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ゴーレム娘は今生を全うしたい  作者: 藤色蜻蛉
3章 探索!!天人の遺跡
43/264

第39話 ゴーレム娘、謎の円筒に付き纏われる

33 ~ 57話を連投中。


3/21(木) 9:00 ~ 19:00くらいまで。(前回実績:10話を4時間で投稿)


word → 貼り付け → プレビュー確認、微調整 → 投稿してますので、時間が掛かります。


申し訳ありません。



ブックマークから最新話へ飛んだ方はご注意ください。

その施設は尖塔を中心とした、三重円の構造をしていた。


まず、中央。

そこには、東西南北から進入できる扉のついた、円形ホールのようだった。恐らくこの施設が建てられた目的の機能があると思われるが、扉は閉まっていて入れなかった。

続いて、その周囲。

円形ホールに背を向ける形で、ぐるりと一周、部屋が並んでいる。

次に、その部屋と通路を挟んで外側。

同様にぐるりと一周、部屋が並んでいる。ただこの列の部屋は、東西南北以外にも歯抜けのように通路となっており、部屋数自体は多くない。

最後に、さらに通路を挟んで外側。

つまり、外壁の内側に沿ってぐるりと一周。ここにも部屋が並んでいる。東西南北を除いて、全て部屋で埋まっており、一番部屋数は多い。


要するに中央から、円形ホール→第一部屋列→第二部屋列→第三部屋列、と並んでいるのだ。

二階も同様の構造をしている。



それだけの部屋が施設内に押し込められている割には、内部は外観から想像した以上に広かった。

別に内部を時空魔法で拡張していると言いたいわけではない。実際、そんなことはしていなかった。

では、何故想像以上だったかと言うと、それは柱の少なさなどによる物理的なものと、レイアウトによる心理的なものの融合だった。


まずは柱と壁。

この規模の施設の二階や屋根を支えるには、それ相応の太さの柱か柱の機能を有する壁がいる。

しかしながら、この施設には見える範囲内に柱は見当たらなかった。つまり壁が柱の代わりに屋根を支えているのだが、そうなると代わりに壁は厚くなるはずだ。なのに、壁があまり厚くないのだ。というかむしろ薄い。

これがまず物理的に内部空間を広くしている。


次にレイアウト。

先程 柱がないと言ったが、それがまず開放的なイメージを見る者に与える。

それだけではなく、一階から上を見上げると、空が見えるのだ。二階の床と屋根が透け、それを通して青空が見えている。

…………先程 屋根に降りたときは、屋内なんて見えなかったのに。どうなってるのやら。

この『柱がない』『空が見える』の効果により、心理的に内部空間を広く感じさせている。


この物理・心理の二要素の合わせ技で、想像以上の内部空間を実現していた。



……………………まぁ、これ、『二階を歩いたら、スカートの中見えちゃうんじゃ?』とか思うけど。


なんだろう。天人にはスカートタイプの服装がなかったのだろうか。

最古の服装といったら、一枚布で作られた貫頭衣(かんとうい)ではないかと思うのだが、それがちょっと進化すれ簡単にワンピースタイプになり、ツーピースタイプになり、スカートタイプになるだろう。そこを飛ばして進化するとは思えないのだが……


古過ぎて存在が抹消された?それとも、服装が統一されてた?……………………そもそも服を着ていたと考えるのが、間違いかもしれない…………天人 裸族で ヤバス。


「ルーシアナ。そろそろ動こう?」


『向こう見ろ。明らかにマネキンらしき人形が立ってるだろうが』


「あら、ホント」


言われた方を見ると、薄いガラス幕で遮られた部屋の中に、無数の洋服掛けと(おぼ)しき金属棒や収納ボックスがあり、それらの間にぽつぽつとマネキンらしき人形が立ってるのが見えた。

明らかに服飾店だった。

太古に生きた天人と言えども、こういうのは大体似たような展示法になるのかもしれないな。


『うん。服飾店から天人との共通点を考察しなくていいから、動け』


「…………………………………………もう疲れたよ…………何周させんのさ…………」


「脱出手段が見つかるまで」


『周回は終わらない』


「鬼か…………」


私は現在、入ってきた入口から真っ直ぐ進み、第二部屋列の壁に設置された長椅子の上で横になり、ぶー垂れている。

不思議なことに通路に設置された長椅子や観葉植物は、現在も誰かが管理しているかのように真新しく、生き生きとしていた。先程中を確認した服屋は、ボロボロになった服の残骸がマネキンや収納ボックス内に山となっているのに。


