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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
4章 訪問!!領主のお屋敷
66/264

第61話 ゴーレム娘と夢魔の魔石

58 ~ 68話を連投中。


4/7(日) 15:30 ~ 19:30くらいまで。(前回実績:1話/20分で計算)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

「つ、疲れた…………」


「お疲れ様~♪」


『お疲れ』


「お疲れ様です」


ギルド飯店でのバイトも終わり、後はもう寝るだけなのでベッドにダ~~イブ。


結局、ジャガイモとディップの材料は粗方食べ尽くされてしまった。

明日以降は向こうで用意してくれるらしいけど、レシピは秘密にしてあるから、しばらくは私がいるとき限定です。

『しばらく』というのは、そのうち誰かが真似しだすだろうからだ。材料自体はその辺で買える物ばかりだし。


あぁ…………でも、ちょっと手を加えたヤツもあるから、すぐには無理かな?


「ふああぁぁ~~~~…………」


ぐぐぐ~~~~…………と、ベッドに横になったまま伸びをする。


あぁ~~~~~~~~よく分からないけど、なんたら筋が伸びる~~~~~~~~…………


「大丈夫~?」


「大丈夫…………実はそんなに疲れてない」


『……………………なんでそんな嘘をつくのだ……?』


「いや、以前だったら確実に疲労困憊で動けなかったレベルだから思わず…………」


「ステータスが上がった影響ではないですか?」


「あぁ……そうかも…………」


《龍王の系譜》の効果でステータスがほぼ倍になったんでした。


なに考えてんの、このスキル。最終的にどのくらいの値を目指してんの…………


「そういや、みなさん…………《龍王の系譜》が私の特殊スキルに移った理由、分かった?」


『いや…………すまん』


「かつての技術でも、魔石から『スキルを抜き出す』ような方法は発見されておりません」


「まあ、やっぱり精神空間で、元の持ち主と同時発動したのが原因じゃない?」


「むぅ…………」


やっぱそれが原因かなぁ……


「使用可能だと思う?」


『おそらく』


「でなければわざわざ移らないでしょう」


「というかね、今 半発動中だから」


「あれ?そうなの?」


そんな実感、まるで無いんですが…………


『半発動だから、メインの『試練を呼び、勝者を強力に成長させる』効果は発動していないようなんだ』


「多分ですが、現在はいつか訪れる分岐点に向けて、運命とやらを調整中なのではないかと」


「オズさん…………神も運命も『無い可能性が限りなく高い』って言ってたのに…………」


「神はいたようですから。えぇ、何でもない一般人…………いえ、奇人の振りをしてその辺に」


「オズさん…………気持ちは分かりますが、投げ遣りにならないで……」


まぁ、母親が実は神でしたって、どう反応すればいいか分からなくなるのは理解出来るけどね?


