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俺、デートする(前半)

心広き方々、

お読みくださりましてありがとうございます。

あと少しです。


 マーガレットがジェームスに手を引かれて、連れ帰られそうになっているところを、ウィリアムが両手を広げて止める。


「おい邪魔だぞ、ウィリアム。そこをどけ。」

 そうジェームスがいうので、ウィリアムが息を切らしながら言う。

「ジェームス、俺達は今から出掛ける約束をしているんだ。メグの手を離してもらえないか?」


 絶対に連れて行かせない。

 メグとデートするんだ。

 本気モード発動!!!!シャララーン。


「出かける?二人でか?絶対にダメだ。」

「兄さん。私、きちんとウィリアムと話をしたいの。謝りたいのよ。」

 マーガレットが反対するジェームスに懇願する。


 メ、メグ~、胸が、胸が締め付けられる~。


「メグ、ウィリアムには謝らなくていいと言っただろう?」

 ジェームスは即座に退ける。


「それだと私が自分自身を許せなくなるの。お願い兄さん、行かせてください。」

 再び反対するジェームスにマーガレットは丁寧に懇願する。


「仕方ない……俺もついて行きたいところだが、午後からは人と会うことになっているから。おい、ウィリアム!夕刻までだぞ。変なことは絶対にするなよ。危ない目に遭わせるなよ。悲しませるなよ。泣かせるな。分かったな!!」


「はい、義兄さん。」

 嬉しそうに返事をするウィリアム。


「誰が義兄さんだ!!お前の兄になった覚えないし、俺の方が年下だぞ。」

 ジェームスの怒りの声が響き渡った。


 フレデリックはその言葉を耳にして驚いた。

 あいつ年下だっていう自覚あったんだ……と、そう思ったのだった。



 兎にも角にも、2人で出かけられるようになったので、浮足立つウィリアムはマーガレットの手をガッチリ握り、公爵家の馬車に乗せ、自分も意気揚々と乗り込んだ。


 馬車の中は大変静かであった。

 2人きりの空間に、ウィリアムは緊張していたのだ。


 そんな中、先に話をし出したのは、マーガレットであった。


「今日の水泳、苦手意識があったのによく頑張りましたね。ずっと泳いでいなかったのに凄かったわ。」


 褒められたのは嬉しかったが、自分では格好の悪いところを見られたような気がしているのと、水泳中の皆の態度を思い出し、その言葉を素直に受け止められなかった。


思い返して、少しムッとする。


「皆、ゆっくりお茶しながら眺めていたくせに……」

 ウィリアムは、ついつい捻くれた言葉を返してしまう。


「ごめんなさい……そうね。一生懸命頑張っている人に対して、良くない態度だったわ。反省します。」

 そうマーガレットが謝ると、再び馬車の中は静まり返った。


「うっ、いいよ。上手く泳げないのは本当だし。ゴメン、カッコ悪いところを見られて、少し八つ当たりした。怒ってないから、もっと沢山話そう。」

 シャララーン。


 マーガレットの手を握り、そう話すウィリアム。

 その言葉に、マーガレットから安堵の笑顔がこぼれた。


 め、めっちゃ、可愛いーーーー!!はうぅぅぅ。

 ウィリアムはデレデレになる。


「あの、ウィリアム?馬車は何処へ向かっているのですか?」

 その質問に、行き先を教えていなかったと思い出す。


「今から行くのは、公爵家御用達の厩舎じゃなくて、俺らが郊外へ行くのに良くお忍びで使っている厩舎。フレデリックに紹介して貰った所でね、ここの馬、いい子が多くて時々借りて、背に乗せてもらっているんだ。」

 シャララーン。


 話しているうちに目的地に到着し、馬車を降りる。


 歩いて厩舎の方へ行くと、体が大きく、長靴を履き、髭を生やしたおやじさんがこちらへ向かってきていた。


「おーい、ウィリアム。遣いから話は聞いているぞ。今日も2人乗りだって。大きい賢い奴を用意しておいたぞー。」

 そう口に手を当てて、髭おやじは大きな声で言った。


 おっ、オヤジーーーいきなり、なんてことを言いやがる!!


 マーガレットがウィリアムの方を見ると、ウィリアムが額を手で押さえて天を仰いでいる。


「よくデートに使っていたのですね。」

 と、マーガレットが言うと、慌てた様子でウィリアムが弁解しだした。


「と、時々だよ。稀に、極まれにね。ほとんどはフレデリック達とか友達と、あと一人で気晴らしに掛けるのに使っていたんだ。本当だよ!!」

 突如、激しく弁解するウィリアムにマーガレットは圧倒される。


 しかし必死のウィリアムの様子が段々おかしくなっていき、マーガレットはクスリと笑ってしまった。

 その様子を、頬を染めて見ているウィリアムの許へ、髭オヤジが到着した。


「ん?どうしたウィリアム?」

 惚けているウィリアムに髭オヤジが話し掛ける。


 その声に俺は反応し、髭オヤジにウィリアムは食って掛かる。

「おい、バルウィン!」

「何だ?」


 あ、何か言ったら変な事返されそうじゃない?

