第86話 回想中④ (ゴーレム娘、錬金術師デビュー)
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フィンメル・アルバを後にしてオズと行く。
焦石と接続器は後日届けることにして、他の部分の作成を先に進めて貰うことにした。
私たちは今、焦石と接続器の錬金素材を手に入れるため、錬金術師ギルドを訪れている。
「え~と……紅蓮石の粉末、万能菊、ミストナイト……」
錬金術師ギルドは、冒険者ギルドとは異なり静かな建物だった。
壁際には冒険者ギルドと同じく、ランク毎に分かれた掲示板に、依頼内容の書かれた依頼書が貼られており、なんというか、見るからにインドア系の人が数人、静かに依頼を選んでいた。
その近くにはやはり冒険者ギルドと同じく受注と完了の受付があり、それらが建物の約半分を占めている。
残りは……
「あ、叫雷人参…………隠し味にいいんですよね」
「…………………………………………」
まぁ、いいけどね。
オズが言った『隠し味』は、錬金術において触媒と呼ばれる、少量添加することで効果を劇的に変化させる素材…………ではなく、ホントに料理の隠し味だ。
当たり前の話だが、錬金素材には魔獣や鉱物、薬草などあるが、普通の食材も該当することがある。よくあるのは塩とかハーブ類とか。あ、一番よくあるのは水か。
錬金術『にも』使える食材は、食料品店の方が質も良く値段も安い。
料理『にも』使える素材は、錬金素材店の方が質も良く値段も安い。
と、いうわけで、錬金術師ギルドの残りの半分は錬金素材店となっているが、こちらは一般人もやってくるし、錬金術師は基本的にここで素材を購入するので、冒険者ギルドと違って桁違いに広いのだった。
その中を楽しそうに動き回るオズの姿に、まだまだ時間が掛かりそうだと思った私は、護衛をナツナツに任せて暇潰しに依頼を眺めていることにしたのだ。
― Gランク ―
・蒸留水の納品 (常設)
・精製塩の納品 (常設)
・石灰石粉末の納品 (常設)
…………………………………………
Gランククエストは全て常設 かつ 錬金術師でなくとも出来そうな簡単なものが並んでいる。
冒険者ギルドのGランククエストが、誰でも出来る街中でのお手伝い系であったことだし、こちらも同様なのだろう。報酬も似たような感じだ。
「お小遣い稼ぎに登録してもいいかな……」
「あら~、新人さん候補かしら~?」
「あ、こんにちは」
ポツリと洩らした呟きに返る言葉があった。
近付いているのは《ロング・サーチ》で捉えていたから驚きはない。
『ここの受付嬢だな』
『戻る~?』
『や、大丈夫。オズに付き合っててあげて。大丈夫だと思うけど、予算を超えないように気を付けてね』
『分かりました』
『『『聞こえちゃった!!』』』
三人で念話してたつもりだったが、オズにはスルーだった。
オズの方がこの辺上手だから、本気で隠さないと筒抜けなんですよね。いや、本気で隠そうとしたら聞かないでいてくれるだけですが。
まぁ、ナツナツとオズには買い物を続けてもらって、錬金術師ギルドの受付嬢さんに意識を戻す。
髪は薄い桃色で、ふわふわと腰の辺りまで伸びていた。瞳は緑でやたらと大きな丸メガネを掛けていて、ぽわぽわした柔和な笑みを浮かべている。
服装はもしかしたら全ギルドで共通なのかもしれないが、冒険者ギルドと同じく帽子にブラウス、ロングスカートで、こちらは全体的に青色をしていた。ちなみに冒険者ギルドは薄い赤色だ。
「どうする~?登録しちゃう~?」
「あ、え~と……私、冒険者ギルドに登録してるんですけど、大丈夫ですか?」
「それなら、なお簡単よ~♪ギルドカードを貸してもらえたら~、こちらの処理だけで終わるわよ~」
「それと冒険者ギルドの方をメインにしてるんで、あんまり仕事しないかも……」
「大丈夫~♪錬金術師さんの中にはね~、年に数回しか依頼を受注してくれない人もいるから~♪」
「それ大丈夫なんですか……?」
どう捉えればいいんだ?副業として錬金術師やってるからなのか、優秀過ぎて一回で暫く暮らせるお金が入るからなのか、はたまた私には全く想像もつかない理由なのか…………
「なんて言うのかしらね~……………………ヒモ?」
「予想外にダメなヤツ!!」
「まぁそれはともかく、ホントにどうする~?ギルドとしては~、Gランクだけでもしてくれる人が増えるのは、助かっちゃうな~」
「え~と……」
どうやら、冒険者ギルドの片手間にやってても良いらしい。
『どうしようかな?』
『いいんじゃないか?錬金マスタリーも泣いて喜ぶだろう』
『射撃マスタリーに妬まれちゃうかも~』
『何気に闇魔法マスタリーも不遇の子ですので、お忘れなく』
さすがに13のマスタリーを均等に構うのは難しいなぁ…………
と、スキルを擬人化するのは置いておいて、特に否定的な意見は無さそうだ。
「……………………じゃ、お願いします」
「承知しました~♪私は錬金術師ギルドの受付嬢のモニトロです~。今後ともよろしくね~」
「よろしくお願いします」
…………………………………………?どこかで聞いたことがあるような…………?
