俺、少しだけ正直になる それから 第14回対決
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ダンス対決後、マーガレットはキャサリンに連れられて、クロスター公爵家を訪れていた。
キャサリンは衣装やメイクの後処理があるからと、マーガレットはいつもお茶をするテーブルセットのある庭先に座らされ待たされている。
そこに、ウィリアムが現れる。
ここに……居た……俺の愛し人。
会いたかった……ずっと、会いたかった……そして、謝りたかった。
どうか、どうか俺から逃げないで!
シャララーン(悲恋バージョン)
マーガレットを無言で強く見つめるウィリアム。
一方、ウィリアムを見たマーガレットは、酷く慌てていた。
もう干渉しないでくれと大泣きしながら懇願した相手が、目の前に居るのだ。
これはかなり気まずい……と。
いつもならば、用事があると言って帰ってしまうところであるが、これからキャサリンと今日の話をすると約束をしているので、帰るに帰れない状態だ。
どうしようかと、マーガレットが考えていた時である。
ウィリアムが近付き、そっと右手を取ってきた。
帰ってほしくない!!どうにかしなきゃ。
どうしたらいい?謝る?
いや、まずは怖がられないように優しく、そしてお礼を言おう。
そう考え、ウィリアムは出来るだけ優しく話し掛けた。
「メグ。今日は応援に来てくれてありがとう。ケイティの為だとは分かっている。それでも、それでも君に会えたこと、君が少しでも僕に関心を持ってくれることが嬉しいんだ。応援、ありがとう。」
シャララーン(感謝バージョン)
あんなに酷い言葉を突きつけた後なのに、ウィリアムが発した思わぬ言葉にマーガレットは驚く。
冷静にと心を落ち着けさせながら、考えを整理し言葉を返さなければとマーガレットは考える。
あれは、自分の身勝手な考えであったのかもしれない。
きちんと彼に向き合い、気持ちを聞くべきなのだと、そう思いマーガレットはウィリアムと会話をしようと決意した。
「こ、この前は生意気なことを言ってしまって、ごめんなさい。ウィリアムが昔から私の事を良く思っていないのは分かっていたから、そうした方がお互いに良いのではないかと思って言ってしまったの。私の考えは間違っていたかしら?」
その問いに、俺は歓喜の雄たけびを隠しつつ、この機会を逃すものかと慌てて答える。
「ああ、ああそうだ、間違えだ。俺は、昔からメグを嫌ってなんかいない。むしろ、むしろ俺は、君を好いている。だから―――」
その言葉が放たれた瞬間、
「へぇ????」
っと、マーガレットが素っ頓狂な大声を上げた。
それと同時に、
「おっ待たせ~!」
と、キャサリンが元気よくやって来た。
こんちきしょーと、一瞬憎々しく思ったのだが、いつものように追い出されないように一先ず耐える。
「あら?ウィル兄もきていたのね。まあ、今日くらいは一緒に居てもいいわよ。今から先程のダンスの話をするから。」
妹はウィリアムをいつものようには追い払わずに一緒の場には居させてくれるようだ。
とりあえずよしとした。
それより、隙をついてさっきの続きをマーガレットに話したい……。
話したい話したい話したい話したい話したい話したい話したい話したい。
「ねえ、ウィル兄、話聞いているの?私が居なかったら、今日のダンスに出られなかったのよ。感謝してよね!」
キャサリンが話し掛けていたみたいだ。
俺はマーガレットの事ばかり考えて、聞いていなかった。
「ああ、ありがとう。本当に助かったよ。」
俺がお礼を言うと、
「でしょう!!ダンスも完璧だったし、もう誰からも私のダンスは兄より劣っているなんて言われないわ。」
キャサリンが図に乗った。
ちょっとイラっときたから、つい口を滑らせてしまったんだ。
「お前のダンスが俺と同等だと?ハッ、お前、あのダンスの中で、俺の足を何回踏んだか言ってみろ。」
と、悪い顔で言ってしまった……。
あっと、気づいた時には遅かった。
「3回よ……3回踏んだわよ!!!!」
妹が逆ギレしていた。
あ、なんか怒りスイッチ押しちゃったかも……。
「ウィル兄だって、あの中盤のステップ後の回転技、あの時の私を抱える力が弱くて、危なかったじゃない。それを私が自力で何とかしたのよ!!」
「それは、その前のケィティのタイミングが良くなかったから――」
「何ですって~」
それから、ずっとダンスの話を怒涛の如く話し合う兄妹による激しい反省会が繰り広げられることとなった。
その様子を、マーガレットがお茶を啜り眺めている。
お茶を啜り眺めている。
お茶を啜り眺めている。
お茶を啜らず、ただ眺めている……。
そして、到底二人きりになることもなく、愛の告白など真剣に告げることもなく、マーガレットの帰宅時間になり、彼女はひっそりと帰路に着いたのである。
マーガレットが帰ったことに気が付いたのは、2人の腹の音が同時に鳴った時であったとか。
***
さらに3日後の絵画対決、余裕で俺が勝った。
なんたって、俺は優秀だから。
シャララーン。
そんなことよりも聞いてくれ、マーガレットの応援が再開したのだ。
メッチャ嬉しい~!!