まぁ、誰か(・・)に関しては予想がついているのだが。


チラリと顔を(うず)めた腕から横を見る。

そこには銀色に輝く円筒状の何かがいた。ちなみに天辺にはナツナツが乗っている。

こいつは私が施設内に入ると同時に壁に空いた (これもガラス壁と同じように、融けるように壁が落ちた) 小さな穴からひょっこり現れて、以降ずっとついてきている。


思わず

「キミ、何者?…………ですか?」

と、聞いてしまった。普段使わない二人称が出ていたり、遅れて敬語が出ていたりしているところから、私の困惑っぷりを読み取ってくれるとうれしい。


それはともかく、そのセリフに対する銀円筒君の反応はこうだった。


「当機は『追従型汎用デバイス PTD-20779』です。現在は『清掃モード』で稼働中。対象『名称未定』様に追従中です」


うん。良く分からんけど、私にくっついて、施設を清掃してるのね。


……………………失礼な。『アンタ汚いからついてくよ』ってことかい。


それはさておき、先程の誰か(・・)に関しては、多分コイツだと思う。

試しに紙クズを落としたら、すかさずそれを踏み付け、通り過ぎると紙クズが無くなっていた。円筒の中に取り込んだっぽい。

そしてコイツは、私の後をぴったりついてくる訳ではなく、チョロチョロとあっちに行ったり、こっちに行ったりしていたのだ。

ただし部屋の中には入らない。まぁ、薄いとはいえガラスが張ってあるからな。



そして私は、この良く分からん同行者を連れて、施設を探索したのだった。……………………四周も。


いやさ、ここの通路 結構広いのよ。壁際歩いてると、反対側の細かい所は見えないのよ。

そんで、通路は一階と二階に合わせて四つあんのよ。それぞれの外側内側を見るとなると倍の八周よ。

無駄に周回しないように、逆側を見たりもしながら、とりあえず全通路を一周したのよ。

何も無かったけど!!!!

この施設さぁ……テモテカールの商店街並に広いのよ?正直、一周するのに30分は欲しいのよ。頑張って一時間で回ったわ。一周するのに15分て、半分じゃない。

何も見つからなかったけど!!!!


……………………誰だ。『今日中に帰れる目処が立った』とか言ったの。私よ。


「どこにあんのよぅ…………操作端末」


「う~ん……魔眼だと魔力の流れてるところしか分からないんだよね。だから魔力の流れてない魔道具、つまり端末は分からないの」


「入るとき分かったやん……」


「あれは魔力が流れてた。だから操作端末も魔力が流れてると思ったんだけど、今のところそれっぽいのはないのよね~……」


『一旦落ち着こう。入るときの声が操作端末の場所についての説明をしなかったのは、そんなことをしなくても分かるくらい簡単に見つかるからだろう』


私が大分本気で嫌気が差している気配を察して、ナビがアプローチを変えてくる。

うぅ……申し訳ない……


いやね、私だってね?初めてのダンジョンだし、ちょっとはワクワクドキドキしてたのよ?『天人』なんていう、御伽噺みたいな連中の遺跡だしさ。トレジャーハンター?みたいなね?

でもさ、今のところ入れるの、通路だけやん……しかも、ピッカピカやん…………何も落ちてないやん………………トレジャー、ないやん……………………


正直、肉体的な疲れはそれほどでもないのだけど、ひたすら何も無かった徒労感が半端ない。

散歩は嫌いじゃないけど、『散歩だと思えばいいよね』なんて処理は出来ない。そもそも最低限、脱出手段は見つけなきゃならないし。


本気では無かったけど、各部屋に侵入するためにあの薄いガラス幕を破壊することを考慮に入れてもいい頃じゃない?

