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友人

「ユウスケさん。こんにちは。」

「ヒカリさん。」


 振り返ると、つややかな黒髪、僕より頭一つ分背が低く、かわいらしい容貌の女の子がたっていた。彼女は僕の古くからの友人で、ご近所さんで、氏子のお子さんでもいらっしゃる。


「こんにちは、今日はお参りですか?」

「はい、兄の公務員試験が近いんです。」

「ああ、なるほど。」


 うちの神社には三柱の神様がまつられている。一柱にあるのが、勉学にゆかりのある菅原道真公だ。ほこら自体は小さいが、このあたりにすんでいる方は皆お参りに来てくださる。


「せっかくたくさん勉強しているのに、なかなか本領を発揮するのが下手なんです、うちの兄は。」

「そうでしたか。いろいろと気を張ってしまうんですかね。」

「もとより心配性ですからね。もっと堂々としていてほしいものです。」


 そう言ってヒカリさんは少しむくれた表情を浮かべた。彼女の年は僕より二つ下なので17歳だったかな。元々大人びているのに、時折見せる表情はとてもかわいらしい。

 ふと彼女の肩の上をみると、彼女に憑いた神様が僕をじっと見つめているのがわかった。僕と目が合うと、照れているのか、彼女の背に隠れてしまった。奥ゆかしい神様だ。


「ん?」


 気づけば僕の肩に乗っている神様も僕の顔をのぞき込みにやけている。両手で口元をかくしているけど、バレバレだ。そんなに面白い顔してるかな?


「どうかしましたか?」

「いえ、なんでもありませんよ。」

「そうですか。・・・あの、ユウスケさん。」

「はい?」

「その、ご迷惑でなければなのですが、その、あの、今度一緒に・・・」

「・・・一緒に?」

「は、はい!えっと、そうあの、お守りを!兄に渡すお守りを、選んでいただきたくて・・・」


 顔を真っ赤にしながら、ヒカリさんはそう言い切った。いつの間にか二柱の神様は僕らから降りて、地面に並んで座ってこちらを眺めている。仲がいいなぁ。


「お守りと言っても、うちの学問成就のお守りはあまり種類がないのですが・・・」

「えっと、そうですよね・・・ははは」


 少し考えてから、一つ思いついたことを話してみた。


「それなら、今度一緒に、学問で有名な神社にお参りに行きませんか?」

「え!」

「うちの神様は懐が広いですから、きっとケンカはしませんよ。」


 多くの神様を参拝すると、神様同士がケンカをする、という伝承がある。僕自身の考えだけど、それでケンカをしてる神様を見たことがないから、たぶん大丈夫、だと思う。


「ユウスケさん、大学もあるのに、忙しくないですか?」

「大丈夫ですよ。次の日曜日はどうですか?」

「はい、あいてます!」

「それならよかった。」

「ありがとうございます!」


 気づけば僕とヒカリさんの神様はスキップをしながら僕らの周りを回っていた。神様たちも会えるのが嬉しいのかな?


 その後、ヒカリさんから連絡先をもらい、待ち合わせの時間を決めた。神社の手伝いはあくまで手伝いなので、神主である叔父さんに相談すれば何とでもなる。


「それではまた。」

「はい。また。」


 お互いに会釈をしたあと、ヒカリさんは方向を変え、家路についた。

 僕はというと、そんなヒカリさんをしばらく見送ってから、振り返りつつ神様を見た。

 いつの間にか僕の肩に戻った神様は、とてもにやけた笑顔を浮かべてしていらっしゃる。


「友人ですよ?」


 聞いているのか、いないのか。神様は目を閉じて鼻歌のようなモノを歌っていらっしゃった。

 友人ですよ、いまはまだ。

出掛かった言葉は胸にしまっておくことにした。


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