第79話 ゴーレム娘 VS. アサルト・ボア?①
70 ~ 81話を連投中。
4/30(火) 14:50 ~ 19:10くらいまで。(前回実績:1話/21分で計算)
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さて、オズと修練所へ行った翌日。私はオズと別れてクエストです。
結局、戦闘系の汎用スキルも私のマスタリー系の下位互換だったようなので、習得出来なかった。
まぁ、全てを試したわけではないので、習得出来るのもあったかもしれないが、必要に迫られてからでいいや、ということに落ち着いたのだ。元々そういう類のモノだし。
今日のクエストは討伐系にするつもりなので、ナツナツも一緒だ。
討伐系ではあるものの、倒したことのある魔獣にするつもりだったので、ハチミツの時と同じようにナビと二人で行くつもりだったのだが、オズに『私はタチアナさんと行きますから、念のためナツナツを連れていってください』と言われ、ナツナツやナビにも『討伐に行くなら万全の状態で』と言われてしまったので仕方ない。
まぁ、修練所ではテトラさんたちにもよろしく言っておいたし、タチアナさんもいるし大丈夫だろう。
私よりタチアナさんの好感度が上がらないことを祈るだけだ。そんなことになったら泣く。
目的はオズの武器となる杖の素材、魔獣の骨である。ベーシック・ドラゴンの素材が残っていれば良かったのだが、使わない分は全て売ってしまったのだ。いや、武器を作ってもらうのにも結構なお金が掛かりますからね。
今は樫の杖という、最も簡易な杖を持ち歩いている。片手剣でいうところのアイアンソード、つまり初心者用。堅いので鈍器としても使える。
FやEランクならそのくらいでもいいのだが、Eランクに上がったら一緒にクエストをこなすこともあるだろうし、それなりの武器を持った方がいいと考えたのだ。
……………………いえ、サプライズでプレゼントしたら喜ぶかなぁとかは、ちょっとしか考えてません。えぇ、ホント。
今回選んだクエストは『アサルト・ボアの討伐』である。
場所はカフォニア山脈外縁部。この前ハチミツの採取に行った場所よりさらに奥の辺りであり、少し木々が多い場所だ。
討伐対象のアサルト・ボアはDランク中位の魔獣で、その名の通り突進を得意とする猪であり、分かりやすく猪の上位種といったところ。
5頭程度の群で生活する猪で、体長は1 ~ 2mと見た目は至って普通の猪である。
この猪がわざわざ『アサルト』と名付けられ、Dランクに指定されているのは、突進の破壊力の高さと集団戦闘が危険だからだ。
アサルト・ボアの突進の破壊力は、この辺に生えてる木なら一撃でへし折る程の威力があるので、人間がまともに喰らったらひとたまりもない。
『猪突猛進』なんて言葉があるせいか勘違いしている人も多いけど、猪、意外と曲がるから避けずらいし。誰だこんな言葉考えたの。どちらかと言えば『猪突猛追』だよ。ホーミング猪。
まぁそれでも一対一なら恐れることは全くないのだが、厄介なことにアサルト・ボアは集団で反撃してくる習性があるのだ。
通常の猪を狩る場合は、群の1頭を攻撃すると他の猪はすぐ逃げ出すので、その1頭をどうにかする実力があれば特に問題ない。
だがアサルト・ボアは基本的に逃げず全員で反撃してくるため、群をまとめて相手にできる実力が必要なのだ。
そのため、先制攻撃で反撃される前に全滅させるか、数を減らすのが重要とされている。
まぁ私の場合は一人なので数を減らすことしか出来ないため、生き残りのアサルト・ボアが次々と突進してくるのを躱しつつ倒していく事になる。
ミスの許されない、危険な戦闘となるだろう。
