俺、デートする(後半)
呼んでくださりまして、ありがとうございます。
デートする 前半からの続きになります。
丘に着くと、まずはウィリアムが下りて、そのあとマーガレットを抱える。
ああ、このまま抱きしめていたい。
キスもしたい。
結婚したい!!
腕の中の彼女の感触を噛みしめながら、ウィリアムは名残惜しそうにマーガレットをゆっくり地面へと下ろす。
その後、ウィリアムは馬に水を飲ませたあと、木に結び休ませた。
その間に、マーガレットが草の上にシートを引き、昼食の準備を整えていた。
先程、髭オヤジが用意してくれていた物だ。
バケットにはパンと甘いシロップ、それからソーセージにチーズ、揚げた芋が入っていた。
水泳と乗馬後のかなり空腹に景色の良いところ…好きな人の隣で食べるご飯は、格別に美味しいものになると認知された。
ウィリアムは、この厩舎に一人で来た際には、これを用意してもらう。
甘い果実シロップを炭酸水に溶かしたものを飲むのがお気に入りなのだとか。
「開ける時に噴き出すから気を付けて。ほらね、慣れないと難しいんだ。」
シャララーン。
ウィリアムがそろりそろりと開け、少しばかり噴き出す炭酸水を上手くかわしコップへと注ぎ、飲み物を作ってくれる。
マーガレットに完成したものを手渡すと、
「フフッ、ありがとう。」
と、嬉しそうに返した。
ヴッ、笑顔で俺を殺しに来ている……。
待って!俺、待ては出来る男だけど、それ以上の誘惑は自制できなくなっちゃうよ。
メグ、そろそろ、君の可愛いは俺への最大の攻撃だってことに、気がつこうか!?
そんなことを思いつつ、太ももを指でつねり、気持ちを押さえて話を続きる。
ウィリアムは、この飲み物は髭オヤジが教えてくれたのだと話す。
今日はあんずのシロップでが用意されており、かなり甘めで自分好みであるとウィリアムは教える。
一口飲むと、炭酸がシュワシュワと弾けて楽しく、とても甘くて美味しかった。
飲んだ後の満面の笑みのマーガレットを、愛おしそうに眺めるウィリアム。
あああああ、ここに連れてきて、本当によかったー。
あの髭オヤジに今日ほど感謝した日はないわ。
髭オヤジに感謝するウィリアムの横で、マーガレットが嬉しそうに話し出す。
「この味。サッパリしていて酸っぱすぎず美味しいわね。他には何のシロップで飲んだことあるの?」
「バルウィンの奥さんが市場で働いているから、余った果実を使って色々作るらしいんだ。レモン、葡萄や林檎もあったぞ、外国の商人から交換しものとか珍しいものも時々あって、ウメと言う秘境の果実やグレープフルーツという南地方の果物も美味しかった。」
シャララーン。
「飲んでみたいわ。お願いしてみようかしら?」
「気に入ったの?俺と同じものを気に入ってくれるなんて嬉しいな。メグの為ならば、すぐに頼んでみるよ。」
シャララーン。
ニコニコしながらサラッと君のためとアピールして話すウィリアムに、マーガレットは少し照れてしまう。
「あの、ウィリアムはなんで乗馬に来ようと思ったの?話をするだけなら、家でもよかったと思うんだけど。」
マーガレットは引っかかっていたことを聞く。
「俺がメグと2人だけで、ここに来たかったんだ。乗馬対決の時には誘って怒らせてしまったし、対決ではなくてメグと乗馬を楽しみたかったんだ。」
「そうだったの……私、ウィリアムの気持ちを無視して、ごめんなさい。えっと、それでどうだった?楽しかった?」
マーガレットは良い返事をもらえないと思っているのか、恐る恐る聞く。
「ああ、凄く!楽しかったよ!メグは?」
シャララーン(最高峰歓喜バージョン)
返答の瞬間、無邪気に笑うウィリアムからマーガレットは一瞬、目が離せなくなった。
マーガレットは直ぐに我に返り返答する。
「あっ、うん。私も楽しかった……うん、凄く、凄く楽しかったわ!」
心からの言葉だった。