ただまぁ、フリでも壊そうとすると銀円筒君が視線をこちらに向けてじっとするから、後ろめたくて 出来ればそんなことしたくないのだけど。

でも、しょ~じき通路をこれ以上探しても進展は無い気がする……


そんな感じで長椅子でふて腐れていると、ナツナツとナビが会話を始める。


「簡単に分かる操作端末って例えばどんなのだろ……」


『ふーむ……入ったら目の前にある?』


「入口 入ったら、即 通路」


『じゃあ、そこら中にある』


「似たような観葉植物はたくさんあったけど、さすがにただの植物だったね~。あとはトイレとかはたくさんあったけど。何人を収容する想定なんだか」


『入ったらすぐ渡されるとか』


「誰にさ。何も渡されなかったよ。強いて言うなら、この銀円筒君がついてきただけ」


『何で清掃魔道具が一人一台でついてくるのやら…………』


「だよね~。天人はそんなに綺麗好きだったのかな?」


「……………………ちょっと待った」


聞くともなしに聞いてた二人の会話を止める。

すると、二人が期待に満ちた表情を向けてきた。


「お、なんか思い付いた?」


『正直、私たちで話し合っても根本(こんぽん)が同じだから、前提が間違っていたりするとどうしようもないのだ。だから、とても期待している』


「あ、私に対する情報整理だったのね……今の会話」


そう言って身を起こし、ナツナツを両手で抱えて膝の上に乗せる。銀円筒君はじっとこちらを見たままだ。


「『入ったら目の前にあって、渡されて、そこら中にある』」


「うん?」


『いや、さすがに全て網羅しているとは言わんぞ?』


「いやさ、『入ったら目の前に出てきて、くっついてきて、そこら中についてくる』ヤツならいるじゃん」


「あ」


『む。だが、清掃魔道具と言ったぞ?』


ナツナツが銀円筒君を見て、でもナビがちょい否定する。


「コイツは『清掃魔道具です』とは言わなかったよ。確か『追従型汎用なんちゃら』って言ってた。そのあと『現在清掃モードです』って言ったのよ」


「『あ』」


今度は二人の声がハモった。

私は銀円筒君を見る。施設内を歩いていたときは、あっちにフラフラ、こっちにフラフラしてた癖に、今は私の隣でぴたりと止まっている。何かを待っているかのように。

『清掃魔道具』なら、動いていないときこそフラフラするべきじゃない?


「ちょっとキミ」


「何でしょう?」


「もっかいキミについて教えて」


「当機は『追従型汎用デバイス PTD-20779』です。現在は『清掃モード』で稼働中。対象『名称未定』様に追従中です」


うん。先程もこんなことを言った。

続けて問う。


「なんでついてくるの?」


「『名称未定』様の施設利用をサポートするためです。未入力時は、自動で周辺の清掃を行います」


「どうやってサポートするの?」


「当施設を訪れた目的、または質問等を、音声で入力ください。目的の施設への案内、または質問に対する回答をいたします」


「じゃあ、キミが出来ることを教えて」


「当機の主機能は、当施設に対するナビスタントです。入力された情報に対し、適切な情報・手段等を提示し、場合によっては具体的な行動を指示します。

例えば、『食事がしたい』といった情報に対しては、当施設内の飲食店を提示します。全ての飲食店が閉店している際には、食材の入手・調理を提案し、それが了承された場合は調理装置の使用方法をお教えします」


えーと……目的を言うと、それを叶えるための施設に案内するってことかな。ついでにその施設の使い方も教えてくれる、と。

それなら、操作端末の位置を聞くんじゃなくて……


「管理レベル2以上の区画に入りたいんだけど」


「当施設の管理区画は、


管理レベル1『一般開放区画』

管理レベル2『光照射空間転移装置 利用者区画』

管理レベル3『テナント従業員区画』

管理レベル4『施設職員区画』

管理レベル5『中枢システム区画』


の、五つに分かれています。現在地は、管理レベル1『一般開放区画』です。

利用したい管理区画または目的を入力してください」


「…………………………………………」


失敗。

どの管理区画が何をするための区画なのか分からない。


「えーと…………とりあえず、ここの異相空間から出たいんだけど……」


諦めて、根本的な目的を述べることにした。

目的を言えって言ってるし いいよね?


「質問の意味が不明。当施設の異相空間に入る要件と出る要件は同一です。入れたなら同様の方法で出られます」


「正規な方法じゃなかったのよ。事故みたいなもので」


「システムログにアクセス。…………………………………………確認。1時間26分前に異相空間術式に不正な干渉が記録されています。これに巻き込まれましたか?」


「多分そう。その後、同じ方法で出ようとしたら、もう出られなかった」


「……………………禁則事項に抵触の可能性。捕捉します」


「え?」


「は?」


『ん?』


それまで立板に水のように、こちらの問いに間髪入れずに返答していた銀円筒君が少し黙った。

と思ったのも束の間。側面からにょろにょろ動く金属棒?が飛び出すと、先端の輪っかが私の手首とナツナツの首を拘束した。(絞まっているわけではない)


