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第15回水泳対決(後半)

水泳対決、後半です。

ウィリアム全力で泳いでおります! メッチャ遅いけど。




 ゴールの位置に皆で移動し、ウィリアムが壁に触るのを皆で見届ける。


 壁にタッチをして顔を上げたウィリアムに、ヘンリー殿下が手を差し伸べた。


「おめでとう。君の勝ちだ!」

 そう言って、温い水から引っ張り上げた。


 水から上がると、ウィリアムは嬉しそうに皆の方へ駆け寄り、マーガレットの両手を握ると、勝てた喜びを爆発させて喜んでいる。


 その様子を、冷えた湯の中からガーネット嬢はじっと眺めていた。

 そして、ゆっくりと壁へと向かい歩き出した。


 壁まで来ると、テオが手を差し伸べ、黙って湯から引き揚げてくれた。

 その横から、涙を浮かべた義姉のカミラが寄ってきて、大きなタオルを被せる。

そして、その上から強く抱きしめた。


「よくやったね。頑張ったね。」

 と、カミラはガーネット嬢に囁いた。


 ガーネット嬢は顔を埋めて、義姉さんと呟き、静かに泣いた。

 2人はしばし抱き合った。



 その頃、勝利を喜んでいたウィリアムに、マーガレットが声を掛けていた。


「ウィリアム、本当におめでとう。泳ぎ、得意ではないのに、凄く頑張ったのね……あのね、あの、さっき、教えて貰ったことで貴方と2人で話がしたいから、後で話せるかしら?きちんと2人だけで話しがしたいの。」


 申し訳なさそうに話してくるマーガレットを見て、舞い上がっていたウィリアムは冷静を取り戻す。


ふ、二人きりで話がしたいだと~!?

何だ?ついに告白か?

実は、俺と同じで昔から好きだったとか!

ヤバい、顔が、顔がニヤケそうだ……堪えろ俺……。


 分かったと真剣な顔つきでマーガレットに返事をした。


 横にいるキャサリンがマーガレットへ顔を近づけ小声で話す。


 キャサリンがマーガレットが謝ることはないと言ったが、マーガレットは、それでは自分の気が済まないのだと、コソコソと話しているのを俺は聞き逃さなかった。


謝る?

告白じゃないのか??

ざ、残念じゃないし~落ち込んでなんてないし~。


 それより、いったい何の事で謝られるのだろうか?

そう考えていると、ヘンリー殿下が横に来て俺に耳打ちをした。


 殿下から聞かされたのは、マーガレットの事ではなく、ガーネット嬢の情報であった。

 対決を受けた理由を確認してくれたようだ。


 それを聞いて、ヘンリー殿下へウィリアムが尋ねる。

「子爵家のトラブるの大口客の貴族は誰だか調べはついているのですか?」


 すると、殿下が

「ああ、君の良く知る人物と繋がりがあるようだ。」

 そう言って、また耳打ちして、貴族の家名を教えてくれた。


 なるほどと言って、ジェームスを見る。

 ジェームスがこちらに気が付き、後ずさりをする。


 彼に詰め寄り、ウィリアムはお願いをした。

 仕方ないと折れて、

「借り一つですからね。聞いてもらえるかは分からないけれど、話してみます。」

 取り次いでくれるとジェームスが約束してくれた。


 そこへガーネット嬢がやってくる。

 泣いたのだろう。

 目の周りが真っ赤であった。


「この対決、ウィリアムの勝利だ。」

 そうヘンリー殿下がガーネット嬢へ告げる。


「ええ、分かっております。醜態を晒してまで意気込んだのに……なんて哀れなのかしら。何も、結果に繋げられなかったわ。」

 そう言うと、また滝のような涙と鼻水を流して泣き出す。


 ウィリアムはハンカチを渡した。

 そして、こう話した。


「付き合っていた頃、君の気持ちを理解することが出来ず、別れた後も引きずらせてしまって、申し訳なかった。私の行いは、許されないだろう。償いとは言えないが、子爵家と取引が滞っているという隣国の貴族に話をしてみよう。もう一度チャンスをもらえるよう頼んでみるから。」

 シャララーン。


 そうウィリアムが言うと、ガーネット嬢は涙を止め、目を大きくした。


 その瞬間、カミラが横からガーネット嬢へタックルし、ウィリアムの目の前に来ると、両手激しくさすり、拝みはじめる。


「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。」

 ブツブツと言い続けている。


 吹き飛ばされて、ガーネット嬢の横へキャサリンがやってきて、

「良かったね。努力、無駄じゃなかったわね。あなたの成果よ。」

 と、声を掛けた。


 それを聞いたガーネット嬢は、またもや大量の涙を流す。


 そして、少し落ち着いてから、こう言った。

「さっき、ウィリアム、ううん、もうクロスター様ね。彼があちらに居る令嬢へ駆け寄る姿を見たの。あれを見たら、彼の心に自分の入る隙間なんて微塵も無いのだと打ち拉がれたわ。同時に、ホッとした。そういうお相手が、ようやく彼にも出来たのだと。他のどうでもいい女にヤキモキすることは、もうないでしょうから……それから、ありがとう、私の努力を誉めてくれて。私、これからもっと努力を重ねるわ。世の中、美味しいものが目の前に落ちてくるなんて、そう簡単には無いって身に染みて分かったから。だから、努力して、努力して、私から幸せを奪いに行くの。」


 ぐちゃぐちゃになった顔をクシュっとして、ガーネット嬢は笑った。


「ええ、頑張って。応援するわ。」

 そうキャサリンは返した。


 キャサリンが話しているところへ、ウィリアムがやって来る。

「ケイティ。悪いけど、帰りの馬車、他のやつの馬車に乗せて貰ってくれ。俺は今から、メグと出かけるから。」

 そう言いだした。


「え?私も一緒に行くよ。」

「ダメだ。お前はついて来るな。」

「何よ、バカ兄。私を男と2人きりの馬車に乗せるつもりなの?」

 それを言われて、ああそうかと考え込むウィリアム。


 握った拳をもう片方の掌の上でポンと叩き、ウィリアムはこう言った。


「フレデリックも殿下も従者が一緒だから、2人きりじゃないぞ。」

 シャララーン。


 キャサリンが目を細めて兄を見つめ、深くため息をついた。


「あの、良かったら、私達の乗る馬車に乗りませんか?ここに来るのに、殿下が用意してくださった馬車なので広いですし、承諾を貰ってからでないといけませんが。」


 そうガーネット嬢が言うと、ナイスアイデアだと親指を立てたのち、殿下の所へ走って了承を取りにウィリアムは行く。

 その様子を見ていたガーネット嬢がポツリと零す。


「クロスター様は、本来はあのようなおちゃめな御方なのですね。私の夢中になっていた人は、もしかしたら外向けに作られていたものであったのかもしれません。彼、本来のあのような部分は私には全く見せたことがなかったので……いや、見せて貰えなかった。私は、彼に幻想を押し付けていたのかもしれません。」

 そう深々と考え込んでいた。


 ウィリアムが電光石火の早業で戻り、キャサリン達に殿下からは了承を貰えたので妹を頼むと告げると、直ぐに踵を返し、マーガレットの許へ向かった。

 急がないと、ジェームスに連れ帰られてしまうそうなのだと。


 それを聞き、ウィリアムの慌てた様子を見て、ガーネット嬢が可笑しそうにケラケラと声を出して笑いだした。


 そんな彼女を見て、キャサリンと彼女の義姉カミラは顔を見合せ、同時に笑うのであった。





次回、マーガレットとウィリアム、2人が初デートするよ。

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