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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
6章 回想!!ながら戦闘で怒ってくま
92/264

第85話 回想中③ (ゴーレム娘、無茶振る)

82 ~ 99話を連投中。


6/15(日) 13:10 ~ 20:00くらいまで。(前回実績:1話/21分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「はあ、はあ、はあ……………………よ、ようやく味が消えた…………お腹タプタプ。うぇっぷ……」


床に座り込み、口を押えながら吐き気を堪える。


「吐くなよ?客だからって容赦しねぇぞ」


「あ、お父さんの目がマジだからホントにやめてね。私片付けるのやーよ」


「ここぞというところで裏切る下僕候補だな……」


「お姉ちゃん お姉ちゃん。片付けてくれたチコリさんと、今後も付き合える?難しくない?」


「……………………言われてみれば確かに」


「そこはかとなく失礼なこと言われてる気がする……」


大量に水を摂取してなんとかアレの痕跡を洗い流せたので、大きく息をついた。

ちょっと指についた程度でなんて破壊力を秘めているのか……………………そのうち、魔獣を捕獲する必要があるときはコレを使おう。

肉体に悪影響はなく、見た目も臭いも異常はなく、しかし強烈に対象を無力化できる。肉は不味くなるかもしれないが。


「おら。遊んでないで、早く話を進めろ」


「ちょ、なんで、私を睨むの!?話を逸らしたのルーシーちゃんだよ!?」


「客を睨める訳ないだろ」


「さっきは容赦しないって言ってたのに!!」


「程度というものがあるんだ、程度が」


うん、チコリ父が怖いので、そろそろ話を進めようね。ホントに。


「これを武器に加工して欲しいんだよね。さっきも言ったけど、オズ用の杖ね」


と言って作業台に取り出すのは、一番大きなアサルト・ボアの背骨である。

当然、素材の段階では複数の脊椎から構成されているのだが、それぞれ複雑に絡まり合ってバラけることはなく、また杖にする段階で一本の棒状に固まるのだ。


「デカ!!!!」


「おいおい……大物を仕留めてきたとは聞いていたが、これ程とは……5mはあったんじゃないか?」


「すげぇ……魔獣の種族としてはDランクだが、武器自体の性能はCランクに届くんじゃないか?」


「やるなぁ、人形遣い……」


ぞろぞろと他の職人さんが覗きにやって来て、口々に感想を洩らしていく。


「冒険者ギルドから注意喚起が出ると思いますが、幻惑鳥がアサルト・ボアの群を乗っ取って操ってましてね。大きな個体でしたけど、専ら囮役として使われていたらしくて、倒すのは比較的簡単でした。だからまぁ、運が良かったんですよ」


思っていたことが、特に意識せず口から出る。が、チコリ父には納得されなかった。


「そんなこたねぇよ。それだけ大きな個体に成長したってことは、その群の攻撃力はかなりのものだったはずだ。それをちゃんと倒してんだから、『運が良かった』だけの訳ないさ。それにそんなことを言っちゃ、やられた魔獣にも失礼だろ。あいつらだって『実力で倒した』って言われた方が、まだマシだろうさ」


「そ、そんなもんですかねぇ……?」


思わぬ言葉を投げ掛けられ、思わず言い淀む。


この大アサルト・ボアは囮としての役目を全うしていたためか、こちらの攻撃を避けることは無かったのでこちらの最大攻撃力を効率よく叩き込めた。だからあまり労せず倒せたんだと思っている。

もし、この大アサルト・ボアがボスの群と闘ったとしたら、こうはいかなかっただろう。


幻惑鳥もそうだ。たまたま、ガア・ティークルで魂城鉄壁を取得していたから良かったものの、そうでなければあのカラクリに気付くことはできなかった。


かなり運に助けられた結果だと、自分では思っていたのだが…………


「ま、死んだヤツがどう思ってるかなんて、生きてるヤツには確実なことは言えないんだがな。恨まれてることは確実だろうが」


「やめてくださいよ、そういうの…………それにそうでないヤツは確実にひとり というか 一匹いたので、その説は間違いです」


「あん?」


うん。あのベーシック・ドラゴンは恨んじゃいなかった。余計なスキルも遺してくれたが、もし故意だったとしても餞別のつもりだろう。

『恨み』などという、他人にとって分かりやすいだけの理由をあの闘いに付与するのは、それこそ失礼だ。


「でも、そうですね。勝った私が謙遜したら、負けた連中を貶めるようなものですよね。それは嫌がられることだけは確実でしょうから、『運が良かった』ではなく、『運も良かった』と言うことにします」


