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7話:初めての依頼はやっぱりアレ


 アルトの言葉にロアが首を傾げた。


「はあ? 魔力が見えないとか、そんな事あるわけないだろアルト。()()じゃねえんだから」


 ロアがそう言うのも無理はなかった。生きとし生けるものは全て、生きる為に魔力を無意識に使っている……というのがこの国では常識だった。


 魔力量の大小はあれど、生きている人間であれば必ず持っているはずの魔力が見えない……つまりないなんてことはありえないのだ。


「でも……ほんとに僅かしか流れていなくて……なんで生きているのか不思議なぐらい」

「肯定。高濃度の魔力は内部機関に悪影響を及ぼすので、戦闘時以外は魔力を使わない仕様になっている。戦闘時も生成した魔力はすぐに別の物質へと変換させるので、魔力をそのまま放出するという機能は付いていない。ゆえに、魔力のみを純粋に測るこの計測器では計測不可かと推測」

「……えっとつまり?」

「つまり、たいして魔力を使えないってことじゃねえの? 良く分からんけど……まあ、ほら、腕っ節はあるみたいだし良いんじゃないか」

「……そうかなあ。ま、これはあくまで、魔術師系の職業適性を見る為の測定だからね。気にしなくていいわ」


 アルトがそう言うと、その魔力測定器具を仕舞った。


「はい、じゃあこれで登録しておくね。私は今からこれを元にギルドカード作るから、二人はせっかくだし何か依頼を受けてみたら?」

「おお! 何があるんだアル……いやギルドマスター!」


 ロアが興奮気味にそう聞いてくるのを見て、アルトが笑った。


「今まで通りアルト、で良いわよ。そうねえ……と言っても……んー」


 アルトは今寄せられている依頼を見ていく。


「竜血草採取か、浄水晶の欠片の採取、もしくは竜の鱗拾いもあるけど……」


 それらはどれもが、この村の男ならやったことのあるものばかりだ。こういった依頼の依頼人は、山に入る暇がないほど忙しい人か、それとも山に入るのが辛くなってきた老人のどちらかだ。


「……いつもやってるやつじゃねえか。なんかこうさ、もっと冒険者! みたいな依頼はねえの?」

「言ったけど、魔物が少ないから中々そういうのがないのよね――あら、ヨルヤさんいらっしゃい」


 アルトが入口を見ると、杖をついた老人が酒場へと入って来た。日焼けした皮膚に麦わら帽子を被っている老人が笑顔で挨拶代わりに杖を振った。


「やあアルトちゃん。扉、変えたのかい? 見た目のわりに軽いし開けやすくて助かるのお」

「あらそうなの? ふふふ……それ、新入り君のおかげなの。それで、どうしたのこんなお昼に」

「それがのお、依頼を出そうかと思っての」

「ヨル爺! 俺冒険者になったんだ!! なんでもやるぜ!」


 ロアが依頼と聞き、眼を輝かせた。


「なんじゃ、ロア。お前採掘の仕事はどうした。採掘士の仕事を舐めたらあかんぞ」

「いや……それもやるけど、ほら、彼が臨時で村付き冒険者になったからさ、どうしても俺に手伝って欲しいって言ってて!」

「ふむ……あの、ロクデナシな村付き冒険者はクビになったのか?」

「そう! 彼が新しい村付き冒険者のレクス君!」


 そう言ってアルトがレクスを紹介した。


「――レクスだ」

「ワシは、ヨルヤじゃ。村の外れで野菜を作っておるんだが……最近荒らされてての」


 そう言って、ヨルヤが溜息をついた。


「あら……猪かしら?」

「うんにゃ、道具を使って跡があった。おそらく近くにゴブリン共がまた巣穴を作っておるようじゃの。あやつらはちっこい上に地下に潜っておるから飛竜も怖くないのじゃろ」

「っ!! ゴブリン!! まさか依頼ってそれか!?」

「ん? ああ、そうじゃ。昔はクワで追い払っておったが、もうそんな歳でもないからの」

「ゴブリン退治!! まさに冒険者にぴったりな依頼だ! アルト! それを受けるぞ!」

「はいはい……そしたらヨルヤさん、依頼書に記入してください。あとは依頼料も頂きますね」

「うむうむ、ちょっと待っておれ」


 そうやって、アルトとヨルヤがやり取りしているのを、ロアがそわそわした様子で見つめていた。


 しばらくして、黙っていられなくなったロアが相変わらずグラスを磨き続けるレクスへと声を掛けた。


「やべえ……興奮してきた。お前もそうだろレクス!」

「否定。任務に余計な感情は不必要」

「つまらんやつだな」

「否定。ジョークを言う機能も搭載されている」

「言ってみろよ」

「了解――あるところにバナナを耳に突っ込んでいる男がいた。それを見た少女が……」


 レクスが淡々とジョークを言うのを遮って、アルトが依頼書を二人へと差し出した。


「傾聴! 臨時村付き冒険者のレクス君、およびロアにこの依頼を託します!」

「は、はい!」


 ロアがうわずった声で返事しながら背筋を伸ばした。


「依頼は、村はずれの森の中にあるだろうと推測されるゴブリンの巣穴の特定および駆除。報酬は8000ガルです」

「おお! 結構良い値段だな!」

「規模が分からないからね。ゴブリン10匹につき更に追加の報酬金もあるわよ」

「やったぜ! うっし早速行くかレクス!」

「了解。すぐに終わらせる」


 酒場を出ようとする二人の背にアルトの声が掛かる。


「二人ともしっかりと装備は調えなさいよ。ゴブリンだからと油断しないこと!」

「分かってるって。うっし、じゃあレクス行くぞ!」

「了解」


 そうして二人が出て行ったのを見て、アルトは溜息をついた。


「まあ、レクス君いるから大丈夫だと思うけど」

「心配かい?」

「ゴブリン駆除自体は駆け出し冒険者でもこなせる簡単な依頼だから……良いんだけど……」


 何となく、嫌な予感がするアルトだった。


 そしてそれは違う意味で的中する事になる。


やっぱりゴブリン退治ですね! この世界のゴブリンは基本的に人を直接襲うことは滅多にありません。巣穴に近付いた時ぐらいですね。ですが、作物や家畜を奪われることがあるので、見掛けたら巣穴を見付けて駆除を冒険者に依頼するのが通例となっています

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ハイファン新作です! かつては敵同士だった最強の魔術師とエルフの王女が国を再建する話です! こちらもよろしくお願いします。

平和になったので用済みだと処刑された最強の軍用魔術師、敗戦国のエルフ姫に英雄召喚されたので国家再建に手を貸すことに。祖国よ邪魔するのは良いがその魔術作ったの俺なので効かないし、こっちの魔力は無限だが?



興味ある方は是非読んでみてください
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