第84話 回想中② (ゴーレム娘、素材回収)
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やたらとウキウキになったセレスとギルド長に連れられて、冒険者ギルドに隣接された解体倉庫へとやって来た。
ギルド長も背中越しに聞いていたらしい。
セレスはともかくギルド長には、また何かおつまみでも作ってあげようと思ってただけなんだけど…………お義父さんって呼ばなきゃダメですか……
まぁ一先ず問題は先送りにして、私の素材はどこだろう?
実を言えばここに入るのは始めてなので、何がどこにあるのかさっぱり分からない。
『ここはやっぱりセレスかな?』と思っていると、ギルド長が素材運搬中の職員を捕まえて、
「おい、ちょっといいか」
「あれ?ギルド長。どうしたんですか、こんな時間に。いつもサボりにくるのは、午後ですよね」
秘密を暴露された。
「へー……」
「お、おいこら、やめろ。セレスはともかく娘がいるんだぞ」
「……………………二人ともあっち向いてて」
「「は~い」」
オズの肩を掴んで後ろを向かせると、耳を塞いで《ジャミング》で念入りに防音する。
周囲に壁が建ったかのように静かになると、籠ったようなセレスたちの声で、『『私はともかく』ってどういう意味よ!!私は娘じゃないんかこらーー!!!!』『ぐほぉはああ!?』的な音が聞こえてきたけど気にしない。
『おー……下段から流れるような蹴撃五連』
『さらに蹴り上げから空中三連、打ち落としか。あ、着地で踏みつけたな。痛そうだ』
『えげつな~……』
二人とも解説しないで。ほら、オズがちょっとオロオロしてるでしょ。
肩を叩かれたので振り返ると、ギルド長がボロ雑巾のようになって床に沈んでいた。
…………攻撃してるとこを見せない気遣いが出来るなら、ちゃんと後始末もしてください。
「ギ、ギルド長……大丈夫ですか……?」
「大丈夫よ」
オズの問い掛けに答えたセレスは、呆れた顔をしている職員さんに向き直り、
「昨日指示したアサルト・ボアの解体は済んでる?」
「無茶言わないでください。昨日の今日ですよ。昨日は前処理だけして、解体は今朝から始めたばかりです。終わってるのは、幻惑鳥と一番大きなアサルト・ボアだけですね」
「とりあえずそれで十分よ。全部終わるのはいつ?」
「今日中……17時頃には」
セレスは満足そうに一度頷くとこちらに振り返った。
「ルーシア、どうする?一番良さそうなやつの解体は済んでるけど、他のも欲しい?」
「そうですね……大きい方から三頭分は全部下さい。残りは魔石だけ」
「分かったわ。そのくらいならすぐ終わる?」
「30分程ですかね。じゃ、こちらへどうぞ」
と、言う職員さんに連れられて奥へ移動する。
「おい。俺を置いていくな」
ギルド長も蘇生して付いてきた。
職員さんの案内で広めの部屋に入ると、防水性の前掛けを着けた男性が、二人掛かりでアサルト・ボアの解体を進めているところだった。
「おーい。今解体してるのと……あと、それの解体を優先してくれ。それが終わったら先に魔石だけ回収」
「「ういっす」」
仕事場に素人が立ち入ったら嫌がられるかと思ったけど、全然気にした風もなく作業を進めていく。
ついでにギルド長がいても全く気にしない。
……………………威厳とは。本人も気にしないのでどうしようもないな。
ギルド長は解体済みの素材が置かれたスペースに移動すると、
「ほぅ……さすがにでかいな」
嬉しそうに声を漏らした。
そこには、綺麗に洗浄された魔獣素材がところ狭しと並んでいた。
一番の目玉は、5m級 大アサルト・ボアの背骨に代表される骨材である。
基本的に一本モノとして杖に加工されるこれら骨材は、元となる魔獣が大きければ大きいほど良い。
「この素材なら大体3m程の大杖となりそうだが、オズリアに持てるか?」
「大丈夫です。《杖術》の汎用スキルは習得しましたので」
「なら大丈夫かしらね」
なお、サプライズプレゼントの件は、昨日の事情説明中にバレてしまったので失敗です。
「ここに置いてあるのは査定が済んでいますから、持っていって構いませんよ」
「分かりました」
職員さんに応えて、大アサルト・ボアと幻惑鳥の素材を[アイテムボックス]に収納する。
「「「おおぉぉ…………」」」
何故か職員さんから感嘆の声のようなモノが漏れた。
え?なんで?このくらい散々見せてるよね?
