて俯いた

そんなボクの瞳をミヤビは そっと覗き込み

カイリ 綺麗だ… と囁いた


ずっとボクだけのカイリでいて


うん約束する

ボクは一生キミだけのモノ

キミは永遠にボクだけのモノ


そう誓い合う気持ちに1ミリも嘘はなかった


ボクはミヤビの事が宇宙一大切だったし

宇宙一大好きだったし

宇宙一永遠に限りなく愛でて止まない存在だった


それは ミヤビだって同じだったはず


ボク達は いつも一緒だったし

それは 夏休みの間も変わらなかった


だけど 去年の夏はミヤビの心臓が暴れ出し

病院から出る事が出来なかった

ミヤビが めちっちゃ楽しみにしてた夏祭りと

花火大会も病室のベッドの上で過ごした

ドクターとナースの目を盗み

病室を抜け出した事もあったけど

あっさり捕まってしまい諦めたようだ


ミヤビとボクが初めて出会ったのは

10歳の小学校の教室だった

4年生になり 初めて同じクラスになったボク達は

一番後ろの窓際の席の隣同士

ミヤビとボクは漫画 アニメ ゲームなど

共通の趣味が沢山あった事から話が合い

授業なんてロクに聞きもしないで

毎日 お喋りばかりしてた

とは言え あの頃の男子なんて

みんなゲームとエロばかりだけどね


あの頃は楽しかったなあ

マジで めちっちゃ楽しかった

ミヤビが病気だったって事以外はね

朝礼の時間は毎日 保健室にいたし

体育の授業は いつも見学だったし

授業中に倒れて保健室行きは

日課のようなモノだったし

心臓が暴れ出して救急車で

病院に運ばれる事も よくあった


ミヤビがボクを置いて死んじゃうんじゃないかと

いつも不安でたまらなかったボクは

ミヤビと一緒に病院に行きたかったけど

担任の柊先生に病院は健康な子供が行く場所ではない

それより授業に集中しなさいと

理にかなった事を言われ どうする事も出来なかった


どうせボクなんて授業なんか聞いてなかったし…

だけど ミヤビに付いて行ったところで

ボクに何が出来ただろうか!? ボクは無力だ

ミヤビ キミを守るって約束したのに…


放課後 病室にミヤビを訪ねると

可愛いミヤビに めっちゃ似合ってる

淡紅色の点滴をしていて

ボクは心臓なんか悪くないはずなのに

ドキドキが止まらなかった

悪い病気なのはボクの方だったのかもしれない

そんなボクを尻目にキミは

いつもの綺麗な瞳でキラキラ笑い

ボク今日めっちゃラッキーだよ

いつも見学とか退屈過ぎて大嫌いだし

まだ心臓が暴れてるボクの手を

ぎゅっと握ってミヤビは言った


あのね ボクさっきカイリの夢観たよ

カッコよかったなあ

カイリはボクの夢の中で

ヴィジュアル系パンクバンド マリーの

カリスマボーカリストで

ボク めっちゃ嬉しくて震えたよ

カイリってば超人気なの

それでね ボクはマリーのドラマーなの

めちゃめちゃ素敵過ぎて

ボク夢から覚めたくなかったよ

カイリと ずっと一緒に居たかった


死んでもいいとすら思ったよ


そう言われてみればそうだった

子供の頃のボクの夢は鹿鳴館みたいな小さな箱で

誰にも真似など出来るはずのない

歌とパフォーマンスを繰り返し 真黒の墨汁を吐き

小学校高学年用の学習机の上で三点倒立をする

それが ボクの幼稚園の頃からの夢だった

そういえばミヤビの奴

心臓が悪いのにドラマーって大丈夫なのか!?

