旅の始まり
村を出てから数時間が経った…村から持ってきた時間を示す時計というものは、その短い針を既に3つほど進めている。
村から出てまず僕達が目指した場所は、ラウルが言っていた近くの街。シエルに聞いたが、街と言うよりは村よりも少し発展した所と言う方がしっくりくるらしい。
「…大丈夫?」
「はい。問題ありません」
休憩を挟まずに歩いていた事から、シエルに疲れが見え始める。ココらで少し休憩を取る事にした。ラウルから貰った支給品の中から、水を取り出してシエルと分けて飲む。
「…疲れた時は正直に言っていいからね?」
「お気遣いありがとうございます。しかし、ベイン様の負荷になる訳には行きませんから…」
「何かが起きてからじゃ遅いんだ。僕の事は良いから、何かあったら言って欲しいかな」
シエルは申し訳なさそうな顔をしたが、僕の方を見て「分かりました」と応えた。
しばらく歩いたが、一向に目的地が見えない。辺りに草木が生い茂り始めている事から、近くに森か草原があるのだと予想できる…。
「こんな洞窟みたいな世界でも、草木は育つんだね」
「ここでは魔力が粒子となって漂っています。私達はそれを魔粒子と呼び、魔粒子は私達に恩恵を、自然に恵みを与えます。だからこんな世界でも明るいところは明るいんですよ」
「シエルはなんでも知ってるんだね。ラウルさんから教えてもらったの?」
「…幼い頃から本を読んでいたので…その知恵がここに来て役に立っただけです」
「なるほど…じゃあ分からない事はシエルに聞くことにしよう」
「…はい。私のわかる範囲でお教え致します」
「…」
「…」
慣れない空気が二人の会話を止める。ここに来るまで一言も会話を交わさずに3時間を共にしてきたと聞いたら、ラウルはどんな顔をするだろうか…
「…この先、森があるんですが…」
「森?」
「はい。森です…ですが…」
シエルの表情が暗くなる。何か思うものがあるようだ。
「その森に…何かある?」
「…これはお父さんに聞いた話なんですが…この世界には、覚醒者が住まう場所が13個あると言われています…そのうちの一つが今から向かう森で…」
「覚醒者と鉢合わせする可能性がある…って事か」
「その覚醒者が善か悪かは分かりません…如何致しましょう?」
「…行こう。森へ」
「……良いのですか?下手をすれば命だってーー」
「僕はこの世界を解放するって決めたんだ。解放した時に悪い人がいたら…だめだよね?」
僕が優しく微笑みかけると、シエルは目を閉じて少しの間考えるように俯いた。そしてーー
「分かりました。私を使って下さいベイン様。私はあなたのためにあるのです」