妹のキャサリンと共に会場へ足を運んでくれた。
ダンス対決以来、妹もほんの少し協力的である。
ふふん、俺を見直したようだな。
マーガレットの婚約者の相手だと、俺を認めてくれたのかもしれない。
いや、認めてないはずがない!!!
シャララーン。
まあ、それを本人へ言えば、全力で否定してきそうなので怖くて聞けないのだが…。
さらに、マーガレットが俺以外と結婚すると会いづらくなるよといった今後への悲観的な言葉や、俺と結婚すれば姉妹になれるといった甘い誘惑を家で囁き続けた結果、妹の心が激しく揺れているのを俺は知っている。
ハッハッハッ、もう少しだー。
もう少しで妹を味方につけられる!
最強の味方。鉄壁の要塞!!
やってやる!俺が落してみせる!ハーハッハハハー。
絵画対決の勝敗も楽勝で俺につき、対決した令嬢との挨拶も終え、サッサと応援に来てくれていた妹たちの所へ駆け寄った。
よし、この前、続きを話したい。
今日こそは、二人きりになって、ちゃんと伝えるんだ!
チャンスを見抜き、連れ出すぞ~。
妹たちの正面までたどり着き、ウィリアムがウキウキしてマーガレットに話し始めようとした時である。
「久しぶりね、ウィリアム。」
そう名前を呼ばれた。
振り向くと、そこには以前に上手くいかなくなって恋人関係を終わらせた女性が居た。
いわゆる元カノだ。
一年くらい前のこと、その女から数十日ほど熱烈アピールをくらい、かわすのが面倒になったから、まあ悪くはないしと、軽い気持ちで短い間付き合った。
どの女性とも3日や10日くらいで長く続いたことがなかったけれど、彼女はわりと長かった。
長いと言っても普通の感覚とは違うけれどね。
そうだな、夜会に1回は同伴するくらいのスパンでほとんどの女性は代わってたんだけれど、彼女は3、4回くらい同伴したような……ん?彼女は子爵令嬢だから、2回だったかな?
彼女はガーネット子爵令嬢、名はアナスタシアだったはず。
こう考えると、俺ってやっぱり非道だったと、猛省する。
「ああ、久ぶりだね。えーと、ガーネット嬢、変わりはないかい?」
そう話し掛けた瞬間、令嬢は憤慨した。
「ガーネット嬢、変わりはないかいですって!?ウィリアム、あなたは私を何処まで惨めにさせれば気が済むのか!?」
そう切り返された。
なぜだか、かなり俺に怒り心頭の様子だ。
なぜだ?彼女とは付き合っていた時も深入りをせず、別れる時も何も問題なくスッキリと別れたはずである。
何をそんなに怒っているのか?
そんな俺の態度に、スカート生地を硬く握り、体を小刻みに震えさせながら令嬢が話し出す。
「分からないって顔しているから言ってやるけど、あなたは恋人関係だった時から、私の心を受け入れていなかった。色欲や快楽にしか興味が無かったわ。女性として大事には扱ってくれるけれど、あなたの心は絶対に手に入れられない……どこを向いているのか、いつも不安だった。だから別れを切り出すフリをして、あなたの気持ちを試した。私を愛してくれている、だから絶対に引き留めてくれると信じて……でも、あなたは一切引き留めなかった。思い知ったわ、あなたが微塵も私を見ていなかったことを。そして、あなたの隣から外され、直ぐに別の女がすげ替わった。今でも、あの頃を思い出し後悔している……馬鹿なことを言ってしまったと。でも私から言いだした手前、寄りを戻したいだなんて、他の女もいるのに惨めなことを言えなかった。あれから、あなた以上の男性を求めても存在しない。いつしかこの苦い想いが、憎しみに代わったの。次の対決、覚悟していなさい!!」
一気に早口で捲し立てて、ガーネット嬢はその場を後にした。
その言葉を耳にしていた者達は、しばし沈黙した。
どう言葉を発してよいか、皆が困惑していたのだ。
沈黙を破り、声を出したのはウィリアムだった。
「あ~なんか、すまん。さっき聞いたんだ。彼女、次の水泳対決の相手だって。」
そう告げる。
「水泳って……大丈夫なの?」
不安そうにマーガレットが聞く。
ああ、俺の天使が、俺を心配している!!
