ゆきと春香
5時間目が間もなく終わる。
ゆきは教科書を見ながら頭の中で復習していた。
「では、今日はここまで。」
「ありがとうございました。」
教師が教室を出たと同時に春香が駆け寄ってくる。
「ゆき!ゆき!私思い出したの!今日私の家に来て!」
「え!?何を思い出したの?」
「それは今秘密!」
「えー!気になるじゃん!」
「帰りに直接家に来て!お願い!」
「うーん…分かった。」
「ありがとう!」
試験1週間前で勉強をしたかったのだが、真剣な表情で、ぐいっとこられると断れない。
ゆきの表情を見て、春香はフッと悟る。
「チャンタ呼ぶね!」
ピクっ
ゆきの可愛いレーダーが反応した。
「チャ、チャンタ君!」
春香はニヤリとした。
「ふふ…更にデブ猫になったよ(笑)じゃあ、屋上行こ!」
「わーい!わーい!」
ゆきはもう試験勉強の事をすっかり忘れていた。
ふたり足早に階段を駆け登る。
「春香ちょっと!スカートスカート!見え過ぎ!」
「いいからー、ダッシュダッシュ!」
屋上に着くと春香は深呼吸をひとつ、呪文を詠唱し始める。
「パルニャーニャ、パルニャーニャ、トンデコイコイ、ホンゼンチャンタンヤオ!!」
春香は空に両手を挙げる。
ゆきはワクワクしながら空を見つめた。
「デブいからちょっと遅いかも!(笑)」春香がてへぺろした。
◇◇◇◇
3分後…空を走ってくるデブ猫!
「わーい!チャンタあー!」
ゆきは両手をブンブンして、チャンタを呼んだ。
3メートルの巨大デブ猫が到着した。
「今日のチャンタはちょっと早かったかも!(笑)ありがとうチャンタ♡」
春香は、キリッとした顔でチャンタのお腹の肉をモフつかみする。
「ん゛にゃ!!」
「あー!私も掴みたい!いやーん、モフモフーん!」
ゆきは、ここぞとばかりにチャンタをモフり続ける。チャンタはウットリしている。
「ゆきほんとにうちの猫達好きだよね!この子達ゆきに警戒心ゼロだよ!(笑)」
「愛してますから。」キリッ
「うふふ、じゃあ乗って!行こう。」
「はーい!チャンタ君失礼しますね♡」むぎゅう。
「ん゛にゃおん!!」
2人を乗せたチャンタは飛び上がり、空中を走り出す。
◇◇◇◇
「最高ー!ピトちゃんにも会えるかなぁ!もう2ヶ月も会ってないの。」
「あの子今発情期みたいで、ちょっと気性荒いんだ、チャンタがよく八つ当たりされてる(笑)」
「あらあら、チャンタ君私が癒してあげるー!」モフモフ!
「着いたね!気をつけて降りてね。」
ゆきの親友春香、小さい頃からずっと一緒の幼なじみ。明るくて、天真爛漫、顔も可愛くて、スタイル抜群、もう守ってあげたいオーラが凄いのである。
成績はいまいちなんだけど学校一の魔力総量の持ち主。成績優秀な生徒の平均総量の10倍以上あるって話だからとんでもない。あまりの魔力総量に男子が引いてしまって、彼氏が欲しい欲しいいつも言ってる。そしてこの国一番の大富豪、桐生家のお嬢様。
そんな大富豪の御屋敷に着いたのだ。
「春香様、おかえりなさいませ、ゆき様ようこそ、どうぞごゆるりと。」
いつの間にか背後に黒いスーツの男が立っている。
「ただいまー。」
「ヴィネットさん!おじゃしますね。」
ゆきは会釈をして春香の部屋に向かう。
ヴィネットもニコッと会釈を返す。
◇◇◇◇
春香の部屋に着き、ゆきはクッションに座る。
「相変わらず、気配が全くないね!ヴィネットさん。」
「うん、呼ぼうとするともう居るからね(笑)忍かもね。」
「あの手裏剣とか投げる人?」
「ふふふ。」
春香はニヤッと笑う。
「ちょっと信じちゃったじゃん!」
春香は本日2回目のてへぺろをして、何やら古びた分厚い本をドーン!と出した。
「何の本?」
「これ見て、ゆき。」
春香が開いたページに顔写真がいっぱい載っていた。
「この人達は誰?随分古い写真だけど。」
「この人の名前見て。」
春香が指を指す先にはかなりのイケメンが載っていた、名前は…カイエン フックスター。
「フックスター?何か見た事ある…。」
「そう!あるんだよ!」
「ええ!?早く教えてよー。」
「ふふふー、私のイケメンレーダーには逃れられないのだっ!」
ゆきの可愛いレーダーと春香のイケメンレーダーはどちらも無駄に高性能である。
こやつ勿体ぶりおる!その時ゆきの可愛いレーダーが反応した。
「ハッ!この可愛いオーラは…」
振り向くと、チャンタが元の大きさで登場。
元の大きさでもしっかりデブい。
「やーん!チャンタ君ー♡さっきはありがと、チュッ♡」
「にゃおん!」
ゆきは、チャンタを抱き上げ膝上にセット!
「えとね、この写真の人達は、ムーンブルク軍の英雄達だよ。」
「えっ!!あの5年戦争の!?」
チャンタは、ゆきの声に驚いてダッシュで逃げてしまう。
「この本は、5年戦争のことが書かれてあるんだ、お父さんの書斎にあったの。そしてこの超イケメン!フックスター様の名前を持つ、フックスター様の血筋!間違いなくイケメンが来月うちの学校に来るのだよ!ゆき君!」キリッ
「来月…あー!分かった!収穫祭!!」
「ゆき正解!!」
「凄い!ムーンブルク軍の人が来るんだね、伝説の軍だよ!よく分かったね。」
「前に配られた収穫祭の知らせの書面配られたでしょ!招待される軍の代表の名前見てて、あれっ!これはっ!って。私この本のイケメン写真の名前全部覚えてるから♡」
「凄すぎ!(笑)」
【収穫祭】とは。ゆきと春香の通う魔導教育学校に1年に一度、各国、各軍の代表が、生徒を自由にスカウトが出来る行事である。
「収穫祭のスカウトか~、卒業とか関係無しに軍就職だもんね。そういえばガリーナがスカウトされるんじゃないかって噂だよー、9年間学年別成績トップは歴代初めてなんだって。」
「私あの人苦手!酷い事しか言わないんだもん!」
「ガリーナ頭いいもんねー、お金持ちだし、だけど春香のお金持ちとレベルが違いすぎるけど…春香が凄すぎるんだけどね(笑)」
「前ね、うちの猫達の事、動物なんか家の中に入れてるの?(プゲラ)とか言ったんだよ!最悪!」
「それは酷い!チャンタ君達は家族だよね!」
「ゆき分かってくれて、嬉しい!」
来週から試験という事をすっかり忘れてふたりは盛り上がった。
そして試験が終わり、いよいよ収穫祭を迎える。
初小説です。
読んでくれた人に感謝します。