第71話 ゴーレム娘とオズのお昼ご飯
ちょっと汚い表現があります。ご注意ください。
70 ~ 81話を連投中。
4/30(火) 14:50 ~ 19:10くらいまで。(前回実績:1話/21分で計算)
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「もう、大丈夫です」
「そう?」
オズが押し当てていた胸から顔を離し、静かにそう言った。
名残惜しいが私からも大きく身を離す。
この短時間で私の中でのオズの立ち位置が、完全に『妹』になった気がするね。
オズはゆっくりと脚を曲げると、台座に手を付いてぎこちなく立ち上がろうと動き始める。
どう考えても 手を滑らせてぶっ倒れる未来しか見えなかったので、すぐに隣へ移動し腰を支えてあげた。
「ありがとうございます」
「やっぱり体を動かしにくい?」
「そうですね…………鈍人形で試してたんですが、全然違います。……………………情報が多すぎて、どうしたらいいのか」
「ゆっくりでいいからね?」
「はい」
そんなものなのだろうか……?
ほとんど無意識に体を使っている身としては、情報が多いと言われてもよく分からないのだが。
ナツナツが私の肩の上からオズへアドバイスを送る。
「妖精型の義体を使っている者からのアドバイスとしては~、全部の情報に逐一反応する必要はないかな。特に味覚と嗅覚からの情報は、基準を覚えておいてそこから大きく外れたら気にすればいいの」
「なるほど…………」
「最重要は触覚。特に平衡感覚を掴まないと、立つのもままならないわ」
「はい」
「…………………………………………」
恐らく触覚に集中して、正常な平衡感覚を覚えようとしていると思ったので、余りこちらからは力を加えず、倒れそうになったら支えてやることにする。
…………しかしナツナツは最初から飛んで現れたし、基本飛んでいるのに、立つ方法のアドバイスが出るとは思わなかった。
『いや食事の時とか、普通にテーブルの上とか歩き回ってるでしょ?』
『…………そういやそうか』
『それに結構苦労したのよ?』
『顔面から床に激突したりとかな』
『ナ~ビ~?』
『失礼しました!!』
『えーと……ありがとうございます』
私がゆっくりとシャワーを浴びていたときにそんな苦労をしていたとは。
『まぁすぐ慣れたけどね』
『立ち上がった後は、飛行に苦労していたようだが。羽ばたき過ぎて後ろに吹っ飛んだり』
『…………………………………………』
『黙ってます…………』
『ナビは思ったことを黙ってられないタイプよね……』
『今日も夢茶会したいな……』
『ごめんなさい!!』
本日の夢茶会の開催が決定しました。
まぁまだ夜まで時間あるし、頑張って怒りを解いてください。
……………………さらに怒りを買う未来しか見えないな。
そんなことを話していると、一先ずオズは平衡感覚を掴んだらしい。こちらを掴まずとも立てるようになり、腕や首を回したり屈伸したりしている。
「お待たせしました」
「大丈夫、待ってないよ。とりあえず午前中はその体に慣れようか」
「いえ、大丈夫ですよ?」
「帰るにはガアンの森を抜けていかなきゃならないんだから、歩けるだけじゃ無理よ?まぁ、最終手段で背負っていくけど」
「……………………歩く練習します」
そんなに背負われるの嫌かな?まぁいいけど。
ここは床も平坦だし障害物もないから、最初の練習にはもってこいだろう。隣でオズを補助するつもりで、歩き出すのを待つ。
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
「オズ?」
何故か歩くどころか動き始めることもしないオズに、どうしたんだろうと思って顔を覗き込む。
……………………なんか泣きそうな顔で途方に暮れていた。
「……………………歩くのってどうやるんでしょうか…………?」
…………………………………………なかなか難しいこというね。
あと泣きそうな顔、ちょー可愛かった。
今日の新発見:見慣れた顔でも、中身が変わると可愛い。場合によってはちょー可愛い。
お昼になりました。
さすがというかなんというか、割とすぐにオズは体の動かし方を覚え、この施設内であれば走り回ることも出来るようになった。
ただガアンの森を抜けるなら、もうちょっと特殊な動きも経験した方が良いと思ったので、ちょっと難易度を上げて、鈍人形や鈍円筒を障害物として適当に配置しての鬼ごっこをしていた。
私が鬼で、オズが子。
ずっと私のターン!!!!
