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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
3章 探索!!天人の遺跡
50/264

第46話 ゴーレム娘、進攻せり③

33 ~ 57話を連投中。


3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

『攻撃、停止。No.6~15はそのまま周囲索敵。No.2~5は照準を階上に合わせたまま待機』


ルーシアナたちに魔シンガンで攻撃を加えたグループ内のリーダー機は、敵が視界から外れると僚機にそのように索敵と待機の指示を出した。

リーダー機とNo.2~5は鈍人形、No.6~15は鈍円筒であり、No.はこの編成になった際に適当に振られる通し番号である。

別にリーダー機だからと言って、他の機体と性能が異なる訳ではない。優先度があり、最も高い優先度の機体が一時的にリーダーとなるだけである。

故に例えリーダー機を見極めて撃破したとしても、それによる指揮命令系に乱れは生じない。すぐに次の機体がリーダー機として行動するからである。


現在この施設では、一名のテロリストが破壊工作を続けており、防衛システムはこの鎮圧に当たっている。

情報によれば、テロリストは人間一名とのことだったが、さらに妖精一体、汎用デバイス十柱の大所帯だった。


現在の最優先攻撃対象は、人間である。

先程まで最も危険度の高い攻撃は、人間と妖精のコンビネーションであったが、すでに妖精側の補助武装は消費しきっており、危険度は低いと考えられた。

次に危険度の高い攻撃は、敵汎用デバイスの魔法攻撃であり、それは驚異的な威力であるが、当然ながらエネルギーを消費する。

あの小さなボディに保存されたエネルギーだけで稼働しているとは到底考えることはできず、ならば人間からエネルギー供給が成されていると予想された。

ゆえに人間を排除すれば、敵汎用デバイスもいずれエネルギー不足で停止し、任務達成は難しくないと結論づけられる。

以上の考察からリーダー機はまず人間の排除を目的として、魔銃の使用を決定した。


魔銃はその威力の割にエネルギー消費が大きく、兵器としては使い勝手が良くないが、その連射性能はデメリットを十二分に許容できるものであった。

魔法障壁などで防御されることも考えられるが、500発の連射は容易くそれを貫いてくれるだろう。


『…………………………………………』


静かに、敵の行動を待つ。No.1~5全員で魔シンガンを階上に向けて人間が姿を現すのを待った。

と、


『動体反応……………………破損同機体』


こちらからは見えない、階段 降り口の反対側の手摺りから、これまでに破壊した人型防衛用デバイスをロープで括り、振り子の要領で投げ落としてきたらしい。その数、六体。


(デコイ)と断定。各自、照準を変更せず、回避』


とは言うものの、適当に投棄された囮は初めから命中軌道に無かったが。

恐らく、攻撃手段が無くなったことによる、ダメ元の囮と考えられる。


浅慮…………


特に感情らしい感情もない簡易AIの脳内に、失笑のようなさざ波が流れた。

これから『囮に連携を崩された』こちらを想像して、テロリストは攻撃を仕掛けてくる。それに対しカウンターを狙う。

リーダー機は最後尾で階上を狙い、囮にはおまけ程度の注意力しか払っていなかった。


……それをついしっかりと確認したのは、ほんの気まぐれか予感があったからか。

囮が横を通り過ぎる瞬間、視界に映ったのは、囮の背面にしがみつきながら剣を構える人間の姿だった。


『!!!!!?!!敵機』


リーダー機の意識が続いたのはそこまでだった。

すれ違い様に軽く振るった剣が装甲をバターのように断ちきると、その首を天に()ね上げた。





『うひゃこわーーーー!!!!』


みなさん、こんにちは。私、ルーシアナ。今貴方たちの背後でブランコしてるの。


『破壊した鈍人形を盾にしよう』というのは、最初から決まっていたことだった。

ただ問題は、敵の数が多いことと二階から一階へ降りてこなければならないこと。

要するに盾のある側ではなく、側面や脚を狙って銃撃される危険があった。特に危険なのが仰角で狙われる脚。一階に降りてしまえば脚は狙いにくくなるので、階段を降りる時だけ生じる危険であった。


そこで一度アラクネ型下半身部パーツに換装して蜘蛛糸で鈍人形と手摺りを固定し、背面に隠れるように貼り付いて移動と防御を兼ねることにした。敵の場所については、ナツナツの《透視》を使った。

残りの鈍人形には、オズがドリルを突き刺して固定し貼り付いている。

オズ曰く、『単純だから背面を覗かれたり服が見えたりしなければ大丈夫です』とのことだが、私の服は結構布地が多いのよ?

