表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

俺、宣言する

中世ヨーロッパ風です。

男主人公ですが恋愛モノです。

 おかしい点もあるかと思いますが、心を広くして、お読みください。よろしくお願いします。


「60日だ、60日の間に私に戦いを挑んで来い。私が負けたならば、勝った者を私の婚約者としよう。対決内容は、挑戦する者が決めて良いこととする。」


 名のある貴族の集う宮廷舞踏会の一角で、アドラシオン国で一二を争う美丈夫の若き男が、高らかにそう宣言した。


「では、何かしらの勝負に勝てば、ウィリアム様の婚約者になれるという事なのですね。」


 先程からウィリアムと呼ばれたその美丈夫な男の横をら陣取り、男の腕に自信の腕を絡ませ胸を押し付けていた美しい令嬢が、その宣言に反応し高揚した声で尋ねる。


「ああ、勝てば私の婚約者だ……勝てればだがな。そう、私は誰にも負ける気はない。私は、相手が己の気持ちを好き勝手に押し付ける結婚ではなく、自らが決めた者と結婚したいのだ。だから、絶対に負ける気はない!」


 そうハッキリと宣言し、男が腕を振り払いながら答えると、横の令嬢は鋭い目つきで彼を見つめた。

 美丈夫な男は令嬢のその顔を確認すると、ニヤリと笑った。


 その男は周りを見渡し、意気揚々とさらに宣言した。


 すべて勝ってやる。そう全てだ。

 俺は、負けない!!


「さあ、全力で掛かって来い!」

シャララーン。



   ***



 この世界は大半が海であり、西と東に広大な面積の大陸が2つほど存在する。

 そのうちの東の大陸のさらに東の端の国にあるアドラシオン王国で、この可笑しな宣言は行われた。


 その宣言を行ったのは、程よく鍛えられた肉体、スラリと伸びた背に長い手足、お伽話に出てくる綺麗なブロンド髪が揺れる王子のような容姿に、頭脳明晰、武勇に優れ、この国の誰からも慕われるような性格の持ち主(注:性格のみ本人談)と言われている男だ。


 その男の名は、ウィリアム・クロスターという。


 さらに彼は、この国の四大公爵家のうちの一つ、クロスター公爵家の跡取りである。 

 向かうところ敵なし、最強の勝ち組なのである。


そう、最強の勝ち組である。


 そんな俺に、落ちない女は存在しない!!

 そう思っていたんだ……2年前までは……。



「面白いことをやっているね~。」


 ウィリアムの宣言の最中、楽し気に話しながら現れたのは、この国の第3王子ヘンリー殿下である。


 殿下はウィリアムと同い年で、お互い高い身分のため、煩わしい取り巻きを近寄らせないようにする目的で利害が一致し学院時代はよく共に行動していた。

 お互いに素を熟知している所為か、今でも仲は良い。


 だがしかし、殿下は昔から無類の面白いもの好き、悪戯好きの男であり、その部分はよく周りを困らせている。

 つまり、この宣言を殿下に嗅ぎつけられたという事は、非常に面倒臭いことになるということなのである。


「ヘ、へ、ヘンリー殿下!?」


 ああ、マズイマズイマズイー!!!

 うわあぁぁ~嗅ぎ付けられたよ~。


 俺はそう心の中で叫びまわりながら、表情や態度は冷静を装い、いつものように首を曲げ王族への挨拶の姿勢を取った。


「挨拶はいい。皆も姿勢はそのままで。それよりウィリアム、面白そうなことをやっているではないか!!私も是非混ぜてくれないか?」


 無邪気な笑顔を向けて、殿下がお願いしてくる。


 こ、これは、非常にまずい!!非常事態宣言。

殿下が言うと、それはもう、お願いじゃなくて、命令だから。

 そう考えながら逃げ道を探すのだが、なかなか見つからない。


「あ、あのですね。殿下の御手を煩わすわけにはいかないといいますか…………ゴニョゴニョ。」


 王族でなければ直ぐにでも強く断りたーい!!

 と、脳内で激しく思いながら、モゴモゴと語尾の声をくぐもらせていると、殿下が話を勝手に進め始めた。


「全然煩わしくないよ~。あっそうだ、私が勝負の立会人になろう。勝敗を判断する者が必要だろう?私だけでは足りないから~あっ、あそこにいるのは、フレデリックゥーーー!」


 そう名を呼ばれて、遠くで楽しそうに令嬢達と会話をしていた銀髪の男が体を激しくビクつかせた。


 呼ばれた男はこちらを確認し、苦笑いする。

 殿下が手招きすると、仕方がないと言った具合に令嬢へ断りを入れて、こちらに寄ってくる。


「どうかなさいましたか、ヘンリー殿下。」

「君も立会人になってくれ。」

「立会人?」


 フレデリックが、ウィリアムを見る。


 あ~あ、さらに面倒になったな………。


 ウィリアムは仕方なく、フレデリックにこれまでの経緯を話す。


 この銀髪の男、フレデリックは俺と同じ四大公爵家の一つ、ケント公爵家の子息で昔からよく知っている。

  同い年の為、学院でも殿下共々、目論見が一致し、よく一緒に行動していた人物だ。


 彼の欠点は動くことを極端に嫌うものぐさな性格であるところだろう。

 それゆえ、いつもよく気の利くテオという従者を連れているのだが、今日の王家主催の舞踏会にまでは、流石に連れてきていないようだ。

テオがいたら、捲き込まれてなかっただろうに……。


 殿下と話し終えたフレデリックに、

「お前、いったい何してるんだよ。」

 コソコソ声で突っ込まれる。


「う、うるさいなー。」

 俺はそんなの分かっている事だから触れてくるなと、思わずよく知る間柄であるので反抗的な言葉で返してしまった。

 その様子にさらに呆れるフレデリック。


 わかっているよ、馬鹿なことしているってことは……分かっているんだ。

 俺だって、大事(殿下まつり)にはしたくなかったさ。


 でも、殿下が絡んだ時点で、終わりだろう?