すっきり綺麗に片付いた店舗を横目に、かるーく遊んであげました。
まぁでも、私が追う必要は無かったかもね。今のオズでは障害物だけでも十分だった。
これはテモテカールに戻っても、しばらくは鬼ごっこかな。
「はっ、はっ、はっ、はぁっ…………げほっ」
「大丈夫?」
「だ、だいじょ、はぁっ、ぶです、はぁっ」
「大丈夫じゃないね。はい、お水」
「はぁっ…………はぁ…………あ、ありがとう、ございます……はぁっ」
汗だくで壁を背に座り込むオズに水を差し出す。
体力もない…………訳ではなく、多分無駄な動きが多いのだ。
障害物を避けるため必要以上に強く加速してしまったり、そのせいで強く制動を掛けなきゃならなくなったりと、力加減や避けた後の自分の動きを想像するとかが出来ていないのだ。
…………まぁ、この義体を使い始めてまだまだ数時間だし、今は色々と失敗する時間帯だろう。
最初は水の飲み方も分からず思い切り噎せていたのだ。致命傷にならないようであれば、あまり口出しするものではないだろう。
一息に全ての水を飲み干し息を整えている間に、汗を拭ってやる。
「す、すみません……」
「いいからいいから。落ち着いたら汗流して昼食にしましょ」
「はい……」
項垂れるように視線を下げるオズ。思った以上にままならない体に、落ち込んでいるようだ。
多分本人としては、すぐに鈍人形と同じくらいには動けるつもりだったのだろう。
ナツナツから『一時間くらいで違和感なく動けるようになってた』って話を聞いてたみたいだし。
『よく考えたら、私たちナビゲーターは義体を使う可能性を考慮して創られてるのよね~……多分義体を扱うためのシステムが組み込まれてる』
『オズはそうではないからな…………そう考えると、この短期間でここまで動けるようになっているのは、凄いことなのかもしれない』
『その説明で納得してくれると思う?』
『『いや、ムリ』』
だよね~。『そうだとしても、現に今、動けていないのが問題なのです』とか言いそう。背負ってあげるのに。
『いや、ほら。オズはルーシアナを護るつもりでその義体に憑依したのでな……』
『早々に、護るどころか 逆に護られて面倒を掛けてちゃ 恥ずかしいわよね~……』
『そんなこと気にしなくていいのにね』
ただまぁ、気持ちは分かる。分かるから まぁ、納得いくまでさせてあげましょう。
オズの呼吸も落ち着いたようなので、ひと言断ってから全身を洗ってやる。
口の周りは空けておいたが、案の定 呼吸が出来なくなって慌てていた。
うん。口の周りだけ空けてても、それ以外が水に包まれていると体が水中にいると錯覚してしまって、無意識に息を止めてしまうんだよね。多分。
頭と体を別々に洗ってあげました。
「ありがとうございます…………けほっ」
「どういたしまして。そういえば初お風呂に当たるのかな?どうだった?」
「苦しかったです」
「…………ごめんなさいとしか」
「冗談です。さっぱりとして気持ちいいですね。一日中屋内にいて汚れていなくても、わざわざ毎日入浴する理由が分かりました」
「ホントのお風呂はもっと気持ちいいからね。楽しみにしてて」
「はい」
オズの手を引いて、二階のフードコートへ行く。
[アイテムボックス]にもあるけど、どうせなら出来立てがいいじゃん?時間止まってるから、これも出来立てなんだけど。
「オズの初食事だけど何がいい?食材は十分にあるから、色々出来るよ。自動調理装置のレシピ内であれば、だけど」
「私はリゾットがいいかなぁ~♪甘いやつがいい」
『人の食事にケチをつける訳ではないが、昼食だよな?』
ナビも悪気は無いんだろうけど、多分 今 ナツナツの機嫌は悪くなった。
今夜は頑張れ。
そんな会話を聞きながら、オズは事も無げに言った。
「全合成食でいいです。早く練習しないと」
「「『…………………………………………』」」
…………………………………………
私は先程 思いました。『まぁ、納得いくまでさせてあげましょう』と。
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でも前言を撤回させていただきたく。
無意識に足を止め 天井を仰いでいた私でありますが、ゆっくり振り返るとオズの肩に両手を置きます。
「オズさん」
「なんでしょう?」
「端的に言うけど、それは止めなさい」
「何故でしょうか?全合成食は味こそ酷いものらしいですが、消化吸収も良く時間を有効に利用できます。
また作成の際に、現在の体調を分析して過不足なく必要な栄養バランスに調整してくれますので、色々と食べる必要がありません」
「初めての食事でしょう。美味しいもの食べた方がモチベーション上がるわよ」
「そ、そうだよ~~!!食事は栄養摂取だけが目的じゃないんだよ!!」
『その通りだ。栄養摂取だけが目的なら、私が夢中になるのはおかしいだろう?考え直せ、な?』
「食事に時間を掛けてしまうことの方が余程モチベーションが下がります。それに本当にそこまで味は重要なのでしょうか?私にはイマイチその辺が良く分かりません」
まさかのおじいちゃんタイプだった。いやでも、その体は私のだぞ?