夢の中の話だけどリアル過ぎてドキドキした


イケメンドラマーミヤビは授業はほとんど受けられず

かといって塾に通ってる訳じゃないのに

デキの悪いボクとは真逆で成績はいつだってトップだ

期末テストや中間テストの結果が

張り出されるたびにミーハー女子から

キャーキャー言われていた

そして ミヤビの大好きな物ばかりで作られた

女子達から差し入れの激甘夢弁当を

毎日みんなで喰べていた


そんな平和な日常が しばらくの間 続いていた


ミヤビとボクは同じ中学校を受験し二人共合格した

席は小学校と同じで 一番後ろの窓際の隣同士

おそらくミヤビは この席じゃないと

心臓が暴れ出すのだろう


あの頃のボク達は正に青春のど真ん中にいて

毎日が楽し過ぎて可笑しくなりそうだった


いつもミヤビとボクが手を繋いで廊下を歩いていると

みんなに冷やかされた

きっとミヤビが余りにも綺麗で可愛いからなのだろう

ボクがミヤビと手を繋いでなきゃ

ミヤビは倒れてしまうから

ボクはミヤビの折れそうな程細く

透けそうな程 真白な指を

いつも絡ませて歩いていた

たまに ゲイかよ!?と嬉しい事を言ってくる奴に

ミヤビは そうだよ ボクはカイリが大好き

ボク達 付き合ってるし

カイリってば毎晩 激しくて困るよ

好き過ぎてボクが病気って事忘れてるかも

カイリってばボクを殺したいくらい

愛してるんだから などと

まるでBL漫画の台詞みたいな事を言っていた



第二話  打ち上げ花火


ミヤビが楽しみにしている夏祭りと花火大会


夏祭り当日 ミヤビのお母さんがデザインし

仕立て上げたお揃いに浴衣を着せられた


カイリくん ミヤビ よう似合っとるよ

母ちゃん めっちゃセンスええわあ

二人共楽しんできてな

そして お小遣いまで頂いて

ミヤビとボクはドキドキワクワクしながら

はぐれないように ぎゅっと手を繋いで

スキップしながら まるで子供みたいに

素敵な夜の繁華街ヘ走り出して行った


ミヤビ 走って大丈夫!?


平気 カイリがいるもん 無敵さ


ミヤビとボクは子供達と一緒に

金魚姫ちゃん掬い 射的 ボンボン釣りなどをして

遊んだ

不器用なボクと真逆のミヤビは

どれもみんな上手だった


その後はミヤビが大好きな

生クリーム入りチョコバナナクレープを喰べた


的屋のエロサイケなイカしたメイクのお姉さんが

ちょっとお兄さん 彼女めっちゃべっぴんさんやな

浴衣もよう似合っとってめっちゃ可愛いわあ

イケメン彼氏さん 自慢やろ!? と

突然ボクに振ってきた


うん 綺麗なお姉さん

カイリはボクの自慢の彼氏だよ

ボクはカイリが大好き 宇宙一大切な人だよ

毎日 ラブラブで困っちゃうよ

幸せ過ぎて頭にウジが湧きそう と

全く答えられないボクに代わって

ミヤビはまたBL漫画の台詞みたいな事を言っていた


ミヤビは中学の入学祝いにお母さんからエメラルドの舌ピをプレゼントして貰っていて それは

可愛いミヤビに とても良く似合っていた

ミヤビは艶かしく濡れた魔緑色の舌で

唇に付いた生クリームをペロッと舐め

ボクの唇の生クリームもペロリと舐めた


的屋のカッコいいお姉さんとお別れした後


カイリの大好きな綿飴屋さんに行こうよと

ミヤビに誘われボク達はイチゴ味を注文した


ミヤビとボクが1つの綿飴を

二人で分け合って喰べていると

的屋のエロサイコなイカしたヘアスタイルの

お兄さんに

めっちゃカッコイイ彼氏と

めっちゃ可愛い彼女やん

めっちゃお似合いやわ 今夜のベストカップルや

オマケしたるわ と

背中がくすぐったくなるような事を言われ

お兄さんのイチゴ畑の採れたて生イチゴと

作りたての新鮮なイチゴジャムと

イチゴジュースをサービスしてくれた


それは美しく血のような真紅の薔薇の色

まるで ミヤビの心臓みたい

ミヤビの心臓の鼓動が聴こえる

ボクはドキドキして胸が苦しくなって座り込んだ


彼氏さん 喰べ過ぎたん!?