「…………懸念がふたつあるんだけど……」


「うん」


「ひとつ。私でも『龍王』になるんかな?」


『その可能性は低いと思う…………のだが』


「『私』という例外がいますからね…………」


特殊スキルの効果というのは、持ち主には詳細が分かるのが普通なのだが、《龍王の系譜》に限っては元々他者のスキルだったためか、よく分からないのだ。

まぁ、ベーシック・ドラゴン (夢魔) 戦の時のように、完全発動すれば分かるかもしれないけど。


『強くなる』って効果は願ったり叶ったりなんだけど、さらに人外化が進むのは勘弁願いたい。

『人外化』を許容出来るなら、すでに目標は達成可能なのだよ。『狂防孤高』があるんだから。


人智及ばぬ秘境の奥底で、武神 (狂防孤高) や龍王 (イメージ:デッカイ飛龍) となって、一人静かに生活する自分を想像する。

………………………………

泣きたくなってきた。


「私たちはずっと一緒だよ?」


『ああ』


「私も加えてもらってますよね?」


「うん。ありがと」


……バカな想像をしたね。

最悪は無いならいいかな?まだ、龍化するとも限らないしね。


「次。戦闘相手と闘いたくない時は逃げられるのかな?……………………具体的に言うと、セレスとかギルド長とか」


「その辺は大丈夫だと思う」


『可能性として懸念されるのは、『闘わざるを得ない』ような状況になるかもしれないことだ』


「運命を弄ってきますからね。ただまぁ……」


そこで一呼吸置くと、


「形振り構わなければ回避は出来ると思う」


『それこそ『狂防孤高』で防御専念でもいいし』


「空間転移先も増やしておきましょう。予備の転移基点端末は所持してますね?」


「うん。ブローチ型は着けてるし、[アイテムボックス]にも20個くらい入ってるってか多すぎじゃない?」


過保護のオズさん。ガア・ティークルから出るときも、あれやこれやと色々持たせてくれました。というか、付いてきました。

でも、とりあえずは……


「どっちも気にしてても仕方無いか…………」


取得しちゃったものは仕方無い。


『解析は続ける。安心しろ、と言い切れないのが もどかしいところだがな』


「もし何かあっても、今まで通り頑張ろ~。私も手伝うからさ~♪」


「私もです。となると早いところ動き回れる体が欲しいところですが。ガア・ティークル内のプライベートエリアに何かあればいいのですが……」


「ありがと、みんな」


うん。もうちょっと詳しく分かったら、ギルド長たちにも説明しておこう。


「さて!!暗い話題はこのくらいにしておきましょう!!」


気分を切り替えるつもりで、明るく言って起き上がる。

今日はもうひとつ試したいことがあるのだ。


「『夢魔の魔石』~♪」


そう。ガア・ティークルの中枢システムに侵入してきた夢魔は精神生命体、つまり『生物』であり、魔石を持っている。

中枢システム区画に落っこちていたこれを、オズが見付けてくれたのだ。

その効果はこちら。



特殊スキル

・夢干渉 Lv.3:他者の夢に干渉する術式構成を補助し、スキルとして取得する。

×夢魔の心得:夢魔種族の種族特性。実体を持たない精神生命体の一種。物理攻撃を無効化する。また生体に憑依することで、体の動きに干渉することができる。スキル『精魂吸収(ソウル・ドレイン)』を取得。


取得スキル

・夢渡り:対象の夢に侵入する。

夢誘(ゆめそい):一定範囲内の夢に干渉し、また、夢同士を干渉させる。

×精魂吸収:憑依した対象の生命力を吸収し、自身のステータスに上乗せする。



……………………分かりますよ。なんてピンポイントに都合のいい魔石なんだ!!!!


これを使えば実体を持たないナビとも、実体があるかのように触れ合える。夢の中でだけど。

《夢渡り》で自分の夢に侵入して、《夢誘》でナビ・ナツナツの夢に干渉、全員がひとつの夢の中に集合するのだ。

《夢誘》は、本来なら『悪夢を見せる』等の使い方をするのだろうけど、そんなことは関係ない。快適なくつろぎ空間を再現する予定だ。

ホントはガア・ティークルでオズも巻き込んで試すつもりだったのだけど、『万が一』が怖くて試せなかったのだ。


「オズも体を手に入れたら、一緒に寝ようね」


「楽しみにしてます」


ワクワクしながら、左腕につけたままのブレスレット型魔道具の空きスロットに夢魔の魔石をセットする。

戦闘服のバックルと同じく魔石スロットになってるのよね、これ。

本来なら、元々の機能と連動するような魔石をセットするんだろうけど、まぁ、使ってないしOK。


「じゃ、おやすみ~♪先に寝てるからよろしくね♪」


「それじゃ、私もナツナツと一緒にいます。周囲の警戒はしておくので、耳だけは残しておいてください」


「了解~」


オズがナツナツを乗せてドールハウスへ戻るのを、手を振って見送る。

オズの視界をナツナツのスカートが塞いでいるように見えるけど、大丈夫なんかな?

