第56話 オズ VS. 残存戦力②
33 ~ 57話を連投中。
3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)
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申し訳ありません。
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黒人形がゆっくりと立ち上がる。
少々ぎこちない歩みだが、中枢システムの台座に体を預けるルーシアナに向かって真っ直ぐに進んでいるのは間違いない。
何者にも邪魔されることなく進む黒人形に対して、一柱の追従型汎用デバイス=銀円筒が立ち塞がると、両のアームを精一杯伸ばして背後を庇う。
そして……
「知っていますか、黒人形」
落ち着いた声で語り掛ける銀円筒に対し、黒人形は無言のまま足を進める。
「人間は心と体が異なる行動を取ることがあるそうです」
一歩、また一歩と近づいていく。
「驚きですね。機械にもあるようですよ。ここを退くべきと判断しているのに、体が動かない」
そして、銀円筒の体は剣の間合いに届いてしまった。
「不思議ですね。それでもこの行動は『正しい』と自信を持って言えるのです」
黒人形が無造作に、黙って右腕を斬り下ろした。
一瞬で刀身は銀円筒の半ばまで喰い込み、そのまま真っ二つにしてしまった。
……………………と、いうのを、私ことオズは見ていた。
紫円筒を押し退けて立ち上がる。今のボディは紺円筒だった。
どうやったのかさっぱり分からないが、少し時間を遡ってこのボディに主稼動域を変更されたらしい。
先程までの夢のようなやり取りはハッキリと覚えている。本当に母は何者なのでしょうか?
だが、チャンスを与えられたのは確かだ。特大のプレゼントと共に。
……感謝は期待に応えることでお返しします。
今もこの体の奥底で解放の時を待つ、大いなる可能性を起動した。
▽プログラム『機械仕掛けの可能性』を解凍中…………
▽空間転移ターミナル統括管理AI『OS』のアップデートを行います。
▽進化後ステータス
名前:オズ
性別:―
年齢:5,013歳
種族:情報生命体
レベル:1
HP:1,000 (+1,000)
MP:∞ (地脈直結)
力:50 (+800)
体力:60 (+10,000)
魔力:2,000 (+1,500)
敏捷:100 (+1,000)
運:Best
特殊スキル
・地脈の出自
・機械仕掛けの可能性
・情報生命体の心得
取得スキル
・地脈直結
・限界突破
・絶対精神防御
※( )内の数値は、現憑依対象の性能です。
※機能制限中のため、憑依対象の変更は出来ません。
特殊スキル
・地脈の出自:地脈から産み出された証。地脈との相性がとても良い。スキル『地脈直結』を取得。
・機械仕掛けの可能性:いずれ神へと至る可能性。あらゆる経験を糧として、進化し続ける。
・情報生命体の心得:情報生命体種族の種族特性。実体を持たない精神生命体の一種。物理攻撃を無効化する。また機械類・ゴーレム類に憑依することで、自分の体のように扱えるが、破損ダメージが自身に反映される。スキル『限界突破』を取得。
取得スキル
・地脈直結:地脈と結ばれることで、ほぼ無尽蔵に魔力を汲み上げ、MPが無限になる。
・限界突破:憑依した対象のセイフティを解除し、性能限界で稼動させる。
・絶対精神防御:他者からの精神干渉を完全に防止し、精神属性の攻撃を無効化する。(常時発動)
▽アップデート中…………………………………………終了しました。
▽アップデートを完了させるには、再起動が必要です。(再起動には約六時間掛かります。それまでは機能が一部制限されますので、ご注意ください)
……………………母よ。勢いで以下略。
再起動が必要じゃないですか。六時間も掛けてはいられないですよ。
他にも色々とツッコミどころ満載だったが、これ以上を想像していたのでダメージは少なめだ。
『《限界突破》』
紺円筒のセイフティを強制解除すると、ローラーが煙を上げて回転する。一瞬で最高速度に達したオズは、黒人形を背後から狙う!!
突然の異音に瞬時に反応した黒人形は、両腕を刀剣にすると真っ向から迎え撃つように構えた。
ドリル型にアームを変形させ、高速で地を行く。
黒人形は油断なく、左腕を床面ギリギリから掬い上げるように斬り上げる。
ギャッ!!ギギャン!!!!
