第40話 ゴーレム娘、円筒いっぱい、お腹いっぱい
33 ~ 57話を連投中。
3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)
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結局 色々と言葉を尽くしたが、円筒共は減らなかった。
現在、最初にいた銀、赤、青、緑、黄、橙、紫、白、月白、紺、の十柱が、何をするでもなく周囲を囲んでいる。
犯罪者か。…………犯罪者予備軍か。
とりあえずこの状態は、要注意人物から外れるまで継続するらしい。つまり三年間はこのまま。
この施設外にはついてこないが、再び訪れたらまた集まるとのこと。
VIP待遇か。要らねぇ……
一先ず強引に脱出する方法は、本当の意味での最終手段になった。
少なくともコイツらをどうにかしないと、異相空間術式の強制書き換えは難しい。あと コイツらをどうにかしても、増援が何体いるか分からないのもある。強さも不明だし。
《スキャン》してもアイテム扱いで、ステータスが表示されなかったのだ。
…………ちなみに『敵対行動の可能性あり』ということで、また警戒度が上がった。円筒は増えなかったけど。
「それで?私、家に帰りたいんだけど、ムリなわけ?」
「人身の自由を主張しまーす。『異相空間術式に対する干渉は不問』なら、これを理由とした監禁は不当でーす」
……………………ナツナツパイセン、難しいこと言うね。
『パイセン…………そろそろ、あの、デリートはやめて頂けないでしょうか……』
『ちなみにその制裁、私の感覚で言うとどんな感じなの?』
『え?…………そうですね~……………………頭髪を一本一本抜かれてるような感じでしょうか。痛みはないけど、気持ち悪い』
パイセェェン…………
ナビに対するナツナツの制裁は、まぁ、手加減は忘れないと思うので放置していると、銀円筒が話し始めた。
「説明は最後まで聞くべきと助言します。先程『現状、不可』と説明しました。推奨する選択は、『当施設を通常モードに変更し、本登録を行う』です」
「え?でも、管理レベル1区画までしか入れないのよね?」
「管理レベル1区画のみでのモード変更は可能。ただし仮登録アクセスキーでのモード変更は、中枢システムへ『臨時モード変更申請書』の申請が必要です」
「あ、そうなんだ。てっきり管理レベル5のとこまで行かないとダメなのかと」
「そういったことはありません。ただし、通常より手続きが多く、時間が掛かります」
「どのくらい?出来れば今日中に帰りたいんだけど」
「書類作成および記入に掛かる必要時間が不明ですが、合計二時間程度で終了と思われます」
「えっと……」
「今お昼位だから十分ね」
あ、もうそんな時間でしたか。
くぅ~~~~…………
時間を意識すると、途端に空腹が主張した。
十の視線がお腹に向いている気がする…………恥ずかしい。
「申請手続きと並行して昼食を摂ること推奨します」
「そだね……」
「現在、フードコートの飲食店は全閉店。食材も在庫はありません。全合成食の提供は出来ますが、統計的に不評と判断。食材を提供頂ければ、自動調理装置の使用を推奨」
……………………『無理でしょうけど』(失笑)みたいな雰囲気を感じた。
ふふふ……ならばその思い込み、砕いて見せましょう。
「食材ね……例えば?」
「主食として、穀物粉や米など。主菜として、肉や卵など。副菜として、野菜や乳製品など。味付けとして、調味料各種」
「小麦粉、鹿、猪、卵、レタス、トマト、チーズ、塩、砂糖」
言われた通り、該当しそうな食材を出してやる。
ずどーん、ずどーん、ずどーん。
「…………………………………………」
「他に必要な物は?」
「…………………………………………不可解」
「ふ……勝った」
人間だったら、口をあんぐり開けて目を丸くしているような雰囲気の円筒共に勝利宣言をしてやった。
『勝負をした覚えはなく、勝負だとしても敗北と判断する根拠が不明です』と、言い訳を並べていたが、動揺していたのは丸分かりだった。お仲間の円筒にぶつかりまくってたからね。
「仕様です」
そんなわけあるかい。
現在 私たちは、二階のフードコートとやらに来ていた。屋根から降りるときに見えた、机や椅子がたくさん並んでいた広い部屋だ。
部屋の一面は全面ガラス張りで屋外が一望でき、遮るものがないから遠くまでよく見えた。まぁ、見える風景はセピア色にくすんだ森なのだが。
残りの三面には屋台みたいな店舗が並んでいたが、やはりというか、全てガラス幕が降りていた。
それらの端っこに、ぽつんと二つの装置が並んでいる。
片方は全合成食の提供装置、片方が自動調理装置、とのこと。
全合成食は、物質の素みたいな物を混ぜ合わせて作り上げる食事で、栄養的には完全食であるが味的には風味が無く、『ゲロマズ』『罰ゲームに丁度いい』『腹は満たされるが、心は貧しくなる』『これで健康になるなら、不健康でいい』『物質が満たされると精神が貧しくなる、現代社会の象徴』と、大変好評なものだったらしい。(嫌味)
