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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
3章 探索!!天人の遺跡
46/264

第42話 ゴーレム娘 の かしこさ が あがった

33 ~ 57話を連投中。


3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

一通りの授業が終わるのに、一時間掛かった。


「分かりましたか?」


「多分……」


「では、説明してください」


「このスパルタ教師!!」


「光栄です」


あーいえばこーいう円筒め……


「つまり電力ってか、電気は電子っていう物で出来てて、全ての物質に含まれてるのね?その中の内、特に動きやすい電子が集まった物が、私たちが扱う電気、と」


「その通りです」


「で、雷魔法を使うならその辺の空気からも電子は取り出せるけど、一番楽に大量に取り出せるのは、大地。これは私たちが利用する範囲内においては、大地はあまりにも大きいのでほぼ無限と見なせることと、放出した電子は放っておけば自然と大地に戻るので、トータルで常に差引き0となるため」


「はい。結構です」


「…………………………………………この程度の情報に何故一時間も……」


「貴方が余計な質問をするからです」


「いやー…………結構面白いかも。分子とか共有結合とか?」


「深みに嵌まらないようにご注意ください。量子力学とか相対性理論とか」


『注意させたいなら、餌を撒くな』


存外に、有意義な時間を過ごせました。

一度立ち上がって伸びをする。


「さて、電気を溜めますか」


「攻撃ではないので、ゆっくりと供給してください」


「了解。……万物に宿りし小さき力。我が意に従いその姿を顕せ。其は無限に在りしモノ。世界に揺蕩(たゆた)いしモノ。自由に往きては還すモノよ……」


新しく習得した知識を基に、詠唱内容・術式を変更する。

具体的には、これまではどこからともなく現れているイメージだったものを、大地から吸い上げるイメージに変える。


「【エレキ・ボール】」


力ある言葉と共に、手の平の上10cm程の位置に真白に輝く雷球が現れる。そして


「ぎゃああああ!!!?!!!?目がああああ!!!!!!!!め~~が~~~~!!!!!!!!」


そのまま両目を抑えて悶絶した。


「あ~……やると思った」


『何故直視した』


「雷は知っているのではないのですか?」


お、お前ら……!!!!

予想してたなら、一言言って!?





橙円筒が【応急処置】という回復魔法を掛けてくれたので復帰した。お礼と共に頭を撫でてやると、『どういたしまして』と、銀円筒が応えた。


「アンタに言ってないよ」


「伝えていませんでしたが、この十柱は全て私です。通常はこの銀のデバイスを主要デバイスとして活動していますが、状況に応じて他のデバイスで活動することも出来ます。補助デバイスは半自動で活動します」


「……………………先に言おうね」


要するに私のパーツと同じか。こっちは自動で動くけど。


「なお、それぞれの色に対応する属性魔法に特化しております」


「どうりで既視感のある光景だと思った……」


各属性には固有の色があり、単一属性魔石などの色に顕著に現れる。

火=赤、水=青、風=緑、地=黄、生命=橙、精神=紫、時空=白、光=月白、闇=紺。

複合属性だったりすると、全然違う色になるからあんまり役には立たない知識だけど。おじいちゃんの部屋には各属性の高純度魔石がゴロゴロしてたから、馴染みがあるのだ。


ちなみに拳大のそれで、平均的な一般市民の平均年収くらいする。

……………………小さい頃、ビー玉代わりによく遊んだのも良い思い出。

まぁ素材が貴重なのではなく、作り手が貴重なので、作れる人にとっては割と雑に扱っても気にならないモノなのだが。


今度は直視しないように注意して、雷球を出現させる。

う~ん……微妙にパチパチいってて、ちょっと怖い。


「それでは充電をお願いします」


「はいよ……」


雷球をサプライポートに近付けて、電力を溜めていく。


おぉ……なんか、魔力と同じでドンドン入っていくよ。面白い。


一個、二個、三個と喰わせた辺りで、アレが鳴る。



▽火魔法マスタリーのレベルが上がりました!!

▽火魔法:サンダー・ブレードを取得しました!!

▽火魔法:サンダー・スパークを取得しました!!

▽火魔法:サンダー・トリニティを取得しました!!

