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第三話「まさかの展開~少し捻ってこっから本番~」

(さあ来い、ゴミ)


 カズヤが死を覚悟した、その刹那


「言ってろ、雑魚が――


 三治の姿が、消えた。


「――え?」




『どうだ?』

「ええ、大丈夫。ちょっと座標設定に手古摺ったけど。

……あの家族、大丈夫かしら」

『人事は尽くしたんなら天命待つしかねえだろ』

「まあね……で、そっちは? 邪魔が入ったんでしょ?」

『ああ。時間かかったぜ』

「そんなに強敵だったの?」

『いや、話が長かった』

「……その後は?」

『即死』

「ああー……」

『雪玉でな』

「ゆ、雪玉?」

『おう。なんかバイクで突進してきたから適当に雪玉投げたら顔面命中してよ。

 視界不良から暴走の末、公衆便所に突っ込んでバイク諸共爆発炎上……即死だろうな』

「笑えないねぇ。まあその辺は私から連絡しとくからさ、あんたは」

『ああ、奴を追う。座標は言われた通りの場所で間違いねえな?』

「うん、大丈夫。……頼んだよ。これ以上放置してたらとんでもないことに……」

『……何とでもするさ。断言はしかねるがな』




「……?」


 カズヤは困惑していた。

 あれは一体どういうことだ。


(……状況がよく呑み込めない……)


 目の前で臨戦態勢だった敵が、音も無く忽然と姿を消した。

 まさに一瞬の、信じ難い出来事。


(とりあえず……助かったん、だよな?)


 現に敵の姿はどこにも見えず、自分も妻も無事なようだった。

 子供部屋が心配だったので少し見に行ったが、ただアサコがベッドで寝息を立てているだけだった。

(見落としも在り得るが……異変なら部屋の警備システムに反応があるはずだ。

 少なくともさっきのあいつがアサコに手を出す、なんてことは不可能だろう)


 カズヤは改めて脳内で情報を整理しようとしたが、上手く行かない。

 ただそれでも、家族が無事なのは確かなようで。

 気付けば痛みも消えていた。


 安堵したカズヤは、敵が消えて尚恐怖に震える妻を優しく抱き締める。

「ああ、ごめんな……怖かったよな……。

 ごめんな……助けてやれなくて……ごめんなぁ……」




『というわけでね』

「承知した。先程より現場にて検証中だが……

 厠は全壊しており修復不能だ。

 瓦礫や死体の処理が済み次第、周辺住民への記憶処理を実行する」

『トイレはどうするの?』

「現場を封鎖しつつ自治体の指示を仰ぐ予定だ。

 然し信じ難いな、あれがあの様な者の手に渡るなど……情報は確かなのか?」

『こっちでも最初は懐疑派が多かったんだけどさー、

 元々怪しい奴だったし一応ってことで試しに足跡探ってみたら証拠が次々と』

「そうか……ならば信じよう。


 さて、もう一仕事だ」





「……っ、んん?」


 突如屋内から消えた三治は、気付くと暗い雪原に投げ出されていた。


「どういうこったよ、こりゃあ。

 俺は一体どうしちまったんだ?」


 足元は雪、積雪量は少なく下はアスファルトかコンクリートと思われた。

 辺りは真っ暗で、街灯の一つもない。

 光源は夜空の月のみ。ただその光は強く、ある程度の視界は確保できた。


「辺りが見えるんならまだ大丈夫だ。

 何とでもなる。終わったわけじゃねぇ。

 とにかく人里で体制を整えてかねーと」

 懸念はあの着ぐるみの男だが、きっとバイクの青年が足止めしてくれているだろう。

「そうさ。あの兄ちゃんがやってくれてる。

 仮に逃げおおせてたとして、まさかこんな所まで追ってはこねーだろう。

 万一って時でも俺にはアレがある。あの力がありゃ拳銃ハジキなんぞ怖かねぇっ!」

「アレって何だ?」

「アレが何かだと? 聞かれて素直に答えるバカはいねーぜ!

 んなオメー、なんか黄色い石ころのお陰で超能力手に入ったなんて、

 そんなこと言えるわけが――うおえああっ!?」

「遅えだろ、気付くのがよ」

 思わず飛び退く三治。

 視線の先に佇むのは、二足歩行するウサギ――あの着ぐるみ男だった。

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