第72話 ゴーレム娘とオズと周りの評価
まだちょっと汚い表現が継続します。ご注意ください。
70 ~ 81話を連投中。
4/30(火) 14:50 ~ 19:10くらいまで。(前回実績:1話/21分で計算)
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「うっ……うっ…………もう……もう、ルーシアナの意見に、反論なんてしたりしません……」
「そこまでしなくていいから。ほら、あーんして」
「あ~ん…………美味しいです……」
えー…………、何があったかと言いますと、まず応急処置と後片付け等が全て終わったタイミングで、オズは目を覚ましました。しばらく訳が分からない様子で困惑していましたが、徐々に思い出してきたらしく、オズは口を抑えて青くなっていきました。
とはいえ、応急処置で出すもんは出させておいたので、自主規制ることはなく、徐々に肉体的には落ち着いていきました。ただ同時に自分が何をしでかしたのか理解してしまい、肉体の調子と反比例するように精神的に追い詰められていってしまいました。
そしてついに『ごめんなさい。ごめんなさい』と繰り返し謝りながらポロポロと泣き始めるので、赤ん坊をあやすように抱き締めて慰めたのが、40分程前です。
まだ ぐすぐすと鼻をすすっていますが、大分落ち着いてきたので、1時間程遅れて昼食となりました。
再開ではありません。アレは昼食とは認めませんからね。
「私ナメてました……味、ちょー大事です。美味しいと幸せです。頑張れます」
「うんうん。ほら、これもお食べ~。あ~ん」
「はい~……あ~ん。…………これも美味しいです~……」
若干幼児退行してしまった…………どんなけ威力があるんだ、あの全合成食。
オズを私の膝の上に座らせ、後ろから抱きかかえるように支えながら、オズのペースに合わせて昼食を摂っている。
「やっぱり美味しいは正義だよね~」
『不味いよりはいい。不味いよりは』
「マイアナはよくあんなの食べられましたよね……」
「孫から見ても謎」
昼食はナツナツの希望通りに、甘いミルクリゾット系を数種類。オズもいきなりガツンと重たい料理よりも、このくらいの方がいいでしょ、という判断だ。
…………見た目は全合成食と被るから、最初の一口に凄いビビってたけど。
「ふぅ……もう、お腹いっぱいです」
「オズ。食べ終わったら『ごちそうさま』だよ」
「あ、ごちそうさまでした」
一皿当たりの量は少なかったけど、種類が多かったので結構余った。残りは私がいただきます。うまうま。
食器はまとめて返却した。自動で洗ってくれるらしいよ。
「ちょっと休憩したら……」
「また鬼ごっこですね」
「いや、そろそろ帰ろう」
「え?でも、まだ日は高いですし、そんなに動くのにも慣れてませんよ?」
「まぁ、そうなんだけどね?よく考えたら…………疲れた状態で森を抜ける方が危ないなって気が付いた」
「あ」
うん。私にとっては歩きやすく 大して疲れないガアンの森だからうっかりしてたけど、多分オズにとってはとても歩きにくく 疲れる道程だと思う。初めての場所なわけだし。
そこを疲労困憊で抜けるのは危険だろう。私だって新しい場所は、体力に余裕をもって行くものだ。
オズはオズで『疲労による身体能力の低下』を考慮していなかったっぽい。
エネルギー切れのような100から0になる停止は経験したことがあるかもしれないが、体力切れのように徐々に動けなくなるような衰弱は経験したことはなかっただろう。
この辺は、肉体を持つ生物特有の現象だ。ちなみに、フレッシュゴーレムはこちらに含まれるが、普通のロックゴーレム等は無機生物なので含まれない。
「それに暗くなるとまともに歩けなくなるからね。照明用の魔法は使えるけど、思った以上に歩きにくくなるよ」
「そうなんですか?…………分かりました。すぐに移動を開始しましょう」
「30分くらい待ちなさい。お腹痛くなるから」
「あぁ……そういえば、そんな反応があるんでした。結構面倒ですよね、体があると」
「それでもほとんどの生物が肉体があるタイプなんだから、メリットはあるんでしょ、多分」
「その辺を考察していた論文があったと思いますが、見ます?」
「いいです」
勉強は嫌いだって言ったじゃない。…………あぁ、でもその後『結構面白いかも』とか発言してたんだった。
「まぁ、時間が勿体無いと思うなら、すぐに出発出来るように準備をしておいて。お花摘みとか」
「お花摘み?」
「あっ……と。知らないか。暗喩よ。お手洗いに行ってきなさいってこと」
「お手洗い…………あ、なるほど、生理現象ですね」
施設案内とかしてたら、分かりそうなものだけど…………他人事だったから、自分事に当て嵌めにくいのかな?
そんなこと思っていたら、顔を赤くしておずおず手を上げるオズさん。駄洒落じゃないよ?
