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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
5章 爆誕!!私の○○○○
79/264

第73話 ゴーレム娘、今後の予定を話し合う①

70 ~ 81話を連投中。


4/30(火) 14:50 ~ 19:10くらいまで。(前回実績:1話/21分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「ただいま~」


「お邪魔しま~す……」


道行く人々からの好奇の視線をスルーして、グランディア家へと戻ってきました。


いや、顔が同じなことでまず人目を引いて、過剰に反応するオズの姿が長く視線を留め、その視線が他の人の興味を引いて新たな視線を集め、それにオズが反応して視線を留め、また他の人の興味を引いて…………と、分かりやすい悪循環が発生していたのだ。


本人も分かってはいるものの、無意識の反応を止めることは難しく、赤くなって後ろから抱き付く以外に出来ることはなかった。

まぁ、抱きついても私の歩みを邪魔しないようにする気遣いは出来ているようだし、そのうち慣れると思うので頑張ってもらおう。壁にならいくらでもなってあげるから。


とりあえず屋内に入って『一安心』と言った風に胸を撫で下ろすオズが一息ついてから、タチアナさんを捜す。

まだ夕食の準備には早いけど、とりあえず食堂かな?


「あら。あらら~~?」


と、思ったら本人から登場した。こちら、というかオズを見て感嘆の声を上げている。

オズが素早く背に隠れた。


「オズ、ダメだよ。これからお世話になるんだから。ちゃんと挨拶しなさい」


「う~……」


ここは引いてはいけないところなので、オズの手を引いてタチアナさんの前に押し出す。

オズも分かってはいるので、素直に移動した。…………まぁ、体は無意識に逃げようとしているが。


「こ、これからお世話になります……オズことオズリアです。よ、よろしくお願いしまひゅあ~~!!!?」


「娘二人目ゲット~~♪」


オズがサッと頭を下げた瞬間、タチアナさんは一瞬で距離を詰め、オズの腰に左腕を回して抱き上げた。

俵担ぎではなく、子供を片腕に座わせるように抱え上げるアレだ。つまりバランスが悪い。

にもかかわらず、混乱したオズが逃げ出そうと暴れるので、頭から落ちそうで心臓に悪い!!