「ホントに入った。初めて見た」
「俺も。他の奴等に自慢してやろ」
「俺らギルド飯店に行けないからな、就業時間的に」
「な?有休取れば行けるけど、それは流石にな」
「一応、噂には聞いていたから、まだ驚きは少ないけど」
「でも、直接見るとさすがに驚く」
「これ全部出すとこ見たかった……」
……………………そういえば、見せてるのは専らセレスにだった。うっかり。
ギルド飯店でも見せてるけど、あっちはみんな酔っぱらってるからな。
他の街に行くなら、この辺どうにかしないといけないなぁ。セレスはいないんだし。
「残りが用意できたらお呼びしますので、表で少々お待ちください」
「よろしくお願いします」
職員さんにお願いして、解体倉庫から出る。中にいる間はあまり気にならなかったけど、外に出ると空気が美味しいと気付く。
生臭かったからね……
「それじゃ、私たちは仕事に戻るわ」
「その前に一度シャワーでも浴びた方がいいかもな……」
「そうね。この状態で受付とか出来ないし」
「…………………………………………」
もしかして、そのために来ましたか?『こんな生臭いままじゃ仕事出来ない』とか言ってサボるために。
…………………………………………
「ちょっと待ってください」
「ん?」
「なんだ?」
「オズはセレスの方よろしく」
「分かりました」
問答無用で上から下まで、綺麗サッパリに洗浄してあげました。
「……………………ありがと」
「あぁ……そうだな」
どことなくムッとした様子のセレスとギルド長の身嗜みを整えながら、
「今日は武器作成を依頼したら、すぐ帰るつもりです。私もオズも夕食作りを手伝いますから、頑張って仕事してきてください。お、おと、お……………………ギルド長……」
ムリだった…………
顔がすっっっっごい熱い。
何でも無い風を装ってそっぽを向いた。
でも二人はそんな私の様子を見ただけで、それなりに満足したらしい。
一転して嬉しそうな顔をすると、
「ふっふっふ……娘にそう言われては頑張らざるを得ないな」
「私は?私は?」
「……………………ギルド長の後です」
「期待薄だぁ!!!!」
楽しそうに笑いながらギルドに入っていった。
…………………………………………
「お姉ちゃん。顔、まだ赤いままですよ?」
「オズ…………ちょっと、私も洗浄して…………」
「いきますよー」
結論から言うと、乾燥で余計に暑くなった。
オズも綺麗にして、『お義父さんって恥ずかしいよね……』『なら、パパは?』『もっとダメ』みたいな詮無い話をしていると、先程の職員さんが残りの素材を持って来てくれた。
お礼を言って受け取ると、『いいってことさ。また大物頼むよ』と言ってすぐに引き返していった。
いや、狙って大物獲ってきてるわけじゃ無いんだけど。
まぁ、次回も良い出会いに期待して、当初の予定通りチコリちゃんのところに行きましょう。
鍛治屋街をオズと手を繋いで『武器工房 フィンメル・アルバ』に向かう。定期的にメンテナンスで訪れるから、もうすっかり慣れた道だ。
オズはこの体になってからは初めてだからか、周囲をキョロキョロと興味深げに見回している。
「この前は気付かなかったですけど、鍛治屋街の割にうるさくないですよね」
『今さらと言えば今さらだよね~……』
『この前 来たときは気付かなかったのか?』
『えぇ、まぁ。おしゃべりに夢中でしたので』
「えーと……音がうるさい鍛治場は、防音魔法が働いてるから、外まで鎚の音が響くことは少ないみたいよ。他の街は違ったの?」
「えぇ。あ、でも、大きな街はこんな感じでした。マイアナと最初に滞在していた所は村でしたので、そこの印象が強かったようです」
「なるほど」
それいつ頃の話なんだろね?150年くらい?