これの稼働回数は、設置以来100,000回程で、そのうち約99%程を私のアクセスキーの前所有者がカウントさせたらしい。…………要するにおじいちゃんだよ、予想通りだよ。
銀円筒とのおしゃべりで分かったことは、おじいちゃんはどこまでもおじいちゃんだったことと、やはりここはおじいちゃんが何度も立ち入った遺跡だったことだ。
「『マイアナ』様は、約160年前に当施設を通常モードに変更。その後省エネモードに再変更の上、約15年前まで頻繁にご利用いただきました。当施設は、10年間一切のご利用実績がなかった場合、自動で休止モードに移行し、施設の劣化軽減に努めるよう設定されていますので、約5年前に休止モードに移行しました」
「そういえば、この施設は何のための施設なの?いや、何か商店街みたいな施設があるのは分かるけど、おじいちゃんが使ってたってことは、他に使いたい機能があったんだよね?」
私は自動調理装置で作ってもらった『ハンバーガーとフライドポテト セット』をパクつきながら、随分と後回しになっていたことを聞いた。脱出が最優先でしたからね。
ちなみにこのハンバーガー。サンドイッチの一種なんでしょうけど、妙に味付けが濃くてお腹に溜まる。帰ったらギルド長にでも作ってあげようかな。
「…………当施設の本来の主機能は、管理レベル2『光照射空間転移装置』を利用した、長距離移動です」
なんとなく、『そんなことも知らんでここにいるのか』(怒)みたいな雰囲気を感じた。
事故でここに来たって言ったじゃない。
「従来の空間転移は、転移先の状況に応じて柔軟に術式を調整しなければならず、その使用に際し高度に熟練した魔道士の存在は必要不可欠でした。
そこでまず転移先の環境を一定にし、術式の調整を最小限に抑えることで、人の存在を不要とする第一世代空間転移装置が開発されました」
「なんか前提で既にはるか彼方なんですけど」
「現在の空間転移は、指定した空間の距離を圧縮して行う『疑似空間転移』が王都とかの主要都市間で行えるって言うのが、主流で限界かな」
疑似空間『転移』って言い過ぎたよね?空間圧縮移動だよね。どっちかって言うと。
「その方法は当時においては、戦闘時における高速移動術として利用されていました。
それはさておき、第一世代空間転移装置は、人の存在を不要とする点で革新的ではありましたが、予め決められた二点間の転移に限定されてしまう点で、まだ改善の余地がありました。
第二世代では、装置を従来のネットワークシステムに接続することで、転移先の情報をリアルタイムに取得出来るようにしました。これにより、二点間ではなく多点間の空間転移が可能となりました」
「ネットワークシステム?」
「情報を相互に共有するための、国家規模的通信システム。略称:KSN。離れた場所の情報が、ほぼリアルタイムで取得できるシステムと思ってください」
「は、はぁ……」
「これにより異なる転移先の状況に合わせて、的確に術式を調整することが出来るようになり、転移座標の精度や術式調整速度も向上しました。
現 第三世代では、転移先の情報収集システムとして、準静止衛星を用いた『光照射情報収集システム』に変更、特定の端末にこのシステムへの通信機能と転移元用術式を組み込むことで、端末を所持した対象をどこからでも決められた地点に転移させることが可能となっています」
「んん?」
「つまり特定の端末を所持していれば、いつでもこの施設内に転移することが可能です。転移先は当施設と同様の施設を休止モード以外に変更すれば追加可能。光照射情報収集システムなど主要設備が『壊れていなければ』ですが、恐らく問題はないでしょう」
「……………………おじいちゃんはたまに、不意にいなくなるときがあったけど、これのせいだったかぁ……」
当時のテモテカールでも見たこともない食材を持ってきたりとか。
「第四世代として、転移先も自由に選べるよう開発中です」
それはもうずっと開発中なんじゃないかな……
ハンバーガーの最後の一欠を口に放り込むと、ジュース (なんかシュワシュワいってる痛いやつ) でさっぱりとさせる。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です。食事中に回答頂いた情報を元に、『臨時モード変更申請書』その他必要書類の雛型を作成しました。該当箇所に自筆でサインをお願いします」
「……………………作ってもらっておいて文句を言う訳じゃないけど、雛型って項目だけ作って、自力で空欄埋めるものじゃないの?」
机の上に広げられた10枚を超える申請書は、名前の欄以外、全て埋まっていた。
中には答えた記憶のない内容や項目に対してズレた内容が記載された項目もある。
「こういうものはとりあえず埋めておけば問題ありません。空欄が一番の問題です」
「おい……」
いいのかそれで……いや、いいとしてもお前の立場で言っちゃダメだろう……
銀円筒が用意してくれた書類にサインを終えた。
一応分からないなりに、礼儀として目を通していたら、『どうせ分からないのですから、早くサインをしてください』とか言われた。
コイツ…………!!!!
