おまけ:旅立ち
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ありがたやありがたや~
決着から10日後。
今日はダニエルが西大陸へと旅立つ日である。
クロスター公爵邸の玄関ホールに、ダニエルを見送りに来た者達が集まっていた。
「じゃあ、行ってくるね。」
「忘れ物はない?やっぱり乗船場まで一緒に行きましょうか?心配だわ。」
母親がダニエルへと心配そうに声を掛ける。
「大丈夫よ。ほら、従者のベンも居るのだから、彼が強いのは母さまも知っているでしょう?心配し過ぎなのよ。」
姉のバーバラが、母さんに言い聞かす。
バーバラはダニエルの留学の話を聞いて、少し遠い嫁ぎ先の領地からわざわざ見送りに来てくれたいた。
「そうね。着いたら手紙を頂戴ね。」
「はい、沢山出しますね。」
母親は名残惜しくダニエルの両手を握っていたが、そっと手を離した。
母達の後ろでお別れの順番待ちをするのに立っていたマーガレットへ声を掛ける。
もちろんマーガレットの隣にはウィリアムが陣取り、その反対側にはキャサリンがいた。
婚約決定のあの日以来、いつも通りの3セットだ。
「マーガレットも、見送りに来てくれてありがとう。」
ダニエルがマーガレットに話しかける。
「フフッ、当たり前じゃない。昔から仲良くしていて、もう姉弟のような存在なのに。これからどんなに大きくなるのか、旅立ちを目に焼き付けないと。」
「姉弟か…………。」
ダニエルが、マーガレットの両脇に居る実の兄と姉を交互に見る。
どうした?といった顔で、2人がダニエルを見る。
何でもないと、2人に微笑む。
「あっ、これ、ダニーの好きな著者の本。新刊が出て居たから買っておいたわ。旅の途中にでも読んでね。」
マーガレットが思い出したように、餞別の本を差し出してきた。
「流石、メグありがとう。準備に忙しくて買いに行く時間がなかったんだ。西大陸まで20日ほど掛かるから読ませてもらうよ。」
本を受け取ろうとして、ダニエルの動きが止まった。
マーガレットが不思議がっている。
「ねえ、メグ。」
「何?」
「もしも、ウィル兄さんの事が嫌になって、婚約を破棄するって事があったら、僕の許へおいでよ。僕がメグを貰い受けるから。」
そう言うと本を受け取る。
ダニエルが唐突に言いだした言葉は衝撃だったようで……。
いち早く反応したのはこの人、ウィリアムだ。
「おい、ダニー何言いだすんだ。」
やっぱり食いついたと思いながら、ダニエルは話す。
「フッ、ウィル兄さんは知らないだろうけど、僕とウィル兄さんの好みは似ているんだよ。僕だけじゃない、うちの家族は皆、ウィル兄さんと好みが一緒なのさ。」
そうダニエルが言い、ウィリアムが周りを見回すと、家族全員が頷いていた。
ウィリアムが深いため息をつく。
「それでも、メグはやらん。もしもは無いから期待するな。」
「アハハ、分かった。期待h少しだけにしておくよ。」
「だから期待は……はぁ、元気で行ってこい。へこたれるなよ。」
ウィリアムは弟の頭を撫でた。
ここ数年で、皮肉一杯で話しをするようになってしまったが、こう言う想いが隠れていたのかと気づかされる。
それでも我が弟が、可愛いのは変わらないのだ。
「ウィル兄も西大陸へ行っちゃえばいいのに。」
ボソッとキャサリンが毒を吐く。
キャサリンは、秋に隣国へ留学することの決まったマーガレットについて行きたかったのだが、ウィリアムが全てを整えて隣国へついて行くことを瞬く間に決めてしまった。
その為、クロスター公爵は子供たちが誰も家に居なくなってしまうのは嫌だと嘆き、キャサリンの留学は許可しなかった。
その事でキャサリンはウィリアムを恨んでいる。
「西大陸に、俺は行かない。行くのはダニーとフレデリックだ。あいつもいつの間にか話を進めていたからな、春には医学の勉強をしに行くそうだが、あいつこそ大丈夫なのだろうか。」
ウィリアムが心配そうな顔をしていると、
「ケント様にはテオがいるから、大丈夫よ。」
とマーガレットが言う。
すると、間髪いれずに、
「ああ、メグの初恋の人だから心配なんていらないな。」
と、面白くなさそうにウィリアムが言った。
ウィリアムの言葉にカチンに来たキャサリンがキレる。
「バカ兄様、やっぱり代わりなさいよ。私がメグと留学するわ。そんなんじゃ任せられない。」
「おい、言っただろう?俺は仕事で隣国に行くんだって、だからいい加減お前は諦めろ。」
ウィリアムの返しに、ギィーーーと歯を噛み、キャサリンが悔しそうに兄を睨みつけている。
その様子をみて、ダニエルがマーガレットに自分を売り込む。
「ね、早く僕の所においで、一番安心だよ。」
「フフッ、考えて置く。」
マーガレットが可笑しそうに笑い、返事をした。
このやり取りを聞いた2人が、声を揃えてこう言った。
「「行かせないよ!!!」」
そのハモりに皆が笑った。
その後、ダニエルは早く行けと急かされて、馬車へと乗せられた。
走り出す馬車に向かい、見送る者達が声を掛け、大きく手を振る。
新天地への期待と名残惜しい気持ちを持ちつつ、去って行く。
この後、この場面を数回繰り返し、マーガレット、ウィリアム、フレデリックと皆、それぞれ国外へと旅立つ。
そして、キャサリンのみがアドラシオン国へと残った。
未来を知らぬ彼らが去ったこの国で、不穏な企みが動き始めていく。
そして、キャサリンは、思わぬ大きな流れに巻き込まれ、唐突に婚姻を結ぶこととなるのだが、それはもう少し先のお話。
今の彼らには想像もできない程、驚く出来事となるのである。
おしまい。
この物語に出てくる人物達が、オリヴィアの物語へ登場予定です。
そちらを投稿した際に、あれ?アイツだ、出てるじゃん!?と、気づいていただけたら嬉しいです。