「えーーーー!?」


「ちょっとなによこれーーーー!!!!」


『首輪だな。犬みたいな』


「無駄な抵抗はお止めください。判決に不利になるだけです」


「判決ってなに!!!?」


「異相空間術式に対する干渉は、当施設の異相空間が破壊される危険もある重大な禁則事項です。担当部署に連絡するので、少々お待ちください」


「そういうことかーーーー!!!!」


「わざとじゃないよーーーー!!!!」


『……………………いや、わざとだったろ。何度もしたし』


ナビ貴様…………どっちの味方だ。


「犯罪者は(みな)そう言います。

警備部門に連絡。…………………………………………不通。出勤者なし。

管理部門に連絡。…………………………………………不通。出勤者なし。

管理職員に連絡。…………………………………………不通。原因不明。

警察機関に連絡。…………………………………………不通。原因不明。

簡易裁定機構による判断中。…………………………………………解。

短時間で干渉を止めたこと、休止モード中により事故の危険が少なかったこと、初犯であることを考慮し、不問。ただし要注意人物として、三年間 個人情報を保管します。保管中に問題を起こした、または起こしかねないと判断した場合、警戒レベルが上がります。ご注意ください」


それだけ言うと、『シュルシュルシュル…………』と、金属棒 (アーム?) は側面へ戻っていった。


「…………………………………………」


「…………………………………………」


『…………………………………………えーーーーと』


「ナツナツ」


「お前ホントお前」


『たいっっっっへん!!!!申し訳ありませんでしたーーーー!!!!』


自分から探しに来させて、自分からあの方法を試させ、土壇場で他人のフリとはいい度胸だ。


『あっ、あっ!!ナツナツ先輩!!!?1バイトずつデリートするのやめて!!消えないけど消えちゃう!!!!』


「う・ふ・ふ・ふ・ふ…………」


妖しい笑みを浮かべながら、ナツナツがナビをシメている。


「せっかくだから、空いた容量を使って貴方にお似合いのアクセサリをつけてあげる♡」


『ナツナツ先輩!!!!これ犬用の首輪です!!!!』


「あら。首吊り用の荒縄が良かった?」


『これがいいです!!!!』


……………………首輪に怒っていた模様。犬耳も着けちゃえ。


端から見てるとナツナツが一人怒っているように見えるが、銀円筒は特に気にせず話を戻した。


「異相空間の出入りに関する要件は、登録が完了したアクセスキーを所持すること、または所持した者と共に通過することです。現在、『名称未定』様のアクセスキーは、仮登録段階で中断中」


「え?そうなの?入口で認証したけどダメなの?」


「……認証と登録は、全くの別物です。

認証は、貴方の所持するアクセスキーが、当施設の管理区画への立入り権限を有しているかの確認作業になります。

登録は、貴方と貴方の所持するアクセスキーを、正式に紐付ける作業になります。

管理レベル1以下の施設へ立ち入りは、仮登録アクセスキーでも可能ですが、管理レベル2以上の施設へ立ち入る際は、本登録を済ませる必要があります」


なんか一瞬、『そんなことも知らないんですか』(蔑み)的な雰囲気を感じたが、気のせいか。


「本登録ってどうやるの?」


「行政機関、または行政業務代行施設での、窓口またはweb申請」


「えーと……私が取れる選択肢の中だと?」


「現状、不可。現在、外部への連絡が取れませんので、web申請は不可。また、外部へ出られませんので、行政機関へ行くことは不可。行政業務代替施設は、当施設が該当しますが、休止モード中は本登録が行えません」


「…………………………………………」


「…………………………………………」


『…………………………………………』


詰んだ…………

おじいちゃん……本登録しておいてよ……

八つ当たりなのだがそう思ってしまった。


「無理矢理出るか……」


「犯行予告と思われる呟きを感知。応援を呼び出し」


うっかり呟いた言葉に銀円筒が反応しよった。

『シャーーーー……』というかすれ音と共に、円筒が増員される。その数、九柱。


「…………………………………………」


「…………………………………………」


『…………………………………………』


「要注意人物としての警戒度が上昇しました。発言にはくれぐれもご注意ください」


「……………………おいこら、銀円筒」


「当機に対する呼称と予測。ユーザーデータに当機呼称『銀円筒』を設定しますか?」


「そうして」


「当機呼称を『ナビスタント』から『銀円筒』に変更します。なおこの設定は、貴方のアクセスキーに記憶されます。更新の際は、データの移行を忘れないようにしてください」


「あいよ。それで銀円筒」


「何でしょうか?」


「冗談を本気にするなや」


「『保管中に問題を起こした、または起こしかねないと判断した場合、警戒レベルが上がります。ご注意ください』と、警告済みです」


言ったね。言った。うん。


「……………………冗談も言えんのか……」


「禁則事項への抵触が疑われる発言を封じられても、日常生活に支障は無いと判断されます」


「そ・う・で・す・ね!!!!」


「語気を荒げる意味が不明」


うわ、コイツ殴りてぇ……

でも、それでまた警戒度が上がって、ぞろぞろ来られても面倒なので我慢した。


無駄に長いモノローグに、ルーシアナの辟易っぷりが表現できているといい。

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