「そうか良かった。うん、本当に良かった。」
シャララーン。
そうウィリアムは胸を撫で下ろしながら言うと、深く息を吐きだす。
やっと、安心出来たようだ。
「あのね、水泳対決をしている時に、昔、ウィリアムとポーカーの対決をした時の話をしたの。その……私があなたを嫌いって言って泣いたことで、あなたを酷く傷つけてしまっていたと教えられて。本当にごめんなさい。」
マーガレットが謝ると、ウィリアムが自分の髪の毛をクシャッと握った。
あの時の事を……誰かがメグに話したのか……。
クソッ、過去の俺を本気でぶん殴りたい。
「……俺が全て悪いんだ。あのあと、メグを傷つけるようなことを言ってしまって、俺がしてきたことが君を苦しめていたのだから、君は1つも悪くないんだ。」
「いいえ、私がきちんと伝えられなかったから、私が悪いの。私はウィリアムが嫌いだったわけではなくて、毎回対決をやらされる事が苦痛だったの。楽しく過ごしたかっただけだって、泣かないでちゃんと話せばよかったのよね。」
マーガレットが暗い声で俯いて話す。
「メグは、あんなことをした俺を嫌っていないのか?こうやって二人きりで一緒に居てくれる……その、嫌じゃないのか?」
「嫌いじゃないし、嫌じゃないわ。だって、ウィリアムは昔からずっとずっといい人だったもの。」
マーガレットは大きく首を振り強く否定する。
「ただね…………嫌われているかもと思っていた時期は、正直、目を合わせるのがキツかったの。心が苦しくなっちゃって、あなたと向き合える自信が無かった。」
と、マーガレットが下を向き申し訳なさそうに言った。
その表情を目にした瞬間、ウィリアムはマーガレットを抱き寄せていた。
「ごめん、ずっと苦しい想いをさせてしまって。好きなんだ。メグの事が俺は好きなんだ。だから、笑っていてほしいんだ。俺の傍で、俺が君を幸せにしたい。」
シャララ、シャララ、シャララーン。
抱き寄せられていた体を起こし、マーガレットがウィリアムの瞳を見つめた。
「ウィリアム……ありがとう。でも、私は自分の気持ちが分からないの。私、ウィリアムにはずっと嫌われていると思っていたから、あなたの事を、その……男性として意識したことが全くなくて……今、凄く戸惑っているの。もう少し、時間を頂戴。」
そう返事をするマーガレットの両頬をウィリアムは両手で覆い、顔を少し近づけて質問する。
「メグ、俺の事、考えてくれるの?嫌いじゃないんだよね??」
「ええ。」
顔が近い!!と脳内でマーガレットはプチパニックになる。
「じゃあ、俺のことを好きになって貰えるように、俺、頑張ってもいい??」
シャララーン。
「えっ、あ、ええ、ええ?…………うん。」
強引に迫るウィリアムにマーガレットはドキドキが止まらず、何とか絞り出し返事をする。
「分かった。俺、頑張るから。メグ、楽しみに待っていてね。」
シャララーン。
ウィリアムは嬉しそうに言い終えると、マーガレットの額に軽く口づけする。
瞬時に額を両手で覆い、マーガレットは限界に達し、トマトのように一気に顔を赤くした。
その様子にウィリアムが
「かわいい。」
と、悪戯っ子の顔で言った。
マーガレットは恥ずかしさで一杯一杯になり、涙目になった。
帰る!とマーガレットが言いだし、徒歩で帰ろうとするので、ウィリアムは慌てて止める。
「ごめんごめん、つい可愛くて。揶揄い過ぎた。ちゃんと送っていくから、怒らないで。」
マーガレットが怒って鼻孔が膨らんでいる様にさえも、可愛いと感じてしまう自分に、重症だと思いながら、シートの片づけをして、彼女を説得し馬に乗せ厩舎へと出発した。
厩舎に着くと、髭オヤジが出迎えた。
馬からマーガレットを下ろそうとするので、その手をウィリアムが払い、先にウィリアムが下りて、マーガレットを自らの手で下ろす。
他の奴に、メグの体を触れさせてなるものか。
サワンジャネー!シャー!