一応、危うげなくナツナツを乗せて玄関から入っていった。


「ナビ?」


『あぁ。発動させながら寝ればいい。まずは私を呼んでくれ』


「うん。ありがと。でもそうじゃなくてね?」


『?』


「楽しみだね♪」


『…………………………………………ぅん』


うひゃかわ~~~~♪

すでに脳内イメージは犬耳チビッ子ですね!!


テンション上がってたけど、気合いで寝た。





…………

……………………

………………………………

…………………………………………

気が付くと真っ暗闇の中、一人ぽつんと浮いていた。

この前のガア・ティークルで、夢魔のいた場所に落ちていた時の空間に似ている。

違いは『落ちている』感覚がないことだ。


「えーと……」


夢でこれを見たら、絶対に悪夢ですね。闇の中から何か出てきたり、いきなり上空に放り出されたりするの。

だが、現実と同じくらい意識がハッキリとした状態であれば、然程(さほど)恐怖は感じない。

この闇もまた、私であるのだから。


「まずは場面転換させよう。『私室』へ」


どうすればいいかは何となく分かる。うまくいかないところは《夢干渉 Lv.3》が自動的に補正してくれるのだ。


変化が起きた気配は、背後からした。

特に警戒もなく後ろを向くと、そこはすでに現実で私が寝ているグランディア家の一室だった。

そのまま視界を正面に向ければ、そちら側もすでに転換が終わっている。


「……………………『私室へ』、としか言ってないのに、この部屋になるんだね」


思わず『くすり』と笑ってしまう。


同じ『私室』でも、元々住んでいた実家の私室の方が使っていた時間は長いというのに、私の中ではもうここの方が『私室』として強く認識してしまっているのだ。

確かにここには、ナツナツがいて、ナビがいる。セレスにギルド長、タチアナさんも。これからはオズも来てくれる。

実家の私室もおじいちゃんとの思い出という面で大切だけど、ここは現在の繋がりという面で大切な場所なのだ。


窓の外を見るといつもの風景が広がっているが、あまりに現実とそっくりだと 夢と現実が分からなくなりそうだったので、見渡す限りの花畑にしておく。四季に関係なく様々な花が咲き乱れる風景は、ここが夢の中であることを証明してくれるだろう。


…………………………………………あれ?起きたくなくなっちゃいそう?

……………………ま、まぁ、二人にも見せてからでいいよね。


基本的な空間が出来たので、まずはナビを呼ぼう。

ベッドに腰掛けて目を閉じ、ナビの夢に干渉する。


「《夢誘》」


スキルを発動させると、遠くの方まで己が広がる感覚がして、無意識に体を震わせる。

この部屋状に『私』を圧し固める堅くて暖かみのある木枠のような感触から、緩やかで刺すような冷たさのある水のような感触に変化したのだ。この水は、ともすれば『私』と混ざり徐々に『私』を薄めてしまう予感に寒気がする。


