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かみさま


「よう、お参りくださいました。」


 そう言って、御朱印を渡すと、女性は笑顔で礼を返してくれた。

 彼女の肩に乗った神様も、彼女の様子をみてとてもうれしそうに笑みを浮かべた後、僕へ手を振ってきた。

 振りかえそうと思ったのだけど、ほかの方が驚いてしまうだろうから、僕は軽く会釈をして返した。


 僕には、物心ついた時から神様が見えている。

 ほら、あの子も神様憑き。あの人も、あの方も。

 見える人はあまりいないみたいで、僕は自分以外に一人しか知りません。

 特別な力、なんてたいそうなことではないと思いますが、ありがたいことに特別なご縁をいただいたみたいです。


 神様にはご自身同士で特別な言葉がある様子で、僕には何を言っているのか、わかりません。ですが、不思議なモノで、表情や話し方でどうしたいのか、わかるときがあります。

 お茶を取り替えてほしいときや、お供えものがおいしくなかったとき。

 そういったときのご様子は、失礼かもしれないけど、とても可愛らしくていらっしゃる。

 それと同時に、こういったご縁を頂いた事を、嬉しく思う。


「お茶を入れてきますね。」


 僕は自分でお茶を入れてくるときには、必ず自分の分と神様の分とを用意する。小さな茶碗に小さな茶菓子を添え、そっとテーブルに置いておくと、神様はテーブルによじ登り、おいしそうに召し上がっている。不思議なもので、お茶碗の中身はきれいになくなるのだが、お菓子に関しては一口食べると十分らしく、残りを僕に渡すそぶりをする。食欲というモノは、さほどないご様子だ。


「いただきます。」


 そう言って僕は自分で用意したお菓子と、お茶と、神様からもらったをお菓子を頂く。氏子の方から頂いたお茶はとても味わい深く、心を静かにさせてくれる。神様も、お茶のにおいが心地いいのか、茶碗のそばで目を閉じて楽しんでいる様子だ。

 

―静かなひとときが終わった後、僕の前に参拝客がいらっしゃた。


「御朱印をいただけますか?」

「はい。少々お待ちください。」


 神社によっては神主が御朱印を書いていらっしゃることもあるのですが、この神社では僕も書くことを許していただいている。家では昔から習い事で習字をしていたし、お褒めの言葉をくださると、書けてよかったと思う。


「はい、お待たせしました。」


 その方は御朱印帳をお返しすると、謝辞を述べてからお辞儀をしてくださった。そのとき、その方の頭の上に座っていた小さな神様が、落っこちそうになってはしっと髪の毛を掴んだのが見えた。思わず笑ってしまいそうだったので、僕も礼がてら頭を下げた。


 多くの神様は見ただけではどんな方かわかりませんが、少し怖そうな神様もお見かけしたこともあります。どうやら憑かれた方は、心穏やかでない様子で、見ているこちらも胸が痛くなる。

 だからと言って、僕にできることはないのですが、ただただその方にとっていい方向へ事が進みますようにと、心のなかでお祈りをする。

 時々、その神様が憑いているのは、その人が神様を呼び寄せてしまったのか、それとも神様が憑いたからそうなったのか、考えることがある。だけど、考えても仕方のないことかもしれない。

そうしたときに、僕のそばにいる神様を見ると、笑顔を向けてくれます。僕のところにいる神様は、いつも僕が見つめると、笑顔を返してくださる。その笑顔を向けられるたびに、このご縁を大切にしたいと思う。



クリスマスなので明るいものを載せたかったので、載せられて良かったです。


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