第83話 回想中① (ゴーレム娘、自分の言動を省みる)
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朝食を終えて冒険者ギルドへ向かうギルド長とセレスにくっついて、私たちも向かうことにする。
解体を依頼した魔獣の素材と報酬を受け取るためだ。
…………昨日は受付嬢さんにギルド長室へ連行された後、謝罪と同時にゲンコツを貰い、半泣きで経緯を説明。その証拠としてアサルト・ボアと幻惑鳥を取り出して検分され、そのまま簡易養子縁組を結んで謝罪行脚に連行されたので、目的だった杖の素材を受け取ってないのだ。
オズを挟んで右手を私が、左手をセレスが握り、頭にナツナツが座わらせ、少し前を行くギルド長の後を行く。
そんな布陣で、割とのんびり進んでいた。
「……………………なんで私、こんなに念入りにガードされてるんですか?」
「ガードだとすると、後方が空いてるわね」
「タチアナさんでも呼んできます?」
「ダメよ。そしたら、私が後ろに廻されるでしょ」
「殿は実力が無ければ務まりませんから」
「あれ!?ホントにガードなんですか!?」
『そろそろ慣れてもいいんじゃな~い?』
『少しでも長く構いたいんだ。諦めろ』
『『慣れろ』って、私が構われることに慣れろって意味なんですかぁ!?』
それ以外に何があると?
オズが気付いてるか分からないけど、ギルド長だってオズの歩幅に合わせてるから、こんなにのんびりなんだからね?
まだまだオズがグランディア家に加わって二週間ちょい。みんなちょっかいを出したくて堪らない時期なのだろう。
言うなれば新しくペットが加わった時の状態と言いますか…………
私の時だって…………………………………………あれ?そう言えば、私は割と早くから放置されてたような…………?構われてたのはナツナツばかりだった気も…………?
『そこんとこどう思いますか、ナツナツさん?』
『私に聞く?それ~……
ルーシアナは、ほら。ここに来たばかりの頃、生活基盤を作るのに色々忙しかったじゃん?だからタチアナもセレスも、気を使って自分たちから構うことはしなかったんだよ~。
代わりに私を構うようになって、そこにルーシアナが加わってきたなら、『ルーシアナも余裕がある』時間帯だと判断して一緒に構うようにしてた感じ?
今はもうピーク過ぎちゃったし、朝食を一緒に作ったり、お風呂一緒に入ったりしてるから、今のオズほどガツガツと構ってこなくなってるんじゃない?』
『……………………予想以上にしっかりとした回答が……ところでピークってなに?』
『タチアナとセレスの『ルーシアナへの関心』のピーク』
『私飽きられた!?』
『ナビ、いけ』
『ナツナツパイセン、それ酷いです!!……………………あ、飽きられたのではなく、そう、より近しい存在、そう、家族になったのだよ!!そんな存在に対して、常態と異なる心理状態を持ち続けるのもおかしな話だろう?』
『簡易養子縁組 結んだの昨日だけどね~。そういうことにしとこっか~』
『パイセン!!せめて援護をお願いします!!!!』
『いや、ナビ。ありがとう。言いたいことは分かったから』
『そ、そうか』
ホッとした吐息すら聞こえてきそうな声色だった。
…………でもその理屈だと、オズはまだ家族扱いされてないってことになるんだけど……まぁ、言わない。
『じゃあ、私はまだピークがきてる段階ってことで、慣れるしかないんですか……』
『というか、タチアナは人見知りを治すのに一週間くらい付きっきりだったから、もうピーク過ぎたでしょ?
セレスは、ほら。朝と夜しかオズを構う機会がないのに、朝は忙しいし、夜はルーシアナが占有してるじゃん?ベッドに潜り込むのも禁止したままだから、フラストレーションが溜まってるんじゃないかなぁ……
お預けを食らいまくってる忠犬みたいなものだから、そのくらいさせてあげたら?
というかセレスがしてるのって、手を握ってるだけだし』
『私が原因だった…………!?』
何にも言ってこないから、もういいのかと思ってたけど、律儀に『待て』してたの!?
