予告の日の朝がやってきた
「山科警部補、終わりました」
御影探偵事務所のドアを開け、真奈美が山科に声を掛けた。
「ふむ。それで何か分かったか?」
「いいえ、すみません。特に変わったことはありませんでした」
真奈美はそう答えた。
・・・こんなことは誰にも話せない。こんな恐ろしい事件、どうやって解決できるというのだろう?御影さんはいったいどうするつもりだったんだろうか?
真奈美は絶望的な気分になっていた。
「そうか。それで、これからどうするね」
「はい、本部に戻って所長と明日の打ち合わせします」
「わかった。では本部まで送ろう」
警察の車でS.S.R.I本部に向かう間、真奈美は一言も発せず考え込んでいた。
・・・御影さん。。ああ、御影さんはなんで肝心な時に居ないのよ!どうやって解決すればいいのか教えてほしい。。
・・・『もしも僕が上手くいかなかったときには君がやるんだ』
真奈美はかつて御影に言われた言葉を思い出していた。
・・・御影さんは私にそれをやれと言うの?そんな危険なことを?
車がS.S.R.I本部に到着した。
「宮下君、おかえり。何か分かったかい?」
「いえ、ダメでした」
「そうか、仕方ないな。明日は予定どおりの作戦で行こう。とにかく総理の命を救うことが第一優先だ。東心悟が総理の心臓を止めようとしても、僕が妨害する。奴は御影君さえ居なければ簡単に犯行に及べると高を括っていることだろうから、一泡吹かせてやるさ」
田村は闘志に満ち溢れていた。
「宮下君はコスモエナジー救世会本部で東心悟を監視してくれたまえ。なんとか東心悟の心を読んで、奴の本当の狙いを探るんだ」
「はい、わかりました」
山科警部補とその部下の刑事たちが、真奈美を囲むように立った。
「田村所長、宮下君は我々が24時間体制で警護するよ。とにかく明日が正念場だな。御影君があんなことになった今、頼れるのはあんたたちだけだ。頼むぜ」
その場の誰もが明日に向けて士気を高めている中、ひとり真奈美だけが虚脱感を味わっていた。
刑事たちに警護されて、一人暮らしのマンションに戻る。
とても眠れない。今や真奈美ひとりの肩に事件のすべての重みが圧し掛かっているように思えた。
こうして予告の日の朝がやってきた。




