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第一話「惨劇の幕開け~展開早すぎて情報量クソ多いわ~」

「私、妹か弟が欲しい! お姉ちゃんになりたい!」


 師走。クリスマスイブ。

 両親からクリスマスプレゼントの希望を聞かれた里井アサコの答えは実にシンプルだった。


「そうか……じゃあ、頑張っていい子にしてるんだぞ」

「クリスマスには間に合わないかもしれないけど、サンタさんがきっと叶えてくれるわ」

「うん、頑張る! 頑張っていい子にして、いいお姉ちゃんになるっ!」


 微笑みつつ、新婚の里井夫婦は互いに顔を合わせ照れ笑いを浮かべた。

 他ならぬ我が子の願い、叶えられずして何が親か。

 頑張るのは寧ろ此方の方だなどと思いつつ、夫婦は煌めく未来に思いを馳せる。





『頑張っていい子にして、いいお姉ちゃんになるっ!』

「ふっへっへっへっへぇ……」


 光なく凍てつく闇の中、下劣な笑いが木霊する。


「そうかいそうかい、頑張るかい……ならおじさんも頑張らねえとなあ……ぐっひひひひひひ……」

 画面越しに一家を覗き見る、醜く不気味な中年男。

 髭は白く、防寒服は赤く、宛ら邪悪なサンタクロース。


「待ってろよぉ、すぐにプレゼントしてやっからなぁ……」

 ぬっと立ち上がった男は、手にした瓶数本の中身を一気に飲み干す。

 そして足元の鼠を捕まえ、生きたまま口に放り込んで咀嚼し嚥下すると、地の底から響くようなゲップを残して満足げにその場を後にした。


 かくして男、油上三治ゆがみみつはるは計画を開始する。



「あそこの家だな、間違いねえ」


 雪の夜道、物陰に潜んだ三治は里井家の邸宅を見据えほくそ笑む。


「思えば今まで、俺の人生はクソだった。だから生まれ変わってやるのさ、この聖なる時になあ!」

「……随分と楽しそうだな」

「おうよ、そりゃ楽しいさ。寧ろこの状況を楽しまねえでどうすんでぇ」

「具体的にゃ何をする?」

「決まってんだろ、襲うんだよ。あそこの娘はプレゼントに弟妹きょうだいを欲しがってる。

 だから俺がくれてやんのさ、最高の弟妹きょうだいをなっぼげえ!?」


 刹那、三治は吹き飛んでいた。どうやら殴り飛ばされたらしい。


「――ってぇ、の、クソっ……誰だ!? いきなり何しやがるっ!?」

 すぐさま起き上がった三治は思わず怒鳴り散らす。

 見れば背後に、ウサギの着ぐるみを着た男が佇んでいた。


 三治は思った。

 先程いきなり話し掛けて来たのはこの男だろう。

 そしてまた、殴ってきたのもこいつに違いない。

 怒れる三治は男をぎりと睨み付けた。

 彼の眼光はあまりに鋭く、格上さえ臆して動揺の一つもする程に恐ろしい、

 筈、だが……


「季節外れの蚊が居たんだ。許せ」

 対する着ぐるみ男は一切の動揺も見せず、平然と宣うのである。

 これには生来気の荒い三治、当然激怒せずにはいられない。

「この雪ん中蚊がいるわきゃねぇだろ適当言うなボケェ!」

「夜中の住宅地で大声出すな。近所迷惑だ常識ねぇのか」

「ひいっ!」

 着ぐるみ男の言葉は単なる諭しに過ぎず、よって三治が怯える理由にはならない。

 ならば何故。その理由は実に単純、着ぐるみ男が三治に銃を向けたからに他ならない。


(ま、間違いねえ。ありゃ実銃ホンモンだあ……!)


 その昔、裏社会を生きていた三治は、銃というものを知っていた。

 彼にとって銃とは、実に恐ろしく、また忌まわしいものであった。

 恐怖、苦痛、絶望。負の感情は燃える闘志の熱を奪う。


 三治は逃げ出したくなった。

 だが……


(あ、足が……動かねえっ!)


 恐怖からか、どうやっても足が動かないのだ。

 万事休すとはまさにこの事か。

 ああ、さらば栄光の日々よ。

 三治は絶望し、死を覚悟した


――が、その時である。



「待ちな」



 三治の眼前に、一人の男が現れた。

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