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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
4章 訪問!!領主のお屋敷
71/264

第66話 ゴーレム娘 VS. 次男②

58 ~ 68話を連投中。


4/7(日) 15:30 ~ 19:30くらいまで。(前回実績:1話/20分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「おぉっ……!!」


再開された模擬戦を隣で見ているバークレーから、興奮した声が上げるのを、ギルド長ことジット・グランディアは聞いていた。

自分の息子にして領軍の副長が()されているというのに、呑気なものだと思うが、自分たちから見ればまだまだなのだから、問題はないのかもしれない。


バークレーは自分と共に、数々のクエストをこなした、元Sランク冒険者でもある。

タチアナと同様、後衛の魔道士だったが、うちのチームの魔道士は前に出たがるので、近接戦もそこそこやれる。

まぁ、『そこそこ』でも領軍の現最高戦力なので、ステータスとは理不尽である。


今ルーシアナは、ディアスの周囲を高速で回り、次々と攻撃を仕掛けている。

ディアスはギリギリで捌いているが、反撃の糸口が掴めないようだ。


「師匠」


「ん?なんだ?」


二人の模擬戦を眩しそうに見ていたニコールが、目を逸らさずに問う。


「なぜ、ルーシアさんは重大剣を取り上げたのです?

いえ、リーチのある武器を取り上げて、近付き易くしたかったのは分かりますが、今わざわざ自分から近付いてますよね?

彼女はそもそも魔道士系なのですから、離れて遠距離攻撃に終始した方が良いのではないですか?」


確かにそうだ。ニコールがどこまでステータスを確認したかは分からないが、ルーシアナはMPと魔力が高い魔道士系。通常なら、ニコールが言った通り、距離を取っての魔法攻撃が常道だろう。


「なぜ彼女は近接戦を選ぶのです?」


「分からないか、ニコール」


それに応えたのは、バークレーだった。普段の温厚そうな表情の下から、獰猛な笑みを覗かせている。


「彼女がなぜ自ら接近戦を選ぶのか…………」


…………………………………………


緊張に、ごくり、とニコールが唾を飲み込む。


「その方が燃えるからだ…………!!!!」


「なるほど!!!!」


『なるほど』じゃねぇよ。

……………………やっぱり脳筋だよな、コイツら。





ルーシアナは現在、次男の周囲を《ショート・ジャンプ》を駆使して高速で回っている。

さすがにナビたちの補助がないため、亜音速に届くことはないが、十分に高速だ。

先日のベーシック・ドラゴン (夢魔) 戦の再現である。


『でもこの辺が限界かなぁ……』


ナビとナツナツの補助が無いのが大きい。

あの時は正直 《ショート・ジャンプ》の空間圧縮偏重に集中していて、《姿勢制御》や《チャージル・スラッグ》はナビに、その他細かい修正はナツナツに丸投げしていたので、出来たことなのだ。

さらに言えば、ドラゴンと比べると圧倒的に小さい周回半径がキツイ。先日よりも強力に圧縮偏重をかけなければならないため、身体への負荷が大きいのだ。


『次男はついてきてる…………まだまだね、私』


すでに次男は武器を短剣の二刀に持ち替え、防御の合間を縫って攻撃してきている。


私の速度を見た次男は早々に追うのを諦め、背後に巨大な土壁を造り出すと、それを背に相対してきた。

お陰で単純に周回していると、半分は攻撃が出来ない時間が生じてしまう。

土壁越しの攻撃を加えようにも、《ロング・サーチ》のような索敵系スキルを所持しているらしく、一瞬のタメを見逃さず回避される。…………だけならともかく、反撃に繋げられるので、安易に選択できない。


ルーシアナが重大剣を取り上げたのは、これを試すに当たって移動の邪魔になるからだった。

何もせずに突き出されているだけで、何度も(くぐ)ったり乗り越えなくてはならないのだから。


『相手の状態に依らず速度を上げられるようにするのは、今後の課題かな』


比較的安全な模擬戦で、自分だけの実力でどこまで加速出来るのか確認できたのは僥倖だった。

毎回ナツナツとナビが、補助に全力を回せられるかどうかは分からないのだ。

と、


「ああああぁぁ!!!!!!!!」


次男の咆哮に危険を感じた私は、離れる方へ速度方向を変える。


すぐに私を追い抜いていくのは、生命力の波動。

《オーラ・バースト》とか《生命波動》とか呼ばれる、己を中心とした範囲攻撃だ。

防御主体の攻防に嫌気が差したらしい。


…………まぁ、私もそろそろ次に移ろうと思ってたところだ。丁度良い。


次男から離れる中で振り返り、正面から向き合った。

《オーラ・バースト》の硬直を振り切って、すぐさま間合いを詰めるべく動き出す次男。


「《ライト・アロー》」


次男の背後に無数の光矢が出現すると、一斉に放たれる。

狙いは左右に幅広く、広範に。『後ろには回り込ませない』という意思表示か。


構わない。元々そのつもりだ。


私の反応からこちらの意図を読み取ったのか、数本だけ私を狙った直線矢が飛んでくる。

躱して姿勢を崩したところに追い討ちをかけるつもりなのだろう。

私は――


「《ショート・ジャンプ》」


左足を引いて半身で躱すと右手に剣を持ち、軽く前へ瞬発する。


一瞬でいい。短くていい。

重要なのは『初動を速くすること』。移動距離は《ショート・ジャンプ》が稼いでくれる!!!!


