第11、12回各対決
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確かに今回の対決は容易かった。
どこかの侯爵令嬢もかなり自信はあったのだろう。
けれども、情報網を張り廻らせ、研究熱心な俺には流行知識なんて知り尽くしていることだ。
シャララーン(憂いバージョン)
まあ、俺がどんな不調であったとしても、軽々と勝つことは出来ただろう。
そんな簡単な対決だった。
やはり、マーガレットは応援に来なかったな……う、ううぅ。
帰りの馬車の中、心底落ち込んでいる俺に、弟が語りかけてきた。
「ウィル兄さん……メグと何があったのかは僕には分からないけれど、メグを傷つけるようなことだけはしないと約束して。僕の大事な幼馴染だから。そう約束してくれたら、僕はウィル兄さんの味方になるよ。それと、僕はメグとの婚約はないだろうから、牽制しなんてしなくていいからね。」
と、ハッキリ言ってくれた。
我が弟ながら、本当にいい奴過ぎて、マーガレットを直ぐに傷付けてしまう自分を愚かに感じる。
ああ、早くメグに謝らないと、自分が愚かであったと謝りたい、謝らなければ。
会いたい!会いたい、会いたい……。
しかし、対決の為に仕事を抜けているので居るならと忙しく働かされ、さらにマーガレットが避けているようで、次の対決までに会うことは、叶わなかった。
その次の対戦、テンペスト対決でも、俺は楽々勝利した。
その時に対戦した令嬢の名前も爵位も全く覚えていない。
只々、こてんぱんに、のしたらしい。
覚えていない。
対戦相手の令嬢が酷く落ち込んで帰ったと後で聞かされた。
ただ、その日もマーガレットは応援に来ていなかったと言うことだけは、覚えている。
また謝れなかった……会えなかった……そう思っていたから。
そして対決後、この押し寄せてくる虚しい心と対峙し、俺はひとりで自問自答するのであった。
俺は何のためにこんなに流行を取り入れていたのだろうか。
何のためにテンペストの腕を磨いた?
何のためにすべてに努力をしてきたのか……。
俺は天才なんかじゃない優秀であるが、どちらかと言うと努力型なんだよ。
そうだ、全てのもので一番を取るために必要だと思ったから全てを研究し取得してきた。
なぜ全てのもので一番になりたかったのか?
なぜそんなに努力したんだ?
それはね、負けたくないからだ。
負けたくない?
誰に?
彼女に決まってるさ。
彼女とは?
マーガレットだよ。
全てにおいてマーガレットより勝たなければならない。
マーガレットは俺に守られていればいいのだ。
だから、俺は何でも、彼女より、いや、他の誰よりも出来なく
てはいけないんだ。
そうすれば幸せじゃないか。
彼女を幸せにしたいんだ。
だってマーガレットは俺の大切な人だから。
シャララーン♪
自問自答をしていくと、全ての自分の行動力の原点には彼女が居る。
こんなにも彼女を欲しているのに伝わらない。
どうしたらよいのだろうか。
気持ちの沈んでいる俺のもとへ近づいてくる者が居た。
こうなった原因の張本人が、俺に近づいき飄々と声を掛けてきたのだ。
来るな、あっちへ行けよ。
お前の顔なんて、しばらく見たくないぞ!
裏切り者のジェームスめ!
「ウィリアム、お前は本当に、拗らせすぎだ。もう誠意を見せるしかないぞ。まずは、味方を増やせ。君には、すぐ近くに味方になってくれたら心強い人が沢山いるじゃないか。その中でもメグに一番親しく、敵に回すと厄介になる人物をまずは懐柔させないといけないんだよ。」
俺を憐れんだ顔のジェームスが助言する。
よく平気で俺に声を掛けられたなと内心苛立ちながら、ウィリアムは該当すると思う人物の名前を口に出す。
「ケイティか?」
その名前にジェームスが口角を上げる。
「そうだよ、凄く大変だろうけど頑張ってね。それと、次はダンス対決だよ。相手の令嬢はかなり強敵だって、学生ダンスコンテストで2年連続優勝をしているらしいから。パートナーはその時の相手だった者だ。ウィリアムのパートナーは誰?メグはあり得ないとして、誰にするつもりなの?」
ジェームスが面白そうにニヤニヤ笑いながら話す。
俺はその顔に再び腹が立つ。
メグがパートナーになる可能性を潰したのもお前の癖に!!
なんで普通に話し掛けてきてんだよ。
こいつ!こいつめー!腹立つわ~。
「学生ダンスコンテスト?そんなのあるのか?パートナーは……妹に、ケイティに頼んでみる。」
そっけなく返事をする。
「しなければいけないことが分かったのなら、全力で頑張りなよ。」
ジェームスが優しい声で、励ましてくれた。
え?何でだ?
俺の態度を見ていれば、ジェームスの事を嫌がっているのは分かるだろうに、それでも話を続け、俺に助言をしてくれた。
それに最後、ジェームスから明るい声で励ますような言葉が返ってきたのが、凄く意外で驚いた。
何で助言を?
俺を嫌って、マーガレットに近づけないのではないのか?
だから嫌われるように俺に嫌がらせしたのではないのか?
そうじゃないのか?
「お前は、俺が勝つことを願ってくれるのか?味方なのか?」
俺は、ジェームスに真意を直接聞いた。
「いいや、俺は見守っているだけだ。立会人という立場上、公正でないといけない。まあ、メグの兄としては正直、昔からお前を見る度に歯をギリギリさせている。ただ、俺も、ウィリアムが負けるところを、何も言わずに見ているのは、気持ち的によろしくない。病気になっても困るしな……そのやつれた様子だと反省もしているようだ。それ、隈、俺の暴露のせいでしょ?言っておくけど、暴露したことは謝らないよ。メグの為だったからね。でも少しくらいは、君に助言をしても良いかなと思ったのさ。」
さすが手厳しい幼馴染、何でもお見通しのようだ。
不眠になってるのが、バレてるみたいだな。
「フッ、お前の思考は複雑すぎるぞ。ただ、お前らしいな。助言、ありがとう。」
ウィリアムは、さっきよりも自然な笑顔で笑い、ジェームスに感謝を述べた。
ジェームスには嫌われていないのかもしれない。
むしろ、応援しているのかも!?
よし、こいつを義兄さんと呼ぶためにも、やるっきゃないか。
まずは、味方作りだな。
よし、やってやるぜぃ!!
シャララーン。
俺は早急に帰宅し、妹にダンスパートナーを頼むことにした。
今回は流行りもの知識とテンペスト対決。
ウィリアム、マーガレット不在で落ち込みモード。
シャララーンがなかなか入れられない。
次回よりダンス対決編突入。