出来上がった書類は、黄円筒がどこかへ持っていった。これで特例として、私がモード変更することが可能となったらしい。
「で?残りはなに?ここまでで約一時間掛かったけど」
銀円筒の予想では、後一時間で終わるはずだけど、感覚的にはまだ何も進んでいない。
「モード変更は操作端末で行います。準備が出来たら声を掛けてください」
「分かった。ナビ?ナツナツ?」
『レシピデータ収集完了。後で最適化は必要だが、問題ない』
「私も良いよ~。とりあえず一通り[アイテムボックス]に放り込んでおいた」
自動調理装置のデータベースにアクセスしていたナビと、自動調理装置に作ってもらった料理を[アイテムボックス]に放り込んでいたナツナツが返答する。
どうも私の体を造るに当たって、おじいちゃんはここのデータを存分に利用したらしく、短距離通信とやらでナビというか私はここのシステムにアクセス出来るらしい。それを利用して、自動調理装置内に保存されていたレシピをダウンロードしてもらった。
ナツナツには、ギルド長たちへのお土産として色んな種類の料理を片っ端から作らせ、仕舞ってもらった。ナツナツの好みに偏っているのはご愛敬。
「わざわざそんなことをしなくとも、食べに来れば良いと思われます」
「いや、遠いし朝食や夕食で食べたくなるかもだし」
「例の転移基点端末を渡すつもりですので、すぐに訪れることは可能です」
「あ、そうなの?なら、これはお世話になっている人にあげるよ。また来るから」
「お待ちしております」
喜んでる雰囲気を感じる…………
「ところで不要かもしれませんが、警告」
「え!?また、警戒度上がったの!?」
「そちらはすでにMAXです。これ以上、警戒度が上がることはありません。軽度の禁則事項抵触で即拘束ですので、ご注意ください」
「その禁則事項の内容を教えてもらえないでしょうか!!!?」
「短距離通信によるデータ送信準備完了。そちらからアクセスしてください」
『禁則事項データ取得完了。何かやらかしそうになったら止める』
「よろしくね……」
まったく……いつの間にそんな状態になった。
「警告。先程から使用している異空間[アイテムボックス]について」
「ん?正確に言えば、《異空間干渉》の術式だけど、なんか問題ある?もう異相空間術式に影響しないでしょ?」
というか、影響するならすでに拘束されてるはず。
「それは問題ありません。《異空間干渉》の魔法で作成される、異空間と現実空間の境界に注意してください」
「境界?」
「ここのこと?」
ナツナツが小さく開いた[アイテムボックス]の、向こうとこちらをぼんやりと区分けしている境目を指差した。
「そうです。本来、現実空間に異空間への扉は開くことがありません。術式で強制的に開いているのが、その扉になります」
「うん」
「ゆえに、その境界には見た目からは分かりませんが、莫大なエネルギーが均衡しています」
「ん?」
アレ?なんか怪しい雰囲気。
「大きなエネルギーが境界、または扉に与えられた場合、均衡が崩れエネルギーが暴発する危険性、大」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
『…………………………………………』
「ゆえに、異空間[アイテムボックス]へ保存する際は、なるべく中心付近に、ゆっくりと収納することを推奨」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
『…………………………………………』
「具体的には、物理攻撃全般、攻撃魔法全般、銃器攻撃全般」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
『…………………………………………』
「おじいちゃん」
すぅーーっと大きく息を吸い込むと、
「そういうことはちゃんと言えーーーー!!!!!!!!」
天に向かって叫んだ。
「多分忘れてたね」
『忘れてただけだろう』
「『マイアナ』様の忘却確率、約70%を記録」
銀円筒…………苦労かけたようだな。
遺跡のイメージは、ショッピングモールです。
転移装置=流通の要にはそういうのができると思いまして。