▽《サンダー・スパーク》が《サンダー・トリニティ》に統合されます。

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・火魔法マスタリーLv.1 → 4


取得スキル

・サンダー・ブレード:大剣状の雷。射撃出来る他、武器の代わりとして振り回すことも可能。威力、数、大きさ等は込める魔力、イメージに依る。

・サンダー・スパーク:拡散雷撃を放つ。威力、数、軌道等は込める魔力、イメージに依る。

・サンダー・トリニティ:《サンダー・スパーク》の上位互換。あらゆる性能の上限が上がる。



うん。球体系の雷魔法を覚えるかと思ったけど、メインは拡散系みたい。あと、大剣系?魔法で作れる武器は初めてだ。

そんなことを思いつつ、合計十個の雷球を喰わせたところで異変が起きた。



ビィーーーー!!!!ビィーーーー!!!!ビィーーーー!!!!ビィーーーー!!!!

警告!!警告!!

中枢システムにハッキングを受けています!!

担当部署の方は至急対応をお願いします!!

繰り返します!!

中枢システムに…………



突然部屋の中が真っ赤に染まると、けたたましい音量で声が降り注ぐ。


「な、なに!?またなんかした!?」


「違うよ!!ハッキング……要するに敵が侵入してきたの!!」


『といっても、現実にではなくこの施設の中枢システムに対してだ!!その円筒たちの意識が攻撃されている!!!!』


「銀円筒!!!?」


ナビの説明にハッと銀円筒たちを見ると、一様に目をチカチカさせて動きを止めている。

銀円筒が言う。


「中枢システムへアクセス……………………成功。

セキュリティプログラム起動……………………失敗。

防衛システムが掌握されています。

中枢システム緊急閉鎖モード……………………成功。

通信ライン物理切断……………………成功。

全域システムネットワークフルスキャン……………………成功。

中枢システム以外の全てのシステムを掌握されています。

ハッカー確認。電子魔獣:夢魔(ナイトメア)

捕捉されました。通信をせつだ……………………

エラーエラーエラーエラーエラーエラー…………

……………………………………………………………………………………

ニンゲン?」


矢継ぎ早に言葉を並べていた銀円筒が、不意に押し黙ったかと思うと、ゾッとするほど冷たく、平坦な声で私を呼んだ。


『ルーシアナ!!銀円筒が敵に掌握された!!気を付けろ!!』


「ナツナツ!!」


「とう!!」


赤円筒に乗っていたナツナツが、私の肩へ飛び移る。

同時にナビが《ロング・サーチ》で円筒たちを捉え、《スキャン》を発動させる。



名前:銀円筒 (憑依中)

性別:―

年齢:―

種族:―

レベル:―

HP:1,000

MP:1,500

力:800

体力:10,000

魔力:1,500

敏捷:1,000

運:Best

スキル不明


※対象はアイテム扱いのため、ステータス値は参考値です。



「ナビ、ナイス!!」


参考値だとしても、全く分からないよりマシだ。

というか、ベーシック・ドラゴンよりマシだけど、体力たっか!!

体力値は防御力と密接な関わりがある。つまり、


「せっかく買った大剣意味ない!!」


「鈍器としてなら効果あるけど、前の方が重かったからね~」


『気にするな。鈍器としても効かん』


泣きそう。いや、円筒たちを壊すつもりは全くないけどね?

銀円筒を見ると、相変わらず目はチカチカと(せわ)しくなく瞬き、カタカタとぎこちなく震えている。

そして不意にけたたましく鳴り響いていた警告音がプツリと消え、照明が元に戻る。

すると先程までの ぎこちなさが消えた銀円筒が、『スゥッ』とこちらを向いた。


「ニンゲン…………ヨリシロ…………」


その声と共に、『ギュルル!!』と音を立てて九の円筒たちが私の方を向くと、一斉に周囲を回り出す。

部屋は狭く、相手は小さく、小回りが効き、出口は閉じられ。さらには多勢に無勢。

難易度高い……普通ならね?


