僕の為の
なり損ないという言葉がいやに頭から離れない。僕は何になり損なったのか…この住人も僕と同じなり損ないに属していると知った時、よく分からない感情が現れた事を言葉に出来なかった。いや、それが自然な気がした事で、僕はわざわざ口にするまでもないと何故か納得していた。この感情が何なのか…分からない。
「おはようございます」
「…シエル…さん」
体を起こすと、膝の上にぽとりと湿った布が落ちる。そばに居たシエルがそれを手に取り、水の入った入れ物に浸す。
「あと2時間程で村のみんなが集まります。ベイン様もご仕度なさって下さい」
「…分かりました」
「お着替えは机の上に置いてあります。それでは失礼します」
シエルは最後まで礼儀良く振舞って退室した。シエルに言われた通り、僕は準備してもらった服に着替える。身体中に巻き付けられた包帯が初見だった故驚いたが、内心感謝しながら衣服を纏った。
「準備は出来たようだね」
「この服…ありがとうございます」
「私が君くらいの時に来ていた服だが、何不自由無いかい?」
「はい」
「お似合いですベイン様」
「…ありがとうございます」
シエルの言葉が照れくさく、思わず後ろ頭を掻く。
「さて、少し早いけど向かおうか」
「はいお父さん」
ラウル、シエルに続いて家を出た僕は息を飲んだ。ラウルの言う村を、目の当たりにした僕だったが、その村に光はなく、洞窟のようなものが周辺を囲う。確かに住人が住むための居住はあるのだが、その作りは小屋に近かった。
「まだ発展途上な故、これからの進歩に期待できる。日々研究をしているからね」
僕の内申を悟ったのか、ラウルは僕に言い聞かせるようにそう呟いた。
「人気がありませんね」
「皆君のために準備を頑張っているんだ。期待してやってくれ」
ラウルの家から目的地に着くまでに、十数分とかかった。それまで一方向に歩いていたことから、村と言っても結構な面積があるのだと気づいた。
「なかなか広いだろう。長い年月をかけて少しずつ拡大してきたんだ」
「長い年月…」
これほどの面積を築き上げるために、かなりの労力を費やし、時間を費やし…そしてそれほどまでにここの住人は長い時間を過ごしている…
「よし着いた。おーいみんなー」
目的地に到着した。住人と思える複数の人物が、あれやこれやと騒ぎながら支度をしていた。笑顔が絶えないその住人達に向けてラウルが声をかけると、視線をいっせいに浴びるハメになった。
「お、ラウさん!その子が新人ですかい!」
「あら可愛い子!怪我はもう大丈夫?」
皆が我先にと僕に声をかけてくる。僕は少し戸惑いながらも、問いかけられた質問に答えた。その様子を見たラウルも、どこか安心したように息を吐いた。
「ラウさん。祭りは早く始められそうですよ。みんな張り切ってますから!」
「それは良かった。私も楽しみにしているから、出来次第始めようじゃないか」
「みんなー!祭りは準備が出来次第始めるってよ!張り切ってこうぜ!」
準備をしている村人の中でもリーダー格の男が大声でそう伝えると、それを聞いた住人達は皆声を合わせて「おー!」といって準備を再開した。
そしてーー
「今日はベイン君のための祭りだ!盛り上がってくぞぉ!」
飲めや歌えや大騒ぎの僕の歓迎祭が始まった。
祭りが始まってからは僕は引っ張りだこだった。あっちに行って質問に答え、こっちに行って質問に答え…自分の記憶はないから答えられないこともあったけど、無事に村のみんなと打解ける事が出来たような気がした。
「ベイン様、お楽しみのようですね」
僕が村の住人達に質問攻めに合う中、シエルとラウルは2人でその光景を眺めている。
「あぁ…村のみんなに感謝しないとな」
「…ベイン様にはお話するのですか?」
「分からない。あの子に可能性がないとも限らない…今は様子を見よう」
「…はい」
「場合によっては………致し方ない事だがなーー」
僕はまだ知らなかったんだ…この世界の理を…




