第六話 車いす作るの難しいよ!
閉じていた目を開けた時に広がる景色はゲームの中とは思えなかった。まるで、外国に旅行に来たみたいな感じだ。しかし、サービス開始日なのに人が少ない気がする。あ、私さっきまでラヴィさんのところいたからみんなから出遅れてるんだ。みんな散らばってるんだね。とりあえず、亜里沙はどこにいるんだろう。
_ピロロンピロロン_
おっと。フレンドコールだ。招待した人とされた人は最初からフレンド登録されてるんだったね。亜里沙の名前はアリーシャか。私も人のこと言えないけど、亜里沙もだね。
「アリーシャ、今始まりの町入れたんだけど、どこにいる?私、噴水の縁に座ってるんだけど」
「カーマって名前にしたんだ、私少し魔物狩りしてたから、すぐに町へ戻るね」
「了解、その間にいろいろできないか試してみる」
「生産セットがないと何もできないでしょ?」
「さっき、歩けないことで運営からお詫びとしてもらえた」
「え?まじで!?」
「うん、みんなもスタートしてるし、動けないからだろうけど、少し、裁縫でもして遊んでる」
「了解、すぐ行くよ」
さて、アリーシャが来るまでに人形を作ろう。
「生産セット、【裁縫】オープン」
生産セットから針などの裁縫セットが出てくる。本格的な裁縫セットって何だろう。ミシンとかになるのかな?
とりあえず、パーツごとにデフォルメにして作っていく。サイズは私の頭サイズになるようにしよう。体とかはすぐにできるとして、頭をかわいく作って、あ、天使の羽も忘れないようにしないと。で、パーツに綿を詰めて、へー、システムアシストもいろいろあるんだね。綿は自動で詰めてくれるアシストねー、布は自動裁縫だけど。アーツ以外は全部自分でやったほうが経験値的においしいらしい。品質は良しあしらしいけど、生産職はそこがネックになるようだ。リアル器用は優遇されるってやつか。とりあえず、パーツがそろったからそれぞれを縫い合わせていくと。うーん、何か忘れている…あ、服作らなきゃ。とりあえず、ワンピース風に作っていって、羽はどうしよう、あ、背中を少しはだけた形にすれば大丈夫か。うーん、かわいいラヴィさんだ!
|【裁縫】がレベルアップしました|
お、レベルアップした。ちなみに品質はと
|ラヴィちゃん人形 品質60 C |
たしか、品質はランクがあって、100がS、90-99がA、70-89がB、50-69がC、30-49がD、それ以下がEランクだったよね。うん、可もなく不可もなくか。
「君、その人形かわいいね、手作りだよね?布素材どこで手に入れたの?」
いきなり、背の高い女性から声を掛けられる。かなりの美人さんだ。
「あ、えと、その」
「あ、ごめんね、私不知火っていうの、西洋だけど、冒険者なら日本風もありかと思ってこの名前にしてるんだ、もちろん本名じゃないよ」
「あー、すみません、私カーマっていいます、友達待ちながら人形作ってました」
「そうなのね、ところで、言いにくかったら別に良いんだけど、布素材ってどこにあるの?日本風に着物とか作ってみようかと思って探してるんだよね」
「あー、すみません、これ、私だけ運営から貰えたんですよ」
「え?なんか不具合でもあったの?」
「いえ、ちょっと言いにくいんですけど、私足が不自由でそれがギアのせいだって勘違いがあって…」
「あー、ごめんね、リアルのことはあまり話したくないよね」
「あ、そこは大丈夫なんですけど、布素材は始まりの町周辺で手に入るものだと思います」
「そうなの?そうだ、まだ、ご贔屓にしてる生産職も居ないし、暇があったら着物とか作ってくれない?素材は持ち込むから!」
「えーと、先に車いすを作りたいんで、それが全部終わってからとかでもいいでしょうかね?」
「もちろん!というか、車いすの素材が無かったら私がそれも取りに行くよ!いろいろ手伝わせて!」
「ありがとうございます」
_ピロロンピロロン_
「あ、フレンドコールだ、アリーシャだ」
「カーマ、今どこ?」
「あ、噴水の前で不知火って背の高い女の人と二人でいるよ、髪が赤い女の人と私は黒だよ」
「あ、いたいた」
「こっちこっちー」
「こんにちは、私、不知火って言うんだよろしく、カーマちゃんはさっき会ったばかりだけどいい子だね」
「こんにちは、アリーシャって言います、カーマはいい子ですよーこっちが心配になるくらい」
「確かに、守ってあげたくなるね、というか、守る」
「お、私も同じ気持ちですよ、冒険者のすべてが優しいわけじゃないですから、カーマが騙されないようにしないといけないですからね」
「よし、アリーシャちゃんもフレンド交換しよう!」
「ぜひ!」
なぜか、人をダシに意気投合してる…あ、フレンド通知だ。えーと、承認ボタン押すだけだよね。
「よろしくねー、二人はこれからどうするの?」
「私はカーマの予定次第ですね」
「私はとりあえず、車いすが第一目標決定です」
「なら、素材集めから?」
「いえ、それも運営から貰ってる物の中で足りそうかなと考えてます」
「なら、生産場に行くかね、足りない素材あったら私がもってる素材から出すよ」
「私も私も」
「生産場の場所わかりますか?」
「たしか、ギルドの近くだったな」
「じゃ、付いて行きますね」
「どうやって付いてくるの?まさか、匍匐前進とかじゃないよね?」
【念動】で自分を浮かべようとする。しかし、浮かばない…あれ?