 ほら、どんどんこの御方の周りには人が吸い寄せられてくる………万事休す。


 先程の宣言の続きをと、ヘンリー殿下が周りを見回して話し出す。


「さて、先程のウィリアムが話していた勝負だけだと、ウィリアムの人気は相当だ。おそらく挑戦者が殺到し60日では到底足りなくなってしまうだろう。そこで、少しばかりルールを追加させてもらおう。」


 俺にアイコンタクトを取り、話を進めるヘンリー殿下。


 ケッ、もうどうにでもなれ。


「まず、彼は公爵家の跡取りであるので、それに見合う身分かどうかの査定はさせてもらう。相応しくない場合は切り捨てる。さらに、60日間休まず毎日対決と言うのは、彼一人に対してフェアではないだろう。君は毎日でも挑戦を受けるつもりだったようだけれど、それは無謀すぎるぞ。そこで、対決後は必ず3日は開けることとしよう。それと、怪我をしたり、何か不備が生じた場合は一時休止というルールも付け加える。それだと、対決の回数は最終だけ一日前倒しにして全部で16回になるが、どうだろうか?」


 俺とフレデリックを交互に殿下が見て確認してくる。

 俺はまともな意見であったのと、反対意見がないので頷く。


「ああ~うん、それでいいんじゃない?」

 面倒なのか、フレデリックが殿下の意見に軽い口調で同意する。


「あと、そうだな~対決の受付は……あっ、ジェームーース!!」


 ソロリソロリと巻き込まれないようにその場から去ろうとしていたラックランド伯爵子息が殿下に見つかり呼び止められた。


 ビクンと体を逸らせ反応すると、体をこちらに向け顔を上げ、笑顔を張り付ける。


 ジェームスが振り向き

「ヘ、ヘンリー殿下、私に何か御用でしょうか?」

 そう殿下に尋ねる。


「うん、君に対決の受付係をお願いしたいんだー。僕や彼らでは序列的に話し掛けづらい者もいるだろうから、伯爵家の君ならば色々とうってつけだろう。それと、君も対決の立会人になってもらうよ。」


 その殿下の言葉に、

「はっ、かしこまりました。」

 ジェームスが笑顔で返事した。


 あ、あいつ、心底嫌そうだな~こめかみがピクピクしてるじゃないか……。

 まあ、殿下の指名じゃ断れるはずもないもんなぁ、巻き込んですまん。


 受付係を命じられ、殿下より皆へ紹介されている最中、ジェームスは、さっさと妹と共にこの場を去っていればよかったと、心の中で深く後悔していたそうだ。

 

 ジェームス・ラックランド、彼はラックランド伯爵家の跡取りだ。

 ラックランド伯爵家は王家と同じくらい古い家柄で、財力、領地を維持し続けている優秀な一族である。

 その為、伯爵位であるが高位貴族の者達とも昔から親交もあり、ウィリアムを良く知る者で幼馴染でもある。

 

 皆へジェームスの紹介が終わった後、殿下がニヤけた顔で、ジェームスへ話し掛けてくる。


「ところで、ジェームスはさっき、何処へ向かおうとしていたのかな??」


 (まずい、この問い!?下手に返事しては窮地に追いやられる…。

 殿下ってこういうところがあるから厄介なんだよっ!

 ふぅー、これはこの場で何かしらの借りを俺に作らせる気満々だな。

 面倒にならないように適当な理由で誤魔化して乗り越えなければならない)


 内心、こんな感じでガクブルと震え、考えを巡らし絞り出していたジェームスは、なんとか冷静に返した。


「それは、妹のもとへ、です!ち、父を探していたようなので、手伝いに行こうかと思いまして。」


 期待した答えとは違う答えであったのだろう。

 少し拗ねた表情をした後、殿下がこう言った。


「ああ、それならば解決済みだよ。私がここへ来る前に私は君の父上と話をしていたのだ。その時に君の妹さんが血相変えてやってきて、この面白い宣言の話をしてくれたのでね。私はその話を聞いて、ここへやってきたのさ。」


「そう……でしたか……。」


 殿下からの面倒ごとは免れたのに、ジェームスは心なしか顔を曇らせている。

 そして、小さく息を吐いた。


 その時である。


「受付係のラックランド様、(わたくし)、ウィリアム様に対決を申し込みたいのですが、よろしいでしょうか!」


 ジェームスは、背後から誰かに声を掛けられた。





次回、第1回目の対決です。

この回の登場人物メモ

 主人公:ウィリアム・クロスター(四大公爵家クロスター家長子)

 主人公の学友:ヘンリー殿下(第三王子)

        フレデリック・ケント(四大公爵家ケント家次男)

 一つ下(幼馴染):ジェームス・ラックランド(ラックランド伯爵家長子)


シャララーンは、男前音♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