心の中で首を傾げていると、ギルドカードを受け取ったモニトロさんは、パタパタと受付に戻り、こちらを手招きした。
誘われるままに受付に近付く。その間に何か操作を終えたらしく、受付の前に着くのとほぼ同時にギルドカードを返却された。
見た目に大きな違いは見られないが、『冒険者ランクD』の下に、『錬金術師ランクG』の文字が追加されている。
「これで登録は終わりです~。最初に説明だけ軽く聞いてね~」
「はい、お願いします」
コホン、とわざとらしく咳払いすると、
「依頼の受注方法は冒険者ギルドと同じで~、掲示板に受けたい依頼があったら、依頼書を剥がしてここまで持ってくるだけ~。内容は全て納品依頼になっているわ~。
すでに納品物を持っている場合や常設依頼は~、ここに納品物ごと持って来てね~。受注と完了を同時にするから~。
納品するとき注意することは~、それが納品するに値するモノかどうか、よく考えて納品すること~。品質が良くなかったり、良くない効果が付属してたりすると~、評価点が下がっちゃうからね~」
「評価点……ですか?」
「錬金術師ランクはね~、報酬の他に与えられる評価点が一定以上になると、ギルドから課題を出されて~、それをクリアするとランクアップする仕組みなの~。冒険者ギルドの昇格ポイントみたいなものね~。
ただこっちは現在何点か知ることは出来ないし、下がることもあるの~。雑な仕事をする人には、高ランクの依頼は任せられないってことね~」
「なるほど」
「もちろん聞いてくれたら、アドバイスするわよ~。『品質を揃えた方がいいわよ~』とか、『エグ味を取った方がいいわよ~』とかね~。
とりあえずランクアップを目指すなら、修練所で『錬金術系スキルを習得出来るのくださ~い』って頼むといいわ~。特に鑑定系のスキルを取得しないと、出来たものがいいのか悪いのか判断出来ないからね~」
「分かりました」
とはいうものの、《フル・スキャン》があるから多分大丈夫だし、ダメなら錬金マスタリーが頑張ってくれるだろう。
「説明は以上です~。御静聴ありがとうございました~♪」
「ありがとうございました」
ふぅ…………おっとりしたしゃべり方が聞き取りにくいかと思ったけど、意外と要点がスッと頭へ入ってきたな……不思議。
「Gランククエストは、全て常設依頼ですので~、受注はしなくて大丈夫よ~。納品物を創ったら直接持って来てね~」
「はい。では、早速ご相談を。超初心者にオススメの依頼なんですか?」
モニトロさんは、頬に手を当てて首を傾げると、
「そうね~、どれも作業的には簡単なものばかりなんだけど、何かしら道具は必要なのよね~。そこの店舗にGランク用の道具コーナーがあるから、道具のサイズと部屋の広さから選ぶといいわ~」
「なるほど。…………その上で敢えて聞きますが、モニトロさん的にやってくれると助かる依頼はありますか?」
「『研磨剤の納品』」
「…………………………………………」
こちらのセリフを遮るほどではないが、ギリギリ食い込まない早さの回答だった。
思わず黙ってしまうと、両手でゆっくり私の手を包み、顔を覗き込んできて、
「『研磨剤の納品』。これ、マジ」
マジらしい。先程までの間延びしたしゃべり方はキャラ付けだったのかと思うくらいのマジ口調だった。
「ちなみに何に使うんです?」
「研磨剤の用途は磨く事よ~♪小麦粉の代わりにはならないわ~♪」
「でしょうね!!」
「細工工房とか宝飾品店とかに大量の需要があるからね~。たくさん必要なの~」
「専門店とかないんですか……」
「そこまでは需要がないのよ~」
なるほど。丁度 個人で作成するにはキツイ需要と大量生産に向かない供給の境目なのだろう。
「……………………考慮します」
「よろしくね~♪一応、コレ注意事項~」
「ありがとうございます」
恐らく先ほどの説明が書かれた紙を渡されたので、お礼を言って受け取った。
錬金素材を購入するためモニトロさんと別れ、ギルド雑貨店へと足を踏み入れる。
…………………………………………そして、なんとか予算内に納めようと、頭を捻っているナツナツとオズが可愛かったので散財したのは仕方無い。