 昔の女の事をメグには聞かせたくない!!


 この男に余計なことを言い返されそうだと、俺はクッと声を詰まらせ言葉を発することが出来なかった。


 その様子を無視して、髭オヤジのバルウィンがマーガレットに気づき、声を掛ける。

「おや?これはまた可愛らしいお嬢さんだな~。私は厩舎(ここ)の責任者バルウィンだ。御用の際は御贔屓ください。」


 高位の貴族と見抜いたのか、経営者として流石だ。

 しっかりと売り込みをしてくるあたり、この男は結構やり手らしい。


「私はマーガレット・ラックランド。ここから郊外の高原までは道が整備されていて走りやすそうね。今度、友人と遠乗りに行く際にでも使わせてもらいますね。」

 ニコッとマーガレットは微笑みかけ返答する。


 その彼女の対応に、これまでの令嬢になかった何かを感じたらしく、髭オヤジはウィリアムの方へくるっと体を向け、ウィリアムの首へ腕を回すと、抱え込むようにしてヒソヒソ話をする。


「おい、ウィリアム。この子はいつもの連れとは見た目も毛色もかなり違う様だが、どうしたんだ?いつも連れて来るのは、お前に骨抜きの頭の空っぽそうな奴ばかりなのに。俺がお前の過去の女の話をすると、キィーっと喚くような、そう言う奴がお前は好みなんじゃなかったのか?」


 失礼過ぎるほど、俺の好みは辛辣な評価であった。

 しかも、さっきのは良かれと言っていたのか……なんとも複雑だ。


「ちょちょ、首いてーよ、バルウィン。いつものと違う?そりゃそうだ。だって本命だからな。」

 シャララーン。


 そのウィリアムの答えに、バルウィンが目をパチクリさせた。


 そして、ウィリアムを離すと、

「そうか、だから今回は……ウィリアムはこういうのが……ふむふむ、そうか。」

 ブツブツ呟いている。


「おい、バルウィン、用意は出来ているのか?」

「ああ、そうだった。出来ているぞ。あっちだ。」

 髭オヤジは嬉しそうにニヤニヤしながら、2人を馬の居るところまで案内した。


 まずウィリアムが乗り、前にマーガレットを乗せる。

 髭オヤジが腰を支えて乗るのを手伝ってくれたのだが、ウィリアムは自分が手伝って先にマーガレットを乗せればよかったと、不満を言っている。

 それを聞いたバルウィンが噴き出す。


 大笑いしながら、馬の後方を指さし、

「荷物は着けておいた。2人きりで楽しんでおいで。」

 と、送り出してくれた。


 最初は歩く速さでゆっくりと出発し、会話をしながら進んだ。

「今日は2人乗りで、遠くへは行けないから、少し行ったところにある王都の見渡せる丘まで行こうと思うんだけれど、いいかな?」


 ウィリアムが聞くと、

「ええ、素晴らしい景色が見られそうね。楽しみだわ。」

 横向きに乗るマーガレットがウィリアムの服を掴んでいる。


「少しスピードを上げるから、メグはもう少し俺に寄り掛かるか、摑まってくれるか?それか、俺が君の腰に手をやってもよいだろうか?」


 照れながら話すウィリアムを微笑ましく思いながら、マーガレットは答えた。

「ええ、いいわよ。お願いするわ、ウィリアム。」


 マーガレットが笑顔で答えると、ウィリアムは目を輝かせ、任せろと声を上げる。

 次の瞬間、マーガレットがウィリアムの懐に手を置き抱き着いた。

 

 近い、くっ付いておるぞ。

 うおおおおおおおおおおおーーーーー。


 うっ、夢か?夢なのか??

 夢なら冷めないでほしい~。


 嬉し泣きしそうなくらい心が歓喜を叫びたがっていたが、グッと耐えて馬を走らせる。


 ウィリアムは赤面したまま、落ちないようにと力強くマーガレットの腰に腕を回し、馬のスピードを少し速めて進んだ。



 競争の時のようなスピードは出て居ないので、途中スピードを緩めて、動物を見つけたり、景色を眺めたりしながら、楽しく会話をして進んでいった。


 今までにない、乗馬を楽しんでいる2人の様子が、そこにはあった。





後半に続きます。

楽しめて良かったね、マーガレット!

頑張れ、ウィリアム。

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