「はい、オズさん。何でしょう?」
「あの…………設備の使い方は分かるんですが……………………なにをどうしたらどうなるんでしょう?」
…………………………………………それを聞くのが恥ずかしいことだって認識はあるのね…………
詳細は省略します。無意識行動は意識的に行動しにくい、ということを再認識しました。
テモテカールへ戻って参りました。
もう日も暮れ始めており、西門の前には多くの冒険者が順番待ちをしている。
最後尾に並ぶと、背負っていたオズを降ろした。
「ありがとうございます」
「やり直し」
「あ……えと…………あ、ありがとう、お姉ちゃん……」
「よろしい」
ここからは私の『妹』なんだから、発言には気を付けないとね。
赤くなった顔を隠すようにうつむくオズの頭を撫でる。
…………うん。妹もいいね。セレスがやたらと私を構う理由が分かったよ。
結局オズはガアンの森の中頃で力尽きた。
初めての森歩きにしては、なかなか歩けたと思う。体の動かし方さえ分かれば、基礎ステータスは悪くはないのだ。
…………やっぱり鬼ごっこかな。
なんだか周りの冒険者にチラチラ見られている気がするのは、多分気のせいじゃないんだろう。
同じ顔がふたつ並んでいれば、気になるよね。特にしばらく一人だったのが、いきなり二人になったわけだし。
オズも周りの視線が気になるのか、キョロキョロ周りを見渡した後、顔を伏せて私の陰に隠れた。
『それだけじゃないと思うけどね……』
『早まったかもしれないな……』
ナツナツとナビがボソボソと小声で話していたが、とりあえずスルー。
冒険者の人数は多いが、皆 身分証明カードとしてギルドカードや住基カードを持っているので、するすると列が進んでいくのだ。
左手でオズの右手を握って進んでいくと、門番は初めてのこの街に来た時にも会ったドモンさんだった。
「こんばんわ~」
「お、こんばんわ。なんか久しぶりだな~」
「いや、ギルド飯店で良く会いますよね?というか昨日も会ったじゃないですか。ドモンさんこそどうしたんです?担当の門、ここじゃなかったですよね」
「担当場所と時間はローテーションで変わるんだよ。それより、ほれ。カードチェックして はよ入れ」
「なるほど。ところで今日はもう一人いまして、この子はカード持ってないんです。というわけで、10,000テト」
「お?おぉ……珍しいな。誰だ?」
私の陰に隠れていたオズを前に出す。
「私の妹。よろしくお願いしますね」
「オ、オズリアです…………よ、よろしくお願いします……」
あれ?オズさんもしかして人見知り?
妙に静かだなとは思ってたけど、疲労からではなく緊張からだったの?
オズはドモンさんに小さく挨拶すると、すぐに私の後ろに隠れてしまった。
『ちょ、ちょっとちょっと!?貴女、ガア・ティークルで案内とかしてたんじゃないの!?』
『わ、私も驚きですよ~!!な、なんかすごく恥ずかしいです!!』
『今さら『やっぱり無しで』とか無理だぞ!?冒険者にも門番にも見られてしまったんだし!!』
『分かってますよ~~!!!!』
本人も知らない一面だったらしい。
あれかな?仕事として定型句を話す分には問題ないとか、案内役なんかの『役』になりきると大丈夫とか、そういうタイプなのかな?
そんなことを考えていると、ドモンさんから驚きの声が上がる。
「お前妹いたのか!?」
「えぇ、まぁ」
予想通りの反応だった。ついでに後ろの方から、『やっぱりか』とか『まぁ、あれだけ似てればな』とかの声も聞こえてくる。
ドモンさんは、私越しにオズを眺めると、
「瓜二つじゃねぇか。双子か?」
「いえ、二歳差です。オズリアの方が小さいでしょ?」
「言われてみれば確かに。でも、同じ服を着せたら分からなくなりそうだな」
「まぁ、姉妹ですから」
「その一言で済ませられないレベルの気がするんだが…………まぁ、いいや。妹さん。こっちに来て、これに魔力を流してくれ」
「は、はい……」
と、返事をするものの、隠れた背中から動かないオズ。
……………………ごめん、なんか可愛い。
周りからも似たような意見がヒソヒソと聞こえてくる。
『可愛いな、あの子』
『妹に欲しい……』
『ばっか、あのペアだからいいんだよ』
『両方欲しい』
『強気な姉に気弱な妹……イイわ……』
あれ!?私ってそんな風に思われてた!?
元気とか陽気とかのポジティブ系の自覚はあったが、強気までいってるつもりは無かったのだけど……
まさかの新事実に驚愕しつつ、オズを連れて分析魔道具の前に行く。
『ナビ。《ディスガイス》は?』
『ガア・ティークルを出てから、ずっと掛けてるぞ』
『ちなみにギルド飯店でのウエイトレス姿を見てたら、さっきの評価は妥当だと思うよ~』
『この前ルーカスとか言う冒険者に殴りかかってましたしね』
『オズ…………いいから魔力流しなさい』
いやほら。あの騒がしい場で気弱でいたら、ウエイトレスなんて出来ないでしょ?
『代理とはいえ、店長を君付けだしね~』
『基本的に物怖じしないしな。シャルド氏とか』
『領主の息子に蹴り入れる人は、少なくとも強気だと思います』
……………………強気なのかもしれない。
分析魔道具の前に立ったオズは、いつかの私のように魔力を流すと、正面のプレートに文字が浮かび上がった。
名前:オズリア・ケイプ
性別:女
年齢:13歳
種族:人間
犯罪履歴:なし
判定:OK
よし。
あ、この前 次男に分析されたと思われたステータスや身体データは、全て《ディスガイス》で偽装した値が見えてたようです。ある意味、油断を誘えるので隠さない方向で行く事にしました。
せめてスリーサイズは隠すか偽装したかったけど、
『±1cmくらいなら……』
『スリーサイズだけ見えなくして、他のステータスが見えたら怪しまれるだろ』
『見た目と差がありすぎても怪しまれますから』
というわけで乙女の秘密を知った輩には、この世から退場していただきます。
「よし、問題なしだな。通っていいぞ」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
ペコッとお辞儀してササッと背中に隠れるオズ。
いや、だから可愛いでしょう。狙ってやってんのか、この子は。
それを見て苦笑するドモンさんに頭を下げて、ようやくテモテカールに入る私たちなのだった。
不快になった方は申し訳ありません。




