ぼくと妹
「陽菜、何を見ているの?」
昔、お母さんが、妹にそう聞いているのを見た。やはり母には、見えていないらしい。陽菜は首をかしげ、少し考えてから言った。
「なんだろ。」
僕は彼らの事を、『神様』だと思っている。それは叔父に相談したときに、「神様かもしれないね。」と言われたからだ。だけど、本当に神様かどうかは、言葉を交わしたこともないからわからない。あまり多くを伺うことも失礼かなと思って、そういった話を神様へしたこともなかったし、答えをもらえるとも思えなかった。
陽菜は感性がとても鋭い。少しぼーっとしてる様子ではあるけど、いろいろな事を察する力がある。それはいつの頃からか覚えていないけど、神様が憑いてからは、特に鋭いと思う。
「お兄ちゃん、出かけるの?」
陽菜は僕と年が離れていて、今は小学校4年生。あまり外出を好まないので、学校以外は家にいることが多い。
「ああ、ちょっとね。」
「ふーん、デート?」
鋭い。
「デートって言うか、ヒカリさんにお参りへつきあってほしいって言われてるだけだよ。」
「じゃあ、陽菜もいってもいい?」
「・・・お土産買ってくるから、待ってて?」
「虎やの和菓子。期間限定の。」
「・・・わかった。」
この子は本当にしっかりしている。足下を見ると、彼女の神様は僕の足にくっついており、憑いてこようとしているみたいだが、僕の神様がそれを阻止しようとしてくださっている。ありがたい。
陽菜の神様は僕の神様と違い、人型ではなく、ペンギンのような、卵のような、そんな形をしている。きっと動物が由来の神様なのだろう。と、僕は思っている。
「お兄ちゃん。」
「何?」
「今度、陽菜ともデートしてね。」
「神社に?」
「どこでもいいよ。」
「あいてたらいつでもいいよ。行ってきます。」
「・・・いってらっしゃい。」
僕と陽菜は神様が見えている。だからなのか、陽菜は見えない人といるより、僕といる方が落ち着くみたいだ。一度見えることを話したときに、笑われたのが悲しかったという。学校で遊ぶ友達も、今のところいないみたいだった。だからかもしれないけど、家では彼女の神様と、よく遊んでいる。言葉は通じないみたいだけど、とても仲がいい。時折、神様の友達なのか、別の神様が遊びに来ている事もある。宴会のような時もあるもんだから、見える僕にはどっきりだ。
見えない人には、滑稽に見えるかもしれないけれど。
「あ、そうだ。」
僕が振り返ると、そこには少しだけしゅんとした妹がいた。僕の気のせいかもしれないけれど。すぐにぶっきらぼうな妹になった。
「何?」
「新しい喫茶店できたんだ。今度一緒に行こう。」
「・・・うん。楽しみにしてるね。」
笑顔を浮かべた妹を背に家を出ようとすると、足下で僕の神様も笑っていた。
妹はかわいい生き物です。
私にとっても宝物です。




