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その日の午後

 その日の午後、真奈美はT大での訓練を終え、S.S.R.I本部に戻った。


「所長、ただいま戻りました」


「おかえり、ご苦労様。御影君は?」


「秘書の穂積さんが意識をとり戻したそうで、病院に行ってます」


「ああそうか、それはよかった。しかしいよいよ明日だな。かならず総理の命を守らねばならない。これには我がS.S.R.Iの命運もかかっているからね。頑張ってくれたまえ」


「はい所長。・・・あ、御影さんから電話です」


 真奈美が携帯電話を取ると、すぐに御影の声が聞こえた。


 ・・・『宮下君、御影だ』


「御影さん、穂積さんの容体はいかがですか?」


 ・・・『ああ、穂積君は元気だよ。それより今、僕にはすべての真相が分かった』


「え!本当ですか?それはいったいどういうことなんですか?」


 ・・・『確認のため一度事務所に戻るよ。例のデパートの防犯カメラの映像だ。やはり僕たちは肝心な部分を見落としていたんだ』


「防犯カメラの映像・・いったい何を見落としていたんですか?」


 ・・・『あとで寄るから君は本部で待っていてくれたまえ。すべてはそこで話す』


 御影がそう言うなり電話は切れてしまった。


「御影君、なんだって?」


 田村が尋ねた。


「御影さん、なんでもすべての真相が分かったそうです。デパートの防犯カメラの映像を確認するために事務所に寄ってから、こちらにくるそうです」


「なに本当か!それに間違いがなければ、予告日の前日に事件は解決ということになりそうだな。これは待ち遠しいぞ。宮下君、お茶を淹れるからお菓子でも食べながら御影君を待とう」


 田村は小躍りせんばかりの様子で、台所に向かった。




 それから2時間ほどが経過したが、御影はまだ戻って来ない。


「遅いですねえ。ちょっと御影さんに電話してみます」


 呼び出し音がしばらく鳴って、電話に出たのは女性の声だった。


 ・・・『**総合病院の者です。この電話の持ち主のお知り合いの方ですか?』


 **総合病院は穂積恵子の入院先である。


「はい、宮下と申します。この電話の持ち主、御影さんはどうしていますか?」


 ・・・『実は当院の前で交通事故に遭われまして、意識がありません。緊急入院しています』


 ・・・御影さんが緊急入院!!


 真奈美は動揺した。


「それで、御影さんの容体は?」


 ・・・『全身を強く打っていますが、骨折も無く、検査しないと正確にはわかりませんが、所見では内臓も無事なようです。ただ意識が戻りませんので、頭部をCT検査しなければなりません」


「わかりました。すぐにそちらに向かいます」



 真奈美は田村と共に、**総合病院に駆け付けた。

 集中治療室で、御影純一は熟睡しているように目を閉じたままだった。

 担当医が説明する。


「車に撥ねられましてね、かなりの勢いだったのですが、奇跡的に身体の怪我はそれほど重くはありません。命に別状は無いでしょう」


 真奈美は少し安堵した。


「よかった・・・意識は戻りそうですか?」


「それはまだなんとも言えません。検査の結果しだいですが、当分は様子を見なければなりません」


 ・・・御影さんの意識がこのまま戻らなければ、私たちはいったいどうすれば良いのだろう?


 真奈美は激しい不安を覚えた。


「車の運転手はどうなりました?当然、警察が確保したんでしょうな?」


 今度は田村が尋ねる。


「はい、運転していたのは80歳を過ぎた男性で、どうやらブレーキとアクセルを踏み間違えたらしいです」


 偶然の事故か?それとも東心悟の心理操作なのか?

 おそらく後者であろうと田村は考えた。この状況で偶然はあまりにも出来すぎている。

 真奈美も同様の考えだ。


「所長、穂積さんに会いましょう。おそらく穂積さんとの最後の会話が鍵です。御影さんは何か重大な事に気が付いたんです」


 田村は大きく頷いた。

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