俺、バラされる
お読みくださり感謝です。
現在に戻ります。
対決終了後の現在。
2人が図書室で会っていた当時を思い出し、俺は落ち込んでいる。
2年前のマーガレットの想い人である教師を他の女とくっ付けてしまおう作戦にとりあえず成功し、浮かれていたあの当時の俺に、真顔で言ってやりたい。
何の意味も無かったぞって!!!!
何故だ?なんであの男と未だに連絡を取り合っている?
相手は既婚者なんだぞ?
メグのことなんて、これっぽっちも考えもせず、学院を辞めてサッサと結婚した男だと言うのに。
そんな奴よりも、俺の方が何倍もイイ男だろうが!?
シャララーン。
あいつにあって俺に無いものって、なんだ?
メグは根暗が好みなのか?
あれは美しくもないし、体格もヒョロヒョロだぞ。
あえて、優秀でない男が好きとか?
マーガレットは男の趣味が悪いのか?
「ウィリアム、さっきから何を言っているのかよく分からないのだけれど、私はバクレー先生に恋なんてしていないわよ?」
グルグルと答えの出ない悩みを考えている俺に向かって、マーガレットが言った。
「はぁ?いやいやいや、お前、図書室で休み明けに必ずあいつと逢引していたよな?コソコソと話をしたり、プレゼントしたり、あれって付き合っていたのではないのか?」
その言葉に、何故知っているのかと分かりやすく表情に出し、驚きで目を丸くするマーガレット。
「あああ、逢引!?あれは、その、それはそうではなくて、とにかく、先生とは付き合ってないわ!二人で話をするのに、図書室の一角を借りてはいたけれど、室長にも許可を得ていたし逢引じゃないから。それに、コソコソは図書室だからであって。そう、プレゼント!あれは、彼から私への贈り物ではないのよ。」
マーガレットが激しく動揺し釈明する。
「あいつからじゃない!?あんな目であいつを見つめていたのに?お前の付き合っていた相手は違う奴なのか?そいつから頼まれて、教師が取り持っていたというのか?なるほどね……それで誰なんだ?あいつを介して誰を想ってていたんだ!?」
マーガレットに詰め寄るウィリアムの勢いに押され、マーガレットは後ずさりをする。
それに気が付いたウィリアムが逃げられまいと腕を強く掴む。
痛いと小さく発し、マーガレットが顔を歪めるがウィリアムは強く掴んだままだ。
離すどころか、顔を怒りで固め、指の力が強くなる。
痛さが増し、ウィリアムの行動に腹が立ったマーガレットは腕を思いっきり振り払い言い放った。
「だから、誰とも付き合っていないわよ!!バクレー先生のお姉様が、私が興味を持っている世界創世記の研究をしている憧れの人だから、それについての話を聞いたり、お姉様と手紙や物を交換したりして、その仲介を先生がしてくれていただけよ。先生を色恋の目で見たことは一度もないわ。それに仲介してもらうだけだと悪いから、こちらからも先生にお礼を差しあげたり、先生の趣味である本の感想を言い合う話相手になっていたのよ。先生、学生向けの冒険小説が好きだから、大人の貴族だとなかなか話せないって、それに付き合っていただけよ。」
マーガレットが大声で会っていた理由を捲し立てた。
「そうだったのか…………俺はてっきり、メグの初恋だったのかと……立ち去るあいつに、恋をしているような目を向けていたから。」
先生に向けた眼差しではなく、彼を通して憧れのお姉さまへと向けたものだと恋心を強く否定するマーガレットを見て、あの教師は本当にマーガレットの恋人でも想い人でもなかったのだと分かり、嬉しく思ってしまう。
だがすぐ、その考えは醜いよくない感情だと俺は否定したくなった。
俺は知っている。
これは嫉妬だ。
付き合う女たちが俺と関わる女に向けていた醜い、醜い、汚い感情だ。
俺も同じにはなりたくないんだ。
あっ、これか、今までこうやって俺は、マーガレットへの気持ちを否定して来たのか……。
するとその時、ジェームスが割って入り話し出した。
「そうか、なるほどね。メグが先生と付き合っていると勘違いをしていたから、先生のもとへ可笑しな女達を次々に送り込んだってわけか。」
ジェームスが悪い顔でウィリアムに向かって言い放った。
マズイ!!それは、マーガレットにバレてはいけない話だぞ。
言うな、言うな、言うなー。
それ以上話すんじゃない!