いやちゃうな 彼女さんが可愛い過ぎて

心臓が破裂しそうなんやろな

そういや俺にも そんな時代があったわ

そん時 付き合ってた彼女が今の嫁なんやけどな


ボクの心臓が破裂したら

ミヤビは助かるのだろうか!?



ところで彼女さん めっちゃ青白いやん

いつも そんな顔色なん!?

余計なお世話かもやけど

さっきから めっちゃ気になってん

もし良ければ一度俺のイチゴ畑に遊びに来いや

今 収穫祭やっとって24時間無料喰べ放題やで

彼女さん 何処か悪いところがあってんな

なら俺の畑の生イチゴめっちゃ喰い倒したらええわ

心臓も血液もサラサラピカピカや


ありがとう カッコイイお兄さん


いつでも来いや イチゴ畑も綿飴畑も待っとるで 



暗くなり打ち上げ花火がギラギラ舞い上がると

ボクの人生と一緒だね ミヤビはそう言いながら

ボクの手を強く握って少しだけ寂しそうに笑った

ボクは花火みたいに打ち上げられて

みんなの注目を浴びながら一瞬で消えるんだ

ボクらしく美しくド派手でエロサイコで

めっちゃカッコイイ一生じゃん

そう言うとミヤビは まるで気が狂ったみたいに

馬鹿みたいに大声で笑った

あははは あはは あはははははははは

ミヤビの笑い声はボクの凍てついた脳内で

いつまでも鳴り響いていた

それは まるで8月の蝉のように

いつまでも鳴り止まなかった


ミヤビ キミの言う事は決して間違ってはいない

でも 泣きそうになるから

お願いだからそんな事はもう二度と言わないでくれ


そんなヘタレで弱虫なボクの唇に ミヤビはそっと

キスをして 泣かないでダーリン そう言って笑った



それから間もなく

ミヤビはまた教室で倒れ病院に運ばれた


隣にミヤビがいないのでボクは退屈な日常の

繰り返しだった

授業なんか聞いても分からないし

最早 聞いてすらいなかった

ミヤビがいないから会話する相手がいない

ボクにとって学校は弁当と寝る為に

行っているようなものだ

ミヤビの作ったオムライスが食べたいな

甘くて卵フワフワトロトロで

舌が溶けそうなくらい美味しかったな


そして ミヤビもまた同じ理由で

頭にウジが湧きそうになっていた

そして 夏祭りの夜の事を回想していた

エロサイコで昭和レトロな的屋

また 行きたいな

大好きなカイリと まるで恋人同士みたいに

指をキュッと絡め合ってさ

あの日 ボク達は宇宙一幸せな中学生カップルだった

来年の夏 ボクはこの世にいるのだろうか!?