「【念動】使ったんですけど、浮かないですね」
「いや、スキルレベル1で上げられたら、強すぎだから」
「え?どうしよう!それで移動できると思ってたから、移動できない!」
「不知火さん、こういうところがあるからカーマは面白いんですよ」
「確かに…まあ、とりあえず、背負うから背中に乗って」
「え、すみません…材料余ったら不知火さんの着物作りますね」
「別にいいよ、アリーシャちゃんも行こうか」
「はい!」
不知火さんに背負われて、生産場に向かう。
「おい、あいつ見てみろよ、なんか、背負われてるぜ」
「ロールプレイかなんかか?不具合なら運営が動くだろうし」
「ていうか、背負ってるの不知火か?」
「あの、赤髪間違いない、炎の不知火だ」
炎の不知火?なんか、私たちが目立つからかいろいろ言われているけど、なんだろう?
「不知火さん、なんか、さっき炎の不知火って聞こえたんですけど、なんなんですか?」
「あ、それ聞いたことある、なんか、烈火のごとく敵を葬り去る姿と髪の色かららしいよ」
「有名なんですねー、って不知火さん、ものすごい顔赤いですよ」
「あまり、その名では呼ばないでくれ、リアルのイライラとモンスタートレインに怒って、暴れまわったときにできたあだ名なんだ…」
「あー、言わないようにしますね、というか、聞いたら言わないように伝えときます」
「すまない」
「つきましたよー、生産場、とりあえず、全体生産場でいいですよね?お金ないし」
「そうだね、無料で作業できる代わりにできたものが周りに見られるから、お金の余裕とかがあれば個室だけどね」
この世界の通貨単位はZsである。生産場は個室は1グループ1時間1000Zs取られる。初期の所持金は3000Zsであるために痛い出費だ。時間がたてばホームをもつ冒険者もいるために、生産場自体が使用頻度が減るらしいが。私が払ってもいいが、なるべく、素材を買っていきたい、外に出てもどうなるかわからないし。
「とりあえず、作りますかね?アシスト有で、最初は作るつもりなんで、どうなるかわからないですけど」
ちなみに、いろんなゲームみたいに装備枠というものは存在しない。代わりに装備したものの重量によって動きが阻害されたりする。そこをどう組むかを多くの冒険者は考える必要がある。金属鎧で全身を固めすぎてSTR不足により動けないプレイヤーが出たので、武器の重さは重要なのだろう。ゆえに車いすの重さも考えねばなるまい。でも空洞にすると耐久がー!とりあえず、減らせそうなところは減らして、作ってみよう。
「どんな感じで作る予定なの?」
「そだねー、座る部分は布とかで軽量化をはかりつつ、耐久が減らないように作る予定」
「戦闘ではほとんど動けない後衛職になるのかな?」
「そうですね、固定砲台になります」
「物は言い様だね」
「うっさいやい!」
生産セットを出して、鍛冶を選択する。まずは金属の加工からだ。インゴットになっているようで、周りの数名がこちらを見ているが気にしない。あまり、運営からもらったとか言いまわすとめんどくさい事なりそうだな。
というか、一緒にいるのが不知火さんだから言ってくる人もいないな。ありがたや、ありがたや、着物を一生懸命作ることにしよう。銅のインゴットは簡単に変形していく。暑いなー、これ、リアルじゃ絶対できないや。骨組みを銅で作っていく。これ、難しいな。
同じ長さの金属棒をを7本準備して、2倍の物を2本、あとは、テントみたいな形の作ってとそれぞれをつなげていくと、うん、なんか椅子の足がおかしな椅子の骨組みみたいになった。下のところは車輪用だけど不格好だなー。とりあえず、少し太めの車軸用金属作ってと、金属の加工はこれで終わりかな?