……………………もっとも、ドラゴンと比較するとどうしようもなく格下なのだが。前世でも罠を張るなりして、準備をしっかりすれば狩れたし。
集団で突進してくると言っても、誰かが指揮している訳でもないし、大袈裟なくらいしっかり避ければなんとかなる。
そんなわけで若干の緊張はしつつも、慣れた狩りなのでキノコや薬草の類を採取しながら、出没エリアを目指して進んでいった。
『ナツナツ?ナビ?』
『いたよ~。前方 右方向』
『珍しく背の高い草むらが生えてるところの向こうだ。草むらから200m程。隠れていけ』
『了解』
ナツナツの高所からの透視とナビの《ロング・サーチ》による索敵。大体において先制が取れるのは大きなメリットだ。
身を屈めて草むらから様子を窺う。
『……………………多くない?あと、でかくない?』
『そうだな。…………20頭。討伐対象はボスだが……』
『どれだと思う~?』
草影から見えるアサルト・ボアは、なんと20頭の大集団だった。
普通は5頭で多くても10頭なのだから、2 ~ 4倍である。
姿形は普通の猪とそうは変わらない。立派な牙が生えた、ずんぐりむっくりな体躯をしている。
だが、全体的にでかい。《フル・スキャン》を使うとバレるので詳細は分からないが、体長は全て2mを超え、中には5mの大物もいるように見える。
いや、大きすぎるでしょう……
『えーと……何回か討伐に失敗してるんだっけ?』
『そうらしいな。数が多くて予想外のところから突進されたとか』
『死にはしなかったみたいだけど、結構な大ケガを負ったみたいだね~』
『《ロング・サーチ》で捕捉してる?』
『あぁ。問題ない』
今回このように何度か冒険者が失敗しているクエストを受注したのは、《ロング・サーチ》で全てのアサルト・ボアを捕捉すれば、躱し切れると踏んだからだ。
『数は20 ~ 30頭。バカみたいに大きいのもいる』とかいう情報もあったが、正直大袈裟に言ってるのだと思っていた。
が、どうやら正しく報告していたらしい。信じなくてごめん。
[アイテムボックス]から、まずは弓を取り出す。
ベーシック・ドラゴン素材の長弓 ― ベースボウ ― である。
ここでひとつマメ知識です。
弓系の武器は、素材となった魔獣の属性にあったスキルを持つ。そのため同じ種族の魔獣から作った弓でも、保有しているスキルは異なることも多い。属性と効果で。
あのベーシック・ドラゴンは、《風魔法の才》を持っていたことから分かる通り風属性の魔獣だったので、このベースボウは風属性のスキル《烈破》を持っている。
これは矢が刺さった場所を中心に破裂するような衝撃波が発生するスキルだ。
ドラゴンのような鱗を持つ魔獣には矢が刺さらないので効果が薄いが、猪のように矢が刺さる魔獣には効果が高い。……………………人間に当ててはいけませんよ、これは。
草むらに隠れて狙うのは、とりあえず一番大きな個体だ。
襲われると反撃してくるアサルト・ボアであるが、それはボスが健在の間だけだ。ボスを倒せば、残りの個体は散々に逃げ出す。そうなれば各個撃破もしやすい。
だが、アサルト・ボアを狩る際に『ボスを倒すことが重要』と言われることは少ない。なぜなら、ボスがどれか見分けが付かないからだ。
一般的に考えれば、ボスといえば大きいのが相場なので、とりあえず一番大きな個体を狙うことにしているが、一番小さい個体がボスのこともあるらしい。
まぁ、ボスでなくても攻撃力は一番高いだろう。
キュ……キキキキ…………
引き絞るベースボウから、擦れるような甲高い音が微かに聞こえる。
狙う大アサルト・ボアは地面に生える雑草を食みながら、少しずつその位置を変え、頭がこちらに向けつつある。。
…………………………………………
今!!
完全にこちらの真正面に顔を向けたベストなタイミングで矢を放った。
カィン!!!!