第三話  ボク達の妄想


そして 12月24日メリークリスマスイブの夜

フワフワと綿飴のような甘い天使達が舞い降りてきた

この日はミヤビの誕生日だ

今夜みたいにキラキラフワフワな天使達が

舞い踊る夜にミヤビは誕生したのだろう


はぐれないように そっと凍えるミヤビの指と

ボクの指を強く絡ませて歩いた


本当はお洒落なカフェとかエロサイコなバーとか

昭和レトロな黄昏レストランとかで

乾杯したかったけど

ミヤビの体調が良くなかった為 諦めた


メリークリスマスイブの真夜中

いつもラブラブなミヤビの両親はデート中で

ボクはミヤビと二人だけでミヤビの家にいた

まるで本物の恋人同士みたい

カイリ 宇宙一大好き 宇宙一愛してる

突然フワッと綿飴みたいな甘い香りがして

柔らかい感触がボクの唇に触れた

生まれて二度目のキスは

毎日 交わしているかと錯覚する程

違和感のカケラもなかった

ミヤビの唇は魔緑色に妖しく濡れ

ミヤビの舌は溶けそうな程レアで

甘酸っぱいイチゴの味がした

唇と舌の変色は薬のせいだとミヤビは言ってたけど

それは ボクだけの宝物


ミヤビ 愛してる

宇宙一大切にするから 約束するから

お願いだからボクを漆黒の闇の中に

置き去りにしないで ボクを一人残して

天国への螺旋階段を上らないでくれ



冬が過ぎ 夏祭りと花火大会が終わって

また冬がきて

ミヤビとボクにとって6度目の

メリークリスマスイブがやってきた

この日は卒業パーティーも兼ねて

ボク達は今時の中学生らしく

6000円程度のプレゼントを交換した

ミヤビは入院中 退屈過ぎて

頭に淡紅色の虫が大量発生したらしい

そんな気の毒なミヤビにボクは鬼爆のゲームソフトを

ミヤビはボクにゲームばかりしてると

カイリは馬鹿になるからと 

エロサイコなバトル系の漫画を

大量にプレゼントしてくれた


そして ボク達は一晩中ゲームをし漫画を読み   下らない事でゲラゲラ笑って朝を迎えた



そして 7度目の春になり

ミヤビとボクは同じ私立高校を受験して

二人共 合格した

淡紅色の桜達が可愛いらしく咲き乱れ

生きてておめでとうと言っているみたいだった


男女共学なハイスクールな為

相変わらずミヤビは男女問わずモテモテ

シューズボックスの中には 毎朝 激甘ラブレターが

溢れていたし バレンタインデーには

両手で抱えきれない程の大量のチョコレート

この日には毎年必ずミヤビのお母さんが

白いフェラーリで迎えに来てくれた


ミヤビの母ちゃん マジかっけーなあ

モデルさんか女優さんみたい めっちゃ憧れる


ミヤビのお母さんはJKだけではなく

ミヤビ同様DKからも憧れの的だった

今朝 ミヤビにチョコを渡したと思われる

エロビッチ達がパパラッチ気取りで

写メったり動画を撮ったりしてた

この騒動のせいでミヤビのお母さんの記事が

地方誌に掲載された程だ

そのうちマンデーの表紙を飾るかもね と

まるで他人事みたいにミヤビは笑った


ミヤビ先輩の病気は何なんですか!?

教科書に載ってなくて分からないんです

後輩らしきハニービッチにそう聞かれたミヤビは

分からないのは頭に虫が湧いてないからだよ 

と答え絶望的に笑った


今年もまた バレンタインデーにチョコを貰い過ぎた

麗しき王子ミヤビは大変困っていた

ねー マイダーリン

ボクこんなにチョコ喰べたら

柚子裏羽ドクターに叱られちゃうよ

めちゃめちゃ大好物なのにさ

喰べれないとか悔しくてキレそう


何で!? 

マイドクターには秘密にしたら良くない!?