次は車輪だけど、ゴムないからなー、【木工】で作るしかないかな?少しでも軽くしたいからなー、数作っておけばいいか。セットを木工に変更する。お、手動式のドリルあるや、太さは車軸に近いやつあるね!あとは布巻いて調整すればいいか。穴を空ける、穴を空ける、穴を…とりあえず、一つの丸太アイテムから10個の車輪ができた。耐久?そんなもの見ちゃいないよ。全体が完成したときの耐久で考えるよ。車軸に布を巻いてしっかり車輪を固定するこれがずれると車いすは車輪が勝手に外れていくことになるんだろうなー。ある意味これがほんとの脱輪だね!とりあえず、車輪に骨組みを載せてみる。
「おー、形になってきたねー、ものほんには程遠いけどね」
「始まりの町では合金なんて夢のまた夢だしな」
「早く、【念動】上げて移動できるように頑張ります」
「そうだな」
「あとは布張るだけですかね」
椅子と背もたれの部分に布をつけていく。耐久的に心配があるけど、頑張ってくれ!…念のために2重にしておこう。位置がずれないように縫い付けてと、完成だ!
|【鍛冶】【木工】【裁縫】【DEX強化】がレベルアップしました。|
|簡易的な車いす 品質 50 C |
|耐久 300 |
|古代文明の発掘品に似た形をしているが、似ているだけである|
「とりあえず、完成かな?」
「お、座ってみてくれ」
不知火さんに促され座ってみる。うん、座れはする。いろいろ材料がそろったら改良版を作ることにしよう。
「後ろからおすよー」
「ゆっくりとね?」
「もちのろん!」
ゴロゴロゴトゴト、ゴロゴロゴトゴト、ゆれるー。
「押し辛い、いつものやつより重い」
「こっちも乗り心地最悪だけど、これで我慢するしか…」
「どう見ても材料が悪いよなー」
「ゴムとか欲しいなー」
「βではなかったからすぐには無理だろうね」
「とりあえず、街中見て回りたいな」
「ギルドに行って登録だけしとく?」
「いいですねー、私もさっき外に出てクリアしたクエスト報告したいですね」
「じゃ、行きましょう」
「車いすの改良は急務だわ、これは辛すぎる」
「押す側もかなりのSTR要求されるね」
「軽量化と強度、上げればきりがないな」
「運営が作ってくれたりしないかな?」
「なんでもかんでも運営に頼りたくないし、この苦労もゲームだから楽しめるからいいよ」
「とりあえず、カーマちゃんは登録、アリーシャちゃんは報告だね、アリーシャちゃんは素材も売る?」
「いえ、カーマに預けて防具とか武器にしてもらおうかと思います」
「了解、なら、終わったら町の中見まわろうか」
「ようこそ、ギルドへ、本日のご用件は依頼ですか?」
「いや、この子の登録だ」
おおー、獣人だー。あれ?生産場とかドワーフっぽい人とかエルフっぽい人いたな。別に人間種以外も居たんだなー。車いすのこと気にしすぎて忘れてた。
「護衛依頼などではなく、冒険者として登録するのでしょうか?」
「そうだよ」
いつの間にか二人でやり取りしていたようだ。受付のウサギ獣人の人が心配そうにこちらを見つめている。
「大丈夫です。納品依頼などの簡単な依頼をしていくつもりなので、車いす改良が終わるまでは…」
「納品依頼は品質C以上でないとはじかれるのと、期限が厳しいものも多いので、お気を付けください、あと、戦闘は今の状態ではお請けさせるわけにはいかないと思いますので、ご了承ください」
「それは…仕方ないか」
不知火さんが考え込んでから引き下がった。うん、私もこんな状態のやつに戦闘依頼とか無理だね。とりあえず、生産依頼をこなすことをしながら、ちょこちょこ外出てるかな。
「では、条件付きですが、冒険者登録を行います。説明は必要ですか?」
「いえ、こっちで説明しとくんで、大丈夫だよ」
「不知火さんが説明してくれるなら、大丈夫そうですね」
「あ、そういえば、私カーマって言います、よろしくお願いします」
「失礼しました、私はボーパルと申します」
え、首狩りウサギ?なんか、怖い名前だな。
「カーマ、こいつ怒らせたら死に戻りすることになるぞ、ギルドでもかなり強いからな」
「何をおっしゃいますか、不知火さん、私はか弱いですよ」
「はっはっはwww冗談はよしてくれ、住人の冒険者があんたを怖がってるの見てるし、あんたの空気はほかと違うからな」
あれ?なんか、空気がおかしいな、何人かの冒険者が走って外に出ていった。私も動きたいけど、動いたらなんかやばい気がするのだけはわかる。二人とも笑顔なのになんで?
