お兄ちゃん
「陽菜もヒカリさんと遊ぶことになったー」
「え。」
土曜日。
明日はレポートの提出が近いからというのもあり、お兄ちゃんはお休みらしい。そんな中、陽菜はスマホの画面を兄に見せながら、勝ち誇ったような顔を見せた。そこには、ヒカリさんのアイコンが入ったメッセージが載っていた。
「いつの間に。」
「やるときゃやるんだー。すごいでしょ。」
ヒカリさんは、神社で大きな催事がある際に、いつも手伝いへ来てくれる。そういった場で顔を合わせた際に、連絡先を交換したのだろう。
「それで、今度陽菜ね、ヒカリさんと清水坂でデートするんだ。」
「へぇ、そうなんだ。」
「うらやましい?」
「別にー」
こういう本音を素直に言えないのは、昔からの性分なので大目に見よう。「ほんとかなぁ」と言いながら、顔をのぞきこむと、目線が斜め上にしれた。お兄ちゃんの肩に座った子の顔が、お兄ちゃんの顔を見つめるのが見えた。
ちなみに私の側にいる子は興味がないみたいで、ずっと床に転がっている。
「お兄ちゃんも来る?」
兄の表情が固まったのを、陽菜は見過ごさなかったようだ。
「ヒカリさんも喜ぶだろうしー」
「いや、でもレポートあるしさ。」
「えー?今日中に終わらせちゃいなよ、頑張って。」
「でもほら、女同士なんだから、邪魔だろ?」
「えー?お兄ちゃんも、デートしたいでしょ?」
お兄ちゃんが返事をする前、間髪入れずに、
「陽菜と。」
と、付け加えた。
「・・・したくないわけじゃないけど。」
「どっち?」
「したいです。」
「だよね!」
本心はヒカリさんに会いたいのはわかっているけど、まあ許そう。
陽菜はお兄ちゃんもヒカリさんも大好きなので、二人が仲良しになることはいいことなのだ。もちろん、その様子をみんなで楽しむっていうのは外せないけどね。
お兄ちゃんは神様だって言ってたけど、私にとってはみんな友達だ。敬いの心は大切だけど、過分な態度をとる必要はないと思う。この子達は私の気持ちを察してくれてるみたいだから、よく一緒に遊ぶ。言葉は通じなくても、心が通じることはできると信じたい。
私は二人がハッピーになれるように、特等席で見物させていただこう。
「じゃあ明日は10時にうち出るからね。よろしくー」
「陽菜。」
部屋から出ようとすると、呼び止められた。
「何?」
「前、約束したろ?来週は二人で出かけよう。」
兄は、人の気持ちをくみ取るのが上手だ。そして、人と接するときは、一歩引いて生きている。争いのないように、傷つけないように。
優しいのだ。
わかってんだな。馬鹿兄は。
「しょうがないな。パフェ、おごらせてあげる。」
「ほどほどにしろよ?」
「えー」
「こないだだって残したんだから。」
「あれはお兄ちゃんの分!」
「はいはい。」
転がってた子は起き上がって、気づけば私の足下に乗っていた。抱え上げるとさも定位置のように振る舞っている。そのまま部屋を出ると、廊下はひんやりとしていたけど、なんだか心はぽかぽかしてた。
妹、カワイイよね。