念のため《ミラージュ》を強めにかけておいたが、効果はあったのか無かったのか…………試す気にはならないが。


最後尾に配置していた鈍人形を一刀のもと斬り伏せると、盾とした鈍人形を蹴って正面を向いたままの二体目の鈍人形に襲いかかった。

鈍人形の背を越える高さから、首を狙って振り抜くと同時にあるスキルを発動させる。

《斬鉄剣》

その効果はこちらである。



・斬鉄剣:物質同士を繋ぐ結合力を弱め、あらゆるものを断ち切る。使用中は武器の強度が下がっていく。また非生物にしか効果がない。



聞きかじった基礎物理学の知識で、物質と物質は共有結合などで結合していると聞いた。その結合の中で最も強いのは電気の力によるものだと。

電気を操る魔法はすでにある。だから『結合に使われている電気を取り除けば、色んな物が斬れるんじゃないかなぁ……』と思って試してみたら、案の定スキルを取得したのだった。


でも、多分これまだ未完成。

だって、スキルを発動させて剣に魔法を纏わせていると、だんだん剣が消滅してしまうんだもの。効果対象は『非生物のみ』とのことだが、あまりにも効果がヤバかったから、後付けで(ほどこ)したストッパーのような気もする。

これが使いたくなかった手段である。なんか死神が後ろでニコニコしている気分。振り向いたら、私もヤられる…………

なるべく真っ直ぐ、刃を立てて振る。これだけで特にコツはいらない。……………………一撃必殺過ぎる……


そんなトンでもスキルを背後から首筋に喰らった二体目は、あっさりと脱力して崩れ落ちる。

最初に(ほふ)った鈍人形が倒れる音がようやく響き、残りの三体が慌ててこちらに向き直る。


遅い。


二体目の鈍人形を倒した私は、勢いそのまま地面に着地すると、三体目の鈍人形の真下から、正中線に沿って真っ直ぐに切り上げた。


――――…………


無音で三体目が左右に割れる。

四体目、五体目が右腕の魔シンガンを構えるが、左右に分かたれた三体目の半身を射線を邪魔するように蹴り出すと、発射される前に走り出す。敵は三体目の半身を半歩ズレることで躱すと、すぐさま射撃を開始するが、走り過ぎた床に着弾痕を穿つことしか出来ない。


とはいえ、さすがに腕よりも速い速度での移動を継続など出来はしない。

私と五体目の間に四体目が入ったタイミングで、軌道を変えて四体目に向かう。四体目を五体目の盾にしたのだ。

そして四体目の射撃には……


「必殺!!円筒バリアーーーー!!!!」


殺しません♪


【重量軽減】を施した鈍円筒を、ナツナツが妖精魔法でぶん回した。射線が正確なため、鈍円筒をあまり動かさなくても、的確に弾いてくれる。

四体目の懐にまで入り込むと、突き出された右腕に手を掛けて飛び上がり、首を刎ねる。


…………身長がね?足りないのよ?


そのまま四体目の胸板に飛び込み、後ろに倒れ行く体の影に隠れてしばし待つと、


ゴシャガアアァァン……!!!!