今はもう当時の面影はないだろうな……
「今はどうなってますかね~……廃村になっていてもおかしくは無いですが」
「そんな小さな村だったの?」
「えぇ。交通の便もよくなかったですし、特産品があるわけでもなかったですからね。維持は可能でも発展は難しい。そんな村でした」
『まぁ、よくある村だよね~』
『名前は覚えてるのか?』
『それが覚えてないんですよ。無かったのかもしれません。場所もさっぱり』
『どうしようもないな、それ』
『いえ、別にまた行きたいわけでもないですし』
と、いうような会話とういか念話をしていると、目的地のフィンメル・アルバに着いた。
工房の看板を見たら、何かを忘れているような気がしたが、思い出す前に足が進んで工房内に入ってしまう。
「こんにちは~」
「いらっしゃいませ~~!!あらぁ!!人形遣いさん御姉妹入りま~す!!」
「オズも巻き込んで宣伝しないでもらえます!?」
工房に一歩足を踏み入れた途端、チコリ母に大声で字名を呼ばれてしまった。しかも、オズ込みで。
なんか忘れてると思ったら、コレだった。帰りは呼ばれないから、チコリちゃんと話してる内に忘れちゃうんだよね。
オズがビックリして後ろに隠れてしまったのをそのままにして工房に足を踏み入れると、順調に増えているお客さんが揃ってこちらに視線を向け、
「…………………………………………」×たくさん
黙って思い思いの方法で祈り始めた。
……………………どこの邪教だ。
『ナツナツ』
『【グット・ラック】~♪』
『これが悪いのでは?』
そうかもしれない。
周りを気にしないようにしてカウンターへ向かう。『今日はツイてる』とか『妹込み込みで御利益倍化だぜ』とか言う声が聞こえるが、改めて言うが気にしない。
「…………こんにちは。チコリちゃんいます?」
「いらっしゃい。その子が噂の妹さん?お姉さんと同じで可愛いわね~♪」
「あ、ありがとうございます……オズリアと申します……」
「よろしく~」
「オズは人見知りが最近改善したばかりだから、あんまり目立つことに巻き込まないでください。人見知りが再発したらマジギレしますからね」
「あははは。分かった分かった。分かったから威圧はやめてね。お姉さん泣いちゃう」
かなり本気で睨んだけど、軽くいなされてしまった。
まぁ冒険者や鍛冶師の中には乱暴な者もいるし、私の睨みくらいどうってことないのかもしれない。
「それで、チコリちゃんはいつものところですか?」
「えぇ。勝手に入っていいわよ」
「分かりました。それじゃ失礼します」
ヒラヒラと手を振るチコリ母に軽く頭を下げて、奥の鍛治場に失礼させてもらう。
オズを周囲の視線から隠すようにして通路に入った。周囲の視線が無くなって明らかにホッとした気配を見せたオズの背を押して鍛治場に急ぐ。
途中で防音魔法を抜ける前に、自分に防音魔法を掛けるよう注意するのは忘れない。
鍛治場に入ると、いつかのように数人の職人さんがいた。冒険者の姿は今日もなかった。
まぁそれら他の方々は放置して、なにやら作業に集中しているチコリちゃんのそばに行くと、声を掛ける。
「チミコちゃん、おはよう」
「誰がノミのように小さいからノミコですか!!」
「そこまで言ってない」
気にしてたのか。というか、ドワーフなんだから小さいのは当たり前でしょう。
……………………だよね?
