第45話 ゴーレム娘、進攻せり②
33 ~ 57話を連投中。
3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)
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一時間後。
ようやく二階が終わり、一階に降りる階段の前まで来ていた。
階段の手摺りに背を預け、横目で階下を眺めつつ休憩を入れた。
「あ゛~~~~……………………つかれた…………」
『魔力の前に体力が心配だな』
「今は大丈夫なのですか?」
「どうだろ~?」
「ちょっとキツイから、ごはん食う」
[アイテムボックス]から、お土産用の食料を
「例の全合成食は消化吸収も早いので、軍隊のレーションとしても採用されていた時期もありました。軍人の猛抗議を受けてすぐに変更されましたが」
「…………………………………………」
「いえ。別に全合成食を勧めている訳ではありません」
「…………………………………………戦闘にモチベーションは大事だと思うのよ」
「勧めている訳ではありません」
嘘だ……
ここで初見の食事も怖かった (味の面で) ので、昼食で食べたハンバーガーを食べることにする。ナツナツにはミニおにぎりセットを出してあげた。
モグモグモグモグ…………
大雑把な味が何気に病み付きになるかもしれない。
なお、この間に階段を上がって来ようとする不埒ものは、ここに来るまでに倒した鈍人形を頭から浴びせられて転げ落ちていった。
食事中ですよ。弁えなさい。
「あいつらも『戦闘中だぞ、弁えろ』とか言ってそうね~」
「その意見は却下します」
「暴君…………」
…………二つ目を取り出して、現状を確認する。
「ナツナツ、金属粉の残量は?」
「ダメ。もう一回分もない。オワタ」
「そう。オズ、損傷は?」
「ありません。今まで通り魔力供給さえあれば、戦闘可能です」
「了解。ナビ、私の魔力回復量は?」
『先程、丁度マナポーションの効果が切れた。一階に降りる前に新しく使っておけ』
「はいな」
金属粉以外は問題ないね。
「金属粉、やられたかしらね?」
「防衛システムの簡易AIは、軍隊のそれよりもレベルは下がりますが、ある程度先を見越した作戦を立てることも出来ます。ただでやられるよりは、なるべく多く消費させるように行動したのでしょう」
「なるほど」
鈍人形は途中からわざと関節部を緩めて、多く金属粉が侵入するようにしていたらしい。予定の倍くらいの早さで使い切ってしまった。
「他には……」
「あ。気付いたかもだけど、スキル増えた。《透視》と《魔勘》。御覧あれ~♪」
特殊スキル
・魔力探知Lv.2 → 4
取得スキル
・透視:魔力の流れから通常見えない部分を視覚的に把握する。
・魔勘:魔力的な第六感。勘が鋭くなり危険察知能力が上がる。見たことの無い術式でも危険かどうか分かる。
ナツナツがスキル詳細を投影する。
「私の体もルーシアナと同じで、強く望むと取得しやすいのかも」
「ならベーシック・ドラゴン戦で取得しても良かったのに……」
「魔力探知系でどうこう出来るスキルが無かったんじゃない?」
「なるほど」
『まぁ危険察知能力が上がるのは、地味に役立つはずだ。初見の攻撃が一番危険だからな』
「よしよし。撫でてあげよう」
「わーい♪」
私の精神安定も含めて長めに戯れる。
……………………名残惜しいので、撫でながら次に進もう。
「敵はどう?」
「鈍円筒に関しては、さすがに低レベルの学習機能と言えど、あれだけ戦闘を繰り返していれば充分に学習されてしまいました。倒すまでに二手掛かるようになっています」
「厄介な……」
「ただ、これ以上の学習はないかと思われます。記憶容量が足りません」
「覚えきれないってことね」
「はい。元々鈍円筒は『汎用』デバイスです。防衛だけでなく、日常の施設維持管理も仕事に含まれますので、防衛用に割かれているスペックは然程大きくはないのです。本来はある程度 情報が蓄積されたら、私が吸い上げ最適化する手筈でした」
「オズさんパないす」
「ただの円筒ではありませんので」
いや、アンタ本当は円筒じゃないじゃん。
「鈍人形の方は戦法が変わるから、どっちにしろやり直しか……」
「くれぐれもご注意ください」
「うん……注意でなんとかなるかは分からないけど」
「作戦Bだね。私は二人のサポートに回るよ~」
『私は相変わらず魔力配分の管理か』
「ここから本当に重要になってくるから、お願いね」
『承知した』
マナポーションを飲物代わりに喉へ流し込むと立ち上がり、[アイテムボックス]からごく普通の剣 ― アイアンソード ― を取り出す。
…………これも買い換えておけば良かったね……
後悔先に立たず。
剣を右手にぶら下げて階段を降りると、バリケードのように積み重なった鈍人形の残骸の向こうには、やはり一グループ単位で集まった鈍人形たちが…………あれ?腕が中空状の筒になってますね?
「退避ーーーー!!!!」
ナツナツがいつに無い大声を上げ、私の髪を引く。
慌てて階段を駆け戻ると、『ガガガガガガ……!!!!』という激しい破壊音と共に階段の段差が砕け散った。二階の床に飛び込むように伏せ安全地帯に避難すると、みんなに話し掛ける。
「ナツナツ、ありがと」
「どういたしまして。《魔勘》がビンビンに危険信号を鳴らしてたよ~……」
「もしかしなくても、アレが言ってた気を付けなきゃならない武器?」
「そうです。
『無形流固兵装 モード:魔シンガン』です。親指大の魔力弾を約10発/秒で連射可能です。常時エネルギー供給されているので弾切れはありませんが、魔力ストックの関係で一度に連射出来るのは約10秒です。その後フルチャージまで、約1分かかります。
他に『モード:魔キャノン』があり、こちらは連射出来ませんが、着弾点を中心に1m程の爆発が起こります。こちらも一度使うと次の攻撃まで、約1分かかります」
「二階では使ってこなかったから、てっきりエネルギー不足で使えないかと思ったのに……」
『二階の連中はこちらを消耗させることを目的として行動していたようだな。必殺威力のある遠距離攻撃とは厄介な……』
「…………ナツナツ」
「了解。作戦Cに変更~。ルーシアナの防御に専念するよ」
「よろしく。あと、ごめんオズ」
「問題ありません。魔銃は対人兵装ですので、私には効果がありませんから」
「目に当たったり、それ以外の攻撃は効くんだから、気を付けてよ?」
オズの装甲は、敵と同じく物理魔法防御が高い。魔銃は物理的にも魔法的にも効かないらしいのだ。反面、ドリルとか剣とかに変形させた攻撃は喰らってしまう。…………難しいね。
ちなみに私の戦闘服は、どちらの攻撃も防ぐことは出来そうなのだが、やはり打撃ダメージは通りそうなのだ。
簡易の衝撃緩和術式では、それだけで意識を失いかねない。
つまり防御力的には、私の方が弱いのだから、この作戦は仕方ないのだが…………な~んか、自分だけ防御を固めているみたいで後ろめたい。
『いや、ルーシアナが気絶でもしたら、魔力切れで全滅なのだから、お前の防御が一番厚いのは当たり前だぞ?』
「だから作戦Zは貴女を前線に出さない超安全策なんですからね?」
「分かってますよ……」
二人掛かりで叱られてしまった……むぅ……
『ここからは休憩は取りにくいだろうな』
「分かってる。ご飯食べたから大丈夫」
「全合成食は簡単に摂取可能」
「食べませんよ?」
「ただの情報提供」
まだ言うか…………