振り子のように揺れていた盾の鈍人形が、速度を増して戻ってきて、五体目を背後から襲っていた。ナツナツが微調整したのだ。

不意打ちに上半身から押されるように倒れる五体目。

その倒れる軌道上に、私の剣が迎えるように振り上げられていたのは、果たして認識出来たかどうか…………

二階から飛び降りてから、約2分。五体の鈍人形を殲滅した。


「こちらも終わりました」


見るとオズたちも鈍円筒の殲滅を終えたところだった。

オズたちはまず、鈍人形を吊るす蜘蛛糸を切断し、鈍円筒を鈍人形で潰すように襲いかかったのだ。

鈍人形に押される形で倒れる鈍円筒に、鈍人形の背後からドリルアームを伸ばしたオズたちは、まず五柱を刺殺。

残りの五柱は二階での戦闘と同様、二柱で一柱を攻撃して各個撃破していった、はず。


『ふぅ……魔力分配、マジで重要だな。《斬鉄剣》の消費がとんでもない……』


「一応、私たちの中にもエネルギータンクがありますので、多少供給が遅れても大丈夫です」


『あぁ、分かっている。そうはならないようにしたいがな』


「あと、二階の時ほどのんびりは休めないかも」


ナツナツの言葉に視線を向けると、次のグループが近付いて来ているところだった。


「一旦退くことも考えなきゃね……」


「今回はどうしますか?」


『あと30秒待て』


「ルーシアナ~。やっぱり手足切り落として。邪魔」


「字面だけ聞くと怖いな……」


私は鈍人形の四肢を切り落とす (首は先程飛ばした) と、ナツナツに渡す。


「手足がプランプラン揺れると、動かしにくくてね~」


「装甲だけ剥がせば良いのでは?」


「落ち着いたらね」


敵の間合いはもうすぐだ。


『魔力分配完了。いいぞ』


「じゃ、いきますか」


「は~い」


「了解しました」


右腕を構えて迎え撃つ姿勢の鈍人形たちに向けて、盾を(かざ)して接近した。





空間転移ターミナル:ガア・ティークル。

15年の静寂を経て、現在その第一階層は喧騒に包まれていた。喧騒というか、戦闘音。

まずナツナツが盾として掲げた鈍人形の胴に隠れて、ルーシアナ、オズが続く。

ある程度近付いたところで、ナツナツが[アイテムボックス]から五体満足の鈍人形を数体取り出し、


「人形ミサイルーーーー!!!!」


爆発しません♪


適当に回転させながら鈍人形を放り投げる。遠心力で手足が広がり、パッと見『銀色のタコ』にも見える。

とはいえ、正しくタコのように銃撃する鈍人形に絡まり付くと、三体の鈍人形が姿勢を崩して銃撃を中断する。

その隙にルーシアナは、残りの二体に接近し、真っ直ぐに剣を突き出した。


――――…………


相変わらず、無音。だが、成果は十分だ。二体の鈍人形を串刺しにしている。


「《サンダー・トリニティ》」


アイアンソードを導体として雷撃を飛ばす。内部に直接雷撃を落とされた鈍人形たちは、瞬時に煙を噴いて沈黙した。

この間、もちろんオズも鈍円筒と相対している。しかし積極的には攻撃しない。何故なら、彼が鈍円筒に対して最優先で行うことは、ルーシアナへの攻撃の妨害であるからだ。


単純な攻撃力だけで言えば、オズの方がルーシアナより優れている。

が、戦場において過剰な破壊力は不要。必要な攻撃力を必要な分だけ使用するのが重要である。

その点では、ルーシアナの攻撃力は鈍人形を破壊するに足る攻撃力を備えていたし、単騎による機動力は不意を突かれなければ十分に鈍人形を撹乱できた。

ゆえにオズは鈍円筒の妨害に終始していた。


そうこうしている内にルーシアナが鈍人形を殲滅する。

そのまま阿吽の呼吸で鈍円筒に向かうと、オズも鈍円筒の殲滅を開始した。ルーシアナも慣れた手付き、というか足付きで的確に鈍円筒を破壊していく。


接敵からやはり約2分。その後、休憩含みの前進を3分。

流れるようなテンポで、防衛システムを破壊していった。





約二時間後。

ルーシアナたちは、100体近い鈍人形と200柱近い鈍円筒を破壊して、一階『光照射空間転移装置』東入口前まで到達した。


「…………………………………………」


すでにルーシアナは無言である。お疲れ様でした。

オズの情報が正しければ、鈍人形はほぼ全滅。残りは鈍円筒のみのはずである。

『ほぼ』というのは、ロールアウト直前の鈍人形が数体いる可能性があるからだが、それが投入されたとしても、これから潜入する中枢システム区画までの細い通路を封鎖すれば、問題はないとのことだった。


東から伸びる広い通路に比例した大きな門の横にインフォメーションカウンターに似た机があり、その奥に目立たない色合いの小さな扉がポツンと設置されていた。

オズが近付き何やら操作を始めると、カラフルな幾何学模様が浮かんでは消えを繰り返し、しばらくすると、『ピッ』という電子音が響いて扉が解錠された。

ルーシアナが取っ手を掴んで引くと、そこにはひと二人分程度の狭い通路が地下へと伸びており、ルーシアナが足を進めるに従って次々と照明が点いていった。


「おぉ……自動点灯とはハイテクですねぇ~」


「疲れてるくせに、そういうツッコミは忘れないのね~……」


『条件…………いや、脊椎反射か?』


「ちなみに現在エネルギー不足のため、『ルーシアナ』様の余剰魔力を吸って点灯しております」


「歩くだけで魔力を消費すんのか、この通路……」


お疲れ様です、ルーシアナさん。でも『余剰』魔力だから、分かるほど疲労はしないはずですよ。


ルーシアナたちが地下への通路に身を滑り込ませると、オズが扉を閉め『ピピッ』と電子音を鳴らしてしっかりと鍵を閉めた。


……………………なお、地の文を読む私が登場することはありません。悪しからず。


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