タチアナさんは嫌がられても片腕だけで器用に抱え続けているが、両手を使って欲しい。

なお、空いた右腕は私の肩を抱くのに使われている。


「さぁさぁ疲れたでしょ?お茶でも用意して、ゆっくりお話ししましょ?」


「は、離して~~~~!!!!わ~~~~ん!!!!お姉ちゃ~~~~ん!!!!」


もうマジ泣きだ。


「タ、タチアナさん!!オズは人見知りみたいだから手加減してあげて!!というか、今までこんなことしたことなかったよね!?」


「それは機会がなかっただけね。意外に隙がないんだもの」


それはナツナツやナビが、周囲を警戒していてくれてるからですね。


オズを掴んで引くとすぐに降ろしてくれたので、私が間に入って庇う。


「もう!!人見知りが悪化したらどうするんですか!!」


「ごめんごめん。でも過剰に反応し過ぎじゃない?それの時は落ち着いてたのに」


と、タチアナさんが指差すのは、ナツナツが乗る転移基点端末。ナツナツが気に入ったので、現役続行中だ。


「まぁ、本人も知らなかったみたいですが、人と話すのとか注目されるのとか苦手みたいなんです。それの時はある意味 間接的な接触だったから大丈夫だったのではないかと」


「なるほど。でも、それだとここまで来るの大変じゃなかった?」


「大変でした。ちょっとした視線に反応するから、思った以上に疲れてると思います」


「うっ……うっ……ごめんなさい、お姉ちゃん……」


「私は大丈夫だから。『オズが疲れてるんじゃないかな?』って話」


タチアナさんのせいで泣き始めてしまったオズを安心させるように抱き締める。これをすると落ち着くようなのだ。

…………そういえば、テモテカールに来たころのナツナツも何かとあれば抱きついてきてたような……


「やっぱり好きな人に抱きついてると安心するじゃん?」


「えーと……ありがとう?」


「どういたしまして?最近は不安になることも少なくなったけど、たまに抱きつきたくなるよね~」


と言って、転移基点端末から私の肩に飛び乗ると、髪に巻き付いて毛玉のようになった。


「落ち着く♡」


「あらあら、いいわね~。それじゃ、ルーシアナちゃん。オズちゃんが疲れてるようなら、今日はもう休ませてあげたら?食事は軽食でよければ作るけど」


「え、いや……」


「そうさせてもらっていいですか?私はお風呂に入れてきますので、その間に用意をお願いします。挨拶はまた明日ということで」


「了解。必要な物があったら言ってね」


オズの言葉を遮り、休むことに決めてしまう。


よく考えなくても、ガア・ティークルで走り回り、全合成食に不意打ちを喰らい、ガアンの森を抜け、道行く人々の視線に耐えたのだ。

さすがに体力的にも精神的にも限界だろう。


それを察してか、タチアナさんも手を振って食堂へ去っていった。


「さ、お風呂入って、今日はもう休みましょ?」


「…………ごめんなさい……ルーシアナ……」


「『お姉ちゃん』って言ってくれるなら許す」


「……………………ごめんなさい、お姉ちゃん」


「いいってことよ~♪きっと疲れてるから余裕がないのもあるわ。明日になったら、もっとうまく出来るから」


「うん」


抱きついて離れないオズを連れて浴場に向かった。


結局、オズは湯船に浸かっていたら眠り始めてしまったので、なんとか歯磨きだけさせてベッドへ入れた。

タチアナさんに作ってもらった軽食は[アイテムボックス]に仕舞っておいたので、無駄にはしませんよ。


私も寝る前に、セレスとギルド長に伝言というか、注意事項を伝えるようにタチアナさんに頼む。

セレスには『今日は忍び込んでこないで』と伝言を、ギルド長へは『全裸の内は洗面所の鍵閉めるのを忘れないで』と注意を。オズのトラウマになったら可哀相だからね。


今日は夢茶会をする予定だったけど、オズを仲間外れにするのも気が引けるので無しにした。

命拾いしたね、ナビ。





次の日。


「ご挨拶が遅れしたが、ルーシアナのナビゲーターの一人として、先日その端末から挨拶いたしました、オズと申します。

この度、より精緻にルーシアナを補助するため、予備の義体をいただくこととなりました。

立場としては、すでに説明いたしました通り、『ルーシアナの妹』で『オズリア』とさせていただきます。

ルーシアナと同様 居候の身となりますが、何卒よろしくお願いいたします」


昨日とは打って変わって、スラスラと淀みなくセリフを(そらん)じるオズ。

そのまま両手を体の前に揃えると、上半身を軽く倒して礼をした。


…………私がこの前、領主のところでした礼がダメなのがよく分かるね。


「よろしく~」


「よろしく頼む」


「家賃はルーシアナちゃんと同室ということで、合わせて75,000テトだから気にしないでね」


「「「『なにそれ聞いてない!?』」」」


歓迎ムードでのんびりしていたら、タチアナさんからさらりと現実が突き付けられた。


まぁ、単純に倍にならないだけマシなのだが、そういうことは先に言ってほしい。


オズは一晩休んでなんとか余裕が戻った…………と、思いきやそうでもない。

こっそりと繋いだ手の平は汗だくで、笑みも硬かったりする。

それでいてツッコミはしている辺り、オズの緊張の匙加減がよく分からないな……


挨拶も終えたので、席に着く。

ぎこちなく食事を進めるオズをおいて、今後のスケジュールを決めていく。


「とりあえず元々考えてたやることは、


① 冒険者ギルドに登録 及び ギルドカードの作成

② 生活必需品 及び 武器防具の購入

③ 領主に報告


だった訳ですが……」


「それに加えて


④ 人見知りの改善

⑤ 義体に慣れる


が追加されてる訳ね」


「そんな感じです」


「わざわざ義体に移らなくても良かったんじゃないか?その端末(ボール)でも良かったろ」


「うぅ…………ごめんなさい……」


「謝らなくてもいいんだよ。もう私は姉妹として一緒にいたいと思ってるんだから」


ギルド長の言葉に落ち込むオズの頭を撫でてあげる。

デリカシーのない発言をしたギルド長への抗議はしなくていい。すでに妻と娘からきっつい蹴りが入っているからだ。


机に突っ伏して震えるギルド長は放置して話を進める。


「まず、①は後回しでいいですよね」


「そうね。ルーシアナと一緒にクエスト受けるにしても、まずはオズの人見知りを治さないと」


「次の②の『生活必需品 及び 武器防具の購入』だけど、急務なのは服ね。普通の服なら時間があるし、私が買ってくるけど……」


「え?シャルドさんに作ってもらうんじゃないの~?」


『変態工房か』


ナビさん。お世話になってるのだから、そういうこと言わないの。


「う~ん…………私の戦闘服もタダで作ってくれたのに、まだ何の成果も上がってないし、これ以上お世話になるのはなぁ……」


「オズもお姉ちゃんとお揃いの方がうれしいよね~?」


「うん…………あ、いや、私 戦闘になったら、魔道士として後衛に就くつもりだから、そんないいのじゃなくても……」


「頼んでみますか。この前 臨時収入 (1,000,000テト) もあったことだし」


「お姉ちゃん!?」


「お黙り。お揃い衣装が見てみたいなぁと思ったのよ」


オズの抗議はスパッとシャットダウン。

ナツナツに話を振られて思わず漏れた『うん』に、キュンとこない姉はいないのだよ。

まだ何か言いたげなオズを撫でて黙らせながら、次に進める。


「というわけで、②はあとで私たちで行ってきます」


「了解。下着の類も忘れないようにね」


「は~い」


「次の③『領主様に報告』は、父さんの仕事ね」


「うむ。ルーシアナと同じような扱いとしてもらえるよう頼んでみよう。多分大丈夫だろう」


「ギルド長。ちゃんと『弱い』って伝えてくださいね?次男に手合わせとかされたら、死んじゃいますよ?」


「待て。あいつらだって、誰彼構わず手合わせを挑んでる訳じゃないぞ?あの時は、ルーシアナの現状を確認するために仕組んだ面もあるんだからな?」


「その話は聞きましたが、信用してません」


「おい」


信じられる要素がありませんからね。すっごい楽しそうだったし。


「次に④だけど…………これは慣れるしかないわね。とりあえずまずは『この家の人間に慣れよう』ということで、私とよろしくね」


「は、はい。よろしくお願いします」


オズの対面からにっこり微笑むタチアナさんはどこまで信用してよいものやら…………『ショック療法!!』とか言って、ここにタチアナさんの奥様友達を呼んだりしないでしょうね?