一瞬の内に5mの距離を詰めた私は、次男が身構える隙を与えず最速の突きを放った。





『うおお!!!?』


まさかの加速を目の当たりにしたディアスは、驚愕に目を見開く。


先程、ルーシアナの驚異的な速度を見たが、あくまで『少しずつ速度を積み上げ、最終的に高速に至る』という系統のスキルだと思っていた。

だからルーシアナが《オーラ・バースト》を背に距離を取ったものの、足を止めてしまったのは大きな失敗だと思った。そのまま大きく周回して、速度をさらに積み上げ続けるべきだろう。

《ライト・アロー》はそのための布石だ。広範囲の無差別攻撃は、その速度ゆえ回避は難しいと思ったのだ。

『まだまだ経験が、覚悟が足りないな』と呆れと共に嘆息したつもりだった。


大賢者マイアナ・ゼロスケイプ。その技術の粋が詰まったゴーレムの体。

そんな特別過ぎる体を持とうとも、中身は15年間のほほんと暮らしてきた女の子。

目覚めてから短期間でベーシック・ドラゴンを倒せるまでになったとは言え、それはその特別な体のお陰だと思っていた。

『体に使われている』『スキルを使っているだけ』。そんな印象を持っていた。


だが違った。それは今の踏み込みのタイミングでも分かる。

《ライト・アロー》による牽制、続く接近で短剣二刀による連続攻撃を仕掛けるため、僅かに両腕を開いたのだ。

そこを狙われた。

さらにこれまで一度も放ったことのない『突き』。

ここぞ、というタイミングまで温存していたに違いない。想像以上の速さで飛んできた。


強引に体を傾ける。スレスレの所を刀身が掠めていった。

躱す動きを利用して右の短剣を薙ぎ払う。

軽い動きでルーシアナの剣が瞬発し、短剣を受けると同時に衝撃波が追撃された。

土魔法による重さを短剣に纏わせ、弾かれるのを防ぐ。

衝撃波による攻撃は一瞬のモノだ。それを乗り越えれば力で押し返せる。


だが、それはルーシアナも分かっている。

衝撃に右腕が止まった隙に、弧を描くように剣を振る。

その軌道の先は両足、そして左腕だ。


『くそっ!!』


二度目の《オーラ・バースト》を放った。


…………………………………………は?


ルーシアナは《オーラ・バースト》の衝撃をそよ風のように浴びると、何事も無かったかのように剣を振るい、両足と左腕を薙いでいった。


「ぐっ……!!!!」


思わず痛みに膝をつく。模擬戦でなければ三肢が飛んでいた。

ふと気が付くと、無事に残った右腕を左手で掴み、首筋に剣を押し当てたルーシアナが、いたずらっ子の表情で楽しそうに笑っていた。


「どーよ?」


「くそ……降参だな。…………どうやったんだ?今の」


「手の内を明かすバカはいないわ。奥の手は多い方がいいのよ?」


「へっ!!確かにな」


『降参』の意思表示のため両手の武器を手放すと、ルーシアナも右手を離して剣を…………剣を…………


「おい…………何故に剣を振り上げる…………」


「大丈夫よ。(しのぎ)で殴るから」


「それ両刃だから鎬はないだろ……」


「む……細かいな。腹で殴るから」


「いや、待て。なんでだ」


「ひとつ。ナツナツを物扱いされてる現状にイラついた。

ふたつ。程度の低い小芝居に付き合わされた。

みっつ。勝手にナツナツの幸せがどうとか決めんな。

よっつ。眠い。

いつつ。乙女の秘密を知った者には死の裁きを」


「待て待て待て待て!!!!!!!!

ひとつめは俺だけの話じゃないし、ふたつめはわざとだし、みっつめはシナリオ考えた親父に言え!!

あと、よっつめはお前の都合で、いつつめは事実だろ!!!!」


「ギルティ」


あ、刃を立てられた。


…………

……………………

…………………………………………

………………………………………………………………さすがにフルスイングは痛かった。


「ナビ、聞いてた?」


『……………………気遣い、学びます』


遠くの方で妖精が誰かと会話していた気がした。


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