神よ、感謝します。
シャララーン。
「分からない。溺れて以来、水に入っていないんだ。きっとその事を昔、彼女に話したんだろう。墓穴を掘ったかな。でも、絶対に勝ってみせるから。俺はメグに、相応しい男になりたいんだ。」
そう優しく話し、ウィリアムはマーガレットに近づくと両手を握る。
どんなに辛くても、俺はやり遂げる。
君のために勝ち続けるんだ。
さっき、他の女に負けて取られないか心配していた様だが、俺は君の物だよ。
勝って勝って、そして、マーガレットに相応しい男になり、結婚を申し込むんだ。
待っていてくれ、俺の天使!!
必ず、必ずお前を……ゴクッ。
「ちょっと離れなさいよ、変態!!!」
と、注意して、その手を払うキャサリン。
そんなキャサリンを、今の俺は微笑ましく思える。
それくらい、マーガレットに想われて、幸せなんだ。
こうしてはいられないと、水泳の練習へ行くと言って、ウィリアムは足早に去っていった。
そんな中、先程のウィリアムの元恋人の言葉がマーガレットの心に複雑な渦をもたらし、少しばかり心を動かすのであった。
***
ガーネット嬢に会ってから翌日。
殿下と俺はとある場所を訪れていた。
ヘンリー殿下が、今の季節に川や湖で泳ぐのは如何なものかと考えを巡らせてくれて、騎士の為に建設中の大浴場を使うのはどうかと提案してくれたのだ。
「ここでいいかな?」
「うん、いいと思うよ。ありがとう。」
ここまで協力をしてくれる殿下には感謝するのだが、こんなに騒ぎにはしたくなかったのにそうしたのは殿下だから、ちょっと複雑な思いの、ありがとうである。
今の季節、暖かくなってきたとはいえ、まだまだ肌寒い日が続く季節、湖や沼の水温は、非常に冷たい。
実を言うと、ウィリアムはこの季節だし、溺れてから全くしてこなかった水泳の対決を申し込む者など現れないだろうと安易に考えていたのだ。
しかし実際に申し込みがあった。
まさか、この寒空の中の水泳対決を申し込む強者が現れるとは……はあ~憂鬱。
令嬢側に対決内容を決める権利があるのだから、ウィリアムには拒否出来ない。
苦手な水泳であっても、令嬢が決めたら逃げられない。
女の執念は恐ろしい!!
大浴場予定地を見に行ってみると、そこには石を敷いて囲っただけの広大で深いスペースがあった。
これから色々と階段や腰かけなどの装飾や区切りを置いて作って行く段階で、騎士が温泉で体を癒す楽しめる浴場を作るつもりらしいのだが、今はだだっ広い石で敷き詰めて出来た枠である。
ここに、温泉と水を加え、水温を調節したぬるま湯を注ぎ、泳ぎを競える場を整えるからと殿下が一時対決休止を宣言した。
その為に7日程ほしいと言うので、今回の対決は7日後となったのである。
「今から練習?外だろう?まだ水温は低い。長時間は、体を壊してしまうよ。」
殿下が心配そうに聞く。
「仕方がないさ。泳ぐのは苦手だし、もうずっと練習してきてないから、必死でやらなければならないんだ。やらなきゃ負けてしまう。それだけは絶対にダメだ。」
シャララーン(闘魂バージョン)
俺は今までの対決の中で今が1番自信がなかった。
かなり焦っていた。
そんな会話をしたのち、ウィリアムは川へ向かい鍛練しまくったのだが溺れたそうだ。
そして、殿下が助けたらしい……。
そんなことがあった日から、3日後の事である。
その日あるはずの対決は、手前の理由によりお休みだったので、ウィリアムはある所を訪れていた。
では、その開いた日にウィリアムは何をしていたのか?
さて、今いる場所はいったい何処なのでしょうか?
当ててみて!
シャララーン。
ウィリアムとアナスタシアが付き合ったのは、30日?もうちょい短いかな~。
気持ちをマーガレットに少しだけ伝えたので、ウィリアムはちょっと調子に乗っています。
次回は、水泳対決前の出来事です。




