第67話 ゴーレム娘、改造計画
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「あぁー…………とりあえずその辺で許してやってもらえないだろうか。もう気絶してるし」
「他人事ですねぇ……一部の怒りの対象には貴方も含まれてるんですが」
倒れた次男にゲシゲシと蹴りを打ち込んでいると、領主が仲裁するように声を掛けてきた。
「領主だからな。手を出したら逮捕だ」
「理不尽!!!!」
「貴族だからな」
その理由はどうなんだ…………
私の中の貴族情報を一部更新しておく。権力を振りかざして理不尽に振る舞う輩はいるらしい。
一緒に近付いてきたギルド長は、タチアナさんを呼ぶ。
「タチアナ。回復してやってくれ」
「いいわよー」
…………そういえば、この人は生命魔道士でしたね。
領主夫人から杖を受け取り、歩きながら詠唱してくる。
「【グレート・ヒール】」
なかなか高位な治癒魔法を施した。
ちなみに魔法名やスキル名は、各々好きに付けるので似たような効果でも全く異なる名称であることはよくある。
次男の生命属性の衝撃波が、《オーラ・バースト》と確定出来なかったのもそのためだ。
まぁ軍隊なんかは、効率的な意思疎通を図るため、名称は固定されるらしいけど。
【グレート・ヒール】は私の《メガヒール》よりも上、と感じた。
「う…………」
すぐに次男は小さく呻き声をあげて目を覚ます。さすがだ。
頭を振りながら立ち上がった次男は私を見るが、特に睨み付けるでもなく伸びをした。
「うーん……俺もまだまだだな」
「当たり前だ。今、お前が副長の地位に着けているのは、領主の息子という立場と将来性を見込んでのことだ。精進しろよ?」
「うっす」
……………………ホントに体育会…………脳筋系だなぁ。
私の中では、領主一家全員『脳筋』で確定した。領主夫人?染まってるよね、きっと。
次男に重大剣を返し、しつこく《ショート・ジャンプ》について聞かれていると、
「では、そろそろ昼食にしましょうか。ディアスとルーシアさんは汚れを落として着替えてきてください」
「あいよ」
「え゛!?」
次男の軽い返事に対して、私の返事は酷いものだった。
汚れを落とすのは良い。というか、ここでやらせてもらえるなら、以前ルーカスにしたみたいに魔法で終わらせる。
問題は『着替えて』の方だ。
別に着替えがないわけではない。
覚えているだろうか。私がこの格好で領主の屋敷を訪れた理由は、『私が持ってる中で一番見目が良い』からだ。
予備はある。だが、『着替えろ』と言われて同じ格好で戻ってきたら、『なぜ着替えない?』という話になるだろう。
その時に『予備です』と言えば良いのだろうが、なんとなく次男に『お前、同じ服ばっかりかよ』とか言われるのはムカつく。
いや、そもそも人ん家に行くのに、替えの服なんて持ってこないよね?長男、なに考えてんの。
「どうしました?セレスから『服を含む荷物を全て収納してるから、部屋が広い』と伺いましたが」
「セレスこらーーーー!!!!」
人の個人情報を話すんじゃない!!しかも、結構重要なところじゃないか!!!!
バッとセレスを見ると、サッと顔を逸らされたが、領主夫人にグイッと戻された。その際に首がグキッといって悶絶を始めたので有耶無耶になってしまった…………
う~~~~…………仕方無い。説明するしか。
「私、外行きの服なんて、コレとコレの予備しかなくて、両方とも同じ見た目ですけど、いいですか?」
「お前、同じ服ばっかりかよ」
「想像したのと一言一句同じ!!!!」
怒りと羞恥を込めて殴るが、簡単に避けられてしまう。
「乙女なら着飾ることも覚えるべきだな」
「まだ言うか!!」
負けた腹いせ…………というわけでは無さそうだ。単純に本心なのだろう。……………………なお悪い!!!!