「……………………あんま変わんなくね?」


「か、変わってますよ!!運も実力の内。そういうことです。再戦することがあっても、その時はその時で別の運を味方につけて倒します」


「なるほど」


一先ず納得してくれたようなので、良しとする。


話を進めようと視線を作業台に戻すと、


「ふんふん……骨密度もしっかりしてるし、欠損もない。これは結構な強度が出るかも。魔法増幅率は…………おぉ!!150%超え!!立派にCランククラスだね!!」


「魔石スロットはいくつ空けるか……それとも刺突武器としても使えるようにオプションを付けるか……イメージが膨らむな!!」


「いや、待て。その前に嬢ちゃんに持てるのか?最低でも3m、オプション付けたら4mはいくぞ。使うのは妹さんだろ?」


「大丈夫です。持ちます」


「それ回答になってないんじゃないか?」


チコリちゃんたちが楽しげな表情で検分を進めているところだった。


聞いちゃいねえよ。結構真面目な話をしたのに。

ほら、娘が聞いてると思ってカッコつけてた父の顔が真っ赤じゃないですか。


「お前ら…………人の話は聞けよ……」


「えー?自分でも言ったじゃん。『死んだヤツがどう思ってるかは分からない』って。ならルーシーちゃんがどう思おうと自由だよ。私たちはどうあれ最高の武器に仕上げるだけ。鍛冶師に出来ることなんてそのくらいだよ。ナマクラに仕上げたら恨まれる覚悟くらい必要だけどね」


……………………しっかりとした信条を持っておられましたか……


どことなく自慢げな顔に変わったチコリ父は置いておいて、その覚悟を見せてもらいましょう。


「そうだね。それでは現状取り得る最高傑作に仕上げていただきましょう」


「あれ?嫌な予感……」


「そんなことはないよ。チコリちゃん、前に言ってたでしょ?『異なる魔獣素材を組み合わせて、より強化出来ないか』って」


「微妙に違うけど、まぁ、似たようなこと言ったね」


「というわけで、やってみよー。杖のベースはアサルト・ボア。焦石にはこれ使って」


と言って[アイテムボックス]から取り出し渡したのは、紫色の透き通った球体が三つほど浮かぶガラス瓶。


「…………なにこれ?」


「『幻惑鳥の瞳』」


「うええぇぇぇぇ!!!?こ、これ、錬金術師が喉から手が出るほど欲しがるヤツじゃん!!!!売ったらいくらになると思ってるの!!!?」


私がその正体を告げると、両手で瓶を持って飛び上がった。


「知らない。元手はタダだから、私にとってはそのアサルト・ボアと価値は同じだし」


「確かに5m級アサルト・ボアなら、レア度は同じくらいだろうけどね!?私が言いたいのは、そんなん使って新技術試す!?両方ともポンコツになるかもしれないんだよ!?」


「覚悟を見せて♡」


「うわーーーーん!!!!私のバカーーーー!!!!」


ここでまたひとつ、杖についてお勉強しましょう。


杖というのは大雑把に言うと、魔獣の骨と瞳から成る武器だ。骨をベースに本体を造り、先端に瞳から作成する『焦点石 (略称:焦石)』を取り付けて造る。

魔獣の骨には魔法の威力を増幅させる効果があり、焦石には魔法の精度を向上させる効果がある。

魔道士は自分の術式に杖を組み込むことで、容易にその威力や精度を引き上げることが出来るのだ。


そして『武器は単一素材で造る』のが普通だ。これは『素材に残った魔獣同士の意思が反発しあって、持ち主に不幸をもたらす』という『迷信』が大きな理由であるが、杖の場合は明確な不具合が存在する。

ベースとなる骨と焦石の素材が異なる種族のモノだと、『魔力伝導値』、つまり『魔力の流れ易さ』みたいなものが違うため、魔力がうまく流れず 本来の効果を発揮しないらしいのだ。


チコリちゃんとしては、まずは魔力伝導値が強く関係する杖と弓 (武器が持つスキルが発動しなくなる) 以外の武器から試し、この二種類は少しずつ検討していくつもりだったのだろうが、初っ端から最難関というわけです。


「いきなり無理だよーー!!!!まだ物理強度的に馴染ませる方法を探ってる段階なのに、一足……いや、二足飛びに飛んでるよ!!!!」


「そ、そうだぞ、嬢ちゃん。そういう新しい技術ってのは、よく手に入る素材でデータを蓄積するもんだ。じゃないと効果があったのか、比較も出来ないだろ?な?考え直せ」


チコリ父娘だけでなく、他の職人まで『うんうん』と頷いている。

でも、大丈夫。こうしようと言ったのはオズなのだ。


「オズ?」


「チコリさん。とりあえず、杖用の設計図を見せてください。汎用の物がありますよね」


「う、うん…………え!?オズちゃん、武器の設計出来るの!?」


「えぇ、まぁ」


「……………………なんなの、この、姉妹…………太刀打ち出来ない……」


まぁ、自分の専門分野にまで口出しされちゃあね…………でも、私を含めるのは何故に?