不可能だよ 検査でバレる

血液が魔緑色になるし淡紅色のオシッコが出るから

柚子裏羽ドクターは騙せないよ


ねー カイリ ボクのチョコ全部あげるよ


無理 ボク 生クリームとかチョコとか

バナナとか甘い物喰うとアレルギー出る


嘘だ!? だって夏祭りでいつも

生クリーム入りチョコバナナクレープ

喰べてたじゃん


ミヤビ あれは気合いと言うか

マインドコントロールだよ


カイリ ボクは いつもカイリと一緒にいるのに

カイリの事 全然解ってなかったよ

ボクはマジで最低だ


最低じゃないよ ミヤビ

秘密にしてたボクの方が絶対悪いし

ミヤビと美味しい物いっぱい喰べたかったからさ


ミヤビは少しも悪くないよ


カイリ ありがとう

カイリは いつもボクの事ばかり考えてる

めっちゃ幸せだよ


ミヤビ 幸せなのはボクの方だよ

と大声で叫びたかった



第四話  サイレントナイト


そして また退屈な日常は音もなく過ぎて行き

寒い12月がやって来た

12月24日 ミヤビとボクにとって

9度目のメリークリスマスイブ

ミヤビの誕生日でもある

この麗しきサイレントナイト

午前0時にミヤビは誕生したそうだ


ミヤビとボクは子供の頃 毎日遊んでいた

公園に来ていた


ねー カイリ ボク達もう18歳だよ

あの呪われし年からボクはもう8年も生きちゃったよ


ミヤビの心臓の時限爆弾は10歳で爆発すると

ミヤビが誕生した夜に

担当医から そう告げられていた

こんなにも怖ろしい事を話しているのに

何故ミヤビは こんなにも可愛いのだろう


ブランコで遊んでたミヤビをボクはベンチに誘い

ずっとミヤビに おねだりされてた

お揃いのプラチナリングを

折れそうな程細く透けそうな程真白に

冷たく煌めくミヤビの左手の薬指に

決して寒さのせいじゃなく

震える指で そっとはめてみた


サイズは知らないし聞いてないけどピッタリだった

毎日 手を繋いでるから

そんな事は知ってて当たり前だ

細過ぎて折れてしまわないだろうか

その華奢な指でドラマーだなんて信じられないよ


カイリ ありがとう

ボクは宇宙一幸せだよ

マリア様に感謝します


そう言うとミヤビは氷のように冷たい

ボクの指先をペロリと舐め暖かい…と言った

何故ミヤビの舌はこんなにも甘く切ないのだろう

キミが好き過ぎて狂いそう

メチャメチャにしたい バラバラにしたい

切り刻んだキミのカケラはボクだけのモノ

それなのにミヤビの指はボクの指より冷たくて

絶望の予感がした





第五話  天国への螺旋階段



そして 

ミヤビは武蔵野美大 ボクは武蔵野音大を受験し

二人共 合格した

小学校の頃から授業をほとんど受けられなかった

ミヤビは今回もトップの成績で合格したのだ


ミヤビが大学入学早々から面会謝絶だったせいで

毎日が退屈過ぎたボクは授業なんかクソ喰らえだ

一人寂しくゲーセンに行き 

JKが吐いて喜びそうなUFOキャッチャー

ばかりやった

ミヤビが喜びそうな可愛いぬいぐるみを

大量にゲットしたりカラオケで歌の練習をした

いつかカリスマボーカリストになる夢

ミヤビが居なきゃ何も始まらない

いつだって一緒だったミヤビとボク

今 ボクは一人マイクを握り

煩過ぎる照明の中で狂ったように泣き叫んでいる

いくら喚いたところでこの哀しみの行き場などない

何もかも無駄だ 愚か過ぎる


面会謝絶から解放されたミヤビの病室に

ゲーセンでゲットした可愛いぬいぐるみ達を

持って行くと 今まで まるで眠り姫のように

眠り続けていたミヤビがパッチリ目を開けて微笑んだ


カイリ ありがとう

猫ちゃん達 大切にするね

カイリも一生 大切にするね

絶対 約束する ずーっと一緒だよ

そう言ってボクの手を握るミヤビの手は

怖ろしい程 冷たかった


その6日後の事だ

ミヤビがボクの前から突然姿を消したのは

何故なの!?

馬鹿な頭で考えたところで 

脳内に住みついていた虫達が戦争を始めるだけだ

頭はまるでザクロだ


ミヤビ ボク達は ずーっと一緒なんだよ

離れ離れなんて嫌だ 約束したじゃないか!?