強制的に作業を中止させたチコリちゃんに近付き、まずはオズを紹介する。
「オズ。この子はチコリちゃん。オズよりひとつ年上だけど、お菓子で餌付けすれば、顎で使えるから大丈夫。でも与え過ぎに注意してね。
チコリちゃん。この子は私の妹のオズリア。今言った通り、貴女のひとつ下の13歳。人見知り気味だから、優しくしてあげて。私のだからアンタの妹にはやらんよ」
「ルーシーちゃん!!その説明は酷いよ!!」
「初めまして、チコリさん。じゃあ、お近付きにひとつマカロンでもどうぞ」
「あ、ありがとう。えーと、オズリアさん?じゃあ私もオズちゃんって呼ぶね。私こそよろしく。…………これウマァァーー!!!!」
一瞬だけ、年上として威厳を保とうとした気配を感じたが、オズのマカロンに即 陥落した。
よし、これでとりあえず力関係はオズの方が上になったから、色々と有利に話を進められるだろう。
「なに……なんなの、この姉妹……実はパティシエ姉妹なの……バトルパティシエなの…………こ、こんなの下僕にならざるを得ない……!!跪いて忠誠を誓ってもいいですか……!?」
「宜しくないです。でも、オズも私と同じ扱いでよろしく」
……………………ファーストインパクトが強すぎたらしい。下僕はいらない。
もうひとつでもあげたら靴でも舐め出しそうな勢いのチコリちゃんにオズが引いている…………そんなオズへひとつアドバイス。
「こんな感じだから、お菓子は用法用量を守って、正しく与えてね。下僕はいらないでしょ?」
「用法と用量を教えてください!?」
「下僕は冗談だよ!!……………………ペ、ペットくらいなら」
「『そのくらいならいいか…………』とでも言うと思ったのか……」
「お姉ちゃん…………どうしよう。加減が分からない……マカロン一個よりも用量減らすにはどうしたらいいの……」
半分にしたらいいんじゃないかな。
とりあえず残りのマカロンは、箱に仕舞って後で親経由で与えることにして、今日の目的を進めよう。
「今日はね、オズの武器を造って欲しいんだけど」
「ん?いいよー。ルーシーちゃん、ベーシック・ドラゴンの武器造ってからメンテナンスばっかりなんだもん」
「しょうがないでしょ。しばらくクエスト禁止喰らってたんだから」
「C、Bランククラスの素材をガツガツ持ってくると思ったのに~……」
「冒険者ランク自体はまだDランクなんだから、そんなわけないでしょうが。今回もDランクのアサルト・ボアだし」
普通は自分のランク以上の素材なんて手に入らないものですよ。
「あ、知ってる。私も見に行ったよ、ルーシーちゃんの辱しめ。しおらしいルーシーちゃん、ちょー可愛かった」
頬に手を当て、くねくねと体を揺らすチコリちゃんは、一言で言うとウザかった。
「…………チコリちゃん。この『血を分けた肉親でも絶縁確実なナニカ』食べさせてあげるよ」
例のスティッククッキー型のアレを[アイテムボックス]から取出し、肩を抱いて押し付ける。
「なにそれ!?…………?オ、オズちゃん!?どうしてそんなに震えてるの!?」
「タベル、ダメ、ゼッタイ……」
オズが、うつろな表情で単語を吐き出す装置に成り果ててしまった。
「劇物!?ルーシーちゃん、オズちゃんに何食べさせてるの!?」
「食べてみれば分かる…………なお、私がムリヤリ食べさせたんじゃなくて、私はオズに付き合って食べた方だから、誉められてしかるべき」
「二人とも目が死んでるーーーー!!!!た、食べないからね!?」
「これを食べたらオズの『奇跡のスイーツシリーズ』あげるよ。試作中にたまたま出来たヤツだから、家族以外に食べさせてないヤツ。二度と作れないかもしれない」
「…………………………………………す、少しだ」
「ダメ、ダメ……」
「……………………………………………………………………………………くっ、食べない!!オズちゃんの決死の訴えを無視するわけにはいかないの!!!!」
「ちっ…………」
仕方ないので、手に持っていたアレを、[アイテムボックス]に仕舞う。…………流れで思わず指に付いていた粉を舐めとってしまった。
「おぐへああああぁぁぁぁーーーー!?!!!!!?」
「お姉ちゃーーん!?」
『何してるのおバカーーーー!!!!』
『《感覚調整》で味覚を切れーーーー!!!!』
「ひいいいいぃぃぃぃ!!!!!!!!ホントに劇物!?食べ物の反応じゃないよ!!!?」
……………………一応、量が少なかったためか耐性がついたためか分からないが、自主規制ることはなかったことをここに宣言しておく。




