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第五話「英雄の遺産~討魔玉と取引~」

「そいつは『迅雷晶玉じんらいしょうぎょくアガツマ』……英雄の魂が宿ると謂われる秘宝『討魔玉とうまぎょく』の一つだ」

「トーマギョクぅ?」

「そうだ。平安から大正にかけて人類の天敵だった魔物の一派を根絶した英雄たちの魂が宿り、手にすれば対応する英雄の力を得るとか何とか」

「つまり俺のこの姿は英雄のそれ、俺もまた次代の英雄ってわけか!

 平成最後の英雄……新時代のスーパーヒーロー……悪くねえ! 寧ろいいぜぇ!」

「まあ、適合すればだがな」

「テキゴー、だと?」

「おうよ。何せ英雄の力だ、そう安かねぇさ。どんな奴でも一応力は得るが、そっから先が問題だ。

 相応しいなら前に進めるが、そうでない奴は最悪死ぬ」

「ほう、面白え……」

「カッコつけやがって……迷信に聞こえるかもしれねぇが、実際に記録も残ってる。

 事情に詳しい奴らが言うには、まるで石か、そこに宿る英雄の魂が持ち主をフルイにかけるようなもんだそうだ。

 つまり、討魔玉を手にした奴の選択肢は二つに一つ。

 力のために持ち続けるか、手放して保身に走るか。

 個人的には手放すのをお勧めする。先に言っておくがこれはお前へのディスり抜きにの話だ」

「俺へのディス抜きにだと?」

「おうよ。何せ前例からして死んだ奴のが多いし、その石に対応する我妻あがつま ひろって男は英雄の中でも特に重要な三人の内の一人なんだが、

 端的に言っちまえば明らかに戦場向きじゃねえ性格の、まして英雄とは言えねえような男でな?

 まあそれは初期の話で、後に成長し英雄の名に相応しい傑物になり、心優しく愛に生きた男として名を馳せたそうだが……」

「そ、そうだが、何だ?」

「それにしちゃ~生涯通してギャグみてーな逸話が多くてなー。

 当初は影薄いから記録者が話盛ったとか、だから正確な情報が少ないとか言われてたんだが、

 記録漁ったり関連人物の子孫に聞き込みとかしたらほぼ全部事実だったみたいな結論になってな。2017年に」

「去年じゃねぇか!」

「精神成長してもめんどくせぇ性格で、特に引退後は生来のお人よしと女好きに磨きがかかったそうだ。後世にいい影響を及ぼす一方、同じくらい悪影響も及ぼしたそうだぜ」

「プラマイゼロかよ!」

「晩年は不摂生から生活習慣病を幾つも患ったがお人よしだからか無駄に人望があって、

 周囲の支えで延命されまくり、他のどの英雄より長生きした挙句大勢に看取られながら幸せそうにぽっくり逝ったそうな」

「……」

「どうだ、石を手放す気にはなったか?」

「そ、それは……だが、英雄がどんな性格だろうと石には直接関係ねぇんだろ!? 問題なのはそのアガツマってのがどうだったかじゃなく俺自身がこれからどうするかってことだ! なら俺ぁこの石を手放さねぇ!」

「いいのか? 最悪死ぬかもしれねーんだぞ?」

「俺は元々死人みてーなもんさ、この力がなけりゃあな!」

「あっても実質死人だろ」

「うるせぇ! とにかく俺は石を手放したりなんかしねぇ! 手放しゃただのオッサンに逆戻りだ!」

「世のありとあらゆるただのオッサンに謝れ」

「なんでだよ! つーか何でお前は俺にそう石を捨てさせたがるんだよ! お前にゃ関係ねーだろ!?」

「バカか、関係アリアリのアリーヴェデルチだっつの。俺の話聞いてたか?

 俺は上からの命令でその石ころを回収しに来たんだ。お前の生死は問われてねえ……。

 よし、取引だ」

「取引ぃ?」

「おうよ、悪い話じゃねえぞ。お前は大人しく俺に石を渡して、あの一家を襲うのを諦めりゃいい。

 そしたら俺がウチの上司に相談してやるよ。お前に幸せな新しい人生をプレゼントしてやってくれってな。

 何ならウチに来てもいいぞ。俺も元々は冴えねえただのカタギだったが今じゃこうして毎日楽しく、決して楽じゃねえが最高の日々を過ごせてるからな。

 こうして話しててわかった気がするんだ。お前は思ったほどクズじゃねぇかも、どころか磨けば光る原石かもしれねーってな。


 どうだ、悪い話じゃ――

「ふざけんじゃねえぜっ!」

「……」

「石を渡せだと? あの女を諦めろだと? 改心してまともに働くか、てめえの部下になれだと!?

 ナメんなよんの毛玉畜生がぁ! こちとら働きたくなくて、楽したくてこの道選んでんだ!

 この世で一番偉い、無敵の存在になって生涯チヤホヤされながら遊び暮らしてーって、その想いだけでここまでやってきたんだ!

 それを諦めろだ? できるわけねーだろふざけんな! 俺は誰の指図も施しも受けねえ! 唯一絶対の男として歴史に名を刻み、世界のルールとして君臨してやるんだ!

 まして、お前みてーに騙す気満々の態度で語りかけてくるスカした野郎なんて誰が信用するもんかよ!

 俺に命令しようってんなら力で示してみやがれ! いや、力を示されようと俺はお前の命令なんざ聞かねえぞ! 例え死んだとしてもな!

 わかったらさっさと殺しに来い! いや、その前に俺が殺してやるぜーっ!」


 三治は全身の筋肉を膨張させ、両腕を掲げながら叫ぶ。


「これが! 俺の! 本っ気、だあああっ!

 破滅の、サンダーデストロイヤァァァァァァァ!」


 三治の全身から放たれた電撃は辺り一面を焼き払う。

 当然着ぐるみ男もその巻き添えをもろに食らい、雷のブルドッグは勝利を確信した。

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