「【エリア・アンチレジスト】」


「【アストラル・バニッシュ・バリル】!!」


ナツナツの妖精魔法により、この部屋の魔法抵抗値が軽減され、私の初級精神魔法が数段階 上に引き上げられる。

これは攻撃系の精神魔法。普通の生物相手になら、やたらと疲弊する程度の効果しかないのだが、夢魔のような精神生命体に使うと、


「ギギャアAアあアAアアアアぁアァあァァァァaァぁaァァ!!!!!!!!」


こうなる。

私を中心とした白光が部屋に満ちると、銀円筒から恐ろしい悲鳴を上がり、他の円筒たちがつんのめるように吹っ飛んでいった。

……………………大丈夫かな?



▽精神魔法マスタリーのレベルが上がりました!!

▽精神魔法:魂城鉄壁(こんじょうてっぺき)を取得しました!!

▽精神魔法:アストラル・ウェイブを取得しました!!

▽精神魔法:アストラル・ブロウを取得しました!!

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・精神魔法マスタリーLv.2 → 5


取得スキル

・魂城鉄壁:他者からの精神干渉を完全に防止する。(常時発動)

・アストラル・ウェイブ:己を中心とした円状に精神波を放つ。強度、射程範囲、偏向等は込める魔力、イメージに依る。

・アストラル・ブロウ:円柱状に収束させた精神波を叩き付ける。強度、数、大きさ等は込める魔力、イメージに依る。



だらん……と、弛緩したように動きを止め、目をチカチカさせている銀円筒に近付く。

だ、大丈夫、だよね?

銀円筒たちに対しては、精神魔法の効果はほとんどないはずだけど、見た目から受ける印象が不安を煽る。

と、


シャーー!!


突然、円筒たちが移動する時と同様のかすれ音と共に、部屋の壁が小さく融け落ち、四柱の円筒が追加される!!

色は鈍色(にびいろ)。属性は不明。


「ルーシアナ!!」


「任せた!!」


後ろに回った一柱をナツナツに任せ、前方から迫る三柱に攻撃を叩き込む。


「《アストラル・ブロウ》!!」


動きを止めた銀円筒たちに影響が無いよう、無差別範囲攻撃となる《アストラル・ウェイブ》ではなく、《アストラル・ブロウ》を選択した。

正面から迫る《アストラル・ブロウ》をまともに浴びる鈍円筒たち。が、


「止まらない!?」


『夢魔の影響下にない!!物理で殴れ!!』


「無茶言うな!?」


『なら避けろ!!』


時間差をつけて左、右、正面から襲い掛かる鈍円筒に対し、正面の鈍円筒へと駆け出すとその上を前転の要領で大きく飛び越える。

鈍円筒の上を通り過ぎようとした瞬間、頭が中心から広がるように開き、中から親指位の円錐が高速で連射される。


やっぱり上部への攻撃手段を持っていた。(また)いで乗り越えられるサイズだからなぁ。


予想の範囲内だったので、元々盾として用意しておいたスティールブレイドに円錐は阻まれる。身を捻って着地する際に、スティールブレイドを掴んで盾のように構えた。

……………………て


「うわ、刺さってんじゃん」


『高速回転することで、刀身を抉るように刺さったらしい。戦闘服が貫かれることはないはずだが、衝撃は大きいだろう』


「了解。避けるわ」


「ルーシアナ。ごめん、堅いわ~」


見ると、ナツナツに任せた鈍円筒も無傷で仲間と集合している。


「表面装甲は物理強度が高いし、内部は術式防御力が高くて内部を基点に魔法を発動させられない。ダメ元で【ロック・ブラスト】当てたけど、結果はアレ」


「いや、攻撃しないでよ……円筒壊れちゃうじゃん……」


そういうつもりで『任せた!!』って言った訳じゃないんですが。

『どう無効化するべきか』と考えていると、


『もしかしてと思ったが、鈍円筒共と銀円筒たちを一緒くたにしてないか?』


「え?してるけど……」


色が違うだけだし……


『あぁ……まぁ、そうなんだが。銀円筒の中身は、本来この施設の中枢システムに常駐している管理AI『OS(オズ)』だ。鈍円筒とは全く違う』


「ん?どゆこと?」


「この施設のトップが、一般職員の格好して彷徨(うろつ)いてるのが銀円筒たち十柱。鈍円筒共はホントの一般職員。こっちは中身は無いから、壊してもオズにダメージはないよ。ルーシアナと普通のゴーレムみたいなもん。ホントの道具」


「……………………先に言ってよ」


『言ってたぞ?昼食の時』


「…………………………………………聞き逃したかな」


…………………………………………


「壊すか」


「どうやって~?」


「殴って」


『無茶な』


「いいから。相対しない鈍円筒は任せた、ナツナツ」


鈍円筒共は、散開して行動を開始している。

私はとりあえず[アイテムボックス]にスティールブレイドを仕舞うと、代わりにグローブを取り出し両手に装着した。まぁ、これを当てるつもりはないけどね。


「【チャージル・エアアンカー】」


ギルド長と相対した際に使用した、衝撃波追撃魔法を発動させる。



▽風魔法マスタリーのレベルが上がりました!!

