答えの
「やぁ…ベイン君」
「……どうも」
祭場に到着した…。昨日の祭りの時には見られなかった様々な装飾が施されてある事から、これが村全体の問題だということを再確認した。
「その剣…使わなかったんだね」
僕の腰に携えた剣を見て、ラウルが安心したように呟く。
「…誰も殺さないって決めましたから」
「…そうか」
「教えて下さい。何故こんな事を?」
僕がそう問いかけると、ラウルは目を閉じ、深く深呼吸する。再び目を開いたラウルの瞳は、両目が赤と青に変色していた。
「私の剣は真実と虚偽の2つ…君が持っているのは虚偽の剣…その剣は善を装う者、悪の者にしか使えない…そして君はそれを使わなかった…」
「僕を試したって事ですか…」
「すまない。こうでもしないと村人達が安心できなかったんだ。村人達が快く君を歓迎する為にも、悪く思わないで欲しい」
深く頭を下げるラウル。僕はその姿を前に口を開いた。
「僕はこの村を出ます」
「…」
「皆をこの世界から…解放します」
「…本気…なんだね?」
ラウルの重苦しい声は、僕の決意を歪めることは無かった。
「はい」
決意をあらわにした瞳で見つめ直すと、ラウルは再び瞳を閉じる。
「なら…私を倒して行くんだね」
開かれた瞳…赤と青のオッドアイは強く輝きを放って…
「……」
僕の腰に携えていた虚偽の剣が、ラウルの元へ戻っていく。2本の剣を構えたラウルは、完全に戦闘態勢だ。
「外に出れば村のような安全は保証されない…私を倒せないようじゃ…直ぐに餌食になるだろう……だからーー」
その巨体からは考えられないほどのスピードで一気に僕に急接近する。ゼロ距離に差し掛かったところでラウルは右手に持った鞘に入ったままの虚偽の剣を振り下ろした。
僕は間一髪の所でそれをかわし、後方へと跳躍する。地面に剣が叩きつけられたことにより、砂埃が辺りに舞い上がる…その中で光を放つ2つの色…
「私を倒すんだ…」
ーーーーーーーやるしかないーーーーーーー
そんな言葉が僕の脳裏に浮かぶ。しかし僕には何も為す術がない。そんな現実を突きつけられた僕に、ラウルのさらなる攻撃が襲いかかる。僕の頬をかすめ、髪の先端を切り、目前を剣先が通り過ぎていく。ラウルは本気で僕を殺す気らしい。
「君のような者は死ぬ…今までだってそうだった……」
「…」
ラウルの感情が揺れる。過去の出来事が彼の頭を過ぎった。
「諦めても良いんだ…君はその無謀な試みを捨て、この村で安全に暮らすんだ…」
何かを訴えかけるかのように僕の瞳をまっすぐと見つめるラウル。
「…嫌です」
それを冷たく拒否した僕に、ラウルは更なる斬撃を加える。
「気づいただろう!君はただのなり損ないでは無い覚醒者だ!それを前に導く為にも君にはいて欲しいんだ!」
目にも留まらぬ早業で両手の剣を薙ぐラウルに若干の疲れが見え始めた。
「ヌァッ!」
真実の剣を大きく振りかぶり、振り下ろす。その刀身が僕に触れようとした時、剣が眩い光を放ち、間一髪の所で停止した。ラウルが寸止めをした訳では無い。なぜなら、ラウルの掴んでいた手は、その剣の柄から勢い余って離れていたからだ。不自然に寸止めになった剣を見つめる。
「…」
青く輝きを放った真実の剣。ラウルは驚きを隠せないような顔で焦りをその表情に浮かべていた。
「…まさか」
呆然とその光景を見つめるラウル。そんな中、僕は自然と真実の剣に手を伸ばしていた。そして、指先が刀身の先に触れた時、今までにないほどの光を放った。
「!」
視界を奪われ、僕は咄嗟に手で目を覆う。再び手の遮りを解いた時、あたりは白い世界に包まれていた。その白い世界にポツリと、少女が僕を見つめている…。
「…」
「…えっと、君は?」
「ノエル」
ノエルと名乗った青髪の少女は、見るからに僕よりも年下に見える。更に言うと、ノエルの纏っている衣服には、手首足首に鎖が施されていた。
「…ノエル、君はーー」
「あなたは真実を探さなければならない」
「え?」
「あなたは間違った物語を真実に導き、この世界を解放しなければならない」
唐突にノエルが意味のわからないことを言い出し、困惑する僕だったが、ノエルは構わずに口を開き続ける。
「あなたの真実は私の真実…困ったら…私を使って?」
「待って、それはーー」
視界がぼやけ始める…ノエルのその言葉を最後に、僕は意識を失った。