「カーマ、登録終わった?どもども、ボーパルさん」
「あら、アリーシャさん?カーマさんとお知り合いで?」
「うん、親友なんだ!」
「でしたら、この性悪女と引き離しなさいな、この子のためにならないわよ」
「不知火さん、良い人だよ?」
あ、やばい、不知火さんの笑顔が深くなった。さっきと正反対の感じになってる。意趣返し成功って顔してる。あ、また人が出ていく。もしかして、さっきのは住人側で今度はプレイヤー?私も出ていこうかな?
「アリーシャ、不知火さん忙しそうだし、外で待ってない?」
「ん?不知火さんなんかあるんですか?」
「いや、特にないよ、この腹黒兎は今度ケリをつけるからいいよ、とりあえず、カーマちゃんにギルドカード渡しなよ」
「そうですね、決着は今度にでも…カーマさんこちらがギルドカードです」
渡されたのは白いカードランクはEとなっている。
「最初期はEランクスタートですので、しかし、カーマさんはCランクが現状では最大になるかと」
「そだな、戦闘ができないとなると護衛依頼ができないしな」
なんでも、Bランク以上では護衛依頼が多いらしい。戦闘依頼もかなり手ごわいらしい。Cまではいくつか生産向けの納品依頼があるらしいが、B以上はめったに出ない。貴族がCランクに直接依頼しない限り出てこないらしい。生産のみでB以上になるには大変だね。ちなみに戦闘はA以上が尊敬されるレベルらしい。Sはギルドの支部長の承認か貴族の推薦によりギルドマスターが承認するシステムになってるらしい。
「最初のうちは車いす改良に全力を注ぎますから、ギルドも二の次になりそうですけどね」
「カーマさんは私の権限で、緊急依頼も除外しておきますね」
「へ?緊急依頼?」
「スタンピードのような緊急事態の時にその街にいる冒険者は全員強制参加の依頼があるんです、まあ、滅多に起きないですけど、起きたら町の防衛をしてもらうことになるんですが、カーマさんは除外します」
「えー、私も町のために戦いますよ」
「いえ、そこは支部長権限を行使します」
「え?ボーパルさん受付なんですよね?」
「はい、そして支部長です」
この人何してんの?支部長って奥で書類の山とかに埋もれてるもんじゃないの?
「え?支部長だったんですか?ボーパルさん偉いんですね!」
「まあ、普通の支部長は奥で書類の山に埋もれている場合が多いですからね」
「こいつ、下手に優秀で、暇だから受付してるらしいぞ」
うわー、そして、戦闘力もかなりあるようですね、名前からして運営の悪意を感じる。始まりの町にいていい人ではないよね?まあ、この人には逆らわないほうが良いようだ。
「とりあえず、ボーパルさんの許可が下りるまでは生産職としてゆったり過ごします」
「そうですね、それが良いと思いますよ」
「では、町の散策したいのでこれで失礼します」
「次はお前がいないときに来るわ」
「カーマさん、アリーシャさん、次はお二人で私のところに来てくださいね、歓迎します」
「ではでは、ボーパルさんまた依頼受けに来ますね」
町の散策だー!というか、ここに来るまでにかなり時間かかってるような気もしたけど、まだ3時だ。とりあえず、二人とも小休止をはさむようなので、探索の前にログアウトするようだ。私も小休止を取りたいので、ログアウトをはさむことにする。
「そういえば、不知火さん、私をほっといて狩りとかに出ても大丈夫ですよ?退屈じゃありませんか?」
「いや、カーマちゃんとアリーシャちゃんといるのは楽しいし、カーマちゃんが暇つぶせる場所見つけたら、アリーシャちゃんが良ければ二人で素材集めしてくるよ」
「いいですねー、カーマが好きそうな場所も見つけているので、そこに連れて行ってから、いろいろ取りに行きましょう!そして、カーマに武防具を作ってもらいましょう!」
「わかりました!じゃあ、よろしくお願いしますね」
「とりあえず、ログアウトしてくるから、半ぐらいに集まる?」
「そうですね、ではでは、またあとで」
そうして、ログアウトを選択する。
カーマ(人間)
職業:冒険者
装備スキル(15)
念動 1
光魔法 1
闇魔法 1
無魔法 1
魔法技能 1
鍛冶 2
裁縫 3
木工 2
錬金 1
調理 1
採掘 1
採取 1
伐採 1
INT強化 1
DEX強化 2