「どういう事?先生に何かしたの?」
ほら、マーガレットが疑問を抱いちゃったじゃないか。
マズいマズいマズイ。
「こいつらの勘違いから、メグと先生を別れさせる為に先生のもとへ女を向かわせて、先生を誘惑するように仕向けていたんだよ。」
俺は本当の事をジェームスに暴かれて、息を飲んだ。
ついに俺のやった悪行がマーガレットに知られたのだ。
「な、なんてことを……じゃあ、あの時の綺麗な女性達はウィリアムが寄こしていたの!?あれの所為で、先生は婚約者と仲違いをしてしまって、とても苦労したのよ。結婚できたからよかったけど、そうじゃなかったら取り返しがつかなかったわ。私に嫌がらせするならまだしも何故、そんなことをしたのよ!?ウィリアムは、私がどうなろうと関係ないのではなかったの?無視してくれればよかったのに。」
マーガレットが怒り心頭で言葉をぶつけてきた。
別れさせる作戦を知っていて止めなかった殿下も、手を少し貸してしまったフレデリックもとても気まずそうにしている。
俺は俯きながら、マーガレットに向かって謝った。
「すまん、勘違いとは言え、酷いことをバクレー男爵にしてしまった……申し訳ない。ただ、メグがあいつに取られるのが嫌だったんだ。お前は俺のだろう……勝手に幸せになろうとするなんて、嫌だったから。」
その時、ブチっと太い何かがキレたようなそんな気がした。
顔を上げ、マーガレットを見ると……両目から大きな涙をボロボロと流し、口を強く噛みしめていた。
苦しそうな何かを思い切り言い放ちたいが押しとどめるような顔をしている。
そして、静かに震え声で話しだす。
「私が幸せになるのが、そんなに嫌なの?私はあなたの玩具ではないし、あなたの物でもない。私は、心のある人間なの。ウィリアムが私の事を嫌いなのは昔から分かってる。嫌いであるならば、どうかこれ以上、私に関わらないで。放っておいてよ。」
マーガレットが涙ながらに懇願する。
ウィリアムはこの状況に思考が停止した。
マーガレットは逃げる様に踵を返し立ち去ろうとする。
その後ろ姿に声を掛ける。
「メ…グ…」
か細く呼ぶその声が聞こえたのだろう、ほんの一瞬止まるも振り向くことはなく、マーガレットはその場を離れて行った。
「おい、ウィリアム…あの言い方じゃ、誤解を生むよ。」
「ああ、あれはまずい、早く謝るべきだ。」
フレデリックと殿下が駆け寄り助言する。
「泣いていた……泣いてたんだ!俺が泣かした。2度目だ。俺は……あいつを傷つけた。何がいけなかった。俺は何を間違ったんだ?俺はメグと一緒に居たいだけなのに、メグを好きなだけなのに、メグに俺を好きなってほしいだけなのに……どうしたらいいんだ。」
激しく取り乱す俺。
そこにスッと近づいてきてジェームスが見下しながら淡々と言った。
「とりあえず、自分の気持ちを落ち着けなきゃダメだ。そのままでは冷静な判断が出来ずに、また暴走してしまうよ。」
「ジェームス、お前がそれを言うのか?なぜバクレーの事をバラしたんだ!言わなくてもよかったことだろうが。」
フレデリックがジェームスに食って掛かる。
「はぁ?言わなくてよかったことだって?真実は知るべきだよ。ウィリアムがしでかした悪行もすべてを知って、それから妹が総てを判断するべきなんだ。そう思ったから俺は言ったまでさ。あとは、ウィリアムがどう行動するかだろう!?」
ジェームスがそう言って強い眼差しでウィリアムを見た後、次の対決の話をし出す。
次は3日開けて流行知識対決だそうだ。
今回は女を巧く扱うのに身につけてきた流行知識、ウィリアムには容易いだろう?と。嫌味のように言い残し、ジェームスは去っていった。
ジェームスのきつい皮肉、でもウィリアムを嫌いなわけではないのです。