▽風魔法:チャージル・ブロウを取得しました!!

▽風魔法:チャージル・スラッグを取得しました!!

▽《チャージル・ブロウ》が《チャージル・スラッグ》に統合されます。

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・風魔法マスタリーLv.4 → 6


取得スキル

・チャージル・ブロウ:攻撃形態に合わせた形状の衝撃波を追撃する。強度、回数、大きさ等は込める魔力、イメージに依る。

・チャージル・スラッグ:《チャージル・ブロウ》の上位互換。あらゆる性能の上限が上がる。



まぁ、覚えるとは思った。でも最初の数回は【チャージル・エアアンカー】でいけるでしょ。

やはり正面から迫る一体に、床に飛び込むかのように腰を落としながら近付くと、速さを重視した軽いアッパーカットを叩き込む。

軽く拳が接触した瞬間、追撃した衝撃波が鈍円筒を打ち上げる!!


「【エアロ・ブロウ】」


背後から迫る鈍円筒は、ナツナツが吹っ飛ばす。正面のは囮のつもりだったみたいだね。好都合。

打ち上げられた鈍円筒は、丁度殴りやすい高さに浮いていた。

振り抜いた右腕を戻す反動を使って体を持ち上げ、左正拳を叩き込む。


ガン!!!!


壁に当たって大きな音を立てて跳ね返る。そこに追撃した。


ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!ガガン!!ガガン!!ガガン!!ガガン!!ガガガガガガ…………!!!!


止まらない。

リズムをつけて調子を取ったら、時々スキルを使用してストックを補充しながら只管(ひたすら)殴り続ける。

時々、左右から伸びたアームがこちらの腕を捉えようとするが、戻す腕の軌道を使って弾く。



▽格闘マスタリーのレベルが上がりました!!

▽格闘技:殴打を取得しました!!

▽格闘技:連撃を取得しました!!

▽格闘技:精密打撃を取得しました!!

▽格闘技:クイック・エアロを取得しました!!

▽ステータスを確認してください。


特殊スキル

・格闘マスタリーLv.4 → 8


取得スキル

・殴打:拳を使った攻撃動作を補整する。(常時発動)

・連撃:殴打、蹴撃等の超近接戦におけるコンビネーション動作を補整する。(常時発動)

・精密打撃:超近接戦における命中率を向上させる。(常時発動)

・クイック・エアロ:攻撃動作に衝撃波で追撃する。衝撃波追撃魔法には威力がやや劣る。風属性。



あちゃ。先にスキルを覚えちゃったか。自力でやってみようと思ったんだけど。

《精密打撃》の効果により、打撃精度が格段に上がっている。

狙いは『目』だ。


《チャージル・スラッグ》の追撃を、細く鋭い細剣にイメージして、正確に真っ直ぐ鈍円筒の目を穿った。


パキン……


小さな音がして目が砕けると、そこから侵入した衝撃波が内部を蹂躙する。


ぎいいぃぃん……!!


