第62話 ゴーレム娘、領主の屋敷へ①
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そして数日後。
今日も爽やかな陽射しが、大きな窓からサンサンと射し込んでいる。うん、とても目に痛い。
「…………………………………………眠れなかった」
今日は週末。領主の屋敷に行く日である。
用件は、先日ルーカスたちに話した通り、ベーシック・ドラゴンによる被害を最小限に抑えたことの報奨である。表向きは。
裏というか、ホントの用件はおじいちゃんの孫である私を見定めるためと思われる。
例えおじいちゃんの望んだクエスト報酬であったとしても、問題のある人物を自分の街の中に抱え込むのは避けたいところだろう。
『問題あり』と判断された場合、なんやかやと理由を付けられて望んだ結果が得られない可能性もある。
そもそもおじいちゃんの望みは『孫娘を援助すること』だから、例えば毎月100テトだろうが支給してれば応えたことになるのよね。
まぁ、ギルド長やセレスの様子を見ている分には、あまり心配する必要は無さそうだけど。
……………………でも眠れなかったのは、領主に会うのが不安だったのが原因ではない。
ベッドの中で横を見ると、いつものようにセレスが寝ている。
…………まぁ、これも問題だけど、原因ではない。
夢茶会も昨夜は開かなかったから、これが原因で睡眠が浅かった訳でもない。
そもそもの原因は回りではなく自分の中にあるのだ…………!!!!
最近、クエスト禁止で、外出してないから、疲れない。
…………………………………………それだけです。
ステータスが上がった結果、自主トレやバイト程度では疲れなくなってしまった。
…………まさかの弊害。夢茶会開いてた方がすっきり眠れたよ……
『おはよう。【重量軽減】を逆転させて、服か体を重くするか?』
「おはよう、ナビ。次からはそうしようか」
「どこの戦闘民族ですか……」
「『人生、是修行也』みたいな?ふふぁ~~~~…………」
「オズ、ナツナツ。おはよう」
「おはようございます」
「おはよ~~……」
ドールハウスから、ナツナツがオズに乗って現れる。
相変わらず視界を塞がれながらも、そんなことは微塵も感じさせない動きだ。
いつものようにセレスは放って着替え始める。
オズはナツナツをサイドテーブルに降ろすと、黙ってドールハウスに戻っていった。
申し訳ない…………でも、ナビさん。こういうのを見習わないと、いつまでに経ってもデリカシーが無いままですよ?
『いっそのこと、チビッ子状態をデフォルトにするかな…………?いや、それだと処理能力が……』
気遣いを身に付けなさい。
再び姿を現したオズも連れて洗面所へ向かう。眠気で頭が回らない……
「そーいえば、オズの性別は記載がなかったけど、感覚的にはどっちなの?さっき着替えるとき隠れてくれたけど」
意味もなく先行するオズとナツナツに声を掛ける。
ナツナツはともかく、オズは顔洗わないよね?
律儀に戻ってきた。
「どうでしょうね?さっき隠れたのは、『常識的にそうすべき』と思ったからです。ほら、同性だからといってジロジロ見られるのは、良い気分ではないと聞きますし」
「なるほど」
「聞いた~?ナビィ?」
『ふ、不可抗力なので……』
うん。今日はこのネタで弄るのはそろそろやめよう。
オズは私の頭くらいの位置に座標を固定すると、そのまま並んで進む。
……………………ナビにも自由に動ける体があればいいのにね。
いや、追い出したいわけではなく。自分の好きに動きたいことだってあるでしょうからね。
私の脳内探すことリストに追加しておくことにする。
「そういや、オズ。そっちの修理はどう?」
「然程時間は経ってませんよ?」
「いやそうなんだけど」
「鈍人形・鈍円筒は必要最低数を修復。施設修復はほぼ完了。システムのフルスキャン・セルフリカバリにより、異常なし。現在、情報生命体に進化したことによる影響を検証中です」
「えーと……」
「私たちが壊した鈍人形とかは最低限直して、戦闘痕は大体直った。夢魔がシステム内にいた影響は全部確認して悪いところは直した。今はオズが進化して何が出来るようになって、何が出来なくなったか確認してるところ」
「その通りです」
「なるほど」
『この前去り際に言っていた、断捨離はどうなっている?試作機みたいな管理外の危険物が無いよう、整理するのだろう?』
「完了しました。今度こちらへ訪れたら驚くと思いますよ。何もなくて」
「……………………私は歴史的価値のある遺産を喪失させてしまったのでは……?」
「『「…………………………………………」』」
なんか言おうや……
「大丈夫。根拠はないけど」
『価値観は人それぞれだ』
「所有者がいないのですから、全て私の所有物であり、どうしようと私の勝手です」
「なんの解決にもなってない!!!!」
見なかったことにしよう。一番価値のある物というか者はオズなのだし。
睡眠不足も相まって、朝から疲れた気分で洗面所を開けた。
「あ」
「あ」
「『「…………………………………………」』」
扉を開けたら久しぶりにギル裸長♪
「削ぐ」
『潰す』
「転移基点端末緊急兵装展開」
「失礼しました!!!!」
過剰戦力でギル裸長が殲滅される前に、ナツナツとオズを抱えて急いで退室した。
怒れるナツナツ、ナビ、オズを宥めながら、屋外の井戸で身支度を整え 食堂へ向かった。
初めからこちらを使えばいいって?
普段使わない非常用の給水施設だから、使い勝手が悪いのよ。
具体的に言うと、手動で汲み上げること、冷水であること、タオル掛けがないこと、遠いこと など。
まぁ、今日は冷水なのは利点だけど。
「おはようございます」
「おはよ~」
「おはよう、二人とも。……………………今日の朝食は四人分ね」
「うん。よろしく♪」
「あはははは……」
最短距離で食堂へ向かうと、使う入口の関係で井戸を使ったことがバレてしまう。
そのまま芋づる式に、ギル裸長までバレるので、この流れはたまにある。
私が気を使って入口を変えても、ナツナツがタチアナさんに告げ口しちゃうからね……不機嫌なナツナツの告げ口よりかは、察してもらった方が制裁が緩い…………気がする。
いつものようにサイドメニューを作っていくが、最近はちょっと傾向が変わった。
自動調理装置が作ってくれた、この辺では見掛けない調味料を使ったさっぱりメニューが並ぶ。今日はお醤油です。
何故か懐かしい。昔おじいちゃんが作ってくれたのかな?……………………ないな。
横から手が伸びて『ひょい』とひとつ つまみ食いしていった。
「これも美味しいわね~♪」
「口にあったなら良かったです」
ニッコニコしながら調理を進めるタチアナさんに、もしかしたら今日はギルド長にもお目こぼしがあるかもしれないな、とちょっと安堵した。
「おはよう。……おぉ。今日も旨そうだな」
「おはようございます」
「おはよう。アンタの分は無いわよ」
「…………………………………………」
ダメでした☆
今日のギルド長の朝食はパンの耳だったので、せめて残った油で揚げて砂糖をまぶしてあげました。
「旨いな!?」
…………好評でした。
そしてギルド長の制裁メニューからパンの耳が消えました。この場では黙っておけばいいのに…………