ローラーを素早く右に曲げ、急カーブすると、紺円筒のボディは慣性に押されて弾かれるように吹っ飛んだ。
それは黒人形の斬撃をギリギリで躱すと、時計回りに回りながら、黒人形の横をすり抜けていく軌道だ。
ギュギャギイイイイィィィィィンン!!!!
ボディが回転するに合わせて、左アームドリルを黒人形の左脇に突き刺す。
が、さすが試作機。装甲もワンランク上の素材を使っているらしく、キズがついただけだ。
だが、構わない。着地のために姿勢を正すのが目的だ。
回転速度を調整して、後向きに着地すると、オズは本命を放った。
「【餓蝕禁閻】」
キュボゥ!!
プラスチックが擦れたような音がすると、黒人形の半身以上を包む黒球が出現する。
それは数秒と保たずに消え、残ったのは球形に抉られた黒人形だったモノだけだ。
【餓蝕禁閻】。闇魔法のひとつの究極である。
闇魔法は大まかな傾向として、『負のエネルギーを司る』というのがある。光魔法は『正のエネルギーを司る』ので、分かりやすく対極である。
そしてこの『負のエネルギー』というもの。怨念とか呪いとかそういった文学的なものは置いておいて、この魔法においては、それは『反エネルギー』とでも言うべきものである。
反物質が物質と衝突すると対消滅を起こすが、反エネルギーがエネルギーと衝突すると同様のことが起きる。
そして、物質を構成する原子はエネルギーをもってその形状を保っている…………もう、お分かりですね?
原子同士を結合させる共有エネルギーから、原子核を維持する結合エネルギーまで、あらゆるエネルギーが消滅した結果、原子核を維持できなくなり消滅したのだ。『原子崩壊』とも言うべき魔法である。
頭がおかしいレベルでMPを消費するので、正しく頭がおかしい状態の母 (要するに泥酔状態) が創った術式であったが、いつかこうなると思っていたのだろうか…………?
ルーシアナも無事だし、少々油断して物思いに耽ってしまった。……………………そのため複数のローラー音に気付くのが遅れた。
「!!!!鈍円筒ですか!?」
言葉と同時に、扉が壊された出入口から何柱もの鈍円筒が飛び出してきた。残った鈍円筒すべてが侵入してきたようだ。
まずい…………この紺円筒は攻撃系の術式が先ほどの【餓蝕禁閻】くらいしかないが、アレは容易く連発できるものではない。MPはともかく、ボディがオーバーヒートする。
あの数をすべて【餓蝕禁閻】で対処は出来ないだろう…………
……………………それでもやるしかないですね。いえ、【餓蝕禁閻】を連発する訳ではないですが。
がむしゃらに飛び込みドリルアームを突き出す鈍円筒に対し、まずはカウンターとしてこちらもドリルアームを打ち込んでやった。各部のパーツ間距離を緩めて攻撃の間合いを広げておいたので、先に届く。
通常よりも大きな衝撃が各関節に響くが、これらを組み合わせていくしかない。
「【吸朽諦止】」
鈍円筒の後ろから続いて現れた二柱の鈍円筒に対し、稼働エネルギーを奪うことで動きを止める。施設からエネルギー供給されているとしても、一時的に止めるくらいはできる。
再起動が完了する前に二柱を破壊した。
まだまだ鈍円筒は追加される。
『母よ…………ここで失敗したら笑いますかね?』
笑うと確信できたので、気合いを入れ直す。
計算ではあと50柱くらいいるはずなので、それを基に戦略を組み立てていく。
三柱来た。
「【吸朽諦止】」
威力を絞って最低限の動きを止め破壊する。ドリルアームだから いちいち腕を引き抜かないとならないのが面倒だ。
『ルーシアナ……ちゃんと無事なんですよね?』
目覚めが遅いのも気にかかる。通常ならすぐに起きてもおかしくないはずなのだ。
――――また一柱現れた。
護ります。マイアナと貴女との約束ですから。
最後の戦闘に入った。