「ルーシアナもクエストに行くだろうから、昼間は母さんに任せるのが合理的かしらね。それにしても…………『人見知り』の言葉で済ませられないレベルじゃない?対人恐怖症って訳でもないわよね?」


セレスが不思議そうに訊ねるが、それは私も知りたい。

ナツナツの隣に置かれた転移基点端末を指で転がしながら言う。


「この端末から話すときは大丈夫だったんだけどねぇ~…………『仕事の定型句』とか『役になりきる』とかなら大丈夫だったのかなぁって思ったんだけど、そうでも無さそうなのよね……」


「あ…………それはですね……」


おや、すでに自己分析が済んでいたっぽい?

全員の視線で続きを促すと、やはりちょっと慌てながら、


「い、今まではですね、不特定多数の人間に『私』を見られたことがなかったのです。

ナビゲーターとなる前は、このような端末を操作して施設案内などしていましたが、そこで人々が見るのは『案内役』であって『私』ではありません。だから理不尽な言い掛かりで攻撃され、端末が壊されたとしても、何を感じることもありませんでした。

しかし今は違います。人々は理由や程度に差はあれど、『私が何なのか』に興味を持ち視線を向けてくるのです。そんな経験、今まで一度も無かったものですから、なんといいますか、一挙手一投足を見られているような気がして緊張してしまっているのです。同時にかつて端末を破壊したような理不尽な人間がその中に混ざっているのではないかと思うと、途端に恐怖に駆られてしまって…………

ごめんなさい、ルーシアナ。私は貴女を護ると言っておきながら、自分のことで精一杯なのです…………」


視線を落として叱られるのを待つように『シュン……』となるオズが堪らなくて、優しく抱き締めてしまった。


驚いたような反応するけど、そんな過去を聞いて優しくしない訳ないのよ?


ついでに、『思いっきり幸せにします』と、どこかから見ている気がするオズの母親に誓っておいた。

ここまで昔のオズの過去話は初めて聞くが、よくそんな環境で捻くれずに育ったものだ。母親がたっぷりと愛情を注いでくれていたのだろうと思う。本人がどう受け止めていたのかは別として。



しかし、なるほど。

昨日 門からここに来るまでは、人々が『自分』を見ている感覚に戸惑いを感じるのと同時に、理不尽な敵意が飛んでくるんじゃないかと不安に思っていたのか。

この家の人間は多分オズにとっても『安全』な人々という認識だったと思うが、それでもそんな不安定な状態の時にタチアナさんが急接近したものだから、泣き出してしまった、と。

今は落ち着き、『自分』を見られる感覚に戸惑いこそすれ、不安に思うことはないから、それなりに自分の言いたいことを言えてるのかな。


安心させるように何度も背中を撫でていると、顔を上げたオズと近距離で見つめ合うこととなった。

コツンと額を軽く当てて、言ってやる。


「大丈夫よ、オズ。貴女を害そうとする人がいるなら、私たちが護ってあげるから」


「…………私が、護ってあげたかった、んですけど、ね…………」


「あらら~……私は貴女の護りを頼りにしてるんだけどな。

いい?全部完璧な人なんていないの。私の足りないところは貴女が護って。貴女の足りないところは私が護るから。

さしあたって暫くは、人々の視線と理不尽な敵意から護ってあげましょう。安心して経験を積んで、人を見る目を養ってね」


「ルーシアナ…………」


「お姉ちゃん、でしょ?」


「うん。お姉ちゃん……」


オズは頬と頬を軽く擦り合わせて首元に顔を埋めると、ぐりぐり~と押し付けてくる。

その行動の意味はオズにしか分からないが、悪いことではないはずだ。ようやく昨日から強張っていた緊張が解かれていったのだから。


姉としての満足感を自覚して感慨に耽っていると、ふと、視線を感じて顔を横に向けた。


「「「「『…………………………………………(にやにやにやにや)』」」」」


ギルド長、タチアナさん、セレス、ナツナツの生温い笑顔があった。

見えないけど、多分ナビも似たような顔をしている。


『カァァァァ~~~~~~~~……』、と顔が赤くなるのを感じた…………


…………落ち着け、私。ここで慌てたら敵の思う壺だ……敵いないけど。


明らかに落ち着いていないことを考えていると、それに気が付いたオズも顔を上げ、同じように横を見た。


「あ」


…………………………………………


私と同じように顔を真っ赤にして涙目でこちらを見、


「お、お姉ちゃん……護って……」


難易度高い!!!!


とりあえず視線から隠すように改めて抱き締めた。


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