「いやいやいやいや。世の中には体験しない方がいいことってのは少なからずあってだね?」
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力を尽くしましたがダメでした。
『なら、昼食は要りません』と、意固地になられてしまってはどうしようもない。
こうなったら、『実は食べてみたら意外と悪くなかった』可能性に賭けるしか……………………でもおじいちゃん以外の人が食べた頻度って、1回/年くらいなのよね…………
私とオズの全合成食を用意して席に座る。ナツナツの前には無い。
全員でぶっ倒れる訳にはいかないからね。
オズのは、ドロドロに溶けた茶色い何か。匂いはしないがほんのり暖かい。多分、汗を掻いたから水分が多目になっているのだろう。
私のは、5cm位の直方体が二本。堅めのスティッククッキーに見えるが、どことなく漂う気配が かつておじいちゃんに食べさせられたヤベェヤツの貫禄を漂わせている。
念のため吐き出しても大丈夫なように、ボール型の容器も用意しておいた…………なんだ、この食事風景。
「いただきます」
「い、いただきます……」
オズの挨拶と共に覚悟を決めてパクリ。
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あれ?思ってたよりかは大丈…………いやダメだなんだこれ!?
一噛み毎に口に広がるケミカルな味に、思わず咀嚼が止まる。が、味の広がりは止まらない!!!!
呑み込もうにも喉が痙攣してそれも難しく、秒毎に複雑に重なり合うケミカルは、ますます食事から程遠い味へと変貌していく!!!!
不味い不味くないの話じゃなかった。ただただ命の危険に体が拒否反応を起こす!!!!
拒否反応に導かれ、体が無意識にボールへ手を伸ばし、目測を誤って思い切り顔面に当たった。
「お『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』『自主規制』」
明らかに食べた分以上の…………いや、やめよう。自主規制。
「ちょ、ルーシアナ!!!?大丈夫!?一秒保たなかったわよ!?」
……………………命の危険に思考速度が上がっていたらしい。長い一秒だった。
ハンカチで口を抑えつつ、ボールには蓋をしておく。後で片付けよう…………
「だ、大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、大丈夫じゃないかな。命の危険を感じて無意識に体が動いた」
『《スキャン》してみたが、体に異常はなさそうだな。一応、本当に、味以外は大丈夫なのだろう』
「そ、その味が致命的なんだけどね。毒じゃないけど殺せる」
というか、味だけで言えば毒の方がまだマシ。多分。
不規則に震える胃を、なんとか抑え込みつつ息を整える。
「水ちょうだい……」
「はい」
……………………最初の一口目は、ケミカル風味が強かったので自主規制。
二口目から美味しくいただいた。
「水って美味しぃ……」
「ただの水だけどね」
『そんなに酷いか』
「酷い。ほら、錬金とかして変な匂いの液体が出来るときあるじゃん」
『まぁ、あるらしいな』
「あの味」
『嗅覚から味覚の話に飛んだんだが……』
「そのくらい超越する味。興味があるなら再現してあげるけど、本気でやめときなさいって言うよ」
『やめときます……』
「イタズラにしても酷いわ……確実に絶縁レベル」
そう考えると、おじいちゃんはまだマシなものをくれてたのか。
「なるほど~……」
『ナツナツパイセン!?』
「ナツナツ。これをイタズラに使うのは、ホントにやめなさい。これ、マジ。『イタズラじゃなくてお仕置きです』みたいな言い訳は聞きません。全合成食、ダメ、絶対」
「…………は~~い」
『これからもルーシアナの役に立てるよう頑張ります!!』
ふと、ここまで大騒ぎしているのに、オズからのアクションが何も無いのに気が付いた。
あれ?まさかおじいちゃんタイプでOKだった?
オズを見ると、
「「『…………………………………………』」」
白目を剥いて背もたれに寄り掛かり、口の端から茶色い液体を垂れ流しながら、ピクピクしてるところだった。
「うわーーーー!!!?メディーーーーック!!!!」
「女の子としてしちゃダメな顔してるわね…………」
『言うてる場合か』
毒を食べてしまった場合と同じような応急処置しました。
自分的には食事中でも気にするレベルではないのですが、不快になった方は申し訳ありません。