放心したようにフラフラとした足取りで設計図を取ってきたチコリちゃんが別の作業台にそれを広げると、みんな興味深そうにそちらに移動した。


「書き込んでも?」


「うん。コピーだから」


一言断ったオズは、赤インクを付けた筆記具を手に取ると、


「今回のアサルト・ボアの魔力伝導経路は、こことここに歪みがありますので、ここは21°、ここは15°曲げて下さい。強度は落ちますが魔力伝導値は最大になりますので。

落ちた強度は、外装のこことこことここに補強材を当てることで補います。


次に肝心の焦石についてですが、直接 杖本体に組み込むのではなく、接続器(コネクタ)を咬ませます。

接続器はアサルト・ボアと幻惑鳥の素材から創りますので、魔力伝導値の変化が緩やかになり、問題なく魔力が流せます。ひとつだとまだ魔力伝導値の変化が極端なので、配合比率の異なる五種類くらい創る予定です。

ただし直接組み込むのではないため『焦石が外れやすい』という欠点が発生しますので、やはり外装をこんな感じに改造して、外側から押さえ込むようにしてください。


また、先程チコリさんのお父さんが仰った『比較』についても、同様に造った焦石と交換出来るため、容易に検証可能です」


と、言いながらすごい勢いで修正を加えていく。言葉にしていない細かい内容も、注釈と共に書き込んでいるので、みるみる内に真っ赤になった。


オズの提案は、杖本体と焦石を纏めてひとつの武器とする従来の方法ではなく、杖本体と焦石を別々の部品と看做すモノであるが、オズに聞いたところによると、おじいちゃんと旅をしていた頃、別の国では一般的な方法として確立されていたらしい。当然かつての文明も。


『なんで禁止されているのか、理解に苦しみます』とはオズの弁。

しかし、そんなことは知らないチコリちゃんたちは大騒ぎだ。


「接続器、だと……?」


「杖本体と焦石が異なると、術式に組み込めなくなるが、こういう理屈だったのか……?」


「魔力伝導値。確かに言われてみれば、そういうものがあって然るべきだが、どう測定する?いや、そこまで厳密でもないのか?」


「これ、大発見なんじゃ……」


「……………………オズちゃん。師匠と呼ばせてください」


「お断りします。質問には答えますが、具体的なところはご自分で検討してください。あとこの方法は他国、特に東方の国では一般的な方法ですので、新発見ではありません」


「拝啓、お父さま。ちょっと東に行ってきます。探さないでください。チコリ」


「ダメに決まってんだろ」


「そんなぁ~……」


なおもワイワイと騒ぐ職人さんたちを置き、オズはアサルト・ボアの背骨を置いた作業台に移動すると、


「チコリさん」


「はい。師匠」


「それやめないと、もうお菓子あげませんよ」


「なにかな、オズちゃん」


「魔力伝導経路は分かりますか?」


「ごめん、分からない。さっき先輩も言ってたけど、魔力伝導値っていうのも初耳だから。完成した武器を評価するのに魔力増幅率を測定する計器はあるけど」


「ヒントは錬金術師にあります、と言っておきます。

では、目標形状の目安を引いておきますので、その通りに成形してください」


「了解」


そしてオズはチコリちゃんに指示をしながら、脊椎の角度や向き、傾きを整え、最後に一本の線を引いた。


「この線が繋がるようにお願いします」


「任せて」


「お姉ちゃん」


「ん?」


すっかり蚊帳の外に置かれてしまったと思っていたら、オズに呼ばれた。


「焦石と接続器の作成をお願いしたいです」


「どうするの?」


「錬金術師ギルドで依頼してもいいですが、お姉ちゃんも錬金術使えますよね?」


「あぁ……錬金術で創るのね。なら、私がやるよ」


「ありがとうございます」


今まで草葉の陰で泣き続けていた錬金マスタリーが、遂に日の目を見る機会がやって来たようです。

泣きながら射撃マスタリーと踊っています。射撃マスタリーも随分と放置されてましたからね。


「うええぇぇぇぇ!!!?ルーシーちゃん、錬金術も使えるの!?」


「まぁ、あんまりやらないんだけど」


料理くらいにしか。

驚いた表情でしばし固まったチコリちゃんは、へなへなと床に座り込み 両手を付くと、


「……………………お父さん……………………私は世の理不尽を呪いたい……………………」


「分かるがやめろ」


う~ん……錬金マスタリーはおじいちゃんからの貰い物だからなぁ……それこそ運が良かったんだよ。おじいちゃんの孫娘で。……言えないけど。


色々と波乱を巻き起こして解散となった。


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