起点
「……ラウルさん」
「…やぁ。ベイン君」
体を起こすと、ラウルが僕の側で腰を下ろしていた。どこかやり切ったような、諦めたような顔で僕の方を見る。
ふと左手を動かすと、ラウルがさっきまで手にしていた真実の剣がそこにあった。
「どうやらその子は君を選んだようだね」
ラウルの言う【その子】が剣を指すものだと察し、僕は夢の事をラウルに話した。
「……それがその子の本当の姿というわけか…そこまで魅入られると妬いてしまいそうだ」
「……」
「さぁ行くんだ。君の旅へ…真実を見出す旅へ…」
「…良いんですか?」
恐る恐るそう問いかけると、ラウルは優しく微笑みかける。
「何よりもその子が君を選んだんだ。疑いようも無ければ、無理だとも思えない…この世界を…頼む」
深々と頭を下げるラウル…。
僕はその場に立ち上がると、真実の剣を手に取った。鎖で何重にも巻かれたその剣は、普通にしても刀身が姿を現すことは無いだろう…だが、僕にとってはその方がいい。誰も傷つけないと決めたのだから…
「…行ってきます」
「ベイン様!」
ラウルの横を通り過ぎようとした時、不意に呼び止められ、後ろを振り向くと、シエルが不安気に僕を見つめていた。
「シエルさん……」
「旅立たれるのですか?」
「…うん」
「……」
もじもじと何かを訴えるような動作をするが、一向に言葉が出ない様子のシエル。それを見たラウルが苦笑し、こう告げた。
「娘も連れて行ってくれないかな?」
「僕は構いませんが、ラウルさんは良いんですか?村の外は危ないんじゃ…」
「確かに村の外は危ない…娘も私と一緒の時くらいしか外へ出たことがない…だからこそ娘にはこの世界が変わる瞬間を見せてあげたい…君ならば任せられると思ったんだが…だめかな?」
「…ラウルさんがそう言うなら」
「シエルはこう見えて人の嘘を見抜けるんだ…君にとっても助かると思うよ。シエルもいいね?」
「…はい。よろしくお願いしますベイン様」
「…うん。よろしくね」
「とりあえずは近くの街を目指すといい。そこへはシエルも言ったことあるから、案内してあげなさい」
「はい、お父さん」
「それじゃあ行ってらっしゃい…我らが子供達よ…」
ラウルの言葉を最後に、僕とシエルは村を後にした…。
この時の僕は知らない…これが違う自分だという事に…偶然の中で生まれた…世界だということに……