そして確かに言われてみれば、セレスはオズと手を繋いで歩いてるだけだ。特にしつこく話し掛けてくることもせず、今も静かに隣を歩いている。
『ガードがどうの言いだしたの、そういやオズからだったね……』
『…………………………………………ちょっと……………………気にしすぎだったみたいです…………』
『というか、嫌なら嫌って言えばやめてくれると思うよ?まぁ私からすれば、『そんなに構われるの嫌?』って思うけど』
『…………………………………………嫌というほどじゃないんですけど…………は、恥ずかしいと言いますか…………』
『それを嫌と言うのでは?』
ナビ……何故ここで余計な一言を言う。
『……………………お姉ちゃん。私もナビをモフりたい』
『いいよー』
『二日連続は勘弁してください!?』
『うわー…………嬉しそうだよ、ドMか~……』
『パイセン!?』
本日の夢茶会でナビの昇天が決定しました。
なおもナビがオズに弁解を繰り返すのを聞き流しつつ、ちょっと自分でも勘違いしていたことに思いを馳せる。
…………ナツナツやオズに対するものに比べて、タチアナさんやセレスが積極的に私に構ってこないのは、関心が薄いのかと思ってたけど そういうことでは無かったんだね……セレスのベッド侵入は謎だったけど。
改めて思い出してみれば、お茶会や入浴時などでタチアナさんやセレスと一緒になったとき、時たまこちらに視線を送ってきていた記憶がある。
なんか変なことでもしたかと思っていたけど、実際は私が加わってこないかと期待してたってことなのかも。
簡易とはいえ養女になったわけだし、もっと仲良くなりたい気もする…………けど、今更こちらから『遠慮しないで積極的に来ていいですよ』と言うのは、なんというか、自意識過剰な人みたいだしで、言いにくい。
……………………やはり呼び名を変えるべきか?
『あ。そう言えばさっきの話、タチアナさんとセレスしか対象に上がってなかったけど、ギルド長はどうなの?』
『ギルド長は大丈夫。ほら、一家の大黒柱というか長だからね。『家族が幸せ』なだけで、ギルド長は大体満足してるんだよ~。それにたまにお酌してあげたり、おつまみ作ってあげたりしてるでしょ?あれでさらに充実って感じみたい』
『……………………そのうち…………お義父さんって呼んであげた方が良いかな……』
『嫌がってもいいと思うよ~。それはそれで嬉しそうだから。セレスとのやり取り見てても分かるでしょ?』
なんというか、安上がりな人だ……
呼び名を変えるかどうかは置いておくとしても、もうちょっと私も態度を改めようかと思います。いや、今までだって悪かった訳じゃないけど、もうちょっと積極的に好意を伝えても良いんじゃないかと。無下にしてしまった気遣いも多かったのかも、とね。
『しかし、ナツナツさん。妙にみんなの心情というか思考を理解してるみたいだけど、もしかしてなんかスキル取得した?』
例えば…………心を読み取る《心眼》、みたいな?
『いや、私なんだかんだで毎日全員と絡むから。それにこっちから声掛けない限り気付かれないから、独白みたいなの聞いちゃうこともあるんだよね~……』
『今更ながらとんでもない魔道具もらったよね…………悪用しちゃダメだからね?』
『我が種族の誇りに誓って (キリッ)』
『その種族『面白ければ大体OK』みたいな種族ですよね!?』
《冷静》!!もっと成長してもいいんですよ!!
さて…………長々と話し込んでしまったけれど、念話だったのでそれほど時間は経っていない。
が、それでもやり取りした情報量が情報量だったので、外面的にはちょっと不自然に沈黙してしまった。
会話のやり取りは高速でも、思考速度は変わらないからね。
気になってセレスを見てみると、
「……………………あ、お話終わった?」
事も無げに言われた。
…………まぁ、隠すことでもないし、いいか。
「はい。でも、言いましたっけ?」
「いや、言ってないよ?たまに口裏合わせたみたいに会話が噛み合ったりするから、『何か意思疎通手段があるのかな』って思ってただけ。でも、私たちにバラしちゃっても良かったの?」
「まぁ、もうちょっと態度を改めて、積極的に仲良くなろうかなと考え直したところなので。不自然に沈黙した場合は、内輪で相談してたと思ってください」
「それはそれで、堂々とハブられてるだけのような…………ま、まぁいいわ。一応教えておくと、そういうとき微妙に目の焦点が合ってないから分かるわよ?」
「…………気を付けます」
念話をしてる間は、意識がそっちに持ってかれちゃうから、不測の事態に対応出来るよう、染み付いた警戒法が無意識に出てたのかも。
一点を集中して見てると、ちょっとした変化を見落とすからね。ボ~っと全体的に見る方が良いらしいのだ。『見ないで見ろ』とか、ついに耄碌したかと思いましたよ、おじいちゃん。
今は常時 《ロング・サーチ》が発動してるから、こんなことしなくてもいいんだけど。
セレスは楽しそうな笑みを浮かべてこちらに顔を寄せると、
「それでそれで?『積極的に仲良くなる』って具体的には何するの?お姉ちゃん期待しちゃう」
「まだ考え中ですけど…………とりあえずセレスには例のアレを解禁しましょう。オズも慣れたみたいですし」
そういうと、わざとらしく驚愕の表情を浮かべ、
「れ、例のアレとはまさか…………!!」
「えぇ……オズを連れてきた日にお願いしたアレ……………………釣りです」
「やっ…………そんなの禁止にされた覚えないよ!?」
どうしても一度はボケてしまうのはどうしようもない。




