第13回ダンス対決(前半)
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
感激です。
ダンス対決当日。
「さあ、いよいよ通算48日目の対決の日がやってまいりましたー!本日を含め、残すところあと4つの対決となっております。本日の対決は、ダンスです。そして、対決を申し込んだご令嬢は、ハングルド伯爵令嬢です。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、彼女は学生ダンスコンテストを2年連続で優勝している実力の持ち主です。そして、パートナーはコンテストでもパートナーを務めた彼女の従者ロイスです。果たして、今日で決着がついてしまうのか、はたまたウィリアムが勝つのか、こうご期待!!」
そう、学院の卒業ダンスパーティー会場に使われるホール内にジェームスの声が響き渡り、見物客たちがざわめきを一層強くした。
「それでは、両者の準備が整ったようなので呼びたいと思います。まず最初に挑戦者、ハングルド嬢とそのパートナー、ロイスです。」
紹介が終わると同時に、会場のドアが開き、胸元はボリュームを強調し、くびれが見事に主張するラインで裾にフリルが多く真っ赤なドレスに身を包んだ真っ赤な唇の妖艶な令嬢と、その令嬢の後ろを3歩下がりついて来る背は高いのに細く黒髪を後ろにリボンで一つ結んだ黒に染めた男が姿を現した。
ジェームス達の居る中央まで来ると令嬢がスカートを掴み、狂いないタイミングで2人は揃って大きくお辞儀をした。
大きな拍手が起きる。
「それでは、本大会の主役、クロスター公爵家子息ウィリアムと、そのパートナー、ウィリアムの妹キャサリン嬢です。」
会場のドアがまた開けられた。
そこには人形のような見目麗しい男女が柔らかい笑みを浮かべ立っていた。
その瞬間、会場中がうっとりとした声を漏らす。
会場中央へと歩く2人は、この2人しか目に入れてはいけないのかもしれないと錯覚するほどに多くの人達の目線を奪っていた。
シックに着飾っているのに普段とは違うキッチリ決めたオールバックで気品に溢れた白い衣装のウィリアムと、自身の亜麻色の髪によく映える青のお姫様ラインのドレスを着たキャサリンが並んで歩く姿は、まるでお伽話に出てくるお姫様と王子様とが踊りを誘い舞踏会中央へと繰り出すような憧れのワンシーンのようである。
2人もジェームス達のもとに来ると軽く礼をする。
拍手が起こる。
拍手を思わず忘れてしまった者たちからは、うっとりした視線と溜め息が漏れた。
周りの拍手に遅れて気が付き、慌てて力いっぱい叩く者もいる。
ただ出てきただけなのにコレだ!
フッ、この勝負、勝ったな!!
シャララーン。
ウィリアムは常に自信満々である。
「えーと、それではルールを発表いたしまーす。今からこちらが選んだ曲を後ろに居らっしゃいます演奏家の皆様に演奏してもらいます。曲は事前に両ペアに知らせてあります。その曲に合わせ、2組に好きに踊っていただきます。踊り終えた後、すでに配り終えている会場に居る方々の手に渡っている薔薇の花、こちらをより良かった方のペアに渡してもらいます。より多くの花を獲得できた方が勝ちとなります。皆さま、よろしいでしょうか?」
会場から大きな拍手が起こる。
説明を聞き入れたと言う返答を示している。
「それでは始める前に、少しだけ競技者たちへお話を伺いたいとと思いま~す!!」
ヘンリー殿下が横入りする。
「えっ、何ですか?殿下?殿下?そんなこと打ち合わせにありませんよ。」
と、ジェームスが焦り出す。
「まあまあまあ~いいじゃないか。それでは、ハングルド嬢!君はとても妖艶で魅力的だね。そんな貴女が何故この対決に参加されたのか、理由を伺ってもよろしいでしょうか?」
ヘンリー殿下の質問に少しムッとした顔をして、ハングルド嬢が答えた。
「私、学生時代、クロスター様にいつも避けられておりましたの。彼の婚約者になれるようにと、家の者から彼が学院に居る間にどうにかするように言われていましたが、全く相手にしてもらえなかったのです。それなので、良い機会だと思い、対決に参加いたしましたの。」
( あー、この人はお胸が大きいし、ふんわり栗毛だからかな?