この前まで使っていたロングボウとは比べ物にならないくらい力強い弦の音を残し、一直線に矢が飛ぶ。
思った以上に狙い違わぬ軌道を描いた一撃は、しかし弦の音に俊敏に反応した大アサルト・ボアの額を逸れ、肩口に命中した。
「ブギギィィィィ!!!?!!!?」
間髪入れずに矢の刺さった肩口が破裂し、肉片を四散させる。
『グロ……』
同意します、ナツナツさん。あと、肉が減っちゃうな、これ。
続けて二発三発と撃ち込み大アサルト・ボアは留めたが、残りのアサルト・ボアに完全に見つかった。
しかも逃げ出さないとなると、あれはボスじゃなかったようだ。
草むらから立ち上がり、先頭を突っ走るアサルト・ボアに一発撃ち込むと、素早く横に飛ぶ。
ギリギリの所を背に矢を受けた猪が、えげつない速度で走り抜けた。
立て続けに2頭目、3頭目のアサルト・ボアが波のように、順番に襲い来る。
『さすがにこんだけ数が多いと、攻撃が止まないな!!』
『どうすんのこれ~!?』
『前方、10頭目辺りを避けたところで、最初の1頭目が再突進してくるぞ!!』
『ナツナツ!!確実に仕留める!!軌道を修正して!!』
『はいさ~!!』
サイドステップで突進を躱し、タイミングを見計らって《烈破》を込めた矢を撃ち込む。
▽射撃マスタリーのレベルが上がりました!!
▽射撃技:精神統一を取得しました!!
▽射撃技:烈破を取得しました!!
▽ステータスを確認してください。
特殊スキル
・射撃マスタリーLv.1 → 3
取得スキル
・精神統一:精神を集中して遠距離攻撃の命中率を向上させる。(常時発動)
・烈破:矢の尖端を基点として球状に衝撃波を発生させる。武器の保有スキルと合わせることが可能。風属性。
うわぁお。そういう風に覚えるんだ……
さっそくベースボウの《烈破》と自分の《烈破》を合わせて撃ち込んだ。
ボンッ!!!!
《精神統一》の効果で見事に額に命中した矢は、そこに込められた二重の《烈破》の力を解放し、頭蓋骨の上半分を綺麗に消し飛ばした。
『『グローーーーい!!!!』』
『さすがにやめて欲しいんだが……』
ナビにまで使用禁止を喰らったこのスキルはホントにヤバイ。絵面的に。
こう、ね?骨の断面が円状に白く残ってて、その中心に粗挽きミンチみたいな……あ、聞きたくない?ごめん、大体言っちゃった。
まぁ、明らかに過剰殺戮になってるので、合わせるのは止めておこう。
2 ~ 3頭に一発の割合で的確に矢を放っていく。
ナツナツの補助と《精神統一》の効果で、一撃必殺だぁ。
『17、16』
追加で2頭倒したところで、ついに背後からも攻撃され始めた。
『気を付けろ。周囲を囲まれ始めているぞ』
『え!?』
背後からの突進を躱す流れで周囲を確認すると、確かに後ろへと駆け抜けたはずの猪が、すぐに攻撃に移らず周囲を囲み始めている。
『アサルト・ボアって何も考えずに只管突っ込んでくるだけじゃなかったっけ!?』
『おかしいな。誰かに指揮されているような……』
『そう言えば前から突進してくるのも、1頭ずつ時間差で突進してきてたような気がしない~?』
『確かに……妙に避けにくいと思ったけど……』
そうだ。改めて思い返すと、妙に統率されていたような……
『!!!?ルーシアナ!!避けて!!』
『え!?』
右前方からの突進を回避した直後の、ナツナツの切羽詰まった警告。
だが従おうにも姿勢は崩れており、すぐには難しかった。
それでも強引に地面を蹴り、上空へと身を飛ばす。
『く』
突然、五感でも《ロング・サーチ》でも『何もない』と思っていた空間に、忽然と1頭のアサルト・ボアが出現した。
それは当然のように十分な速度が乗っており、躱し切れるタイミングではない。
『おお……!!』
《ショート・ジャンプ》を駆使して体の大部分を回避させる。が、地面を強く蹴った右脚だけは、猪の突進軌道上に残ってしまう。
…………覚悟を決める。
右脚に痛烈な衝撃と痛みが走ると、あらぬ方向に歪んだのが見えた。