私と次男が再び臨戦態勢に入り始めると、長男が呆れたように仲裁する。
「そうですね。外行きの服装が一種類というのはいただけませんね」
「長男お前もか!!!!」
呆れたのは、私の服装についてかい。
長男はメイドさんを呼ぶとなにやら指示を出し、
「古着ですが、数着差し上げますので、それを着てください。入浴中に一着調整しますので、脱衣所でサイズを測らせましょう。一時間ほどで仕上がりますので、ゆっくり時間を潰してください」
「え!?いや、そこまでしてもらうわけには……」
「セレス」
「なにー?」
「付き合ってやってはくれないか?」
「いいよー」
「私の意見は!?」
無かった。
いつの間にか後ろに回ったセレスに押されて屋敷へと連れていかれる。
入口にはメイドさんが数人待ち構えていて、抵抗むなしく浴場へ連行された。
「ちょっと待って!?脱がなくても良くない!?」
「なにを仰っているのですか。身長、スリーサイズを基本として20近いデータが必要なのですから、当然、全て脱いで頂きませんと」
「オーダーメイド!?やるのはお直しだよね!?」
「まぁまぁ」
「『まぁまぁ』ってなに!?え、ちょ、待って!?自分で脱げる!!!!」
「まぁまぁ」
「『まぁまぁ』で全部済ます気かーーーー!!!!」
ひん剥かれました……………………奴等の生温い微笑みは、しばらく忘れられません。しくしくしくしく…………
「奥様が九歳ころの御召物で大丈夫そうですね」
わざわざ言わなくても!!!!あと夫人の服なの!?
バカみたいに広いお風呂で、ニッコニッコと嬉しそうなセレスに体を洗われ、お返しに洗い返していると、服のお直しが終わったと声が掛かった。30分くらいだった。
領主たちを待たせているため急いだのだろう。
ならばのんびりと湯船に浸かっているのも悪いと考え早々に上がると、先程 私と私のサイズを情け容赦なく丸裸にしてれたメイドさんたちが勢揃いしていた。
……………………お察し。
今は別室で着付けられているところです。
「お嬢様。こちらを向いてくださいませ」
「…………はい。あと、お嬢様やめて」
「お嬢様。右手をこちらによろしいですか?」
「……はい。だから、お嬢様やめて」
「お嬢様。髪を梳かしますので、正面を向いてくださいませ」
「向くけどアンタら人の話聞く気ないな!!!!」
「「「まぁまぁ」」」
「それで何でもどうにかなると思うなよ!?」
礼儀を払っているようで、全く払っていない三人のメイドさんたちに、あれやこれやと装飾を施されていく。
「まぁ、この人たちが礼儀を払うのは『主人の客』という立場に対してであって、私たちじゃないからね。うん。諦めて」
私と同じように、しかし慣れた様子で着付けられているセレスから、そんなセリフが飛んでくる。
セレスの回りにも三人のメイドさんがいて、せっせと装飾している。
「その通りなんでしょうけど、バレないようにしなさいよ、そういうのは…………」
よく分からないけど、部下の評価は主人の評価に影響するでしょうが。
客に『なんだ、このメイドは!!』とか思われたら、主人に悪影響でしょう…………
「領主様が気を利かせてくれたのよ?堅苦しい対応だと緊張させてしまうようだから、って。『礼儀を払いつつ、フレンドリーに』なんて要望を叶えられるメイドさん、なかなかいないわよ」
「…………………………………………ありがとうございます」
「「「どういたしまして、お嬢様♡」」」
「ホントに礼儀払ってる!?『フレンドリーに』だけじゃない!?」
「「「まぁまぁ」」」
「ムキーーーー!!!!」
まぁ、いいや。確かに緊張しないしね…………
しかしメイドさんたちの指示に従って大人しく着付けられていると、段々眠くなってくるね。
あ~~……寝不足に加えて、次男と戦闘して、お風呂に入って、メイドさんの着付けはなんだか心地好いし……………………
「お嬢様?」
「……………………ぁ、ふぁい……」
「ふふ……終わったら起こしますから、お休みになっててください」
「う……でも…………」
「甘えたら?どうせ10分くらいだし」
「…………うん…………じゃぁ…………お願い…………します…………」
申し訳ないけど、眠気には勝てませんでした…………ぐぅ…………
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
「…………眠ってしまわれましたねぇ (ひそひそ)」
「なんか昨夜眠れなかったみたいだからね (ひそひそ)」
「まぁ領主様と面会するのは、緊張しますからね (ひそひそ)」
「そういう感じじゃなかったけど……それより、その子どう? (ひそひそ)」
「最っっっっ高です!!!! (ひそひそ)」
「なんですかこの子!!!!原石ですよ!!!! (ひそひそ)」
「肌も綺麗ですし、目も大きくてパッチリ。なによりこの髪!!!!この世の生き物ですか!!!? (ひそひそ)」
「だよね!!!!そのくせ全っっっっ然見た目を気にしないのよ!!!! (ひそひそ)」
「「「「「「勿体無い!!!! (ひそひそ)」」」」」」
「だからよろしく!!!! (ひそひそ)」
「「「「「「お任せを!!!! (ひそひそ)」」」」」」
セレスの回りにいた三人も加わり、『ルーシアナ改造計画』が進んでいった…………