いやいや、なるほどあれだな、鎖骨にある黒子の位置だ。
あれがマーガレットと一緒なのか。
ふむふむ、ウィリアムって面白いな~。)
殿下は観察し終えると、会話に戻る。
「ふーん、では、君はウィリアムが好きなんだ?」
殿下が腕を組んでニヒルな笑いを浮かべ、令嬢へ質問した。
「なっ、そうですよ。そうでなければ、ここまでやりませんよ。」
先程までの妖艶は何処へ行ったやら、令嬢は強張った雰囲気でたじろぎ話す。
「では、この勝負に勝ったら。このペアも解消になるのかな~?見納めだね。だって、婚約者のいる者と密着してペアでダンスを踊るのは、常識ではありえないよね?」
殿下は不敵な笑みを崩さぬまま、令嬢に質問し続ける。
「で、殿下、それくらいにして。先へ進みましょう。」
ジェームスが何とも言えない不穏な雰囲気が立ち込め始めたので慌てて止めに入る。
「さあ、御2組共、心の準備はよろしいでしょうか?」
仕切り直しと言わんばかりに、ジェームスがぎこちない笑顔で問うたこの言葉に、会場に居る者は皆、心の中で同じことを思っていた。
殿下のさっきの発言が中途半端で、その続きが気になって仕方ないと。
それにこのままダンス対決をしてしまってよいものなのか?
始めていいのかと、ハングルド嬢ペアを見て考えてしまう。
そんなことはお構いなしといった感じに、ジェームスがサクサクと対決へと進行していく。
手順通り、2組はダンスフロアの中央へ離れて配置される。
意識の狭まっていてそんなやり取りが行われていたとは露知らず、キャサリンはガチガチに緊張していた。
そんな彼女にウィリアムが声を掛ける。
「ケイティ、メグを誘いだしてくれて、ありがとう。こっちを見てくれている。本当に嬉しい。」
シャララーン(歓喜バージョン)
心から嬉しそうに彼女を見て、ニヤケる実兄を見て、気持ちが悪いと思い、キャサリンの緊張が一気にほぐれる。
兄の目線の先に居るマーガレットに目をやると、目が合い、やっと自分に気が付いてくれたと言った表情をキャサリンに向ける。
そして直ぐに口を大きく開く。
おそらく声には出すのが恥ずかしいが精一杯応援したいのだろう。
“頑張って” と、大きく口の形を作ってサイレントで必死に応援していた。
わああ、天使!!!
天使がおる~。
きゃわわよのぉ~。
隣からそう聞こえてきた気そうなくらい兄が悶えていたがキャサリンは無視である。
キャサリンもマーガレットの応援が嬉しかったから、自分にだけの声援だと思い噛みしめる。
独り占めしたかったので、兄の反応なんて視界から排除である。
( ああ、本当は、兄を見極めるのに受け入れたダンスであったけれど、途中から兄の厳しいレッスンによって逃げ出したいと思う事が幾度かあったなんて、本人には言えない。
まあ、最後はブちぎれて逃げずに戦ったけどね。
それにあんなに余裕のない兄を初めて見た。
今までは、何でも優雅にこなし、チャラチャラしている男で、いけ好かなかったのに…。
ここ数日、人間らしく、貪欲な一面を見せられた。
それから、兄がマーガレットに本気であることを思い知った。
でも、でもでも、レッスンは本当に辛かったんだよ、マジで…。)
なんて考えていたが、もうそれも吹っ飛んだようだ。
あんなに必死に応援をするマーガレットを見られたから、ウィリアムによる過酷なダンスレッスンに耐えたかいがあったとようやく思えたのだ。
そんなことをキャサリンが考えているうちに開始の時間になったようだ。
馬鹿らしい兄を思い出したお陰で、緊張は完全にほぐれたようだ。
「それでは、只今から、最近舞踏会で流行りのこの曲【春の歌声】を踊っていただきます。」
後半に続きます。
ダンス曲はウィンナーワルツの【春の声】をイメージしています。
ザ・舞踏会!って感じの曲です。