キミは忘れたの!? 嘘吐き…

真紫色に充血してたボクの眼球から

葡萄酒みたいな涙が溢れ滴り落ちた

お願い 誰か止めて ミヤビ 助けてよ

キミはボクを独りにして楽しいの!?

ボクを苦しめて楽しいの!?



ボクが宇宙一愛したあいつが飛んだのは

66階のビルの宇宙


きっと怖かっただろう

誰よりも怖がりだったキミが

こんなにも高い場所から飛んだのか!?

信じられない 可哀想なミヤビ

ボクの心臓はチクチクズキズキ音を立てて

壊れて逝った 痛いよ ミヤビ 助けて

此れはミヤビのハートの痛みだ

解ってやれなくて本当にごめん

一緒にいてやれなくて本当にごめん

裏切り者の嘘吐きはボクだ


キミと手を繋いで一緒に飛びたかったよ

それなら怖くなかったのにね



ミヤビの告別式では沢山の参列者が涙を堪えていた

ミヤビは みんなの人気者だったから

小学校時代の先生もクラスメートも大勢参列していた


いつもクールだった担任の柊先生も

熱血体育教師朱末も泣き崩れ

副担任の華凛先生と音楽の緋音先生に支えられていた


中学校時代の保健室の鮮魅先生も大きな瞳を潤ませ

ミヤビくんは本当に良い子でした

心臓が暴れると言って なかなか授業に参加出来ず

いつも 私の城で勉強してました

それなのに成績は いつも学年トップで

真に生徒の鏡でした

美人薄命とは この事なんですね

そう話しながら 以前ミヤビが保健室に忘れた

ハンカチで そっと瞼を押さえていた


参列者全員の御焼香が終了した後

ミヤビのお母さんからボクに一通の手紙が渡された


最後の夜に あの子が震える手で書いとってん

多分 遺書やろ思うねん

世界一大好きなカイリくんへのラブレターやねんな

最初で最後のラブレターやし

あの子の最後の気持ち 受け取って欲しいねん


ボクは分かりました と答えるのが精一杯で

震える両手で そっと手紙を受け取った


まさかミヤビが手紙なんか書いてたなんて

夢にも思わなかったよ

絵を描く事は大好きだったけど

字を書くと心臓から虫が飛び出すから嫌だ!!って

言ってたのに…

本当にボクはキミの事 何も解ってなかったよ


ボクは公園のブランコに座り

ミヤビの激甘ラブレターを読んだ


ミヤビの手紙はミヤビの心臓から流れ落ちた

血液みたいな真紅の封筒に入れられ

真赤なボールペンで したためられていた


カイリ 勝手な事して ごめんなさい

ボクが何故 飛んだかキミは知ってるよね!?

ボクはキミの手を離してしまったけど

ボクはキミの隣にいる 永遠に離れない

ボクが死んで身体が消えても

カイリとボクは ずっと一緒だよ

だから 泣かないで

今夜もボクの心臓を抱き締めて離さないでね


永遠に宇宙一大切で 宇宙一大好きで

宇宙一限りなく愛でて止まないカイリへ


ミヤビ ボクはキミの痛みを少しも解ってなかったよ

キミは いつも孤独で独りぼっちで寂しくて

哀しくて苦しくて辛くて切なくて痛くて怖くて悩んで

泣き叫んでたのに…

ボクは少しも気付かなかった… 本当にごめんな


ボクはミヤビが飛んだ六本木駅裏のメリービルの

エレベーターに乗り 最上階まで上がった


ミヤビ!? まだ そこにいるの!?

ボクを待っててくれてるの!?

キミの手は冷た過ぎて火傷しそうだよ

もう二度と この手を離さない

永遠に一緒だよ 

もう独りぼっちじゃないから

ボクが永遠に抱き締めるから 

ミヤビ 愛してる








                the end















恋人の後追い自殺は

天国で結ばれるのでハッピーエンドです

そう信じて描きました

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