各部の隙間から内圧を噴き出しながら、鈍円筒は動きを止めた。


『破壊確認。無茶だな』


「壊れやすそうだと思ったのよね。この目」


「そんな目で見てたの……?」


『そんな目で目を見たのだな』


「……………………いらり」


『なんでもないっす、パイセン』


…………仲間割れが激化する前に終わらせよう。


残りの鈍円筒を見ると、ナツナツは壁際に鈍円筒共を追い詰め、動き出しに合わせてピンポイントで【エアロ・ブロウ】を打ち込んで行動を阻害していた。


…………いつの間にそんな熟練の技みたいなのを……


「や、こいつら学習機能が低いから、一度パターン化してしまえば割と余裕だよ?ナビの補助も入ってるし」


『お役に立てて光栄ですので、代わりにデリートを止めてください』


「もうちょっとデータの取捨選別くらいしたら?」


『一度に終わらせるタイプなんです。一気に綺麗になるのがいいんです』


「私はそれを横取りするタイプ♡」


『パイセェェェェン!?』


よく分からんからナビが泣きついてきたら注意することにしよう……


それはともかく。


「ナツナツ。打ち上げて」


「あいよ~。【フロア・ノック】」


私の合図と共に鈍円筒がいい感じに打ち上がる。

二歩で間合いに入ると、すかさず三連打。


ボボボッッッ!!!!

ギギギィィィィンンン!!!!


全て等しく目を穿たれると、内部から圧を噴き出して機能を停止した。


「ふぅ……スキルもいい感じに増えて、うまうま」


『予想していたのか?』


「まぁ、おじいちゃんが来たことあるならなんとかするスキルくらいあるかな、程度だけど。目がダメなら覚えるまで色々試すつもりだった」


特に意味はないが、軽く手をはたいて銀円筒(オズ)を見る。

銀円筒たちは、未だ弛緩してチカチカするままだ。


う、うーん……


「ホントに大丈夫?」


『魔法の影響はないはずだが、夢魔に取り付かれた影響はあるかもしれないな……』


「なんとか出来ない?」


「さすがにそこまでの知識はないよ~。ルーシアナのシステムと共通項が多いから、普通よりかは分かるけど」


『『使い方は分かるが、原理は分からない』みたいなものだ』


「なるほど」


まぁ私も自分の体、よく分からないしね。


『自分のことは自分が最も良く分かる』


私には、最も程遠いセリフである。

銀円筒たちが立ち直るのに、どのくらい掛かるか分からない。

せめて、起こして近くに集めておこう。


そう思った私は、ナツナツに一番離れた所に飛んでいた紺円筒を任せ、逆の方向に転がっている白円筒を抱えた。次に


「ルーシアナ!!」


『また来たぞ!!』


「多いな!!」


もしかしなくても、敵認識されて狙われてますか?

今度は出入口が大きく開くと、再び四柱の鈍円筒が飛び込んできた。さらにはまだ距離はあるが、2m程の高さのアイアンゴーレムらしき姿も。


「《チャージル・スラッグ》!!」


流れる動作で衝撃波のストックを補充する。

だが不味い。抱えた白円筒が重い上に、片腕が塞がってしまっている。

空いた腕で一発 衝撃波を飛ばして一柱の鈍円筒を破壊するが、残りの三柱が間に合わない。

ナツナツが遠くから妖精魔法を発動し、足回りに泥を纏わり付かせて一柱の動きを止める。が、それだけだ。


「くっ……!!」


『《クリア・プレイト》』


ナビが二枚の魔法障壁を展開する。が、


パキパキィ…………!!!!


無造作に振り払ったアームが、魔法障壁を一瞬で砕く。


あぁ、くそ。シャルドさん、頼みますよ?


戦闘服の防御力に最後の望みを託す。まぁ、体当たり位ならなん


キュイーーーーン……!!!!


アームの先端が鋭い円錐状となり、高速で回転した。どうなってんだ、アレ。


うわー、ホントに頼みますよシャルドさーん……


伸ばした腕を強引に戻しながら、戦闘服にかなり切実に望みを託した。

鈍円筒は脚を狙って、円錐を降り下ろしてくる。


「【積層断空(せきそうだんくう)】。Read…………Invoke」


攻撃が当たる。まさにその瞬間、抱えた白円筒が言葉を発すると、光輝の障壁がその進行を阻んだ。


「【二点瞬炎(にてんしゅんえん)】。Read…………Invoke」


「【二点滅震(にてんめっしん)】。Read…………Invoke」


続いて聞こえた言葉と共に右の鈍円筒が白炎に包まれ、左の鈍円筒が半身を砂にした。

そして、


「『ルーシアナ』様。大変、失礼いたしました。無事に再起動完了しました」


「…………おはよう。助かったわ……」


銀円筒はそう言いながらアームを伸ばすと…………先端を50cmくらいの鉄球に変化させ、ナツナツが捕まえた鈍円筒に思い切り叩き付けた。


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