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今日を2人の記念日にしたい

作者: 亜月

家族になる決意をしたのはいつだろう。

君がいるあたたかい場所へ帰りたいと初めて思ったのはいつだったろう。

つまらない事でケンカして、お互いに一言も口をきかない日だったかな。

それでも最後はどちらともなく謝って、二人で声をだして笑いあえたからかな。

それとも、なんでもない話を君にしたいと思った日かも。

庭のトマトが赤くなったとか、水やりをしてたら小さな虹ができたとか。

そのぐらい、小さな話。

そんな話を君とはいろんな話を包み隠さずしたいと思うんだ。少しの隠し事はしたいけど。

だってサプライズして君に喜んでもらいたいから、なんて子どもっぽいかな?

でも、君の驚いた後にしてくれるふにゃっとした笑顔がとっても好きだからしたくなっちゃうんだよね、サプライズ。


何か話さなくても君が傍にいてくれるだけでいい。

隣にいてくれるだけで、それだけで元気になれるんだ。

飾らない自分でいられるのは、親と親友と、あと君くらいだから。

意外といるな!って思ったでしょ。俺からしたら少ないんだから。

何事にも一生懸命で、友達のために涙を流せる。それでいてどこか抜けてる君だから。

声をあげて笑う君の姿が、料理をつくる君の姿が、好きだから。

もちろん絶品ばかりで、これから外食ができそうにないんだけど。

でも毎日、手料理だと君が疲れちゃうから、そんなわがまま言いません。

俺も手伝うから、なんでも言ってほしい。

いや、パエリアを作ってとか言われると困るけど。

洗い物とか、洗濯物とか、そういうのは頑張るから。

だから。だから、これからの人生を君と過ごしていきたいと思ったんだ。


高級なレストランじゃなくて、住み慣れた部屋のリビングだけど。

フレンチのフルコースじゃなくて、君の手作りハンバーグだけど。

百万ドルの夜景じゃなくて、何でもない休日の昼下がりだけど。

そんな何でもない日を二人の記念日にしたいんだ。

「俺と家族になってください」

緊張して声が上ずってしまったけど、俺の気持ちを全部詰め込んだ言葉。

君が椅子に座ってすぐだったから「今なの?」なんて笑ってたけれど、耳が赤いよ。

「私も。私も貴方と家族になりたい」

少し目に涙をためて、頬をリンゴみたいに赤く染めて君はこれまでで一番のとびきりの笑顔で答えてくれた。

俺はそれがなんだか嬉しくて「明日、君の家に行こう!」と言った。

挨拶は早いほうが良い。

「そうだね。カッコよく宣言してもらわなくちゃ」

君はいたずらを計画している子どものような弾んだ声で言った。

「何を?」

「それは決まってるじゃない。娘さんをくださいって」

君は笑いながら言う。わかった、からかっているんだな。なら。

「やってやろうじゃないか、カッコよく!」

したこともないけど少しカッコをつけて、君にそう宣言して、そして二人で笑った。

君は「期待してる」とほほ笑んでから、「はやく食べちゃおう!冷めちゃうよ。せっかくおいしくできたんだから」とフォークを手にした。

「そうだね。いただきます」

俺もフォークを手にとって。

今の俺には照れくさくて言えないけど、いつか言いたい。

教会で神様に誓ったあとに。いや、君のお父さんにビンタをもらって認めてもらったあとに。

「二人で幸せになりましょう」って。


◇◇◇


「おはよう」に「今日も一日よろしく」を。

「いただきます」に「毎朝ありがとう」を。

「ごちそうさま」に「おいしかったよ、ありがとう」を。

「いってきます」に「見送ってくれてありがとう」を。

「ただいま」に「待っててくれてありがとう」を。

「いただきます」に「いつもありがとう」を。

「ごちそうさま」に「今日もおいしいご飯をありがとう」を。

「おやすみ」に「今日も一日ありがとう」を。


毎日の小さな言葉に大きな感謝をこめて。

君に「愛してる」と照れくさくて毎日言えない代わり、といってはなんだけど。



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