まるでそう言っているかのように威嚇している。
その様子を見ていた髭オヤジが、後ろでゲラゲラと可笑しそうに大笑い始める。
下品な笑いだと文句を言いながら、ウィリアムはシロップの作り方を嫁から聞いておいてくれと髭オヤジに頼んでいた。
聞いておくと大きく返事をし、バルウィンは約束した。
マーガレットが今日のお礼をバルウィンへ述べると、横に居たウィリアムへとお礼を言うように促す。
マーガレットが言うならば仕方がないと、いつもはバルウィンには照れて言わないウィリアムだが、彼にお礼を言った。
その様子に、またバルウィンが腹を抱えて笑った。
面白くないと、ウィリアムは公爵家の馬車へマーガレットをエスコートしてサッサと乗り込んだ。
馬車の中、2人は向かい合わせに座っていた。
隣ではない。
「先程、ワグナーさんにシロップのレシピを早速聞いてくれて、ありがとう。」
マーガレットがウィリアムへお礼を言う。
「いいよ。レシピが分かれば家の料理人に作らせるから、出来たらメグのもとへ直接届けに行く。メグに会う口実になるだろう?」
マーガレットは照れて、ウッと押し黙る。
先程、和解しアタックの許可を貰えた所為か、ウィリアムの緊張が解けていて、行動が積極的になっており、マーガレットは、たじろぐ。
マーガレットは、背中に冷汗をかきつつ、冷静にと会話を続ける。
「あの、この座りだと、か、会話がしづらくない?」
マーガレットは話を変えることにした。
「そう?もしかして、横に座ってほしかった?俺はこの方が、メグの顔をよく見られていいんだけど、隣に行こうか?」
その言葉に、ヒィーーーっと、心の中で叫びながら、マーガレットはウィリアムの真ん前からお尻の位置を少しずらした。
「こ、このままでお願いします。」
マーガレットは羞恥心が爆発しそうになるのを、必死で堪えていた。
クククッ、滅茶苦茶可愛い!!
その時、マーガレットは思い出していた。
目の前に居るこの男は、この国でも一二を争う美丈夫の男で、女をとっかえひっかえしていた奴であり、女の扱いに慣れたスケコマシであったと言う事を……。
そう、馬車に2人きりっていうこの状況、これってかなりマズいのだと!!
マーガレットは全身で危機を感じた。
( ああ、この人からこのままアプローチを受け続けたら、身が持たないかもしれない。
早めに決断し、答えを出さなければいけない。)
と、徐々に席を端にずらしながら思うのであった。
「そういえば、今度の対決の内容は何になったの?」
すんなりと、マーガレットの隣にウィリアムは座りなおし、話を続ける。
腕を背もたれに回されて、マーガレットは端に逃げられなくなる。
前でいいって言ったのに横に来やがったと思いながら、マーガレットは答える。
「えええっと、ケイティから聞いていない?いくつか候補はあってその中からケイティに聞かれて厳選したんだけど、私も何に決まったかは知らなくて。あっ、でもピーマンや蛙取り、水泳対決は没案にしたから安心して。」
マーガレットは背もたれにあるウィリアムの腕をどかしながら話す。
「確実に勝てるものを知っているのに、何故それにしなかったんだ?やっぱり、ワザと負ける気なのか?」
その腕をさっきの位置に戻し、ウィリアムが答える。
「違うよ。そんな対決で負けたりしたら、ウィリアムが笑われてしまうじゃない。それは嫌だったから。」
ああ、マーガレットは本当に優しいな……。
僕の唯一の女の子だ。
ああ、愛おしいよ。
背もたれの腕を外しながらマーガレットがそう言うと、外そうとしていた腕がいきなりお腹の所に回る力が入りウィリアムの方へと体は引き寄せられた。
そして、ウィリアムの両腕がマーガレットを覆い、そのまま後ろから抱きしめた。
「ちょ、ちょっと。」
と言って、腕をポンポンと叩くマーガレット。
抗議をしていると、ウィリアムが口を開いた。
「ありがとう、俺の事を考えてくれて。やっぱりメグは俺の理想の女だよ。惚れ直す。」
シャララーン。
ポツリと呟き、さらに強く抱きしめたのだった。
その瞬間、言葉とこの状態に、マーガレットはついに限界が来てしまい、思考が停止した。
ラックランド伯爵邸に着くまで、2人はこの状態のままであった。
着いて扉が開けられたと同時に、意識を取り戻したマーガレットがウィリアムの腕を振り払い、勢いよく馬車から掛け出て行った。
馬車から勢いよく飛び出してきたマーガレットを見ていたジェームスが、絶対に何かあったのだとヤキモキし、馬車内のウィリアムへ詰め寄ろうとしたのだが…。
彼は頭の上に花畑でもあるかのように惚けて話にならなかったので、さっさと帰るように御者へ命令し公爵邸へ帰したのであった。
ウィリアム、少しだけスケコマシモード。
次回、マーガレットとの対決。