とりあえず意識を強く持ち、『私』の密度を上げることで、『私』と『水』を明確に区別し自分を保つ。

そのまま徐々に広がる『私』に、まずナビの意識が触れ、続いてナツナツの、さらに遠くにはセレスたちの意識が感じられた。


意識を集中させ、ナビの夢に干渉する。感覚としては、水中で眠るナビに、腕を伸ばして起こそうと揺り動かす感じだ。


……………………あ、起きたね。いや、起きてないけど。


つまりは、私の干渉に気が付いた。

そのまま腕を掴んで水中から引き出すイメージで、私の夢の中に引き込む。

目を開くとベッドに腰掛けた私の膝上に、犬耳チビッ子タイプのナビが右腕に引っ張られた状態で姿勢を崩し、目を白黒させながら収まっていた。


「さっきぶりだね、ナビちゃん♪」


「……………………初めてのくせに使いこなし過ぎでは?」


「む。ここでは見た目と口調は合わせるのがマナーですよ?」


「初耳だぁー!!あと、いつの間にチビッ子にされたの!?ねぇ!!」


最初からですよ。ここの支配者は私ですからね。夢の主としても術式の使用者としても。


でも、文句を言いつつもすぐにチビッ子口調に合わせてくれたナビちゃんはノリがいい。

ナビをそのままの姿勢で自分に寄り掛からせ、頭を撫でる。


次はナツナツを呼び出そう。

物理的に距離があるが、まぁ然程苦労はしない。

『ザバッ』と左腕を引き抜くと、ナビと同じくらいのサイズのナツナツが釣れた。そのままナビとは逆の空いた膝上に乗せる。

ナビと同じように目を白黒させてるね。


「……………………初めてのくせに使いこなし過ぎじゃない?」


「それもう言った」


「うん。聞いた。あと、ここでは見た目と口調は合わせるのがマナーですよ?」


「初耳だぁー!!あと、なんで私もチビッ子!?この役はナビなんじゃない!?」


「それももう大体言った」


「うん。聞いた」


ナツナツもノリがいいね。


という訳で、『夢の中でお茶会プロジェクト』成功!!!!略称は『夢茶会』で。

あ、本番(お茶会)はまだまだ先だけど。


まぁ、まずはチビッ子二人をたっぷり堪能しましょうか。うへへへへへへへへ~~~~…………


「あれ?なんか寒気が…………」


「奇遇だね。ボクもだよ…………」


あざとい!!!!あざといよナビちゃん!!!!でもそれがイイ!!!!





30分程、撫でくり回したり 抱き締めたり 持ち上げたり 一緒に寝転がってみたりと、堪能させていただきました。舐めたり 匂いを嗅いだりとかは、さすがに変態レベルが高い気がしたので保留にしておいた。


あ~~~~でも、今日のナツナツは柑橘系の、ナビはスッキリ ミント系の薫りがほんのりしました。不可抗力です。


経過時間は現実準拠としているので、あんまり長居すると睡眠不足になるのが目に見えている。そろそろ次に行こう。『終わりにしないんかい』というツッコミは黙殺させていただきます。

疲れた様子で息を(あら)げる二人を離し、少し集中する。


「あ、あれ?どうしたの?もう終わり?」


「ま、待ちなさい、ナビ…………挑発してるよ、それ」


「あ、いや、え~~と…………今日はこれくらいにしておいてくれるの?」


「ダメだ……酸欠で頭回ってないわ、この子…………」


若しくはドMかですね。


…………まぁいい。とりあえず今は……


「よっと」


「「へ!?」」


掛け声と共に横にスライドするように右腕を動かすと、巨大なトレーが動きに釣られて出現する。

その上には私が記憶している料理が、主食、主菜、副菜、デザート、特に区別することなく乱雑に乗っていた。

それをベッドの上にデーンと乗せると、


「ナビはいつも見てるばっかりだからね。せっかくだから一緒に食事でも、と思って。どう?」


「え、あ、うん。あ、でも、味覚あるかな?システム的に」


「食べてみれば分かるでしょ。これとかどう?今日話題のフライドポテト。あ~~ん」


「あ、あ~~ん……」


私の言葉に何の疑問も抱かぬナビちゃんに、『激辛ディップをつけたろか』と思ったけど、ギリギリのところでやめておく。私のターンはもう終わりなのだ。


「……………………ツッコミのタイミング逃した~……」


今からしてもいいんですよ?


ナビがもごもごと味覚を確かめている内に、ナツナツにも食べさせてあげる。


「あ~~ん」


「あ~~ん♪」


随分と嬉しそうに食べますね。


…………そういえば、今日は上で踊ってるだけで、摘まみ食いに降りては来なかったものね。


「おいしい?」


「うん♡おいし♪」


「よかった♪ナビはどう?」


ナツナツにご満足いただいて、ナビを振り返ると


「はくっ……………………~~~~~~~~(ふるふるふる)」


ゆっくりと少しずつ口に含み、満面の笑みで震えるナビがいた。


…………………………………………破壊力高い。


せっかくの初体験だし、じっくりと自分のペースで味合わせてあげよう…………



この日は結局、食事するナビを眺めて時間切れになった。

とてもよい お時間でした……

もっと出してあげるためにも、色々食べなきゃね。太らない程度に。


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