第51話 ゴーレム娘 VS. 真の敵②
33 ~ 57話を連投中。
3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)
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ベーシック・ドラゴンとの戦闘は、まず竜の一閃から始まった。
予兆無き竜砲を、顕現した時の姿勢のままタメ息のように放つ。
威力は本来の半分にも満たない、軽いもの。
だが、脆弱な肉で出来たルーシアナにとっては致死の一砲であった。
重大剣を掲げてその影に入り、斜め前方に身を飛ばす。
軽い一砲は喰らう方にしてみれば、予兆が読めず回避が難しいだけで、それが分かれば回避は容易いものだった。
手の届くような位置を竜砲が駆け抜け、衝撃が重大剣越しに体を殴る。
そのままドラゴンへ向けて最短距離を真っ直ぐ進んでいった。
…………その全てはドラゴンの予想したものだった。
軽い竜砲は、放つ者にとっても容易いものである。
先日の戦闘では、取得したばかりということもあり本来の威力は出ていなかったが、それでも射線を少し左右に振るだけで反動に首が折られかねなかったのである。
だがこの軽い竜砲ならば、射線を振ることも連続で放つことも、然程難しいものではない。
ゆえにドラゴンは左前脚を支点に、右へと竜砲を振った。
一瞬で竜砲がルーシアナを呑み込み、威力の残滓が飛沫となって飛ぶ。
――――命中したのだ。
ドラゴンにとってはその結果こそが予想外であった。
敵にとって竜砲は最も注意していた攻撃であっただろうし、先日の戦闘では左右に振って見せていた。
つまりこの程度の攻撃は、敵にとって予想し得るものでしかなかったはずだ。
剣か何かを使って直撃を避けつつ、下を抜けると思っていた。
もしそうしたなら、竜砲の下部に斜めに当たり、左右へ飛沫が飛ぶはずである。
だが実際には全方位に飛んでいる。それは真っ正面からモロに喰らっていることを表していた。
……………………手は抜かない。
生前であれば、あのような飛沫を確認した段階で勝利を確信し、終わった気でいたであろう。
だが『全力でいく』と言って、敵は応えてくれたのだ。
油断はしない…………!!!!
床に爪を食い込ませて四肢を突っ張り、全身を真っ直ぐに固定する。そうして準備を整えると、竜砲に魔力を込めて威力を増していく。
弾ける飛沫が、その激しさを増していく。
…………と、
「!!!!!!!!」
床から爪を剥がし四肢の全て使って後方へと飛ぶと、竜砲の反動を使って飛距離を伸ばす。
強引な動作に竜砲の反動を堪えていた背骨が鈍い痛みを訴えた。
が、それでもまだマシだと考える。
……………………突然左の死角から現れた、敵の持つ雷剣を喰らうよりは。
竜砲を止め全身の硬直を解くと、その巨体に相応しい豪快な着地で油断なく身構える。
敵は竜砲を喰らっていたはず。この移動のカラクリを解かなければ危険だ。
そのカラクリのひとつはすぐに判明した。
敵の姿越しに、先程まで竜砲の飛沫が上がっていた場所が見える。そこには鈍色の人形が重大剣を背に座り込んでいたのだ。
驚愕に目を見開く。と、
「ほいっ」
軽い掛け声と共に雷剣がこちらへ投げられる。
次の瞬間、雷剣は弾けて強烈な閃光を放った。
避けられたか~……
竜砲を吐くドラゴンの死角から、《サンダー・ブレード》で斬りかかったが、直前で気付かれ回避されてしまった。
今も油断なく体勢を整え、こちらの様子を窺っている。
『避けたってことは、効くってことだと思う?』
『多分。雷魔法に耐性がある魔獣は少ないはずだよ?』
『鱗は別に絶縁体でもないしな。ただ『切断できるか?』という話なら無理だと思うが』
なるほど。
『つまり『スティールブレイドに雷を纏わせて斬れ』ってことね』
『そだね』
『情報では、スティールブレイドならベーシック・ドラゴンにも刃が通るということだからな』
剣速重視だったから《サンダー・ブレード》のみにしたけど、ここからはスティールブレイドを芯にした方がよさそうだ。
囮にした鈍人形に驚き、都合よく目を見開いたので、よく見えるように雷剣を放り投げてやった。
「ほいっ」
直ぐ様 雷剣の制御を切ると、強烈な閃光となって弾ける。
周囲は暗いし、いい目眩ましになったことだろう。
私の視界は《ミラージュ》を使って保護しておいた。
「ぐがああああぁぁぁぁ!!!!」
頭を振って悶絶するするドラゴン。
よく分かるよ、うん。私も【エレキ・ボール】を直視したし。
少し下がって[アイテムボックス]経由で重大剣を手に取ると、雷を纏わせる。
▽刀剣マスタリーのレベルが上がりました!!
▽刀剣技:雷撃斬を取得しました!!
▽ステータスを確認してください。
特殊スキル
・刀剣マスタリーLv.10 → 11
取得スキル
・雷撃斬:雷を纏った斬撃。切ると同時に痺れさせる。火属性。
『《雷撃斬》』
改めてスキルを使うと、バチバチ青白い火花を散らしながら重大剣が雷撃を纏う。それを構え、時計回りに移動し横から攻撃を仕掛ける。
重大剣の間合いに入った瞬間、床を舐めるように高速の尾撃が飛んできた。
咄嗟に低く、跨ぐように尾を飛び越えるが、すぐに振り戻しの尾撃が飛んでくる。
再びそれを越えることはせず、尾の根元目掛けて飛び込むと、重大剣を担ぐように肩に乗せ、ドラゴンの腹に剣先を当てながら潜り抜けた。
ドラゴンの左側に抜けると振り返り、上段から斬撃を放つ。
ザシュ!!!!
……………………少しキズが付いた。鱗に。
腹に当てた攻撃はキズも付いていない。
『ダメじゃん!!!!』
『もっと全力でやらないとダメかな』
『それと良くない報せだ。現実側でも戦闘に入った。管理外の人形がいたらしい』
『ナツナツ!!ナビ!!攻撃補助に注力して!!回避は自分でする!!!!』
『了解!!』
『気を付けろよ!!』
わざわざオズが連絡をしてきたということは、負ける危険があるのだろう。無茶をされる前に戻らなくてはならない。
ボディの替えが利くからと考えているせいか、自分の体に無頓着なのだ。あの子は。
《斬撃制御》
《姿勢制御》
この二つのスキルを意識して発動させる。そして全力の一刀で終わらせる。
その覚悟をして、まずは一歩距離を取った。
振り払うような高速の横薙ぎが、正面の空間を抉っていったからだ。




